『G』の日記   作:アゴン

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今回はちょっとした人間関係を書いてみました。




その91

 

 

 

 

インベーダー、そして宇宙魔王との激闘を制した大グレン団及びシュウジは現在、彼等が乗るアークグレンと共に地球へ向かっていた。かの侵略者達相手に少なくはない損害を受けた大グレン団は、今もアークグレンを修理しながら航路を続けている。

 

アークグレン格納庫、機体修復の為にここ数日格納庫に入り浸っていたシュウジはある機体の前に立ち、その機体を眺めていた。

 

先の戦いで回収した巨大な氷塊、その中に眠っていた巨大な人型機動兵器とパイロット、今も眠り続けている彼女に代わり、この機体の正体を探るべくシュウジが横たわる巨大ロボットを調べていたのである。

 

一通り調べ終わったのか、手元の情報端末に視線を落とすシュウジ。余程興味深いのか、機体の情報を見ていて、偶に感心の声を漏らしていた。

 

「シュウジ、お疲れさま。差し入れ持ってきたわ」

 

「ありがとうヨーコちゃん、頂くよ」

 

カートに乗せられた食料を受け取ったシュウジは、近くにあった椅子に座り食事を摂る。二人分の食料を持ってきたヨーコも自然とシュウジの隣に座り、共に黒い機体を見上げながら食事を摂る事にした。

 

スタイル抜群のヨーコが隣に座っていながら、全く興味を示す事なく情報端末に目を向けるシュウジ。その事が癪に障ったのか、ヨーコの表情が少しばかり強張る。

 

「……で、この機体の事、何か分かったの?」

 

「そうだね。まだ全体の四割程度しか解析してないけど、大体の見当は付いたかな。機体の大きさ、最大出力とその際の規模、そして技術力の高さから見て、この機体は別世界の機動兵器と見て間違いないだろうね」

 

ムッとした表情と不機嫌な声色、なのにも拘わらずシュウジは変わらず情報端末に視線を落としている。勉強熱心なシュウジにとうとうヨーコは観念したのか、深々と溜息を吐いた。

 

「そしてもう一つ分かった事、これは機体を調べている内に最初に発見したのだけど、この機体は合体機構が施されていてね、どうやら二人乗りみたいだったんだよ」

 

「………え? 二人乗りって、私達が見つけた時はあの子しかいなかったじゃない」

 

そう、ヨーコが言うように、この黒い機体には回収された女の子一人しか搭乗していなかった。けれどシュウジの言葉もまた事実であり、この機体に施されたコックピットは二つ存在している。

 

何故二人乗りの機動兵器に一人しかいないのか、発見された時の損傷具合から見て、激しい戦いに耐えきれず殉職したモノだと思われたが、そう予想するにはもう一つのコックピットは剰りにも綺麗に残されていた。

 

(最初から彼女しか乗っていなかった? けれど何の為に? 機体の構造からしてそのもう一人のパイロットがいなければ、この機動兵器は本来の出力の半分も引き出せない筈)

 

この黒いロボットが潜り抜けた死線は、破界事変と再世戦争を経験したシュウジから見ても相当なモノだと理解出きる。それこそ、アンチスパイラル級の敵を相手に……今でこそリーロンとシュウジ、そしてアークグレンの設備があって最低限動けて戦える程度にまで修復したが、発見当時その損傷は凄まじいものだった。

 

以上の点から様々な事例が予想されるが、それらは所詮シュウジの頭の中の事でしかない。これ以上考えるのは無駄だと察すると、シュウジは漸く情報端末から視線を外し、隣のヨーコに目を向ける。

 

「所でヨーコちゃん、例の女の子の様子はどう? 勝手に機体を弄ったり調べたりしたからその事について謝りたかったんだけど……」

 

「彼女ならまだ医務室で眠っているわ。リーロンが言うには冷凍睡眠から無事に蘇生されて休眠状態にあるみたい」

 

