『G』の日記   作:アゴン

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今回で漸くアフリカタワー編は終了。

次回からは再び日記形式に移ろうと思います。


その34

三つの軌道エレベーターの一つであるアフリカタワー。人類の英知の結晶と知られるこの建造物とその周辺地域が今、未曾有の危機に瀕していた。

 

アフリカタワーの半壊、それによって大量のピラーがタワーよりパージされ、地上へと降り注がれる。

 

大気圏外からのピラーは大気圏によって燃え尽きるがそれ以外のピラーは健在している為、タワーの周辺地域には無数の瓦礫の雨が降り注がれる事になる。

 

その地域にはタワーに勤める従業員やその家族達が多く住んでいる区域もある。突然の事態にパニックと化した住民達は軍の誘導の下、速やかに避難を開始した。

 

そんな事態を目の当たりにし、被害を最小限に食い止めようとZEXISもこれに参加。航空可能な機体のみという制限された場所でピラーに対する防衛行動が開始される。

 

『くそう! 数が多すぎる!』

 

『泣き言を言う暇があったら一つでも多くピラーを落とす! この下にはここに住む人達の帰る場所があるのよ!』

 

『分かってるよ!』

 

だが、そんな彼等も無数のピラーの前に徐々に追い詰められていた。撃ち落としても次の瞬間には現れる大量のピラー、一つでも落としてはならないと思えば思うほど精神的に追い詰められる彼等は、通常の戦闘の倍以上疲弊し、破壊しても破壊しても出てくるピラーの数に苦戦を強いられていた。

 

『ZEXISが、ガンダムが目の前にいるのに、何でこんな事を……!』

 

『ぼやいてんじゃねぇぞ准尉! 俺達軍人は民間人を守るためにいるんだろうが!』

 

『は、はい!』

 

そんな中、意外な存在が彼等の援護に出て来た。本来なら敵対する立場であった部隊、“アロウズ”少人数とはいえ彼等がピラーを破壊する為に戦う様は、ZEXISの面々には大きな衝撃を与えた。

 

そして正規軍もピラー破壊の援護に回り、その中には“ガンダムエピオン”を駆るゼクス=マーキスの姿もあった。

 

『これ以上、地上はやらせはせん! ZEXIS、今は何も言わず共に戦場に立たせて欲しい!』

 

『すげぇ、世界中から応援が駆けつけてくるぞ!』

 

『これなら、ピラー破壊の漏らしもなくなりそうかも!』

 

『ディアナ様、一度この場で月光蝶を使いましたが、今回はもう使用する事はないようです』

 

──タワー崩壊の危機という未曾有の大災害を前に皮肉にも一つに纏まりつつある世界に、ZEXISは言いようの無い気持ちの高ぶりを感じた。

 

このままならピラーの全破壊も可能かもしれない。そう思われた時、漆黒の悪意が防衛戦に姿を現した。

 

『はぁーい♪ フラフラちゃんとZEXISのみんなー、元気にしてたかなー♪』

 

『マリリン! テメェ何しに来やがった!?』

 

『そんなの決まっているじゃない。都合の良いときにだけ手を組んじゃうお馬鹿な貴方達に対する───お邪魔虫よん♪』

 

無数の次元獣と共に姿を現したパールファングとマリリン=キャットの乱入に、元部下だったクロウが叫ぶ。怒りを露わにする彼を邪悪な笑みで以て応えるマリリンは次の瞬間、宣言通りピラー破壊の妨害を開始した。

 

次元獣とインサラウムの無人偵察機による妨害攻撃、唯でさえピラー破壊に手が放せないZEXIS達は横からの攻撃に対応仕切れず、幾つもの攻撃に直撃してしまい、瞬く間に危機に陥ってしまう。

 

『テメェ! いらねぇ邪魔してんじゃねぇよ!』

 

そんなマリリンに怒りを爆発させ、突撃してくる機体があった。アロウズに自ら志願する事で大切な人を守ると決めた元AEUのエース、パトリック=コーラサワーだ。

 

ピラーを破壊しながらパールファングに肉薄するコーラサワーのジンクス、まさか格下相手から攻撃を受けるとは思わなかったとマリリンはその涼しい表情を憤怒の色へと変貌させる。

 

『雑魚風情が、粋がるんじゃないよ!』

 

『ぐぉっ!?』

 

『死んじゃいなぁ!』

 

ランドスピナーで機体の腕を切り落とし、体勢を崩された所へ足蹴にされた事でコーラサワーは地上へと落下する。が、彼も破界事変を生き残ってきた猛者だ。それが運であれ自身が生き残る為の術は体の奥底に染み着いている。

 

擬似太陽炉を稼働させ、機体の姿勢を安定させる。どうにか窮地を脱したかと思われた瞬間。

 

『ギシャァァァァッ!!』

 

『っ!?』

 

目の前にブルダモン級の次元獣が迫っていた。その口を開き、凶悪な牙が迫り来る中、僚機達からの声が聞こえてくる。

 

『少尉!』

 

(や、やべぇ! 俺、ここで死んじまうのか!? まだ大佐とキッスもしてないのに!)

