『G』の日記   作:アゴン

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主人公、放浪記再び。


その13

△月☆日

 

……やはり、人の死というものは何度見ても慣れないものである。

 

グレン団の団長、カミナの死。これは自分だけでなくZEXIS全体でも大きな打撃となった事だろう。戦力的な意味ではなく、精神の……心の支えとして。

 

最初は順調だった。襲い来るガンメン達もその中に混じってティンプとかいう奇妙な奴もいたりしたが、それでも戦力の集まったZEXISの相手にはならなかった。

 

途中インベーダーの横槍もあったが、概ね作戦は順調に進みこのまま螺旋四天王も倒せるかと……そう思われたが。

 

螺旋四天王の一人、チミルフの決死の強襲にグレンラガンは大破、危うく撃墜にまで追い詰められた。

 

けど、カミナは最期の力を振り絞りチミルフを撃破。奴の乗っていた移動要塞を手に入れ、自分達は一応勝利という形でその時の戦いを終えた。

 

大切なモノを失う事と引き換えに───。

 

……戦場というものは端的に言えば殺し合いだ。そこにどんな事情があれどその事実は変わらない。だから殺しもする日もあれば殺される日もある。

 

───なんて言えば割り切った大人と思えるだろうが、生憎自分はまだ成人前だ。変に大人ぶるのは似合わないし、するつもりもない。

 

本来ならこの後キタンさん達に改めて挨拶をするつもりだったのだが……今はとてもそんな気分じゃない。

 

それに、カミナさんの弟分であるシモン君、彼の方が今は心配だ。大丈夫だろうか? 後で様子を見に行こうと思い、早いと思うが今回はこれで終了させてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、シモン君」

 

「…………」

 

マクロス・クォーターの居住区の一室。泥で作られた無数のカミナを模した像の中に、生気を失った目をしたシモンがいた。

 

そこに蒼のカリスマが一人で来たものだからシモンは視線だけを向けるが、すぐに視線を外し、無造作に泥を掘り続ける。

 

どうせまた自分を説得とか考えているのだろう。ここ数日グレンラガンで戦ってもマトモに動かせなかった自分は既に戦力外の通達が来ている。

 

どうせお払い箱になるのなら、ここで好き勝手にしていた方がいい。

 

「そんな事をしてもカミナは帰ってこないぞ」「元気だせ!」「こんな奴がカミナの跡を継ぐのか」最近自分の所に来るのはこんな人達ばかりだ。

 

勿論中には真剣に心配してくれる人もいる。……だけど今は何もする気が起きない。

 

ヨーコも表面上は吹っ切れた様子で戦っているのに、未だに自分はこの殻から抜け出せずにいる。蒼のカリスマが来るのは意外だったが、どうせ碌な事は言いやしない。

 

シモンは後ろに立つ不審者をそう決めつけた。……しかし。

 

「ほぅ、中々上手く出来てるな。髪型といいサングラスといい、君はカミナの事を良く見ていたのだな」

 

謎の仮面の男はあろう事か部屋へと入り、シモンの作ったカミナの像を見て感心したように感想を口にしていた。

 

「ふむ、その掘削ドリルでよくもまぁここまで見事に作れるモノだ。君には芸術家の才能もあるのやもしれん」

 

「…………」

 

正直、目の前の男に戸惑った。ここに来るのは皆励ましや叱責を言いに来る人ばかりだったから、全然違う対応をしてくる仮面の男にシモンは暫し面食らった。

 

だが、それ以上に腹がたった。結局何が言いたいのだと、遠回しに自分をバカにしに来たのではないかと、そう思ってしまったシモンはいつも以上に尖った口調で言い放つ。

 

「……言いたいことがないんなら出て行ってくれよ」

 

「ん?」

 

「アンタ、自分の立場ってのを少しは理解したら? 何で監視されてる奴がノコノコこんな所に来てるんだよ。見つかったらただじゃ済まないよ?」

 

我ながら酷い言い方だ。それもかなりひねくれた態度、こうまで突き返したら誰だって怒るだろうし、最低でも少しは態度は変える筈。このままこいつを不愉快にさせ、ここから出て行かせようとする心算だったのだが……。

 

「……え? マジで? 監視されてたの? 俺?」

 

「………は?」

 

今、何か凄いモノを見たような気がした。まさかあのヒイロやソレスタルビーイングの面々が幾ら探りを入れても堂々としていた蒼のカリスマが、自分の一言で酷く狼狽したのだ。それも恐らくは素を丸出しで……。

 

追及したくなったが、本人は咳払いで誤魔化しているみたいなので、何となく聞くのは止めようと思った。

 