ヨーコの返事にシュウジはそうかと口ずさみ、渡された食料を平らげる。ひとまずリーロンにこれまで分かった事を報告した方がいいなと判断したシュウジは、格納庫を後にしようと椅子から立ち上がる。

 

「ご飯、持ってきてくれてありがとうね。ヨーコちゃん、助かったよ」

 

「え? あ、うん……」

 

それじゃあ。と、そう言って格納庫から出て行くシュウジをヨーコは呼び止める事はせず、静かに去っていく彼の背中をずっと見つめ続けていた。

 

シュウジがいなくなった事で静まり返る格納庫、黒い機体を前にして座り込んだヨーコはそのまま膝を抱える。

 

「ほんと、変わっちゃったな。アイツ」

 

思い返すのはまだ自分達の大陸が暗黒大陸と呼ばれていた頃、初めて会った時のシュウジは貧弱でとても頼りがいの無い青年だった。ヘタレ具合で言えば当時のシモンとどっこいどっこいな程に……。

 

それが今では世界最強の一角、彼の一面でもある蒼のカリスマに至っては、世間では史上最悪にして最凶のテロリストとしてその存在を知らしめている。彼の操るグランゾンの事も拍車を掛けて、一時期はインベーダーを越える脅威として恐れられ、地球連邦政府は今もそんな彼に脅えている節がある。

 

先程の戦闘の時だって、彼は敵の親玉相手に一歩も引かずに戦ってみせた。ブラックホールそのものと言われる宇宙魔王を、彼は一人で撃退したのだ。

 

(随分、遠い所に行っちゃったなぁ……)

 

実力的にも、精神的にも強くなったシュウジを見てヨーコは少し寂しそうに笑みを浮かべる。自分が思っている事は今のシュウジを、これまで彼が築き上げてきた努力を否定する事に他ならない。

 

けれど、それでもヨーコは思う。もし彼が自分達と同じ10年間を過ごす事ができたなら……一体、どんな関係を築いてこれたのだろう。

 

無駄だと分かっていながらも、ヨーコはしきりにそんな事ばかり考えていた。

 

(ヨーコ、やっぱりお前シュウジの事が……)

 

そんな彼女を物影から覗き込んでしまっている一人の男がいた。キタン、先程までのヨーコとシュウジの遣り取りを見ていた彼は、もどかしい気持ちを抱えたまま、何時までも彼女の後ろ姿を見つめ続けているのだった。

 

また、そんな彼の後ろでは───。

 

(キタンさん、アンタはぁ、アンタって人はぁ……!)

 

「凱、どうした? 何故泣いている?」

 

(静かにしなさい號! 今大事な所なんだから!)

 

真ドラゴンのパイロット達が出たくても出られずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月ヽ(`Д´#)ノ日

 

今日、少しばかり嫌な事があった。インベーダーを倒し、地球に帰ろうとしていた自分達に、いきなりネオ・ジオン軍が襲いかかってきたのだ。インベーダーと宇宙魔王、これらの勢力とガチンコ衝突した為に疲弊していた所に容赦の無い攻撃をしてくるネオ・ジオンにちょっぴり苛立ちを覚えた自分はグランゾンで奴等の相手をした。

 

まぁ、これは別にいい。正式に宣戦布告を発表したネオ・ジオンが相手だったからある程度納得出来るし、途中からルルーシュ君とスザク君がそれぞれの愛機と共に援護に駆けつけてくれたから楽に相手が出来た。

 

それに向こうも何だかやる気がなかったらしく、戦況が此方に有利に流れてきた所で撤退、そそくさと戦域から離脱していった。

 

その後も宇宙怪獣と呼ばれる化け物達と戦ったのだが、実はこの時自分は結構焦っていた。何せ宇宙怪獣はアンチスパイラルが保有していた戦力だ。まさか連中が再び動き出したのかとドギマギしていたのだが、思わぬ戦力が加勢してくれた事で状況は好転、一気に連中を叩くことが出来た。

