『G』の日記   作:アゴン

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暇潰しになってくれたら幸いです。





その223

 

 

 

「………聞き間違いかな。今君は私を神と呼んだのかな?」

 

『はい。御身は我がジルクスタン王国にとって最大の恩人であり、我等の神。手前勝手ではありますが、今はそう呼ばせて戴きたい』

 

聞き間違いかな? 半ば現実逃避のつもりで訊ね返すが、返ってきたのは肯定の言葉。その声色からまだ成人にも満たない子供であろう少年の台詞に蒼のカリスマは憤慨や敵意以上に強い呆れを覚えた。

 

『我等が神、蒼のカリスマよ。どうか私達の国へと足をお運びください。どうかその力で我等を未来へ導いて欲しい』

 

「───勝手な事を言いますね。私の名を騙り、偽り、無関係の人間を騙して酷使していた君達に今さら協力しろと? いやそもそも、何故私を神と呼ぶ。そこまで私を神格化させたい理由はなんだ?」

 

『お怒りはご尤も、しかしどうか聞いて戴きたい。本来ならば蒼神教はあのような兵器開発の工場拠点ではなく、純粋な神殿として活用するつもりだったのです』

 

「では、あの様は一部の者達による暴走だと?」

 

『誠にお恥ずかしい限りです。私がここへ訪れたのも御身のお迎えと同時に指示を履き違える者達に制裁を加える為なのです』

 

目の前のKMFに乗る少年だと思われる子供の言葉に蒼のカリスマは自身を奉る神殿の様相を思い浮かべてゲンナリと精神的に疲労感を覚える。一部の部下達による暴走、その粛清の為に単機でここへ訪れたと語る少年に蒼のカリスマ───シュウジは一応その言葉に嘘はないと察した。

 

言葉を鵜呑みにするわけではないが、ゲイツとベルクが死した今、蒼神教に関する情報を知るには目の前のKMFから得るしかない。

 

「───それで、そのジルクスタン王国が私に何のようだ? 恩人、と君は言っていたが私はそんな記憶はないのだが?」

 

『………無理はありません。あの時、貴方は私達を省みる程の余裕は無かったようですから』

 

何処か達観の混じった声にシュウジは訝しむ。まるで自分と目の前の少年は何処かで出会っているかの様な、当時の自分の事を知っているかの様な口ぶりにシュウジは些か以上に興味を抱いた。

 

そして、KMFのハッチが開かれる。通常とは異なる作りをしているKMF、コックピットというよりそれはまるで人を無理矢理生かしている生体ポットの様なそこから現れるのはパイロットスーツ越しからでも分かる程に痩せた体躯の少年。バイザーを付け、全身に管を指した少年が浮かべるのは満面の微笑みだった。

 

その顔にシュウジは何処か既視感を覚える。

 

「────君は」

 

『僕を覚えていますか? 僕はシャリオ、嘗て貴方と貴方の相棒に命を救われた者です』

 

その言葉にシュウジは嘗てとある街で起きた僅かな戦いの出来事を想起する。

 

それは当時、とある街で起きた悲劇。ガイオウとアイム=ライアードが率いるインペリウムが世界中を破界しようと次元獣をけしかけ、大小問わず多くの国々が滅び、統合を繰り返してきた。ジルクスタン王国もその一つで戦うことを生業としている兵士達だが、それでも次元の力を有する獣相手に優勢に立ち回る事など出来はしなかった。

 

燃え盛る街並み、圧倒的な力で暴れ回る次元獣。その力に為す統べなく他の小国と同じ末路で終わるのだと戦場に出たシャリオと遠くでそれを眺めていたその姉も悟った時────彼等が現れた。

 

グランゾン、そして蒼のカリスマ。最大最強にして最悪のテロリスト。素性も目的も一切不明な彼が街で暴れ回る次元獣を粉砕。正しく、鎧袖一触だった。

 

その様を見せ付けられたシャリオは病で悪くなった視力をフルに使ってその姿を脳裏に刻み、その姉もまた荘厳とさえ思えるグランゾンの姿に控えていた。あれこそが戦いを全てとするジルクスタンが信奉する神なのだと。

 

それから、ジルクスタンのトップである二人は蒼神教なる宗教を設立し、その影響を少しずつ国内に広めていった。結果、ジルクスタンは蒼のカリスマとグランゾンを信奉する宗教国家となり、国民は戦いに対して神聖視すらするようになった。

 

蒼のカリスマ────シュウジもまた思い出す。確かに自分はインペリウムの放つ次元獣を倒し、その途中で次元獣の群れに襲われている街を見付け、そこに武力介入した事。多くの機動兵器が倒れる中、これ以上暴れさせてやるものかと次元獣をいつもより多く屠った事、その出来事全てが思い起こさせる。

 

「君は、そこにいたのか」

 

『はい。僕はあの時貴方に………蒼のカリスマによって救われました。圧倒的な力で、ジルクスタン王国を守ってくれました』

 

「───私は、別に救うつもりはなかった。ただ次元獣に、インペリウムの好きにさせるのが癪だったから、一方的に介入しただけだ」

 

『それでも、僕達はあの時滅びずにすみました。蒼のカリスマ、我等が神よ。どうかその力を以て我々の行く道を巫女と共に照らして欲しい』

 

そう言って深々と頭を下げてくる少年に蒼のカリスマは掛ける言葉を見失う。もしかしたらこれは自分の不手際かもしれない、と。

 

