正直、やり過ぎな気もするが……ラスボスだから仕方ないよね(キャハ♪
『断空────弾劾剣ッ!!』
己の全てを込めた獣の機神の一撃、それは獣を超え、人を超え、神へと至るダンクーガの名を受け継いだ、チームDの渾身の一撃だった。
数多の敵を両断してきたダンクーガの一撃、しかし蒼の魔神グランゾンは手にした剣を片手に容易く受け止めてみせた。
『こっ、のぉぉぉっ!!』
『ほぅ、先程よりも力が増していますね。窮地に陥りながらこれ程の強さに至るのは……流石は獣の血の力といった所でしょうか?』
『……気に入らないね、その余裕ぶった言い方』
『俺達の全力を受けていながら平然としているなんてよ!』
『少し……いえ、大分頭に来ますね』
『おや、気に入りませんか? 私としては最大限の称賛のつもりでしたが…………』
『舐めるなっ!』
蒼のカリスマ───シュウジ=シラカワの物言いに苛立ちを募らせたチームDは、沸き上がる気力と共にダンクーガの出力を上げていく。
僅かに後退するグランゾン、この勢いのまま押し通そうとするが…………。
『舐めるな……か、それは此方の台詞だ』
『っ!?』
『きゃぁあぁっ!??』
勢いの付いたダンクーガの一撃を魔神は押し返し、更には邪魔だと言わんばかりに蹴り飛ばす。
『ヒトというのは理性と本能が合わさって始めて成り立つ
ダンクーガの周囲を囲むように展開されるワームホール、無数の空間の穴の全てから光が溢れ、チームDを貫こうとした時、それを阻むように黒い巨人が割って入ってくる。それはロジャー=スミスが操る神の遺産ビッグオーだった。
『シュウジ=シラカワ、悪いが足止めさせて貰おう』
『貴方一人でですか? いい度胸と言いたい所ですが…………それは無謀というモノですよ』
『無論、そんな事は重々承知しているとも────アンカー射出!』
ビッグオーが組み付き、アンカーを飛ばしてグランゾンの身動きを封じようとする。無駄な事だと一笑するシュウジだが、両脇から現れる鉄人28号とトライダーG7がしがみついてくる。
常時歪曲フィールドを展開しているネオ・グランゾンに直接掴み掛かる事は自滅に等しい。天元を突破していようともその事実は変わらず、銀河よりも巨大となったワッ太達の機体からギシギシと悲鳴の声を上げ、フレームを歪めている。
幾ら頑丈な機体であろうとも、これ以上ネオ・グランゾンを足止めするのは限界だと悟った時、ロジャー達にアムロ達からの通信が入った。
準備は整った。合図と共に了解したロジャーはタイミングを見計らい、彼等は同時にグランゾンから放れる。彼等の行動を訝しげに思うシュウジ、しかし次の瞬間にはその意図を読み取り、頭上を見上げる。
そこにはアムロのνガンダムを始めとしたガンダム軍団、ヴァルキリー部隊、真ゲッターやガンバスターといった火力特化の機体等が、グランゾンに向けて狙いを定めていた。
『主砲、発射ァッ!』
『ゲッタァァビィィィムッ!!』
『バスタァァァ────ビィィィムッ!!』
『これでぇっ!』
降り注がれる弾幕と光線の雨、その威力は周囲の星々を砕き、足場となっている銀河をも撃ち抜いていく。
ロジャー達が自滅覚悟で作った時間によって生み出されたZ-BLUEによる一線集中放火、その威力は過去最高のモノとなり、ネオ・グランゾンの歪曲フィールドすら突破できる威力を誇っていた。
これで漸くダメージが通ると誰もが確信した時……Z-BLUEの背後から突然弾幕の雨が降り注いできた。何事だと混乱するZ-BLUE、何処からの攻撃だとバナージが振り返った時、その光景に唖然となった。
無数に浮かぶ黒い孔、まるで此方を狙い定めているかのような空虚の孔から、たった今自分達が撃ち放った攻撃が降り注いでいた。