 

タカヤ=ノリコちゃん。ガンバスターと呼ばれる例の黒い機体に乗った彼女達が来てくれた事で、戦況は一気に自分達のモノとなり、自分もネオやBHCを使わずに連中を撃退する事が出来た。(因みにこの時にノリコちゃんから、宇宙怪獣やガンバスターの事をさわり程度に教えて貰った。)

 

で、宇宙怪獣等を倒し取り敢えず地球の危機を防いだ事に安堵した時、奴等が来たのだ。

 

地球至上主義、サイガス准将が率いる連邦の艦隊が、有無を言わさずガンバスターを寄越せと言って来やがったのだ。

 

自分達こそがガンバスターを上手く扱える。そう自信満々に応える連中に嫌悪した大グレン団の面々がそれはないだろうと反論すると、連邦の連中、自分達に従わないと世界中の敵に仕立て上げると脅しにかかって来やがった。

 

久し振りに腹が立った。ムカついた。苛ついた。だから……ついやっちゃったんだ★

 

いや、手は出してないよ? 向こうが手を出して無いのに此方から仕掛ける訳にもいかないからね。自分がやったのは連中と同じ、少しばかり脅しを掛けただけである。こう、それ以上しつこいと自分が相手をするぞ! みたいな感じに……。

 

事前にノリコちゃんが奴等の誘いを断った事もありその効果は絶大、悔しそうに顔を歪めて捨て台詞を吐いて逃げてくサイガス准将を見た時は……正直ザマァと言いたくなった。

 

けれど、その所為で再び単独行動をしなければならなくなった。連中に脅しを掛けた事により、奴等は自分を今後必要以上に敵視してくる事だろう。もしかしたらクロノを通して連邦を煽るかもしれない。

 

まぁ、そうなったらなったで構わないけどね。実質今までと変わらないし、もしリモネシアを狙おうモノなら……その時は奴等の言葉を待たずに連邦ごと叩き潰すだけである。尤も、此度の大統領は聡明な人だからあまり心配はしてないけどね、

 

で、今自分はグランゾンと共に地球に降りている。場所は例の如く深海だが……ここからどうしよう。

 

ネオ・ジオンの宣戦布告に合わせて地球も騒がしくなってきたし、取り敢えず自分もあちこち動いていこうかなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キング、聞きました? 例の魔人がまた派手にやらかしたみたいですよ』

 

『あぁ、既に耳にしているよ。相も変わらず彼は好き勝手やっているようだ』

 

『その割には特に干渉せず傍観してますのね? クロノとしてその態度は些か問題なのでは?』

 

『私に出来る事などたかが知れてるよ。仮に手を出した所で恐ろしい逆襲に遭うのは目に見えている。魔なる神を挑発する程、私は命知らずではないよ。……それに』

 

『それに?』

 

『神を相手にするのは悪魔、もしくは同じ神である事が相場として決まっている。───もうじき、凶星が満ちるそうだよ』

 

『凶星?』

 

『君も知るといい。一万と二千年を越えて行われる神々の戦いを……君の無事を祈っているよ。クイーン』

 

薄暗がりの中で響きわたる二つの声、やがて男性の声が聞こえなくなると、残された女性はモニター越しで一人笑みを浮かべる。

 

「神々の戦い、差し詰め黄昏(ラグナロク)と言った所かしら……果たしてこの魔神様はその戦いに生き残る事が出来るかしらね」

 

別モニターに映し出された蒼い魔神、映像越しに見えるその禍々しさと猛々しさを前に、クイーンと呼ばれる女性は再び妖しく微笑むのだった。

 

 




ボッチ視点
「それ以上しつこいと怒っちゃうぞ」

サイガス視点
「BHC発射三秒前」

大体こんな温度差

次回からは結構話が飛びます。主に某銀髪兄ちゃんに出会す所まで……。



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