「ま、まぁ私の事は置いといて……さて、何しに来たかと言うとだな。実は君と折り入って少し話をしたくなったのさ」

 

「……話? 別に話をする必要はないよ。大した話なんてないし」

 

「そうかな? 君はZEXISの一人……いや、大グレン団の一員だ。カミナと一番近かった君ならば彼について色々話せる事があるんじゃないのかな?」

 

何やら小馬鹿にしてくるような物言いが仮面の分だけムカついたのだが、何も話さないとカミナの事は何も知らないと思われそうだったから、シモンは渋々ながらカミナとの話をポツポツとだが話し始めた。

 

カミナとの出会いの話、ガンメン───ラガンを掘り当てた時の話、カミナが俺と一緒に外に出ようと、地上という未知の世界に行こうと言った話。

 

凡そ数時間に及ぶカミナとの冒険活劇の話、気が付けばシモンの瞳に光と力が戻り始めていた。

 

「───成る程、流石は大グレン団の頭領。中々興味深い冒険譚だった」

 

「なぁ、アンタは一体何がしたかったんだ? 俺の話を聞いて、何を知りたかったんだ?」

 

結局この男は何が言いたいのか、それが分からないシモンは訝しげに思いながら問いかけると。

 

「……カミナは死んだ。もういない」

 

「っ!」

 

「この事実は変わらんし、お前がどう足掻こうと覆る事はない。死んだ人間は絶対に生き返ったりはしないのだから……」

 

「…………」

 

「だが、カミナが君に残したモノは消えない。君自身がカミナを忘れない限り」

 

「アニキが……俺に残したもの?」

 

一体それはなんだろう? 新たに出てきた疑問に頭を捻るシモン。すると、仮面の男は立ち上がり、気は済んだとばかりに部屋を後にする。

 

「忘れるな、君の中にある宇宙。それはカミナの宇宙でもあるのだから」

 

そんな分かりづらい抽象的な台詞を残して、蒼のカリスマは通路の奥へ去っていく。

 

奇妙な男から変わった人。彼に対するランクを内心で変えながらシモンは自問自答を繰り返す。

 

その晩、夕飯時に顔を出したシモンによってZEXISが活気づいたのは別の話。

 

ただ……。

 

「……そっか、俺ってば監視されてたのね。いや、分かりますけどね。俺怪しいし、ぱっと見変質者だし、この格好で街歩いてたら絶対職質されるし───」

 

真実を知った事により、この日蒼のカリスマは自室でブツブツと呟きながらその日の夕食も部屋で一人で食べていた。

 

仮面の中が塩水で溢れ出す。そんな悲しい……一時の夜の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△月♯日

 

今日は、少しだけ嬉しい事があった。

 

シモン君が立ち直った。それも前よりも強く、大きくなって立ち上がれた。切っ掛けは色々あるんだろうけど、最大の功労者はニアちゃんで間違いないだろう。

 

ニアちゃんは螺旋王の娘と名乗っていたから最初は皆に警戒されていたけど、その後色々あってシモン君の復活に大きく貢献。心配していた身としては喜ばしい限りである。

 

それと、シモン君を励ます気だったDチームも戦闘中テンションが上がりまくって覚醒。獣みたいな形態のダンクーガとなって襲ってきたガンメンを粉砕していた。

 

他にもイマージュとか色々気になる事はあるのにシモン君の復活ぶりにそれ処ではなくなった。無論戦闘を終了した後もダイグレンの格納庫は大はしゃぎだ。

 

あ、ダイグレンっていうのはシモン達が乗った戦艦型のガンメンで、チミルフが乗っていたダイガンザンを改修したものである。

 

誰もが盛り上がっている中、自分も遠巻きにそれを見つめていると、ニアちゃんがチョコチョコと自分の方へ歩み寄り……。

 

『お父様が貴方の事を探していましたよ』

 

と、爆弾発言をかましてくれたのだ。

 

や、ニアちゃんは悪くないよ? 彼女はただ思った事を口にしているだけだ。

 

けどさ、それでも自分は思わずにはいられないのよ。

 

何でボスクラスの奴らが俺に目をつけるかなぁ!

 

え? 既にグランゾンに乗っているお前が言うなって? ほっとけ!

