英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『お前もな!』by 冴えない男子代表

ギルドで依頼を済ませ、エステル達が報告するのを 待った後、俺達は学園に向かった

 

~ジェニス王立学園~

 

「は~、ここが王立学園か。何て言うか…落ち着 い た感じのいい場所ね」

 

「静かだし、勉強をするにはもってこいの環境み たいだね」

 

「まあ、今授業中だからな」

 

「もう少ししたら途端に騒がしくなりますよ。学 園祭まで間もないですし」

 

「なるほど。みんな準備に大忙なんだね」

 

「あはは…それもあるんですけど…」

 

「主に俺の捕獲に命かけてるからな…生徒会長が 」

 

ガチで全生徒仕向けてくるからな…あのバカは

 

「それは何と言うか…大変だね」

 

「大丈夫だ。そろそろ解放される(予定だ)から 」

 

「(ブルッ)!?」

 

俺の表情に思わず悪寒を感じたらしいヨシュア…い かんいかん、つい顔に本音が

 

「とりあえず、まずはコリンズ学園長に紹介しま す。ついて来て下さい」

 

~学園長室~

 

「学園長、ただいま戻りました」

 

「後、客を連れて来ました~」

 

「クローゼ君、ケイジ君、戻ったか。客人とはそ ちらの方々かな?」

 

相変わらずの落ち着いた態度で俺達を迎える学園長

 

「初めまして、学園長さん」

 

「遊撃士協会から来ました」

 

「ほう、まだ若いのにケイジ君同様大したものだ … 」

 

「学園長」

 

「おっと済まない。失言だったね。」

 

全く、くえないオッサンだ

 

まだ俺の正体はどっちもばらせない

 

エステル達は事情を察してくれたのか、深く聞いて くる様子は無い

 

「…孤児院で火事があったそうだが、もしやその 関 係できたのかね?」

 

少し顔をしかめる学園長…まあ、学園の中に事件に 関わった者がいるとは考えたくないだろうな

 

「はい、実は…」

 

クローゼが放火事件の事について説明する

 

「なるほど…私も何か力になれる事があればいい の だが…」

 

「ま、今は学園祭を成功させてガキ共を楽しませ る位しかできねぇわな」

 

「そうだな…そこから始めるしかないだろうな」

 

「はい…」

 

孤児院と深く関わりを持つ者が頷く

 

「そこでお芝居についてはエステルさんとヨシュ アさんに協力して頂こうと思いまして…」

 

「いい考えだと思うよ。 …おや?でも確か空き役は 1つしか…」

 

「“あの役”があるじゃないですか~」

 

「む?“あの役”は君がやると台本にあったが?」

 

「そんなもん、どうとでもなりますよ」

 

「でも私は個人的にケイジにやってほし…」

 

「だが断る。あんなのは恥以外の何物でもない! 」

 

この時の俺は内心必死だったと言っておく

 

「大体アレをガキ共に見せてみろ!ここぞとばか りに大爆笑だろうが!」

 

「え~…みんな見とれると思うけど…」

 

「無理。…という訳でヨシュア」

 

俺はヨシュアの肩に手を置いて、無言で頷く

 

「…激しく嫌な予感しかしないんだけど…とりあ え ずその頷きは何さ?」

 

「…直にわかる」

 

「もういいかい?」

 

「あ、はい」

 

律儀にツッコまずに待っていてくれた学園長に感謝

 

「コホン、エステル君とヨシュア君には劇の手伝 いをしてもらうと言う事でいいんだね?」

 

「はい」

 

「ならば劇の事は生徒会長のジル君に聞いてくれ 。劇については彼女に一任しているしね」

 

「わかったわ」

 

「…あいつさえ、生徒会長じゃなかったら…」

 

え?しつこい?お前らはあの役の恐ろしさを知らな いからそんな事が言えるんだよ!男子生徒ほぼ全員 による強制着替えを体験してから出直して来い!

 

「私からは…寮の準備をさせてもらうよ」

 

「え!?寮!?」

 

「学園祭まで時間がないからな…練習は多分夜ま で やるし、泊まり込みの方が色々楽だろ?」

 

「それはそうね…」

 

「助かります」

 

そうエステル達が納得した時、終業の鐘が鳴った

 

「ちょうど授業も終わりだな」

 

「(ヤベ…)じゃあ俺はこれで!」

 

俺は全力で部屋を出て、隠れる場所を探す

 

「あ!待って…って聞こえてないか…」

 

「ねぇクローゼさん…何でケイジはあんなに劇を 嫌 がっているの?」

 

「それはケイジの役が問題ですね」

 

「…ちなみにどんな役なの?」

 

「それは…私の口から言うのは…」

 

少し慌てた感じになるクローゼ

 

「言うのは?」

 

「恥ずかしい…です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いた!一班から三班はこのまま追って!残りは 裏に回るわよ!」

 

『応!』

 

「来んなてめぇらぁぁ!!」

 

現在リアル鬼ごっこ進行中です

 

…俺以外全員鬼とか言うイジメ設定だけどな!

