『G』の日記   作:アゴン

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久し振りの戦闘、上手く表現できたかな?


Q主人公の機体は結局どんな感じ?

AバルバトスとトールギスⅢを足して2で割った感じ。
因みにコックピットはダイゼンガーやソウルゲイン辺りを想像すると分かりやすいかも。


その120

 

 

 

 

 

『ギルター=ベローネ、貴様、どういうつもりだ?』

 

「どういうつもり、とは?」

 

サイデリアルの指揮艦にて、抵抗勢力掃討指揮官を名乗るギルター=ベローネは、モニター越しでも伝わってくる凄味を利かせて睨み付けてくるダバラーン=タウに僅かな怯みを見せずに、余裕のある笑みを浮かべていた。

 

『我々の目的はシオニー=レジスの連行にある。その目的が達成された今、そこの船団に用は無い筈だ』

 

所属する部隊は違えどサイデリアル内部にある階級ではダバラーンの方が上、故に遠回しに戦闘は止めて撤退しろとダバラーンは言うが、ギルターはそれに応えず、睨んでくる彼を鼻で笑いながら拒否をした。

 

「確かに、此方の目的は無事に達成された。それはそれで喜ばしい事です。しかし、私に課せられた任務は違う。我等サイデリアルに楯突くものには平等に死を、それを実行するのが我々抵抗勢力掃討部隊なのです」

 

『…………』

 

鼻高々、己の持論によって凄味を増していくダバラーンにギルターは優越感に浸り、目の前にいる上官を下に見ながら続ける。

 

「私の行動は皇帝陛下のご意志でもあるのです。それを害するという事がどういう事なのか……それが分からない貴方では無いでしょう?」

 

『貴様、最初からそのつもりで…………』

 

「さて、そろそろそちらは翠の地球の圏外から外れる頃でしょう。此方の方はお任せください。───そうそう、貴方が預けてくれたハイアデスの戦力、丁重に扱わせて貰いますのでその点もご心配なく」

 

『ギルター=ベローネ!』

 

怒声を放ってくるダバラーンの通信を一方的に切断するベローネ、鬱陶しいという風に表情を歪める男は吐き捨てる様に言葉を口にする。

 

「何が言うことを聞けば手を出さないだ。そんな事をすれば連中が付け上がるという事が解らんのか脳筋めが」

 

自分よりも上の人間に対して明らかな敵対言動、聞く相手によってはその場で処断されるというのに、ギルター=ベローネはそんな事などお構いなしに悪態を口にする。

 

「やはり、サイデリアルの未来を担うには私の様な才能ある人間でなければならない。そうは思わないか?」

 

己を自讚し、周囲のオペレーターに同意を求めるギルター、立場が上である彼に反論できる者などこの場におらず、必然的に肯定するしかなかった。そんな部下達を見てギルターは満足気に頷いた。

 

そう、自分の行いこそが正しいのだ。サイデリアルの智将で知られ、いつかは皇帝の座に君臨してやるという野望を抱いている男は、眼下に広がる戦場を眺めて頬杖を付きながら悦にはいる。

 

やはり戦闘は蹂躙するに限る。自分達に……いや、自分に比肩する者など存在しないのだ。この調子でこの小汚い船団を破壊し、中にいる蒼のカリスマ───シュウジ=シラカワとかいう男も序でに消してやる。残る問題は単機で戦っているガンダムだけだが、それも物量で攻め落とせばいい。

 

仮に持ちこたえていても、既に船団に浸入した斥候部隊が、船内にいる人間を皆殺しにしている事だろう。文明レベル的に向こうには碌な抵抗手段がない。サイデリアルが誇る武力を以てすれば、半刻足らずに殲滅出来るだろう。そうなればガンダムのパイロットも守るべきモノを失った事により戦意を失い、自分に敗北するだろう。今、連中の命運は自分が握っているのだ。

 

完璧だ。己の完璧過ぎる作戦と戦術に、ギルターは笑いを堪えるので必死だった。そうだ。これこそ自分の在り方なのだ。以前セツコ=オハラとその一行に敗走したのは何かの間違いなのだ。

 

私のやることに間違いない。エゴの塊とも呼べる男は内側から溢れる悦楽を噛み締めていた時、オペレーターの一人から奇妙な報告が飛んできた。

 

