『G』の日記   作:アゴン

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遂に始まりましたシンフォギアGX!(今更感)

個人的には優しいマリアさんの活躍が気になる所です。




その95

 

 

 

 

 

日本・連邦所属基地内。ミケーネと戦い、死線をどうにか潜り抜けたZ-BLUEは疲弊した機体と己の体、何より精神を休めるべくラウンジへ集まっていた。

 

「……甲児の様子は?」

 

「ついさっき休んだ所。今は休ませてやれって軍医の人が言ってた」

 

掠れた声でそう口にするサヤカにヒビキはそうかと返事する。“ミケーネ神”これまでとは文字通り桁違いの敵の登場に、Z-BLUEの面々は気持ち的に参っていた。

 

その力はまさに神の如く。神々全てが尋常ならざる剛力を有しており、一撃一撃が此方の予想を上回っていた。

 

今自分達が生きていられるのは単に運が良かっただけ。甲児のマジンガーZが放った光子力の輝きが、偶然彼等と同じ神であるゼウスを呼び出せたからである。

 

同じミケーネの神でありながらハーデスと敵対するゼウス。彼の力が自分達を守ってくれたお陰で自分達は死なずに済んだのだ。他にも、連中が自分達を手を出す価値が無いと判断したのも大きい理由だが、兎も角今自分達がこうしていられるのは間違いなくゼウス神と、彼を呼び出してくれた甲児のお陰だ。

 

その甲児はハーデスによる攻撃を受けてしまいマジンガーZはボロボロ、甲児自身も軽くはないダメージを受け、現在はベッドの上で気を失っている。

 

圧倒的と呼べるミケーネの神々の力、それを体験したZ-BLUEは肉体だけでなく、精神────心までもが疲れ切っていた。

 

「これから俺達、どうすりゃいいんだろ」

 

竹尾ゼネラルカンパニーの若社長であるワッ太、その口調にはいつもの元気に満ちたものがなく、心底落ち込んだ年相応の少年のそれだった。

 

“神”これまで経験した事のない敵は破界事変や再世戦争とは異なった異質の存在、唯でさえ宇宙魔王や堕天翅のミカゲといった超常の怪物達が跋扈し、エタニティ・フラットの完成までもう猶予がない所まで来ている。

 

……いや、エタニティ・フラット、時の牢獄に関しては心配ないかもしれない。ミケーネの神々の目的は真戦と呼ばれる戦いに打ち勝ち、バアルを滅ぼす事にある。時の牢獄が完成するのは奴等にとっても見過ごせない事態の筈だ。

 

尤も、奴等程の存在が地球で大暴れすれば、それだけで地球に大打撃が及び、喩えバアルに打ち勝ったとしても、その頃には地球は滅んだ星に変わっている事だろう。

 

どうにかしなくては、しかし今の自分達では奴等に対抗できるだけの力がない。追い詰められた状況の中、誰もが下を向く中、一人言葉を口にする者がいた。

 

「どうするもこうするもない。連中は自然災害……台風のようなモノだ。俺達はそいつ等を相手する事なく、ジッと身を潜めていればいい」

 

ギュネイ=ガス。ネオ・ジオンからシャアの計らいで編入した臨時のZ-BLUEの一人、彼から発せられる言葉は的確で、誰も反論出来ないものだった。

 

ギュネイ=ガスの言う事は正しい。現に連中は今どこかへ姿を消しているのか、今の所被害を受けたという報告は届いていない。何時出て来るのか分からない存在、それともこの世界自体に興味はないのか……いずれにしても、それは確かに台風や地震といった自然災害に近い在り方だった。

 

「破界事変と再世戦争の頃にもあったんだろ? 次元獣ってどこからともなく現れては暴れ回る厄介者ってのは。ミケーネって連中も別に今すぐ俺達人間を滅ぼすつもりはないみたいだしな。放っておいてもいいんじゃないか?」

 

「ふざけるな!」

 

淡々と事実を述べ、クールを装った喋り方をするギュネイにシンが食って掛かる。確かに、次元獣とミケーネは似ている所もあるかもしれない。戦っている最中も終始此方に興味は無さそうだったし、事実自分達と奴等ではそれくらいの力の差はあった。

 

けれど、奴等と次元獣とでは規模が違う。力も、欲も、ミケーネの連中の方が何倍も有している。そんな奴等が好き勝手に暴れてしまえば、その地で起きる被害は計り知れないモノとなる。

 

何より、巻き込まれた人々はどうなる。強大な力に巻き込まれた人々の命や住む場所はどうなる。嘗て戦争に巻き込まれて家族を失ったシン=アスカにとっては、ギュネイの話はとても容認出来る内容ではなかった。

 

「奴等の目的はバアルと戦う事、その為の拠点としていつかは地球を狙ってくる! そうなった時、俺達人間はどうなると思っている!」

 

「さぁな。精々奴隷として扱ってくれる事を祈るしかないんじゃないか? 連中だってみすみす労働力となるモノを無闇に滅ぼしたりしないだろ」

 