 

まぁ螺旋王の方はシモン君に任せよう。娘さんを貰う婿的な意味で、仲人にはクロウさんね。

 

シモン君も立ち直れたし、ヨーコちゃんも吹っ切れたみたいだし、自分もそろそろ今後の事を考えようと思う。

 

 

 

 

△月◎日

 

今朝、国連の方から自分とグランゾンの引き渡しの要請が突き付けられてきたらしい。

 

明らかに三大国家からの政治的圧力が原因なのだろうが、それにしても露骨である。まぁ尤も彼らがそれを受け入れるとは思えないし? 当分は大丈夫だとは思うけどね。

 

けど、あの砂漠で国連軍を一方的に無力化してしまった事が原因で世界中から目の敵にされているようだから、こういった事態が来るのは何となく分かっていたけどね。

 

因みに、その時巻き込まれていたスザク君なんだけど……何とも微妙な表情で苦笑いしていた。

 

ランスロットの開発者であるロイド伯爵はそりゃあもう憤慨していたとか、今はそんな様子はなく自分ともそれとなく話してくれるし。

 

ただ、時折人を実験動物を見るような目で見るのは勘弁して欲しい。リーロンさんの件でああいう目はホント苦手となってしまったのだ。

 

話を戻すが、主に危険度的な意味で自分……というよりもグランゾンか。あの機体が黒の騎士団やソレスタルビーイングよりも高いらしいとか、その事実に自分は呆れればいいのか怒ればいいのか、間違っても喜ぶ事ではないと思う。

 

本当ならもう暫くZEXISと共に行動したかったけど、あまりここにいては彼等にも迷惑が掛かる。インペリウムとはまだ決着も付けていないし、彼等といればその機会も増やせると思ったから今まで一緒にいたのだが、そろそろ潮時だと思う。

 

明日の朝、日の出と共にここから去ろうと思う。既にジェフリー艦長には話を通したし、ハッチは開けておくと言ってたから行動はすぐに起こせそうだ。

 

それに……ね、あんまり此方を監視させてばかりで戦力を割くような真似はさせたくないし、これからの戦いはより激しさを増していく事だろう。

 

なんだか界震とかいう現象も起こり始めているっていうし、世界はまた目まぐるしく動くだろうから。

 

さて、いい加減眠らないと明日も早い。取り敢えず明日の寝床はどうしようかと思いつつ、今日の所は終わるとする。

 

……そういや、今までずっと仮面を付けたまま生活してたから分からなかったけど、最近髪が変色している気がする。

 

紫色とか、この仮面にそんな色使われていないんだけどな……まさか、脱色!?

 

禿げたりしないだろうな。

 

 

 

△月§日

 

ZEXISから別れて数日、今日の俺は久しぶりに激怒プンプン丸である。

 

や、冗談抜きで、ホンキで怒り心頭の自分が居たりします。悪ふざけをしとかないと平静が保てない自分はまだまだ未熟なのだろう。

 

────“スローネ”ZEXISに参加したソレスタルビーイングに代わって武力介入を始めた新たな三機のガンダムなのだが……こいつ等、どう考えても従来のソレスタルビーイングが行ってきた武力介入の仕方がおかしいのだ。

 

インペリウムとか紛争地帯への介入ではなく、民間の軍事施設とか、とあるユニオンの基地とか、まるで政治的に都合の悪そうな施設ばかり狙っていやがるのだ。

 

トドメに今度はとあるパーティー会場にビーム攻撃をぶち込みやがった。なんでも軍に資金を援助していたりする人があそこにはいたらしいが、だからといって武装も何もない唯のパーティーに攻撃を仕掛けるか?

 

事情を知らない人からすればそれもソレスタルビーイングの仕業だと思われるだろう。それが自分にはどうしても我慢できない。

 

確かに世間様からすれば彼等は“悪”だろう。だけど、この世界の為に、自分達なりに頑張ろうとしている人達の一人なのだ。

 

そりゃやり方は大部分の人が否定するだろうさ、自分も「それはおかしくね?」と思ったりする事もある。

 

けど、そんな事までしないと分かってくれない世界の方は全く悪くないのか? 彼等だけを責めればそれでいいのか?

 

俺はそんな事したくない。ここでそんな事を認めてしまえば……あの日、自分の為にスープを作ってくれた子供達に顔向け出来なくなる。

 

だから、これから彼等を問い詰めようと思う。なんの為にあんな事をしたのか、……もし、満足のいかない答えが返ってきた時。

 

その時は……少しばかりOHANASHIしようと思う。

 

何事も対話って必要だよね。

 

あ、因みにグランゾンの隠し場所ですけど、もう隠す場所に悩む必要はなくなりました。

 

“ワームホール”所謂重力の底に収容可能となったので現在グランゾンはそこで待機させています。勿論蒼のカリスマの衣装一式も一緒です。

 

これで、最近は身軽な行動が出来て色んな所を見て回っています。

 

現在自分が滞在しているのは日本の熱海、“くろがね屋”という旅館にお世話になっている。

 

露天のお風呂なのでオススメしますよ。……強面な人が多いけど。

 

 

 

 

 




次回、OHANASHI回になるかも?

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