「せ、先行部隊からの通信途絶。反応……ロストしました」

 

「何だと?」

 

部下からの報告にギルターの眉間に皺が寄る。自分の完璧な作戦に泥を塗った先行部隊に苛立ちながら指示を飛ばすが…………。

 

「ならばキメラ部隊を投入しろ! 奴等の戦闘能力を以てすれば容易い筈だ。……おのれ弱小集団め、余計な手間をとらせおって!」

 

「そ、それが…………キメラ部隊もその半数が撃破され、残り半数も一人の人間に足止めをされて……」

 

「な、なんだと!?」

 

モニターに出せ! 乱雑に飛ばす指示に律儀に従うオペレーター、眼前に映し出された昆虫のキメラ部隊を相手に一人で立ち回る、赤い軍服姿の男の姿にギルターの目は大きく開かれる。

 

「な、なんだこの男は!?」

 

「恐らくは報告にあったDr.ヘルの元配下であるブロッケンかと思われます。バードス島跡地での決戦で敗北した際、島の爆発に巻き込まれて戦死したとありましたが……まさか蒼のカリスマの手下になっていたとは」

 

淡々と語る部下の言葉は、憤慨するギルターの耳には入ってこなかった。悉く自分のやり方を邪魔をしてくる存在に苛立ちを隠せなくなったギルターは声を上げて指示を飛ばす。

 

「デイモーンを一個小隊向かわせろ! あの薄汚い船を今すぐ叩き落とせ!」

 

「し、しかしそれでは味方も……」

 

「口答えをするな! 貴様らは私の命令に従っていればいいのだ!」

 

役に立たない部下など必要ない。その台詞にオペレーターは眉を寄せるが、上官の指示である以上無視は出来ない。無人機である蝙蝠に似たデイモーンに命令行動を入力すると、一個小隊規模のデイモーンは一斉にガルガンティアに向けて移動していく。

 

当然、ガンダムの……ガロードの妨害はあったが、数で勝っている此方の機体を乱戦の中で全てを撃ち落とす事など出来る筈もなく、残ったデイモーン等はガルガンティアに向けて一直線に突撃していく。

 

「そうだ。そのまま突っ込んで船を破壊しろ。自分に楯突いた者達がどうなるのかその目で見るがいい!」

 

愉悦に口元を歪めるギルター、次の瞬間訪れるだろう惨劇に胸を踊らせた時────一筋の閃光がデイモーン達を撃ち抜いた。

 

貫かれ、爆散していくデイモーンにギルターの目が点になる。何が起きた。混乱する彼に追い討ちを掛けるように、この艦の左側に配置した護衛艦が爆発した。

 

何が起きている。そう叫ぶギルターが次に目にしたのは、炎の中から現れる一機のモビルスーツ。ボロボロのローブを身に纏いながら炎の中に佇むその姿は…………まるで、魔人。

 

「ま、ままままさか……!?」

 

体の芯から震えが来て言葉がでない。恐怖で引き吊るギルター、そんな彼を見据えるように蒼いMSが此方を向いてカメラアイを輝かせる。その迫力に圧されたギルターは短い悲鳴を上げると共に、座っていた椅子から転げ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奇襲成功。これで少しは連中を驚かす事が出来たかな?」

 

護衛艦らしき艦を一隻撃墜し、奇襲として確かな効果を確信したシュウジは、静まり返る戦場を見て満足そうに頷いた。

 

「それにしてもロイドさん達、随分と良い仕事をしてくれたな。まさかここまで機敏に反応してくれるなんて……まるで自分の手足みたいに動かせるぞ」

 

乗り込んだ機体の調子の良さに舌を巻き、自身の動きと寸分違わず連動して稼働する機体にシュウジは素直に驚き、そしてこれを仕上げてくれたロイドを初めとした博士達に感謝した。

 

これまでのコックピットとは違う新たな操作性のある機体、人と機械の境界線を極限にまで減らした新たなMSの可能性、それは今のシュウジにとって革新的とも言える代物だった。まだ起動して一時間も経っていないのに、既に自身の写し身の様に動いてくれるトールギス、その強靭さにシュウジは感動すら覚えた。

 

唯一評価に濁す点があるとすれば、機能性能の高さに体の方がついてこれていないという事だった。流石に病み上がりには堪える。暫く何も口にしていなかったからシュウジは現在空腹状態という事もあり、機体性能の七割しか引き出せていない。付け加えて……。