あの日、あの時あの現場に出会せず、武力介入しなければ、こんな事になることはなかったかも知れないのに。でも、例えそうだとしても当時抱いた自分の気持ちもまた、否定する要素はない。

 

ならば………と、シュウジは仮面の奥で溜め息を溢し、自身のやるべき事を見いだす。

 

「………良いでしょう。ならば、連れていくと良い。君達の神になる気など毛頭ないが、私には関わった以上最低限の責任を果たす義務がある」

 

『っ! ありがとうございます』

 

「ただ、ここで暴れていた連中の身柄はロシウ君達に預からせて貰う。君達の民とは言えここは新大陸、無関係な人々を貶めた償いをさせる必要がある」

 

そう言って蒼のカリスマは未だに空で滞空しているMSを始めとした起動兵器に乗っているベルクやゲイツの部下達を睨み付ける。既に彼等の戦意は先の二人が死去した事で根っこからへし折られており、蒼のカリスマが相手という事で残党達は反意を見せる事なく投降、機動兵器から降りた後はグリンダ騎士団によって身柄を拘束される事になる。

 

そんな彼等を目にした後、蒼のカリスマはシャリオの操るKMFの掌へと乗り込んでいく。その様子をヨーコは呼び止めようとするが、その声が彼に届くことはなかった。

 

何故なら。

 

「ヨーコ=リットナー、アンタの腕を見込んで一つ頼みがある」

 

「貴方は………」

 

「俺はオルフェウス。アンタさえ良ければジルクスタン王国への侵入に護衛として雇われて欲しいんだが……」

 

ヨーコが静止の言葉を口にする直前、それはいつの間にか隣にまで来ていたオルフェウスによって止められる。彼の口から出される提案、一瞬迷うヨーコだがその間にも蒼のカリスマことシュウジはKMFと共に空へと昇っていく。

 

(……どうして、貴方は何も言わないの? どうして私に、私達に何も言わないで一人で行動するの?)

 

ずっと、彼はそうだった。辛い時も弱味を見せず、敵に洗脳されかけた時も必死に自分を偽り続けてきた。苦しい筈なのに、決してその事を口にはしない彼がヨーコにはどうしても我慢ならなかった。

 

故に、彼女は決断する。

 

「いいわ。その提案乗らせて貰うわ」

 

「そうか、有難い」

 

「でも、その前に一つ良い? もう一人、この件に絡ませたい友人がいるの」

 

その笑顔は何処までも無邪気だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ジルクスタン王国。荒野と海に囲まれた国、資源が乏しく、サクラダイトという科学燃料と子供を兵士として育て、それを輸出品と称して各地の内紛に送り込む世界屈指の傭兵国家。

 

そんな国家の信仰心が厚いのは偏に一人の女性によるもの。“予言の巫女”、度重なる国家の危機をその類まれな予知能力によって回避、ないし乗り越えてきた傑物。

 

そんな彼女の座する玉座に一人の仮面の男が通される。蒼のカリスマ、未だに世界から恐れられている最凶のテロリスト。彼を知る他の国々からはなまはげの如く恐怖の象徴として語られており、あのオーブですらコメントを控える程の怪物。

 

対してそんな人物を前に玉座に座る巫女は微笑みを浮かべる。漸く会えた。漸く巡り会えた。度重なる“やり直し”の中で漸く彼女は目の前の魔人と出会えた。

 

「初めまして、蒼のカリスマ。この度は我が国に訪れて下さり、誠にありがとうございます」

 

「─────」

 

余りの喜びに思わず声が上ずってしまうが、それに対して目の前の仮面の男は何処までも冷たい。けれどそれでいい、それでこそだと女は笑みを深める。

 

「我が大恩の君、蒼のカリスマよ。どうか我が望みを聞き入れて欲しい」

 

「………望み、だと?」

 

長い金の髪を靡かせ、玉座から立ち上がり蒼のカリスマとの距離を縮めていく。一歩歩みを進める度に仮面の魔人からは凄まじい圧力を受けるが、今の彼女にはそれすらも心地よい。

 

「その対価に、全てを捧げましょう。私も、私の弟も、この国全てが貴方のモノとして献上致しましょう」

 

サラリと口にする女、彼女の言動に蒼のカリスマは何処と無く奴を幻視する。自分はおろかこの国全てを明け渡すと語る予言の巫女、破綻者とすら思えるその言動に蒼のカリスマは不快感を覚える。

 

さっさと断りを入れて、とっとと終わらせよう。口を開こうとする蒼のカリスマだが、それよりも速く巫女が言葉を紡ぎ。

 

「私の願いは唯一つ。私を妻として娶り、新たな世界でのジルクスタンの王となって戴きたいのです」

 

「ごめんなさい。タイプじゃないんで」

 

思わず、素の声でお断りをしてしまった。

 

 

 

 




皆さんは自宅にいるとき何をしてますか?

最近の自分の流行りは筋トレ。

腹筋を6LDKにしたい。







Q.もしもボッチがコードギアス(原作)にいたら?

「やぁシュウジ、今日も遊びに来たよ」

「いや、アンタ仮にも宰相だろ。良いのかこんなところに来て」

「ハハ、我がブリタニアを一晩で滅ぼして於いて何を言うんだい。私の興味を引いたんだ。存分に楽しませて貰うよ」

「滅ぼしてないから、ちょっとお宅の軍を半分くらい再起不能にしただけだから」

「いや、それ充分に滅ぼしてるから」



A.ボッチとシュナイゼルが仲良くなりなんやかんやあって世界が平和になる。


次回もまた見てボッチノシ


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