『G』の日記   作:アゴン

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今回、やっと主人公の名前が明らかになります。


その3

 

 

○月C日

 

何とか無事にブリタニアの包囲網の突破に成功して、更に数日。自分は現在、暗黒大陸と呼ばれる未開拓の大地を踏み締めている。

 

時空振動の影響で次元の断層によって阻まれていた大地なんだけど、なんか以前起きた次元震の所為でその断層がなくなったぽいんだよね。

 

本当はグランゾンの力でこじ開けるつもりだったのだけれど……まぁグランゾンを無駄に消費させる事もなくなったからこれはこれで良かったんだけどね。

 

しかし、次元震が起きただのクロヴィス暗殺の真犯人ゼロの出現だのと、ホントこの世界は目まぐるしく回るよね。

 

その間自分は来もしない追っ手の軍の影にビクビクしながらも、ゴウトさんから渡された賃金でちまちまと食いつないでいました。

 

その中でふとした拍子に露店で買ってしまった一品がある。それは───仮面だ。

 

万が一機体から降りた際に人に見られては事なので正体を隠すために買ったものなのだが……これ、細部とか微妙に違うけどぱっと見ゼロの仮面と似てるんだよね。

 

顔全体を覆い隠せるフルフェイスなタイプの仮面はこれしかないから仕方ないが……ゼロはよくこんなの被っていられるよな。中はスッゲームシムシするし、長時間被っていると汗だくで目が染みる。

 

もしかしたら彼はこれに自分なりのアレンジを加えているのかも……顔の一部が開いたり出来るみたいだし、案外その辺りは彼自身の手製だったりして。

 

そして今、ブリタニア側はクロヴィス殿下が暗殺された事実以外特に目立った情報は流されていない。グランゾンの存在が明るみに出ていないのが逆に不気味さを漂わせているが、ここはグランゾンと自分の存在が明るみに出なかった事を安心して前向きに受け入れる事にしよう。

 

ただ、この世界には色々とくせ者が多くいそうだから気を抜くことは出来ない。だからこそ逃亡先としてここ暗黒大陸を選んだのだ。

 

……だが、かれこれここを探索して数時間。目にしたものは広い荒野と時折見かける森林や湿地帯程度で人の存在は未だ確認出来ていない。もしかしたらこの大陸に人は住んで────(日記はここで途切れている)

 

 

 

○月T日

 

……やっちまった。あれほどグランゾンで無意味に戦う事はしないと誓ったのに、とうとうそれを破ってしまった。

 

日記を書いている途中、いきなり攻撃してきた複数の機体に思わず反射で攻撃してしまった。

 

“グランビーム”グランゾンの持つ武器の中でも最弱の威力とされる兵装だが、襲ってきた機体を纏めて貫く程に高威力で馬の顔をしたロボットは花火の様に爆散。残った他の機体達はそんなグランゾンを恐れてそそくさと逃げていった。

 

その事にコックピットで盛大な溜息を吐き出して安堵するが、これでいよいよマズい事になった。

 

もしこの世界にシュウ博士がいたら自分はなんと言って詫びればいいのだろう。元の世界に帰るにはシュウ博士の協力も仰ぎたかったのにこれでは自分の望む状況と全くの真逆に突き進んでいるようだ。

 

……少し落ち着こう。大丈夫、シュウ博士は本来穏やかな気質の人って言われているし、事情を話して真摯にお願いすればあしらう事はあっても無碍にはしない筈。

 

それに無抵抗でやられたとあってはシュウ博士とグランゾンの名に傷が付くかもしれないし、今回は自己防衛として納得する事にしよう。

 

やや現実逃避に思われるが、そうでも思わないとやってられないのが今の自分の心境である。

 

そして一度破ってしまえばそれはもう誓いでも何でもなくただの拘りでしかない。だったら下手に戦う事を否定せず、自身の身に危険や脅威と見なしたモノが迫った時、ある程度抵抗する事も辞さない事にしよう。

 

先ほども述べたがここは色々と厄介な世界のようだ。どこで誰が見ていたり利用しようと考える輩がいるかも分からないし、今後はもう少し警戒心を持って考え、行動する事にしよう。

 

 

 

 

○月W日

 

漸く人に会えた。丸二日も探して見つけた村はリットナー村と呼ばれる集落だった。最初こそはいきなり現れた余所者の自分に酷く警戒されていたがダヤッカと呼ばれる村長とリーロンさんと話すと途端に受け入れてくれた。

 

長い間次元の壁で閉ざされていた世界の中で、幾度となく“ガンメン”と呼ばれるロボットと戦ってきた事で、外からやってきた自分に過剰に反応してしまったの事。

 

自分もいきなり襲われたりしたから気持ちは分かるし、何よりいきなり自分のような見知らぬ輩が村に近付いたのであっては彼等の境遇からして仕方ない事だと思い、気にしなくていいと言うとそれを皮切りに村の人達とも仲良くなれた。

 

ただ、リーロンさんに必要以上に迫られた事が怖かった。確かに外から来たとされる自分に何らかの興味を抱くのは分からなくもないが、此方をみながら微笑まないで欲しい。

 

あれ完全に人を見る目じゃねーよ。研究対象を見る目だよ。

 

あ、蛇足だがここに来る前にグランゾンはキチンと隠しました。リットナー村から少し離れた谷に座らせる形で待機させています。

 

ただでさえガンメンにピリピリしている村なんだ。ここでグランゾンを見られたら大騒ぎになることは確実だ。

 

リットナー村の皆さんに見つからないよう祈りつつ、自分も寝ることにする。

 

 

 

 

□月J日

 

ダヤッカさんの所で寝泊まりしていた自分の所に、綺麗な女の子が起こしにきた。彼女はヨーコ=リットナーと名乗り、ココにいる以上自分にも働けと言い、近くの湿地帯に狩りの付き添いを命じてきた。

 

いや、そりゃ俺も何かしら手伝いたいとは思ったよ? けどさ、幾ら何でも野生の動物相手にいきなり狩れというのは無理だと思う。

 

つーかこの大陸の動物不思議過ぎ、葡萄の体をしたカバとか見たこと無い生き物ばかりなんだもの、生物界の学者さん達コイツ等見たら卒倒するんじゃね?

