『G』の日記   作:アゴン

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今回は考察回。


その86

 

 

†月(っ´ω`c)日

 

梅雨の時季も過ぎ、最近は気温も上がり、この世界に来て二度めの夏も近く差し掛かってきた頃、現在自分と元怪我人だったジン君はオーブと呼ばれる国にやってきていた。

 

先日ビジネスホテルにZENさんとカヲル君が訪れた際には酷い怪我人を連れてきて何事かと思ったが、どうやらこのジン君、今この世界に侵略しに来ているアブダクターの構成員らしく、訳あって今はアブダクターから抜けているとの事。その際に連中のボスらしき奴から報復の攻撃を受けてしまい、あわや命の危機にまで陥っていたのだという。

 

そこまで容態が酷いのなら素直に病院に行けと言いたかったが、今述べた通りジン君は敵組織から抜け出してきたばかりの手負いの人間。公的施設に入れておいたら瞬く間に連中の標的に晒されてしまい、その際には多くの無関係の人間を巻き込んでしまうだろう。

 

そこで彼が一人でも行動出来る位の体力が回復する合間、自分の所で預かって欲しいというのだ。まぁ、確かに自分は一人で行動する事が多いし、ZENさんには不動繋がりでGENさんに世話になった事があったから頼みは出来るだけ聞きたい所だが、今自分は宇宙魔王やら先のミカゲとかから狙われているからちょっと危ない状況なんだよね。そんな奴らから目を逃れる為には一時本格的に身を潜める必要がある。

 

唯でさえ情報収集で遅れが出ているのにこれ以上行動を遅延させる訳には行かない。どうするべきか決められず、悩んでいた自分に決断を促したのはカヲル君だった。

 

彼が言うには、どうやらクロノは地球至上主義だけでなく、様々な裏組織と繋がっているらしく、数百年も前から世襲制で地球の歴史を裏で操っているらしいのだ。

 

まぁ、ここまでは自分も予想していた事だからさほど動揺してはいなかったのだが、次にZENさんから語られる真実に、自分は内心驚きと戸惑いに満ちていた。

 

クロノという組織はADWとUCW、即ち新世時空振動が起こる前の別々の世界でそれぞれ暗躍していたらしく、裏で糸を引いていたらしいのだ。自分が予想していたよりも遙かに大きい規模の組織に唖然となるが、逆にそれだけ規模が大きいと奴らの目的が何となく見えてくる気がする。

 

クロノが現在一番手を貸しているのは地球至上主義の連中だ。コロニーを敵視している彼等と繋がっているという事は、少なくともクロノは地球至上主義の掲げる思想に共感しているという事に他ならない。もしコロニーと敵対する意志がクロノにあるのだとすれば、奴等の存在を知るシャア=アズナブルが地球連邦に宣戦布告した理由も頷ける。

 

カヲル君から教えて貰った情報のお陰で大分纏まってきた気がする。彼にお礼を述べると彼はにこやかに微笑み、「彼の事を頼んだよ」とだけ言って、ZENさん共々部屋を後にした。

 

彼等のお陰で有意義な情報を得られた自分は二人の要望に応えるべく彼の看病を行った。一度死にかけた所為もあって予断が許されない日々が続いたが、三日目には峠を越えたらしく、満身創痍ながらも意識を回復させていた。

 

最初ジン君は酷く自分を警戒し、敵対姿勢を取っていたけれど、自分の絶え間ない説得と敵対姿勢を取る度に放った良い子眠眠拳(物理)のお陰で敵意はなくなり、最終的には素直に聞き入れてくれるようになった。

 

取り敢えず自分が敵では無い事は伝わり、意識も回復してある程度動けるようになった彼と共にオーブへ向かい、改めてクロノに関する情報収集を行った。

 

世界の垣根を越えて存在する組織クロノ、そこまでの大規模な組織を維持するには背後に相当大きな存在が関与している可能性が高い。UCWからの出身であるオーブの人々に何らかの情報を聞き出せないかと期待して向かった所……面白い話が聞けた。

 

“ロゴス”UCWにまつわる武器商人達の組織、死の商人たる彼等を母体にした大規模組織“ブルーコスモス”青き清浄なる世界の為という思想を掲げる彼等の目的は、当時プラントに住むコーディネーター達の殲滅にあった。

 

コイツ等の思想は地球至上主義の連中と非常によく似ている。その考え方はまるで、人類が宇宙に進出する事を拒んでいるようだ。

 

恐らくロゴスにもクロノが関わっているのだろう。まだオーブの人達から聞いた話を推測程度で纏めただけだが、自分はこの考えでほぼ間違いないと睨んでいる。

 

確証を得るにはもう少しこの件に深くかかわり合いのある人間と話をした方がいいかもしれない。ジン君の件もそろそろどうにかしないといけないし、明日辺り色々決めた方がいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ、取り敢えず午前の部はこんな所かな」

 

