『G』の日記   作:アゴン

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今回、主人公の黒歴史が!?


その122

 

?月?日

 

ガルガンティアから離れ、漠然な目的はあれど、具体的な案が思い付かないまま東を往く事数日、連日自分達はレジスタンスの人達対象で日雇いの傭兵紛いの事をしながら、どうにかこうにか食い扶持を稼いでいた。

 

相手をするサイデリアルの連中も殆どが無人機ばかりで、兵士の奴等は皆大した事はなく、日々連戦連勝だった。最初の時の様な巨大な戦艦とかウヨウヨいるものだと懸念していたが、どうやらサイデリアル全ての部隊に備わっている訳ではないらしい。

 

とはいえ、相手をしてきたのは奴等の中でも下っ端、末端の更に末端の様な連中だ。取り戻した拠点というのも大した規模ではないし、実際この程度は奴等にとってダメージにもならないだろう。

 

それにレジスタンスの人達から聞いた話だと、どうやらサイデリアルの主力部隊は蒼の星……即ち、もう一つの地球に向かっているようで、この翠の星には蒼の星程の戦力は割かれていない様なのだ。

 

だからといって一筋縄ではいかないのもまた事実、サイデリアルの主力一つで此方の星の一個大隊に匹敵する力を有している事を考えれば連中との差が嫌でも分かるというもの。それが分かるからこそレジスタンスの皆さんは慎重に行動しているのだろう。今回は自分達が偶々近くを通り、相手にしたから上手くいっただけであって、本当ならもっと使用される時間と被害が大きかった筈。

 

サイデリアルの力の底は未だ未知な部分が多い、全貌が明らかになるまでレジスタンスも自分達も慎重な行動を心掛けた方がいいのかもしれない。

 

しかし、サイデリアルが占拠しているとはいえ、不謹慎に思われるが個人的には随分と過ごしやすい環境だと思う。理由は自分の持つ仮面、自分のもう一つの姿である蒼のカリスマに関してだ。

 

これも日記を読み返して思い出した事だが、蒼の星……もう一つの地球で語られる蒼のカリスマは世紀のテロリストとして名を馳せており、地方によっては生きた伝説、或いはなまはげ扱いとして語り継がれている。

 

史上最高額の賞金首、世界戦力の半分を滅ぼした男、そこへ様々な尾ひれが付いて、世間では蒼のカリスマは絶対的な恐怖の象徴となっており、政府の間でも接触禁止(アンタッチャブル)の扱いになっている。

 

それが原因で殆どの人達には、蒼のカリスマは人々の間で恐れられているのだが…………ここにはそれがないのだ。この意味が分かるか?

 

最初は仮面のせいで怪しまれたりしたさ、けれどレジスタンスの人達に協力したり、怪我した人達の手当、壊れた建物の修繕、子供達の相手をしたり等の行動をしているにつれ、段々と受け入れて貰っていたのだ。

 

中でも仲良くなれた人からは蒼さんとフレンドリーに呼ばれたりした。もうね、ここでなら友達百人出来るのも夢じゃない。そう確信したねボカァ。

 

けれど、今自分のすべき事は友達作りじゃない。先を急ぐ以上、不必要な時間のロスはなるべく抑えた方がいい。本当に、本当に残念だが、彼等との協力関係は長く続く事はなかった。

 

名残惜しいがこれも旅人としての定め、けれど、もしまた彼等に会うことがあればその時は改めて友人関係になりたいものである。

 

 

 

?月?日

 

今日も今日とてしがない傭兵稼業、サイデリアルを追い出すために今回もレジスタンスの人達に協力を申し出た自分達だが、今回選んだ拠点は少しばかり勝手が違った。

 

“レイライン” 拠点を通して遥か地平線の彼方まで続く巨大な管の様なモノを、レジスタンスの人達はそう呼んだ。元々はサイデリアルの連中が呼称していたモノで、このレイラインという奴はどうやらこの翠の星全体に及んでいるらしいのだ。

 

張り巡らしたレイラインはまるで星の血管、一体連中は何が目的でこんな物を作ったのだろう? 何か詳しい事は書かれていないか、自分は再び日記を頼りに記憶のサルベージを行い、そして見付け…………いや、思い出す事が出来た。

 

“ZONE” 嘗て侵略者だったインサラウムが蒼の星に施した次元力の抽出装置。彼等は万物全てに宿る次元力は星の力から抽出される事が最も強力にその力を得られると考えられてきた。宇宙の中で最も巨大な生命体とされる星、そこから抽出される次元力は確かに強力で、中でも地球から抽出される次元力は他の星の比ではなく、それを狙って様々な勢力がこぞって集まってくる程だ。

 

何故地球がそこまで強い力が流れているのか、記憶の欠損もあって断定的とは言えないが、恐らくは星の並びに起因しているものだと考えられている。

 

これも日記に書かれた内容だが、スフィアと呼ばれる代物はいずれも星座の名前を名称にしたもので、そのどれもが地球から観測できる天体だ。地球と次元力とスフィア、これらの関係性は全く無いとは言えないだろう。これ等の問題は記憶を取り戻すにつれて解決出来るモノだと思う。

 

そして話は戻してこのレイライン、性質的に先のZONEと似ている事から、これも恐らくは次元力を、星の命を吸い出すモノだと思われる。

 

