ホープス君、主人公に対して態度が違いすぎません?
蒼の地球から然程離れた位置ではない座標に巨大なワームホールが出現した。観測していた地球連邦政府からの報告を受けてワームホール出現の原因究明と対処をする事になったZ-BLUE一行は一度宇宙に上がることになった。
アマルガムとの決戦から然程の猶予もなく次なる戦場へ行く事になったZ-BLUE、故に裏切ったカリーニン少佐とアサキムをそのまま抱え込む事になった彼等は少なからず不安を抱いていた。
しかし、そんな彼等の不安とは裏腹にカリーニンは大人しくなっており、アサキムの方も蒼のカリスマことシュウジとの取引により怪しい動きを見せず独房で静かに沈黙を保っていた。
また、道中でニコラス=バセロンとシュウジとの間で諍いがあったと言う話があったが、当の本人達は特に変わった様子もなく普段と変わらぬ態度でいる。ただ一つ変わった事があったとすればニコラスの態度が以前よりも柔らかくなった事だが、彼の以前からの皮肉屋な態度には目に余っていた所だったのでZ-BLUEの面々は変わり始めた彼に敢えて追及する事はしなかった。
そんな多少のイザコザはあったものの、Z-BLUEは目標の座標に辿り着き各機戦艦から出撃していく。目の前に在る巨大なワームホール、その規模に目を丸くさせる一行は遠巻きに観察を続けた。
『ワームホール、というよりブラックホールだよな。アレ』
『でも、それなら超重力による重力崩壊の影響が出る筈だ。なのにそれが無いって言うのは……』
『このワームホールが、ただの
まるで空間を繋ぐトンネル。周囲を呑み込もうとせず、ただそこに在るだけの孔、物理法則を度外視して存在するワームホールにZ-BLUEは戸惑いを隠せずにいた。
『なら、私が消しましょうか? あれがワームホールだというのなら同じ重力を操るグランゾンが適任です。下手にいじればあの孔を巨大化させるだけになりますが、そうなれば最悪あの孔を消すまでですのでどうか皆さんは安心して───』
『『『やめろ』』』
『(´・ω・`)』
皆が手出しできない。ならばここは自分の出番だろうと相変わらずの善意全開で自己PRの様に提案する蒼のカリスマだが、Z-BLUE全員からの有無を言わさぬ拒否反応に蒼のカリスマは二の句も告げれずに押し黙る。
先のアマルガムとの………レナードとの決戦、そこで蒼のカリスマがやらかした事にZ-BLUEは否応なく理解した。この男は確かに他者に対して悪意や害意といった悪感情をぶつけるような下衆な事はしない。常に他人を思いやり、自分の出来ることを出来る範囲で手助けしてくれる姿勢は誰から見ても好印象に映るだろう。
しかし、彼はやり過ぎた。確かにあの局面で彼が追いつめられていたのに手助け出来なかった事は悔やまれるだろう。しかし、だからってアレはないだろう。
圧倒的という言葉にすら当て嵌まらない力、使徒やズール皇帝を一瞬で消滅させ、宇宙魔王やミケーネの神々の恐怖のドン底に叩き落とされた瞬間の引き吊った表情は当分忘れそうにない。
しかもその余波でレナードの野望は頓挫、彼の理想に呼応して一時は此方を裏切ったカリーニンは発見された直後、
最早戦略兵器すら凌駕しているグランゾンとその担い手、彼等の力を目の当たりにしたZ-BLUEは誓う。コイツに全力を出させてはならないと。出すにしても彼等の力に耐えられるだけの舞台が必要であるという事を彼等は骨身にまで思い知った。
敵を殲滅して尚余りある力、あの力をあのワームホールにぶつければどうなってしまうのか、考えたくもない事態を前にZ-BLUEはシュウジとグランゾンに手出しはしないで欲しいと釘を刺す。
Z-BLUEの、特にテッサの泣きながら止めてくださいという嘆願にシュウジは引きながら取り敢えずこの場では全力を出さない事を約束した。
口約束でもどうにか全力を出さない事を確約したテッサが安堵の溜め息を漏らしたその時だ。ワームホールの奥から銀色の金属体が出現してきたのだ。
それも無数、ワームホールを埋め尽くさんと溢れ出てくる金属群に初見の者達は戦慄する。