視線を前に戻せば其処には無傷のグランゾンが佇んでいる。先程と同じ展開、唯一違うとすれば、彼の魔神の周囲には、自分達の背後にある黒い孔が無数に穿たれていたという事だった。
『私のワームホールはあらゆる場所に任意で開く事ができ、あらゆるモノを通させる事が可能となっています。……もしかして、後ろから射つというのは卑怯、などと甘い事を吐くつもりではないでしょうね?』
論ずるに値しない。暗にそう吐き捨てるシュウジにZ-BLUEに戦慄が走る。これだけやっても傷一つ付かない怪物、これが破界時篇の頃より最強を誇っていた者の強さなのかと、一部の者が心折れ掛けていた時。
『獲物を前に慢心するとは、意外と小物なのだな』
『っ!』
背後から現れるアーバレスト、ランスロット、グレンラガン、ダイガードの四機の強襲に、シュウジの反応が一瞬遅れた。
アーバレストは拳に敵を貫くイメージを乗せ、ランスロットは両手に剣を携え、グレンラガンは必殺のドリルを放ち、ダイガードはそのまま真っ直ぐに直進してくる。
突然の出来事にシュウジの表情が強張る。そしてその瞬間、再び銀河に爆発が轟いた。シュウジもZ-BLUEも想像していなかった奇襲、唯一ルルーシュだけは知った顔で爆発の中を注視している。
軈て爆炎は晴れ、再び隔絶宇宙の景色が広がっていく。晴れていく煙の先にある光景を前に、ルルーシュは周囲の目も憚らず「クソっ!」と悪態を付いた。
片翼と左足をもがれたランスロット、両腕を破壊されたダイガード、爆発の衝撃でグレンラガンは倒れ、アーバレストは渾身の一撃を先のダンクーガの時の様に片手で受け止められてしまっている。
『今のは流石に驚きました。まさか仲間が攻撃に巻き込まれる事を覚悟した上であの弾幕の中に紛れ込ませるとは、しかも私がワームホールで攻撃を防ぐことを見越した上で……これを指示したのはルルーシュ君辺りかな?』
答えを求める様に訊ねるが、ルルーシュは歯を食い縛るだけで応えはしなかった。しかしそれを正解と受けとったのか、シュウジはクククと笑みを溢す。
『…………まだ、だぁぁ!』
アーバレストに備えられた単分子カッター、落としたソレを片手でキャッチすると、相良宗介はグランゾンの喉元向けて突き刺す。
『残念ですが、それは通りません』
しかし、その一撃をシュウジは冷めた目で見下ろし、迫る刃を光の槍で撃ち貫いた。片腕ごと破壊されたアーバレスト、宗介が驚愕に目を見開くが、そんな余裕も与えないと言うように自身の体を浮遊感が襲う。
掴みあげられたアーバレストはそのままグランゾンに放り投げられ、倒れ付しているランスロット等に激突する。
あらゆる手を尽くしてもダメージ一つ通らない魔神、その強大さに絶望の淵に立たされるZ-BLUEだが、対照的にシュウジは上機嫌だった。
『いや、しかし成る程、流石は地球最強の部隊Z-BLUEですね。まさか私達が一撃受けてしまうとは……少しばかり見誤っていた様です』
シュウジの言うことに訝しげに思うルルーシュ、注意深くグランゾンを眺めると歪曲フィールドを展開させる装置に不具合が発生しているのか、僅かに火花が散っている様に見える。
『強襲、奇襲、さて次は何か……なんて、聞く必要もないか』
頭上を見上げるグランゾンに吊られ、Z-BLUEの面々も上を見上げる。何もないはずの宇宙空間、隔絶宇宙が生み出した暗闇に彼等はいた。
ヒビキ=カミシロと西条鈴音が搭乗するジェニオン、ガドライトから奪った双子座のスフィアを手に入れ、ジェニオン・ガイへと進化した彼等の機体。
『シュウジさん……行きます!』
『これが、私達の全力!』
