『G』の日記   作:アゴン

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ここ最近暑さが酷くて執筆が遅くなりました。

しかも短い。楽しみにして下さる方、申し訳ありません。

そして皆深読みシスギィのハードル上げスギィ!

もうヤメテヨォ、なんでもするからぁ(懇願)


その97

 

 

 

※月μ日

 

……先日、少し感情的になり過ぎた自分は今日幾分か落ち着きを取り戻した為、状況整理の意味を込めて改めて日記を書いていこうと思う。

 

先日、自分がリモネシアに訪れた際に起きた出来事────それは、自らクロノと名乗る集団による突然の襲撃だった。

 

本当に突然だった。リモネシアに上陸するその時までグランゾンのスキャニング能力で誰か不審者がいないか念入りに調べたと言うのに、奴等は音もなく自分の周囲を取り囲んでみせたのだ。今思えばこれも連中を束ねている“   ”の力によるモノなのだろう。

 

……奴に掛けられた呪いの所為で名前を書けないから、今後“   ”は喜び野郎と呼称する。

 

喜び野郎とその配下は自分に仲間になれと脅してきた。当然自分は断るつもりだった。だが、喜びのクソ野郎は俺が断るのを見越していたのか、俺の目の前で胸糞悪くなる光景を見せつけやがった。

 

シオさん、ラトロワさん、そしてジャール大隊の皆、エタニティ・フラットの影響による時の牢獄に縛られ、身動き出来ない彼女達を後ろから斬りつけやがったのだ。

 

………久し振りに殺意が湧いた。いや、実際殺してやろうと思った。何の抵抗も出来ないラトロワさん達を背後から一方的に攻撃した奴等を、喜びのクソ野郎を、ありったけの力で全開で殺してやりたかった。

 

けれど、喜び野郎は次に動けば子供達を殺すと自分に脅してきた。とびっきりの───それこそ、聖人を思わせる眩しい笑顔と共に。

 

頭がどうにかなりそうだった。終始微笑みを浮かべながら、命を狩ろうとしている奴に俺は怒りを抱くと同時にどこか不気味さを感じていた。

 

 ……結局、俺は奴の言う事に従うしかなかった。行動を共にする事を強制したり、監視を付けられる事はなかったが、その代わり俺は奴の呪いを受ける事になった。

 

呪いの内容は自分に対し従順になるというもの。受けた人間の命が続く限りこの呪いは解かれる事はなく、また呪いの力はより強力になる。

 

しかもこの呪いの厄介な所は単に相手を縛る事だけじゃない。時が経つほどに深層心理に侵蝕し、心の底から奴の下僕に成り下がる────反吐が出る呪いだ。

 

既に、心のどこかで奴が正しいと感じている自分がいる。これに対抗する為に先日自分は日記に自己嫌悪をありったけ書き殴ったのだが、お陰で少し落ち着く事が出来た。

 

この呪いは受けた人間の心の隙の大きさに比例して侵蝕の力を強めてくる。怒りに身を任せて暴れればそれこそ奴の思い通りになり、俺は今頃奴を崇拝する傀儡に成り果てていた事だろう。

 

ホント、ZENさんには頭が上がらない。彼が駆けつけてくれたお陰で奴等は撤退し、ラトロワさん達の治療も滞りなく行えた。幸い傷は深くなく、治療は滞りなく終わった。時が止まるという特殊な環境下で治療が上手く行くのか不安に思ったが、どうやらZENさんはエレメントの子達と同じくちょっとした特殊能力も使えるらしく、治療している合間のシオさん達はその時だけ鼓動がちゃんと動いていた。出血の流れが一瞬速くなったのもZENさんのその能力の影響だと思われる。

 

ただ、意識だけは止まったままの様で皆自分の事を認識している様子はなかった。ZENさんの話だと怪我を負った彼女達は自分達が怪我を負った事すら認識できず、痛みを感知しないまま完治するのだという。

 

一見便利そうな状態に思えるかもしれないが、逆を言えばもし連中の攻撃でシオさん達が致命傷を負えば、最悪自分でも知らない内に死んでいたという事にもなる。……その事を考えるとゾッとするし、今度こそ奴等に対する怒りで本当に我を失ってしまいそうだ。

 

ZENさんといいGENさんといい、不動の名の付く人には本当に頭が上がらない。礼はいらないと彼は言って早足に去っていた。彼は不要と言っていたが、せめて日記の中ではお礼を言っておこうと思う。

 

そしてもう一つ、有益な情報を手に入れる事が出来た。ZENさんが言うにはあの喜び野郎は“最後の一人”らしく、他にも奴に似た連中が複数存在しているらしいのだ。

 

奴みたいなのが何人もいる事に頭が痛くなるが……それでも知っていれば困ることはないので、この情報は有り難く受け取っておくことにしよう。

 

……取り敢えず、今日の所はこれで終わりにしよう。グランゾンのコックピットにいれば比較的心に余裕を持てている気がするし、奴に掛けられた呪いを解く算段を立てなければならない。

 

本当なら今頃分かれたZ-BLUEのいずれかの部隊に合流するつもりだったのだが、それは叶いそうにない。取り敢えず、この日の気持ちを忘れない為、最後に日記に記しておこうと思う。

 

────喜び野郎、お前が俺にした事は絶対に忘れない。

 

 

※月α日

 

シラカワ博士からの応答がない。いつもなら自分の声に応えてくれた博士が、何故か今日は幾ら呼んでも返事をしてくれる事はなかった。

 

代わりにあるのはグランゾンの全天モニターに映し出されたシラカワシステム発動中の点滅のみ、もしかしたら博士は既に自分の状態を察して、自分の深層心理に食い込んでいる呪いに対抗しているのかもしれない。

 

シラカワシステムの中にはパイロットの生命維持の役割も備わっている。自分が受けた呪い、それが白河修司という本質()を失わせると判断したのなら、このシステムが動いているという事も納得できる。

 

そして、同時に理解する。自分がシュウジという人間でいられるのはグランゾンのコックピット内部だけであり、一度外に出てしまえば、途端に俺は奴の呪いで心が一気に侵蝕されてしまうという事を。

 

そしてその呪いの強さは博士が食い止めるだけで精一杯な程に強力な事、何度も呼んでいるにも拘わらず反応すら無い事から……多分、間違い無いのだろう。そして、現段階において、自分がこの呪いを解く方法はないという事も。

 

───いや、あるにはある。殆ど賭け、それも分が悪すぎる賭けだが、一つだけこの呪いを解く方法が俺にはまだ残されている。

 

その為に俺は多くの人達の信頼を踏みにじる事になる。多くの人達の気持ちを裏切る事になる。……トレーズさんやシュナイゼルにも顔向けできなくなる。

 

けど、やるしかない。怖いし、不安だけど、やるしかないんだ。サイデリアルとクロノ、そして例の“奴等”に借りを返す為にも、俺はやり遂げなくてはならない。

 

俺が奴の呪縛から解放される為に必要なただ一つの方法、それは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────死ぬことだ。

 

 

 

 

 

 

 




最近、マジで暑さが洒落になってません。

みなさんも気をつけて下さい。

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