 

「待てぇぇ!大人しく練習をしろぉぉ!」

 

「ふざけんな!二度とあんな格好してたまるか! 」

 

もう気付いた人もいるとは思うが、あんな格好とは …

 

女 装

 

である

 

「むしろ劇でやらなくていいからもう一回女装して !」

 

「ふざけんな変態共!」

 

そう言って俺は中庭の階段を全段飛ばしで降り、挟 まないように四方に逃げ道をつくる

 

そして案の定反対側から来た軍団を撒いて、旧校舎 の方へと逃げ込む…フリをしてクラブハウスの裏手 で術を使って屋根まで登る

 

「ハア…ハア…これで少しは…」

 

「甘い!」

 

「悪いな。ケイジ」

 

「なっ!?」

 

俺が屋根に登った瞬間、待ち構えていたかのように ジルとハンスがいて、ハンスが俺を拘束していた

 

「やぁっ~~~~っと捕まえたわ~。フッフッフ … もう逃げられないわよ」

 

「お前ら…指示を出した後は生徒会室で予算チェ ッ クとかしているはずじゃ…」

 

「もうおおまかには終わらせたわよ…気力で」

 

バカな…ギリギリまでかかるように情報操作したは ずだ!

 

「…こいつ3日間生徒会室に泊まり込みで終わら せ やがったんだよ」

 

「くっ…ジルの面白い事に関する時の根性…いや 、 執念を甘く見ていたか…!」

 

「そう言う事。さて、あんた以外にあの役が出来 そうな奴がいないんだからいい加減覚悟を決めなさ い」

 

「………?あれ?お前ヨシュアとエステルに会って ないのか?」

 

俺以外にいないって事はないはずだ…ヨシュアに会 っていれば

 

「会ったわよ?」

 

「なら…」

 

「本人が断ったんだから仕方ないじゃない(クロ ーゼにも悪いしね~)」

 

なっ!?ヨシュア…貴様裏切ったのか!?(違)

 

「さあ、逝くわよ。みんな待っているんだし」

 

「ち、ちくしょぉぉぉぉ!!!…」

 

ジルに引きずられて行く俺の目に手を合わせて見送 るハンスが印象に残った

 

…帰ったら秘蔵本人VOL.2燃やし尽くしてやる…!

 

~講堂~

 

「へぇ…エステルにクローゼ。なかなか似合って る じゃない」

 

「えへへ…そうかな?」

 

「なんか照れくさいです…」

 

講堂には、すでに騎士衣装に着替えたエステルとク ローゼ、…+普通の格好のヨシュア

 

その三人が談笑している所に

 

「や~め~ろ~や~!!」

 

「さあ、全員ケイジを着替えさせちゃって~」

 

『サーイエッサー!』

 

男子生徒全員に担がれた縄で拘束されたケイジが連 行されてきた

 

そしてそのまま奥の更衣室に連れて行かれて

 

「ちょっ!?待て!お前ら落ちつ…ぎゃあぁぁぁ ぁ !!!」

 

「だ、大丈夫かな…?」

 

「さ、さあ…?(ゴメン、ケイジ…)」

 

少し心配になる二人であった

 

~5分後~

 

『…会長~!準備完了で~す!』

 

「OK!じゃあ練習始めるわよ!」

 

ジルがそう言った事で更衣室の扉が開く

 

…超行きたくねぇ

 

しばらく渋っていたが、いつまでもじっとしていて も仕方ないので、扉を出る

 

始めに目に入ったのは、唖然としているエステルと ヨシュア、それと何故か見とれているバカ共(クロ ーゼ含む女子全員)だった

 

「嘘…ケイジ…?」

 

「相変わらず見事ですね…」

 

「…………」

 

ヨシュア、無言はキツい。主に俺の精神が

 

「チクショー、そんなにおかしいか!笑えよ!笑 えばいいだろバカヤロぉぉぉぉ!!!」

 

「(あ、ケイジが壊れた)」

 

暫くとち狂っていたが、少しすると落ち着いて、だ んだん色々恥ずかしくなってきた

 

「落ち着いた?」

 

「…見苦しい所をお見せしました…」

 

「よし、今度こそ始めるわよ!」

 

…せめて気持ちを切り替える時間が欲しかった…

 

それからかなり本格的な練習が始まった

 