 

死の間際に思い浮かぶのは最愛の人、あの眼鏡の奥から見える綺麗な瞳に惹かれて今日まで生きてきたのに……。

 

不死身のコーラサワーもここまでか、想いを寄せているカティ=マネキン大佐に心の内で愛を叫んだ時。

 

──空から、光の槍が降り注いだ。

 

『『『『っ!?』』』』

 

コーラサワーに迫っていた次元獣も周囲のピラー諸共貫かれて爆散していく。その突然の光景にその場にいる誰もが一瞬言葉を失うが、ZEXISだけは光の槍を放った者が誰なのか察することができ、無意識に上を見上げた。

 

『こんな時にこんな所に、一体なにしに来やがった!』

 

『蒼のカリスマ!』

 

落下してくるピラーの群から姿を現す蒼の魔神“グランゾン”と蒼のカリスマ。彼の登場に誰もが注目するが……。

 

『私に気を取られる暇があるのですか?』

 

『何っ!?』

 

『今は口ではなく手を動かしなさい』

 

まるで此方を意識していない言動にZEXISの何名かは不満を露わにしているが、蒼のカリスマが言うように今はピラーの破壊が最優先。

 

それぞれがピラー破壊の防衛に回る中、グランゾンに無数の次元獣が押し寄せてくる。

 

『アッハッハッハァ! こんな所で出逢うなんて奇遇ねぇ魔神ちゃん。リモネシアでの借り、ここで返させてもらうわ!』

 

次元獣の群の隙間から見える黒い機体に蒼のカリスマの心中が冷たくなる。だが、今はピラーの破壊が何よりも優先されるこの場において奴に拘るのは拙い。

 

そう思いながらグランゾンの胸部を展開し、周囲に幾つもの空間の穴を開くと……。

 

『ワームスマッシャー、発射』

 

その穴に散らばるように光を何度も放ち、次の瞬間……。

 

次元獣を含め、落下してくるピラーの大半が光の槍によって貫かれた。

 

『……は、はぁぁぁぁっ!?』

 

『何だ……今の!?』

 

『奴が、やったのか!?』

 

落下してくるピラーの枚数は大小含めて数万はくだらない数があった。それがたった一度の攻撃で過半数が消滅した事実にZEXISは勿論、敵味方を含めた全員が戦慄した。

 

これが魔神の力、そう思いながら今も降ってくるピラーに対応する彼等は、再び信じられないモノを目の当たりにする。

 

『───重力干渉による誤差修正、ターゲットマルチロック……ワームスマッシャー!』

 

再び放たれる閃光、それと同時に万を超えるピラーを一度に一斉に破壊し、消滅させていく。

 

その光景に半ば呆然としながらも、ZEXIS達は続行してピラーの破壊とインサラウムの尖兵であるマリリンの対応に集中するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピラーの破壊を開始して一時間。全てのピラーを破壊し終えた自分は仮面を外し、額から流れる汗を拭って一息入れていた。

 

あれから次元獣とインサラウムの連中もどこかへ消えていったし、被害も最小限に抑えられた事で自分は半分気が抜けていた。

 

というのも、連続してワームスマッシャーのマルチロックシステムを一度に何度も使用した為、それによる精神疲労が今回一番キツかった。

 

65000を超える標的に同時攻撃が可能なグランゾン。それらを四回も連続して使うとなると重力誤差による修正とか、周囲の機体を巻き込まないようにする為の計算等で大忙しな為、状況も合わさって精神的疲労が半端ないのだ。

 

尤も、それは自分がグランゾンを扱うのにまだ未熟なだけなのだが……やっぱシュウ博士は平然な顔をして何度もワームスマッシャーを撃てたりするのかな? そりゃあの人がグランゾンを操れば地球も消滅するよ。

 

改めて思い知るシュウ=シラカワという人物の凄まじさに驚嘆を覚えていると、周囲の機体の何れかから通信が入ってきた。仮面を被り直してモニターに通信回線を開くと、破界事変で一緒に戦った事のあるパトリック=コーラサワーの笑顔が飛び込んできた。

 

『よぉ蒼いの! 久し振りだなー。今回はお前の援護に助けられたよ。サンキューな』

 

『いえいえ、此方も貴方の支援攻撃は大変助かりました。流石は元AEUのエース、マネキン大佐も鼻が高い事でしょう』

 

画面の向こうでイヤーと照れるコーラサワーさん。うん、ホントいい人だよねこの人。アロウズは今の所外道な連中しか見かけてないからアレだけど、コーラサワーさんの様な人もいるのなら彼等に対する考えも少し改めた方がいいのかもしれない。

 