 

「刀……か。俺、日本人だけど刀なんて使った事ないんだよなぁ。どうやって使えばいいんだ? これ?」

 

機体の右肩に添える様に取り付けられた長刀。これまでグランゾンに乗っていた時は、斬るというより叩き潰す勢いで振るってきた。しかし、トールギスの有する近接武器は剣ではなく刀、その使用方法はこれまでとは明らかに異なっている。

 

ただ相手に叩き付ければ良いわけではない。高等な技術を要する武器を前に、どうしたものかな。と、折角の贈り物を手に剰らせているシュウジはふと、隣の艦に目を向ける。見ればその艦だけは矢鱈派手な装飾が施されており、明らかに他の艦とは異なった格好をしている。

 

…………もしかしてここの指揮官が乗っている指揮艦かな? 取り敢えず撃破するなり脅すなりして連中の動きを封じてやろうと、もうひとつの武器であるライフルを向けると────。

 

『ヒャッハァーッ!!』

 

周囲の無人機達を蹴散らしながら突っ込んでくる一隻の艦、500mを優に超える戦艦の突撃に、シュウジは驚きで一瞬目を丸くさせた。

 

だが、激突する間際には正気に戻り、燃え盛る護衛艦からスラスターを噴かして離れ、突撃してくる戦艦を回避する。すると戦艦は護衛艦をお構いなしに轢き壊し、此方に向かって追尾してきた。

 

ほぼ直角に旋回する戦艦、その常識では有り得ない戦艦の機動性能に、シュウジは再びギョッと驚愕に目を丸くさせる。

 

だが、驚いてばかりもいられない。シュウジはトールギスの出力をスラスターに回し、全速力で戦艦から離れようとする。しかし、戦艦の速さも並みではなく、トールギス程のスピードではないにしても食い下がってくる。

 

離れろと、シュウジはライフルを使って戦艦を撃ち抜く。しかし、攻撃は通っても戦艦が勢いを弱める様子はない。寧ろ先程よりも速くなっている気がする。

 

どうやら、自分の目の前にいるのは随分とイカれた神経の持ち主らしい。迫り来る戦艦を前にしてシュウジはいきなりの窮地にやれやれと肩を竦め、戦艦から放たれる無数の砲撃とレーザー光線をサーカスの様に掻い潜るのだった。

 

対して戦艦を操る男、サイデリアルに属する特殊部隊“ハイアデス”の隊員は、目の前の常人ならざる動きをする機動兵器に興奮しきっていた。目の前にいるこの男は、これまで出会ってきたどの敵よりも強く、面白いと。

 

正直、男はここに来るまで失望していた。自分達の直属の上官であるストラウスとダバラーンの命令に従ってやって来たのは自分達に碌に反抗出来ていない翠の星、しかもマトモな抵抗も出来ない弱小船団への訪問と来たものだ。

 

オマケにあのいけすかないギルターのお守りまで任される始末。もしこの世に貧乏クジの星があるのなら今の自分の真上に瞬いているに違いない。そう、思っていた。

 

自分達の足元にも及ばない弱小船団への厭らしい攻撃、強いものと真っ正面から戦ってこそ生き甲斐を感じられるハイアデスの男が退屈で退屈で死にそうになった時、ソイツは現れた。

 

蒼い機体、その姿からしてMSと思われる機体の登場に、ハイアデスの男は胸が高鳴るのを感じた。燃え盛る護衛艦の中から這い出る様に現れた蒼い機体、デイモーン達を撃破した様子も護衛艦を破壊した所も速くて見えなかった。

 

───強者だ。見た瞬間、男は蒼い機体の奴が強いと言う事に気付いた。向こうで戦っているガンダムも相当な手練れだが、純粋な強さではこの蒼い機体の方が別格だ。

 

その事に誰よりも早く気付いた男は己の愛機であるアルデバルに火を入れる。戦艦規模という巨大さに関わらず、機動兵器並の機動性と運動性を持つハイアデスの主戦力。

 

特殊な技術によって生み出された人艦一体の戦闘手段、その頑強な装甲と戦艦故の大火力、男はこれら全てを使って目の前の機体を倒すことを決めた。

 

長く出逢えなかった強者との邂逅に胸を高鳴らせる。それはまるで恋をしている様な感覚だった。

 