余談だが、紅騎士の役が決まってなかった事と、姫 役の俺が逃げ回っていた事で、メインの練習が一切 できなかったらしく、脇役のみんなの完成度が異常 に高かった

 

…今回やる劇は『白き花のマドリガル』

 

簡単に紹介すると、平民の蒼騎士オスカーと貴族の 紅騎士ユリウス…この二人が国の姫のセシリアに恋 をしてしまう

 

その二人の恋をそれぞれの上役達が政治的に利用し ようとして、ゴタゴタに巻き込まれると言う話だ

 

…最後は結局ハッピーエンドの大団円だがな

 

そしてその日の練習が終わり…

 

「………」orz

 

「ケイジいつまでへこんでるんだ?」

 

「あはは…」

 

ヨシュアは元々三人部屋だった事もあり、俺とハン スの部屋に泊まる事になった

 

「でも何かいいね…」

 

「…?何がだ?」

 

「いや、僕はロレントにいた時に同期くらいの年 の男がいなかったから…何か羨ましいなって…」

 

ヨシュアが少ししんみりした様子で言う

 

…ヨシュア、ハンスの前で、特にお前みたいな奴は それを言うと…

 

「はあ!?お前本気でそれ言ってんのか!?」

 

ハンスがキレるぞ…って手遅れか

 

「え?」

 

「エステルみたいなかわいい女子と一緒に旅する どころか一つ屋根の下で暮らしていたってのに…こ のモテない男の敵が!」

 

全くだ!(←モテているが本人が鈍感過ぎる所為で 気づいてないだけ)

 

「いいか!?大体お前は…」

 

何故か正座のヨシュアに説教し始めるハンス…中年 の酔ったオヤジかお前は

 

…そういや今の内にさっきの恨みを返しておくか…

 

俺は二人をよそにハンスのベッドの下を探り、小包 くらいの木箱を取り出す

 

それを窓から放り出して、ゆっくりと詠唱を始める

 

ちょうどいいから新術の実験台にするか…範囲と威 力を100分の1に絞って…

 

「…祈り来たるは浄化の炎界、願い来たるは暗黒 の 氷河…」

 

第一詠唱だけでも、木箱が燃え出し、その燃えた場 所から凍っていく

 

「其は回天を表す刹那の痛み…今我が元にて具現 せ よ」

 

「…だから…ってケイジ何してんだ…まさか!」

 

そのまさかだ!

 

「『アーククリムゾン』…砕けろ!」

 

「俺の秘蔵書がぁぁぁぁ!!」

 

ガクッorz

 

「さて、ヨシュア…俺からも言わせてもらえば… こ のリア充が」

 

「お前もな!」

 

復活はやいな…というか俺の何処がリア充だ

 

その後少し騒いでから俺達は寝た

 

それからはまた、騒がしくも楽しい日々が始まった

 

授業に参加したエステルがバカさ加減を発揮して、 ヨシュアが秀才っぷりを見せたり…

 

昼休みに6人で談笑しながら昼食をとったり…

 

放課後は練習をかなり頑張ったり… (ヨシュアは結 局メイド長の役に決まり、女装する 事になった。… ざまあ(笑))

 

あっという間に学園祭前日がやって来た

 

「ヨシュア、いたか?」

 

「いや…寮にはいないみたいだ」

 

「じゃあ講堂じゃないか?劇の最後の練習してる とか」

 

「ありえそうだな…行ってみるか」 講堂に行くと、 案の定練習をしていた二人がいた

 

「ここにいたのか」

 

「ヨシュア!?」

 

「ケイジまで…」

 

「(俺は…?)予行演習は終わったのにまだ稽古 を やってるとはな」

 

「決闘シーンいけそうか?」

 

「ま、任せなさいっての!完璧に演じてみせるん だから!」

 

「そっか…うん、楽しみにしてるよ」

 

…桃色空間を展開するのは止めて欲しい

 

「そういえば、三人はどうしてここに?」

 

「ああ…ヨシュア達が寮に泊まるのも今日で最後 だ からな。明日の前祝いを兼ねて夕食でもと思って な」

 

「ケイジにしてはいい提案だね」

 

「一言余計だ阿呆。…そういやジルは一緒じゃね ぇ のか?」

 

「ジルならさっき呼び出されたみたいだけど…私 、 呼んでこようか?」

 

「ああ、頼む。俺達は先に食堂で席を取っておく よ」

 

「じゃあ、行こうか」

 

「「がってんだ、大将」」

 

「だれが大将だよ…」

 

そうやってヨシュアをからかいながら、食堂に向か った

 

暫くして、食堂に来たクローゼ達とほどほどに騒い で、最後にソフトドリンクで乾杯し、寮に戻って早 めに寝た

 

…明日の劇が成功する事を祈って


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