しかもこのレイラインの場合、パイプの様に目的の所に送られる様に作られている。この点から見てもただ抽出するだけのZONEとは違い、サイデリアルの技術力はインサラウムを上回っていると予想される。

 

ともあれ、これで次の目的地は決まった。レイラインの伸びる方向も丁度東に向いているし、自分達の次の目的地は必然的にレイラインの伸びる方角になった。

 

レイラインの上に建設されたサイデリアルの拠点はいずれも頑強な要塞だと聞く。恐らく次回は結構な激戦が予想されるだろう。

 

まぁ、それならそれで内側から壊せば良いだけだけどね。こう見えて自分、かくれんぼとか得意だし何とかなるだろう。ブロッケンの奴はやる気になっていたが、慎重のスタンスは崩さない方向で行こうと思う。

 

 

 

?月?日

 

…………何だろう。結構な激戦を予想し、下手したら死ぬかもしれないと内心ビビってたのに呆気ない事の顛末に正直自分は気が抜けてしまった。

 

レイラインに沿って往く事数日、時たま襲い来るサイデリアルとその無人機を蹴散らしながら辿り着いたのは、見上げる程に巨大なサイデリアルの拠点だった。

 

これまでとは配備されている戦力も桁違いだろうと思って内部に侵入、内側から機能停止にしてやろうと息巻いていたら…………なんと、レジスタンスの皆さんがいたじゃあありませんか。

 

しかも何やら自分の事をご存知の様子、聞いてみると何でも凄腕の傭兵が西からフラッと現れ、東沿いに点在するサイデリアルの拠点を単独で奪い返しているという話が、あちこちに広まっているのだという。

 

いやぁ、まさか自分が凄腕とか言われるなんて夢にも思わず、この時自分は機体性能のお陰だなんて口が裂けても言えず、取り敢えずレジスタンスの人達の言われるがままにしていました。

 

そこで出会ったクラヴィアさん。聞けば彼女も記憶喪失の人であり、ここで不器用ながらもレジスタンスの人達と一緒にサイデリアル対策に尽力しているのだとか。

 

同じ記憶喪失仲間、という事で彼女から色々話を聞くことになった。まずはこのサイデリアルの拠点に付いてたが、彼女が言うには三人の凄腕パイロットの人達のお陰で奪う事が出来たのだとか。

 

その凄腕パイロットの名前を耳にして、自分の記憶が更に蘇った気がする。クロウ=ブルースト、セツコ=オハラ、ランド=トラビス。三人ともスフィアの持ち主で、嘗てZEXISの所で侵略者達を相手に活躍した人達だ。中でもクロウさんとランドさんとはそれなりの付き合いがあった事も思い出している。

 

…………いや、本当ならもっと上手く思い出せる筈なんですよ。実際日記を読み返していたら思い出す事もあるし、多分この日記を読み漁っていればもっと早く記憶は思い出せると思うんスよ。

 

けどね、日記の中にある人物の名前、特に二名程が、自分の中にある防衛反応を刺激して来るんだよね。ZEXIS、赤い髪、銃口、アイアンクロー、うっ、頭が…………といった感じで、本能が一部の記憶の呼び覚ましを拒んでいるんだよね。

 

────ま、まぁ別にいいよね。こうして話したりその人と会ったりすればちゃんと断片的にだけど思い出すし、ガロード君の時もそうだったし、こういうのは焦っちゃ駄目だって婆ちゃんも言ってた。多分。

 

そんな訳でクラヴィアさんとの会話でまた一つ記憶を取り戻した自分は思い切って彼女達にお願いをしてみた。内容は自分達を宇宙に上げて欲しいという事、マスドライバーもある事で可能ならば自分達を宇宙に上げて欲しいと率直にお願いしたのだけれど、クラヴィアさんはそれは出来ないと断ってきた。

 

いや、出来ないと断るのではなく、無理だと諦めるように促してきたと言う方が正しい。訊ねた所によるとサイデリアルの軍勢が翠の星の大気圏外付近に部隊を展開、翠の星から出たり降りようとしている者達の壁となって立ち塞がっているのだという。

 

しかもその指揮官がサイデリアルの幹部クラスらしいのだ。指揮官の名前はギルター、因縁のあるこの男の他にもう一人指揮官に付いている者がいるという。

 

名前はサルなんとか、サイデリアルの特殊部隊アンタレスの副隊長だとか。二人の指揮官が付いているのであれば、恐らく展開されている部隊はかなり分厚いのだろう。

 

確かにこれでは大気圏突破は難しいだろう。けれど、だからといって諦める理由にはならないし、自分達には蒼の星に辿り着く為の理由がある。

 

再三の懇願でどうにかマスドライバーの使用を許してくれたクラヴィアさんとレジスタンスの皆さんには感謝の念が絶えない。彼等の協力を無駄にしないためにも明日の大気圏突破、何としても成し遂げなければならない。

 

一応、策も考えてはいる。策と言ってもおざなりなもので酷く稚拙なものだけど…………まぁ、無いよりはいいでしょ。

 

ブロッケンには明日こそ気合いを入れとけと言って今は休むように言い含んである。自分も明日の激戦に備え、早めに休む事にする。

 

 

 

 




Q今の主人公の怖いものは?

A赤い髪をした女性。記憶を失ってもそれは変わらない。

次回、宇宙(ソラ)と星の狭間で

次回もまた見てボッチノシ

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