『なんだよ、ありゃあ!』
『そうか、アポロ達はまだ知らなかったな。あれは
『見ての通り、金属生命体と言うべき存在だ』
ELSと呼ばれる木星圏に現れた謎の敵性生物、有機物無機物問わずに対象を侵食し、同化させるという恐るべき能力を保有する金属生命体。
概要的に伝えられるELSの脅威、それを耳にした者達はそれぞれ危機感を抱き、緊張と集中力を高めていく。あんなモノ達を地球に向かわせたら地球に住まう全ての生命体は死滅してしまう。そんな最悪の事態を避けるべくZ-BLUEは行動に移った時。
『ん? あれって………』
こちらに向かって突き進んでくるELSの大群、それが以前カオス・コスモスから抜け出した際に木星圏で遭遇した奇妙な金属だと思い出した蒼のカリスマは隊列を守りながら前に出た。
ELSから見えるように身を乗り出したグランゾン、そんな重力の魔神の存在に気付いたELSは進行を停止、次に向きを変えてその場から離脱、地球圏から瞬く間に去っていった。
『な、なんだアイツ等?』
『逃げた……のか?』
『バカな、金属が逃げ出すなんて………』
『逃げた? ならELSには少なからず知性があるという事なのか? 知性があるのならコミュニケーションも可能になる』
『じゃあ、アイツ等はバアルじゃないのか?』
突然逃げ出したELSにZ-BLUEの面々は考察する。もしかしたら彼等はバアルではないのかもしれない。もしそうなら彼等とのコミュニケーション次第では戦い以外の道が開かれるかもしれない。夢みたいな話が現実味を帯び始めた事に誰もが興奮を隠せずにいた。
───尤も、ELSがグランゾンとシュウジを見て逃げ出した。という部分は誰も触れようとしなかったが。
一つの困難が去った事で浮き足立つZ-BLUEだが、事態はまだ終息してはいない。未だに消える様子の無いワームホール、そこから大きな力が脈動した瞬間、再び敵意が押し寄せてきた。
宇宙怪獣、人類に対して絶対的な敵意を見せる根源的災厄の襲来にZ-BLUEは今度こそ戦闘態勢に移行する。激突する両陣営、圧倒的物量を誇る宇宙怪獣を前に一歩も下がらないZ-BLUE、シュウジもそんな彼等の邪魔にならない程度にワームスマッシャーで援護射撃を続けた。
宇宙空間を埋め尽くす宇宙怪獣の群れ、それをマジンガーの光子力の光が貫き、ゲッターのトマホークが切り裂いていく。
ガンダムチームが弾幕を張り、KMFとスコープドック、ASが射ち漏らしを撃破していく。サイズの大きい宇宙怪獣にはバスターマシン達が対応し、戦場はZ-BLUEの優勢で進んでいた。
しかし、そこへバジュラ達が乱入。一度は歌を知り解り合った筈のバジュラの乱入により戦場はより混沌に広がっていく。もう一度歌を聞かせて解り合おうとするランカとシェリル、二人の歌に感化されたバサラが盛り上げようとした時、ノリコの視界にあるものが映し出される。
『あれは!?』
それは宇宙怪獣に襲われるマシン──ツインテール級のバスターマシン達だった。何かを大事そうに抱えている彼等を守るために庇うノリコとガンバスター、彼等を守ることに成功した彼女にバスターマシンは抱えていたモノと自らの心臓部分である縮退炉を受け渡し爆散。
『────ノリコ、待たせてしまってごめんなさい』
『お姉さま!』
もう一つの火を取り戻した事により炎となったガンバスター、ノリコとカズミ。燃え盛る炎は宇宙怪獣を殲滅し、蹂躙していった。
一時は危なかったZ-BLUEだったが、宇宙怪獣を全滅させ、バジュラもシェリル達の歌が届いたのかある程度Z-BLUEと宇宙怪獣を攻撃した後戦域から離脱、無事に今回も乗り切った事にZ-BLUEは安堵した。
ガンバスターの本来の力、バジュラとの和解、そしてELSとも解り合えるかもしれない事、今回の戦いはZ-BLUEの………いや、人類にとって大きな意味を持っていたかもしれない。地球人類はまだ負けていない、その事実にZ-BLUEの士気は鰻登りだが、まだ事態は終わってはいなかった。
“あら、もう終わってしまうのですか?”