ギュネイのその一言にシンは頭に血が登るの感じた。逆鱗に触れられた事で咄嗟に拳を握り締め、胸倉を掴むシンだが、それよりも早くギュネイからの言葉が紡がれる。

 

「だったらどうすりゃあいい。連中相手に手も足も出なかった俺達が、一体どうやって奴等と戦えばいい。死ぬ気で特攻するのか? それで何が残る。精々自分の気が少しばかり紛れるだけだろうが!!」

 

「…………!」

 

怒鳴る様に吼えるギュネイにシンは何も言えなくなった。自分勝手に戦い自分勝手に死ねば、後に残される人間には辛い想いを押しつけるだけ。その事を理解しているシンはそれ以上なにも言う事なく、ギュネイの胸倉を乱暴に放すのだった。

 

再びラウンジは沈黙になる。先程よりも重くなった空気にギュネイは舌打ちし、乱暴に席に座る。誰も喋らなくなったラウンジ、誰もが何も言えなくなった頃、掠れる様な声がラウンジに響いた。

 

「それでも、それでも俺は……諦めたく、ない」

 

「バナージ……」

 

それでもと、そう言い訳する子供の様に口ずさむバナージに視線が集まる。ミケーネの力を知った。宇宙魔王やミカゲ、様々な敵の強大な力を知った。けれど、それでも諦めたくない。振り絞った彼の呟きにそれでもギュネイは認める事はなかった。

 

「フン、そもそも一体どうやって連中と戦えばいい。連邦の主力部隊だって歯が立たないって聞いてるし、この星の何処にも奴等と戦える奴なんているわけ───」

 

「いや、いる!」

 

ギュネイの言葉を遮ってラウンジに入ってくる一人の男、仮面を被ったゼロの登場に、下に伏せていた面々の顔が一斉に上がった。

 

「ギュネイ=ガス、確かに君の言うとおりミケーネの神々の力は我々の予想を上回っていた。その力は計り知れず、連邦やネオ・ジオンにも太刀打ち出来る者はいないだろう」

 

「そ、それはそうだろう? だったら───」

 

「だが、俺は知っている。喩え一人だろうと……否! 一人だからこそ自ら進んで戦う一人の愚か者の存在を!」

 

確信に満ちた声色でゼロは言う。彼の言う愚か者という言葉に心当たりがある面々はまさかと思い、その表情を驚愕に染め上げる。

 

そんな時だった。ラウンジに駆け込むように入ってくるボスが、息も絶え絶えになりながらある報告を彼等に告げる。

 

「た、大変だ! 熱海に、日本の熱海にミケーネの連中が現れて暴れ回ってやがる!」

 

「何だと!?」

 

「しかもそれだけじゃねぇ! グランゾンが、蒼のカリスマが奴等と戦いを始めやがったらしいんだ!」

 

ボスからの報告にヒビキを始めとしたZ-BLUEの面々、そしてギュネイ=ガスが驚きに目を見開かせている中、ゼロ───ルルーシュは不敵な笑みを仮面の奥で浮かべる。

 

「そうだ! 奴が、シュウジ=シラカワがこの状況を見過ごす筈がない!」

 

何故なら、奴は自分達以上に神という存在を毛嫌いしているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る熱海の街で剣戟の音が響く。大気を震わし、地響きを轟かせ、空を揺さぶるその打ち合いに、地元住民の人々は恐怖で震え上がった。

 

燃える街並み、瓦礫の上で戦う巨人と巨人、打ち合いを続ける中で勝ったのは……蒼き魔神ことグランゾンだった。

 

「な、ば、ばかなぁぁぁぁっ!!」

 

手にしていた剣を腕ごと弾き飛ばされた巨人、ミケーネの神の一柱が断末魔の叫びを上げ、その瞬間魔神の手にしている大剣で以て真っ二つに両断される。

 

血飛沫をまき散らし、倒れる頃には消滅する同胞を目の当たりにした他の神々の表情が激変する。神と呼ばれ、太古の昔から存在してきた自分達の同胞が、一人の魔神によって葬られたのだ。

 

怒りに染まった神々は、一斉に目の前の魔神を迎え撃つ。剣、鎌、斧と様々な獲物を手にした彼等は、全方位から蒼き魔神を討ち倒そうと襲いかかる。

 

手にしている武器はどれも原始的なモノ、しかし仮にも神と呼ばれる彼等の腕によって揮われるその力は絶大。魔神は襲い来る刃の群を必要最低限の動きで回避、直撃を避ける事に徹した。

 

しかし、手数も多く、力のある連中の相手をするのは中々骨が折れる作業だ。このままではジリ貧だと魔神を操る魔人が舌打ちをした時、通信に聞き慣れた声が届いてきた。

 

『シラカワ殿! 住民の避難はただいま完了しましたぞ!』

 