『ニーベリング・アナイレーション!!』
ジェニオン・ガイから放たれる次元力の波動、それを確認したシュウジは笑みを浮かべ、ワームホールから剣を取り出す。
『成る程、それが今の君の全力ですか。ならば、私も相応の態度で応えるとしましょう』
『うぉぉぉぉぉぉっ!!』
スフィアの力を解放させて一直線に降下してくるジェニオン・ガイ、対するグランゾンもジェニオンに激突する様に一直線に直進する。このままぶつかり合うのか、迫り来る衝撃に備えヒビキと鈴音が覚悟を決めた時。
『我流“真伝”乱舞の太刀』
無数に現れる魔神を前にその表情を恐怖に染めあげるのだった。
『やはり、こんなものですか』
『あ……ぐぅ』
ぶつ切りの意識の中でヒビキが耳にするのは落胆と失望の声。そんな彼の足元には四肢を切り裂かれたジェニオンが倒れていた。
GAIモードも解除され、ただの一機動兵器となったジェニオン。倒れ付した彼等を見てシュウジは残念と口を開く。
『色々工夫を凝らしてくるから期待していたのですが……まぁ、スフィアを手にしたばかりならこの程度なのでしょう』
期待していた自分が愚かだった。そう言いたげなシュウジに悔しさを覚えるヒビキだが、全身からくる痛みのせいで軽口の一つも言えないでいる。
『それに、今のヒビキ君ではどのみちスフィアを十全に扱う事は出来ないだろうし、ここら辺が妥当な所か』
他の皆はどうしたのか、聞こえてこない彼等の声に嫌な予感を感じたヒビキは辺りを見渡すと、その凄惨な光景に言葉を失った。
翼をもがれたアクエリオン、ガンダムやKMFは所々破壊され、ガンバスターや真ゲッターといった大火力を誇るスーパーロボット達は、光の槍で全身を撃ち抜かれ戦闘不能状態となっている。
唯一キリコが操るATだけは目立った外傷はなく、戦闘を続けられる状態だが、既に持てる弾薬は底を突き、あとは直接攻撃の近接戦闘しか手段が残されていない。
先程までの重力の雨による拘束ではない。真っ正面から挑みZ-BLUEは全ての力を出し切った。……なのに、目の前の魔神には掠り傷程度しか付けられずにある。
大きすぎる力の差、埋めようのない圧倒的格差にヒビキの心は絶望の沼に沈んでいく。
『さて、それでは改めて君のスフィアを戴くとしましょうか。完全にスフィアを操れていない今なら取り出す事は簡単でしょうからね』
振り上げられる巨大な剣、今度は誰も助ける事は叶わない。押し寄せる死、逃れることのない恐怖にヒビキは身を震わせる。
嫌だ。死にたくない。怖い、助けて。命を持つものならば誰もが抱く恐怖に押し潰されそうになった時。
『───────』
『………………え?』
それは、気のせいだったのかもしれない。恐怖によって耳にした幻聴なのかもしれない。しかしこの時、ヒビキは確かに聞いた。
降り下ろされる刃、迫る凶刃を前に呆然とするヒビキ、このまま直撃を受けるのかと思われた時、金色の剣が魔神の一撃を防いだ。
その者はこの場にいる者、シュウジにとっても予期せぬ人物だった。金色に輝くその者は太陽の翼───神話型アクエリオン。
『ほぅ、まさか貴方が出てくるとは……貴方の出番はもう少し先だと思っていましたよ。不動ZEN』
『………………』
不敵に笑みを浮かべる不動とシュウジ、睨み合う両者を傍目にヒビキは呆然と眺めていた。
“諦めんなよ”
自分に刃を降り下ろした時、聞こえたのは
ヒビキ「シュウジさん、貴方は……一体」
内なるボッチ「頑張れ頑張れできるできる! 君なら出来るよ諦めんなって、やれば出来るきっと出来る! 絶対出来る必ず出来る! 諦めんなよもっと熱くなれよぉぉぉぉっ!」
大体こんな温度差
次回、
次回もまたみてボッチノシ