『っ!?』
突然耳にする声、この全身に這い寄ってくる怖気のする声の持ち主はシュウジの知る限りただ一人しかいない。
『サクリファイか!』
『え? ど、どうしたのシュウジ?』
(俺以外聞こえていないのか!?)
耳にするだけで寒気がするサクリファイの声、しかしシュウジ以外誰も聞こえていないらしく、話し掛けてくるカレンはキョトンと首を傾げている。
“残念です。もしかしたらまたあの時の貴方の力を再び目に出来たかもしれないと期待していたのですが、やはり宇宙怪獣程度では役に立ちませんね”
“しかし驚きです。あの金属生命体ですら貴方に畏怖を抱くとは、感情や思考回路の無いモノにまで怖れるとは、流石は私の魔人様です”
(誰がお前のモノなんぞになるか! そんなの死んでもゴメンだ!)
“まぁつれない。────でも、それも仕方がないのかもしれませんわね”
瞬間、空間が歪んだ。これ迄静寂を保っていたワームホールが急速に広がり始めていた。
“今回貴方に話をしたのは他でもありません。私は貴方にお別れのご挨拶に来たのです”
(なに?)
“と言っても、それもほんの一時の合間、寂しがる必要はありません。いずれ、私も
何を言っているのかが解らない。サクリファイの言葉の意味に欠片も理解できないでいるシュウジは苛立ちを募らせる。
“貴方の力は凄まじい。余波だけとはいえ次元を超え、時空を破り、私達の黒き太陽に触れてしまった。故に、コレは当然の帰結”
世界が捻れ、宇宙が歪む。次元境界線は異常数値を示しており、時空振動の揺れ幅は加速度的に増していく。
“またお会いしましょう。蒼のカリスマ、シュウジ=シラカワ様。今度は
「………………なに?」
何て言った?
何て言った?
何て言った?
────今、あの女は何て言った?
“しかし解せませんね。何故あんな娘に貴方程の男が大事に想っているのでしょう? 狡い、狡いですわ。私はこんなにも貴方を求めているのに貴方は私に見向きもしないのにあの娘にはご執心だなんて、苦しくて、苦しくて、苦しくて私───”
“あの女を
『テメェ!!!』
何故、サクリファイが彼女を知っているのか、どうしてあの世界の事を知っているのか、そんな事はどうでもいい。
コイツは消さなくてはならない。迅速に、今すぐに、サクリファイの存在を探してグランゾンの力を引き出そうとするシュウジだが。
《───シラカワシステム最終段階へ移行、
◇
──────何もなくなった。ワームホールも、Z-BLUEも蒼の魔神とその担い手もその全てがこの世界から抹消した。
“嗚呼、もうすぐです。もうすぐ私達は一つになる。世界も、宇宙も、遍く全ての命は私と共に一つになる”
“愛しましょう。受け入れましょう。私が全てを受け止めましょう。だって、だって”
───それはきっと、とても気持ちの良い事だから。
誰もいなくなった宙域で獣は嗤う。狂おしく、愛しく、その時が来るのを彼女は待ち続けた。
─────白河修司、我が半身、我が後継者よ。選択の時は来た。
全ては、ここから始まるのだ。
次回、帰還。
次回もまた見てボッチノシ