『そらそらどうしたぁ! 逃げるだけじゃ勝てねぇぞブルーマン! もっと気合い入れろやぁ!』

 

挑発し、足を止めさせる様に促すも、向こうはそんな事など構わず、此方の攻撃を冷静に掻い潜っていく。

 

あぁ、なんて鮮やかなのだろう。これまで強い奴は全て上司達に取られていった。溜まっていくフラストレーション、そこで告げられるギルター(バカ)のお守り勧告、男はストレスでどうにかなりそうだった。

 

そこで出逢えた嘗てない強敵、焦らし焦らされ、漸く巡り会えた自身の宿敵。男は今この瞬間が、自分の全てを出しきる戦場なのだと悟った。

 

嗚呼、もっと見せろ。もっとお前の力を見せてくれ。未だ追い付けぬ想い人に焦がれながら、男はアルデバルの砲撃を断続的に撃ち続けていく。

 

永劫に続くかと思われた逃避行、しかしその時は突然訪れる。今まで逃げ続けていた蒼い機体が急に止まり、此方に向き直ってきたのだ。

 

一体なんのつもりだ  男は疑問に首を傾げた時、蒼い機体はライフルを仕舞い、一振りの武器を手に取った。

 

刀、美しさすら感じ取れる一振りの刃、武骨なハイアデスの自分ですら見惚れてしまう刀身が霞に構えられる。その一連の動作で察した男は興奮のボルテージを最高潮に高め、そして振り切れていく。

 

『最高だ。まさかこんな辺境な星でこんな戦いに巡り会えるなんて…………』

 

来い。そう挑発するようにカメラアイを光らせる蒼い機体を前に───。

 

『最っっっ高にイカしてるぜ、お前はァァァッ!!』

 

男のテンションは爆発する。自身の体を通して昂るエネルギーはそのまま力となり、推進力となる。

 

小細工なしの真っ向勝負、20mにも満たないMSが500mを超える戦艦と打ち合おうとしている。そのイカれた考えに感化され、刺激され、男は今人生最高の瞬間に巡り会えた。

 

『そうだ、俺はこの時の為に生きて───』

 

────キン。

 

甲高い金属音を耳にした瞬間、男の視界は左右それぞれ上下に分かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は知っている、誰よりも速く刀を振る人を。

 

その人は誰よりも高潔だった。誰よりも誇り高く、誰よりもかっこ良かった。

 

そう、俺は知っているんだ。あの日、あの瞬間、トレーズさんが見せてくれたあの一撃を…………その速さと重さも。

 

見ることも叶わない神速の一撃、けれど俺はあの瞬間確かに感じ取ったんだ。

 

────思い出せ、お前の友人の一撃は鈍重だったか?

 

否。

 

────お前の友人の一撃は、軽かったか?

 

否。

 

────お前の友人、トレーズの一撃はお前の中に刻まれていないのか?

 

否。

 

刻まれたから、受けきったから、分かるし、覚えている。見えなくても、分かるんだ。

 

イメージするのは、常に最強の友人。

 

余計な力はいらない。必要なのは、求めるのは斬ったという結果のみ。

 

迫り来る巨大な戦艦、機動兵器並みに俊敏な機動性と運動性を有する怪物、しかし今はそんな危機感すら必要ない。

 

巨大戦艦が間合いに入る。瞬間、全ての景色の動きが止まり…………俺とトールギスは一つになった。

 

 

 

 

 

 

『最高にクールだったぜ、アンタ』

 

一刀の元で左右に両断されたアルデバル。爆発する戦艦の中、ハイアデスの男からの呟きが風に乗って飛んでいく。

 

爆散して散り逝く戦艦、その散り様を背にして───。

 

「俺に…………いや、俺達に」

 

 

 

 

 

“断てぬモノなし”

 

 

 

 

 




アルデバル

全長522.8mという巨大さにも関わらずまるで機動兵器並の運動性と機動性を持つというハイアデスの主戦力の兵器。

元となっているのはサイデリアルの旗艦、ストラウスのプレアデス・タウラ。
火力や総合力はプレアデス・タウラには及ばないものの、その性能は凄まじく、火力だけならばサイデリアルの中でもトップクラスの力を誇る。

と、それっぽく解説してみました。


次回もまた見てボッチノシ

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