コックピット内に響いてくる声を耳にしたと同時に魔人蒼のカリスマ────シュウジは、モニターに浮かぶ座標地図に目を通す。そこには自分以外の生体反応は示しておらず、声の主……ブロッケンの言う通り、ここ熱海一帯の住民達は避難したようだ。

 

「いい仕事をしたブロッケン。じゃあ、此方もそろそろ本腰を入れる事にしよう」

 

迎撃に訪れていた連邦軍も既に熱海から離脱し、逃げた住民達の所に向かっている。この分だと彼等によって熱海の人々は無事に回収される事だろう。

 

ならば、後は目の前の邪神共を駆逐するだけ。シュウジは操縦桿を握る手に力を込め、ミケーネの神々を見据えた。

 

『たかが人間風情が粋がってくれる!』

 

『我々に楯突いた事、骨の髄まで後悔させてくれる!』

 

降りかかる巨大な刃の群、それを真っ正面からグランワームソードで受け止めた瞬間───。

 

「グラビトロンカノン、発射!!」

 

分子間引力をも引き裂く高重力の雨を神々に叩きつけた。突然の高重力により膝を付き、地面に這い蹲るミケーネの神々。その表情は驚愕と、恥辱による怒りで染まりきっていた。

 

『こ、この! 人間風情がぁっ!』

 

『我らを地に膝を付けた程度でいい気になるなよ!』

 

猛り、吼える。神と名乗る者達の雄叫びに対してシュウジはただ冷ややかな目で見下ろしていた。

 

「……神という奴は、どいつもこいつも勝手な事しか言えないのか?」

 

自らの行いに疑いを持たず、ただ破壊の限りを尽くす。自分達の存在こそ至高であり、他の者達は塵程度にしか思わない。そんなミケーネの神々にシュウジは心の底から軽蔑していた。

 

「ワームスマッシャー」

 

紡がれる一言と共に、無数の閃光の槍がミケーネの神々を貫いていく。喩え耐久力が高かろうと内側から攻めてしまえば脆いモノ、この方法で案外容易く倒せるのは最初の奇襲で実証済みだ。

 

襲いかかってきたミケーネの神々は全て倒し、残るは約半数。奴等の僕らしきタロス像を含めればまだまだ気を抜けない状況だが、シュウジはそれでも負けるつもりはなかった。

 

連中の親玉であるハーデス神も未だ座した姿勢を解いておらず、寧ろ不気味な笑みを更に深くしていた。奴を倒さない限り地球は未だ危機を脱しているとはいえない。勝負はこれからだと思われた時、ハーデス神が愉快そうに笑いながらシュウジに声を掛けた。

 

『フフフ、まさか連中の他にもまだこれほどの力を持っていた者がいたとはな。確かにこの世界は太陽の輝きに差し掛かっているのやもしれん。しかもこの力の波動、貴様は既にシンカの道に入ろうとしているな』

 

(……太陽の輝き、シンカだと? そういえば宇宙魔王の奴も似たような事を言っていたな)

 

ハーデスの言葉に心当たりのあるシュウジは内心で一瞬の考えに耽る。“シンカ”どうやら自分の知る進化とはニュアンスが違うようだが、今はそんな事に思考を割く訳にはいかない。立ち上がり、その両手に剣を携えるハーデスに、シュウジはグランゾンと共に目の前の敵を見定める。

 

『先のZ-BLUEとかいう連中もそうだが、貴様は特に放っておくと後々が面倒そうだ。宇宙魔王には悪いが、貴様にはここで消えて貰うとしよう』

 

「成る程、その傲慢さといい理不尽な物言いといい、確かにお前は神なんだろうさ。けどな、あんまり人間舐めてると……手痛いシッペ返しを食らうぜ」

 

『フン、ほざくなよ人間がぁ!』

 

互いに剣を取り、同時に地を蹴る。シュウジはグランゾンのスラスターに火を入れて加速し、勢いを乗せたままグランワームソードを振り抜く。ぶつかり合う剣と剣、その衝撃に瓦礫は吹き飛び、周囲に燃え盛っていた炎も消し飛んでいく。

 

スピードは確かに此方の方が上だった。なのに、今最大限の一撃を放った自分達の方がハーデスによって押し留められている。

 

さすがにミケーネの神々を纏めるだけの力はある。マジンガーZを倒した一撃の重さを体感するシュウジ、その頬に冷たい汗が流れる。

 

(やっぱり、こいつも宇宙魔王と同様トンでもない化け物だったか。パワーだけならガイオウに匹敵するんじゃないか!?)

 

スラスターの火に幾ら力を注いでも目の前の神はビクともしない。このままではいずれ押し返されると思ったシュウジがネオの力を引き出そうとした時、彼等が現れた。

 

『そこまでだハーデス! お前達の相手は俺達がしてやるぜ!』

 

 

ボロボロの姿となったマジンガーZとZ-BLUEの登場に再び熱海は混沌の時を迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




Q主人公はOTONAですか?

A本人はOTONAでありたいと思っているが、実際はSEINEN止まりだと思っている。

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