 

そして大した役にも立てずに狩りは終了。ヨーコちゃんから言われた「アナタ、もう少し鍛えた方がいいわよ」発言に地味に傷つきながら今後自分も何かしら鍛えた方がいいかなと思い、今日の所はこれで終わりにする。

 

それにしても、ヨーコちゃん達を見ていると何か忘れているような気がするが……まぁ気のせいだろう。

 

 

 

□月H日

 

俺は今、二日振りにグランゾンのコックピット内で日記を綴っている。

 

ここでの生活にも慣れ始め、ヨーコちゃんの狩りの手伝いやリーロンさんの機械弄りに参加してこの村でも段々と仲間と認められてきた頃、奴等は現れた。

 

“ガンメン”編隊を組んでリットナー村に襲撃してきた奴等を今はヨーコちゃん一人で何とかくい止め、村へ近付けさせないよう遠くへ誘導している。

 

ヨーコちゃんに追い付くため、そして助け出す為、俺は再びグランゾンを駆る。

 

今度は反射的にではなく自分の意志で戦う。だが覚悟は持たない。俺が今すべきは襲い来る脅威を速やかに排除し、出来る限り早く事態を終わらせる事である。

 

覚悟など持たない。覚悟なんぞ何故奴等に対して持たなければならないのか……これが俺の意地だと理解し、今日の日記はこれで中断させて貰う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、アニキ~! 数が多すぎるよ~!」

 

「ちっ! 待ち伏せとはしゃらくせぇ真似しやがって!」

 

広大な荒野に飛び出た二人の男と地上からやってきた一人の少女、襲いかかって来た巨大なガンメンを地上から飛び出した拍子に撃破に成功するも、そこで待ち受けていた更なる巨大ガンメンの軍勢に穴掘りの少年は既にその心は折れていた。

 

「もう少し頑張って! 今シュウジの奴が村の皆を呼びに行ってるから!」

 

「あぁん? 誰だそいつ?」

 

「うちの村の居候! アタシと違って正真正銘、外からの来訪者よ!」

 

少女の言葉に男はへっと鼻で笑う。だがそれは彼女に対する嘲笑ではない。未知の世界が確実に存在する事に対しての歓喜の笑みである。

 

故に、男は高々と目の前のガンメン達に向かって吼えた。

 

「おうおうおうおうおう! そこでデカ面晒しているガンメン共! さっきから俺達を見下しやがって、俺達を誰だと思っていやがる!」

 

絶体絶命な状況に対し、一歩も引こうとしない男に少年とヨーコは絶句する。まるで恐れを知らない豪気な気迫、その堂々とした佇まいにガンメン達は呆気に取られ、少年とヨーコ同様言葉を失っていた。

 

だが、そんなものは次にガンメンが動き出すまでの時間稼ぎでしかなかった。手にした巨大な棍棒が振り上げられ、少年達に向かって振り下ろされようとしたその時。

 

ソイツは現れた。

 

「な、なんだぁぁっ!?」

 

突然横から現れた蒼いナニか。それがガンメンを吹き飛ばした時、流石の男も驚きの声を上げる。

 

蒼いソレが目の前に降り立つと、少年達は絶句した。

 

蒼く、深い巨人。まるで魔神の様な禍々しさに穴掘りの少年は自身の体の震えが止まらなかった。

 

逃げなければ。そう少年の本能が囁くが、目の前の魔神の所為で指一つ動けはしない。

 

ここまでか。ヨーコが手にした超電導ライフルを手に最後の悪足掻きをしてやろうかと思い立った時、魔神は少年達とは予想外の行動に出た。

 

魔神は倒れたガンメンを鷲掴みにすると、他のガンメンに向かって投げつけたのだ。

 

なんという力、魔神のその体躯に似合った力に驚くが次の瞬間、彼等は度肝を抜かれる事になる。

 

魔神の額が光ったと思った瞬間、魔神の額から一筋の光が放たれ、ガンメン達を諸共吹き飛ばし、撃破してしまったのだ。

 

残されたガンメンは魔神の力に圧され、蜘蛛の子を散らすように撤退、少年達は訳が分からないまま目の前の魔神に助けられた事となった。

 

だが、その事実に納得できない男がいた。地下のジーハ村出身、カミナである。

 

「おいお前! 一体どこの野郎だ! 外の世界じゃお前みたいのがうじゃうじゃいんのかよ!」

 

「ちょ、アニキ!?」

 

「何やってんのよアンタ!?」

 

突然のカミナの行動に驚愕する少年とヨーコ、必死に止めろと言ってはいるが、それでもカミナのキラキラと輝く好奇心を止める事は無かった。

 

魔神と向き合うこと数十秒、すると魔神は少年達に興味がなさそうに踵を返すと、背中から紫炎の炎を噴かせ、瞬く間にその場から去っていった。

 

取り残された少年達。逃げられた事に騒ぎ立つカミナを抑えながら次に彼等が出くわしたのは“ソレスタルビーイング”と名乗る外からの来訪者達だった。

 

 

 

 

 

 




果たして、主人公はラスボスの栄冠を手にする事が出来るのか!?(えっ?

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