つーかこの人ホント腕がいいよね。此方がピラーを破壊する為のロックに時間を割いている中、近付いてくる次元獣を的確に迎撃してくれるし、しかもそのお陰で自分は余計な迎撃行動を取る事もなく、スムーズにピラーの破壊に専念できたのだから。

 

破界事変の頃もその実力と強運で何度も修羅場を経験しながら無傷で生き抜いたというし、ある意味キリコさんと同じレベルの人間だよね。本当尊敬するわ。

 

と、そんな仕事終わりのサラリーマンの様な会話を暫く楽しんだ後、近付いてくる機影が確認された。何だと思い振り返ると、二体のアロウズの機体が此方に銃口を向けていた。

 

『蒼のカリスマ! 今回の惨劇はお前が引き起こしたものなのか!?』

 

『…………』

 

物凄い剣幕で怒鳴ってくる声に思わず声が詰まる。……正直に言えば、今回の騒動に置いて自分の立場はイエスともノーとも言える微妙な所なんだよね。

 

だってハーキュリーさん達に事の占領後にあれこれ指示したのは事実だし、アロウズの戦略兵器の場所を特定する為にワザと撃たせた事もある。グランゾンで攻撃を防ぐ手もあったけどそれでは相手に次の行動を許してしまうし、低軌道ステーションに残した市民達を戦闘に巻き込んでしまう危険性があったのでこの案は断念した。

 

結果的に被害らしい被害は出なかったが、今回の騒動の一因は自分にもある為に目の前の人からの追求に強く反論する事は出来なかった。

 

そんな時、今まで音信不通だったインカムから通信の音が鳴る。捨てるのも抵抗があったので持っていたのだが、まさか連絡が来るとは思わなかったので突然の発信音に驚きながらインカムを手にして見ると……そこから聞こえてきたスミルノフさんの連絡に自分は一つ名案を思いついた。

 

案と言っても大した話ではない。スミルノフさんの報告を目の前の彼等に伝わるよう話すだけだ。

 

『……セルゲイ=スミルノフ。彼は今フロンティア船団に民間人の救援を要請し、今船団に民間人と共に保護をしてもらっている所です。真実を知りたいのであれば彼の話を聞くといい』

 

『アイツが、父が関わっているのか!? 今回のテロも父の友人が首謀者だと聞くが……まさか父も!?』

 

『信じる信じないかは貴方次第です。尤も、そうやって物事を決めつけるようでは到底真実には辿り着けないでしょうが……』

 

『何だと!?』

 

『恒久平和。確かにそれは人類が目指すべき一つの到達点、それを大儀と掲げるあなた方はさぞかし崇高な理念で動いているのでしょう』

 

『貴様、何が言いたい!?』

 

『覚えておきなさい。理念も理想も所詮は人が生み出したモノ、何が正しくて間違っているなど、人の数と視点、解釈でどうとでも変わるのです。精々偽りの世界に呑み込まれないよう気を付ける事ですね』

 

 さて、らしい事をいって挑発した所でそろそろ自分もこの場から離脱する事にしよう。そういってグランゾンのバーニアに火を噴かした瞬間、通信が突然入ってくる。

 

通信先は……Ζガンダム。カミーユ=ビダンからの秘匿回線通信だった。

 

『待ってくれ蒼のカリスマ……いや、シュウジ=シラカワ! 何故お前が今回の騒ぎに介入した! お前が出て来たのはもしかして衛星兵器の完全な破壊が目的なんじゃないのか!?』

 

『……アムロ大尉に宜しく伝えて下さい。彼のお陰で私も自分の不始末を拭う事が出来ました』

 

『───っ! やはり、お前は!』

 

『では、ご機嫌よう。……リモネシアの皆を、宜しく頼む』

 

ほんの僅かなやりとりの中、最後に出した自分の言葉にカミーユ君の目が大きく開かれたのを見て、俺は仮面の奥で笑みを浮かべながらグランゾンと共にアフリカタワーを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後に、アフリカの悲劇と呼ばれるこの出来事はアロウズの情報操作により、蒼のカリスマただ一人に仕向けられた事だと報じられ、全ての罪が彼に向けられる事になる。

 

大半の人々がその情報に踊らされる中、当時低軌道ステーションで人質となっていたある子供だけはとあるメディアからの取材を受けた際、そんな事はないと頑なにその事実を否定した。

 

『魔人さんはね、かくれんぼが得意なの!』

 

そう言ってとある週刊誌に記載された子供の背景には、ダンボールで作られた魔神の姿があった。

 

また、今回の騒動の後でアロウズのアンドレイ=スミルノフの行方が不明になり、現在行方を捜査中。時同じくして軍を抜けたセルゲイ=スミルノフもその後行方を眩ませており、関連性を詳しく調べている模様。

 

 

 

 

 

 

 




今回の件でカミーユ君の主人公に対する印象が大分変わったかもしれません。

ここにアムロ大尉も来れば……主人公遂にボッチから脱出か!?

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