「お疲れ様ですカガリ様。コーヒーをお持ちしましょうか? ちょうど良い豆が手に入りましたので」

 

「そうだな。偶には気分転換も必要か、頼むよ」

 

部下に書類の束を渡し、一息つくと共にカガリは背もたれ付きの椅子に寄りかかる。父の後を継いで今の席に座る事になった彼女だが、流石尊敬していた父の職務だけあって、連日激務に追われていた。

 

けれど、ここで嘆く訳にも行かない。愛すべき祖国を守る為、これからも自分は精進していかなければならない。オーブの理念と理想、そしてこの国の民を守る為に妥協する事は許されない。自らやる気を立たせて再び職務に手を着けようとした時────唐突に扉からノックが聞こえてきた。

 

部下が戻ってきたのだろうか? 自慢げに話していたコーヒーが飲める事をちゃっかり楽しみにしていたカガリは、扉の向こう側にいるだろう部下に対し、気軽な声でどうぞと部屋に入るよう促した。

 

キィッと木製特有の音を立てて開かれた扉の向こうに佇む人物を目の当たりにしたカガリは、次の瞬間……驚愕に目を見開く事になる。

 

「お、お前は!?」

 

「その様子だと、私の事はご存じの様ですね。カガリ=ユラ=アスハ様、お初にお目にかかります。私は蒼のカリスマ。アナタに聞きたい事があり、この場に参上致しました」

 

破界事変、再世戦争に渡ってその猛威と暴威を奮ったとされる蒼き魔人蒼のカリスマ。ここまでの警備をモノともせずに潜り抜けてきた卓越した潜伏技能に嘗てゲリラ兵だったカガリは戦慄し、息を呑んだ。

 

これが魔人の実力か。音も無しに現れる魔人の出現に内心で動揺するも、国の代表として凛とした態度を崩さないカガリは強気の姿勢のまま魔人を見据える。

 

「……お前のような奴が、一介の小娘相手に何の用だ?」

 

「そう警戒する必要はありませんよ。先程も言いましたがここに来たのはアナタに訊ねたい事があるだけです。答えてくださればすぐにでもここから退散させて頂きますよ」

 

クククと仮面の奥で静かに嗤う魔人に言い難い悪寒に襲われる。答えなければどうなるか分からない、不安と恐怖に駆られながら、それでもカガリは屈する事なく蒼のカリスマになんだと訊ねた。

 

「───ロゴス、そしてブルーコスモス。これら二つの組織についてアナタが知り得る限りの事を話して欲しいのです」

 

「なん、だと?」

 

魔人から聞かされるその組織名にカガリの思考は停止する。何故今更になってソレが出てくるのか、理解出来ないとカガリは蒼のカリスマに訊ね返そうとするが……。

 

「申し訳ありませんが、余計な詮索は無用に願います。……アナタも余計な火種はこの国に持ち込みたくはないでしょう?」

 

仮面の奥から見えたギラリと光る眼光にカガリは何も言えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

†月§日

 

ビンゴ。昨日のアスハ代表の話を聞いてロゴスとクロノの関連性を確信出来た俺は、現在とある無人島にてこれまで集まった情報を纏めていた。

 

ブルーコスモスというロゴスを母体にした組織は、やはりプラントや当時ジオンだった頃の宇宙移民の人々に対し、弾圧と言って良い程の攻撃を行っていたのだという。遺伝子を意図的に改造し、人工的に生み出されたコーディネーター達を宇宙の化け物と蔑んだブルーコスモス。過激な派閥で知られる地球至上主義の連中もこれに似た思想を持っており、クロノの指示の下で動いている。

 

恐らくはブルーコスモスも地球至上主義も、クロノの手によって生み出された尖兵なのだろう。同じ思想を植え付けられた彼等は地球を第一として、宇宙に進出している彼等を異常な程に疎んでいる。

 

いくら並行世界は無限に存在しているといってもここまで似た組織と思想を持っているのは天文学的数値に表しても有り得ない。ここまで来ると最早意図的にそうしているとしか思えない。

 

そもそも何故クロノは宇宙移民に対してこうも忌み嫌うのだろう。アレコレ推測やら憶測を立てて自分なりに考えてみたのだが、こればかりはサッパリ見当が付かなかった。

 

敢えて推測を立ててみるのなら、理由はZ-BLUEにいるアムロさんなカミーユ君の様なニュータイプの存在が鍵となっている事だろうか。ADWにもイオリア=シュヘンベルグが提唱したイノベイターやイノベイドといった宇宙に適応した人間が、事実イノベイターには刹那君が覚醒している事から強ち間違いではない……と、思いたい。

 

これらを統合して考えを纏めてみると……もしかしたらクロノは人間が次の段階、即ち進化に至る事を拒もうとしているのだろうか? 理由とか目的とか未だ分からない事が多いが、コーディネーター達も謂わば人工的に進化した種族だと考えれば多少は辻褄は合う。

 

だとするなら、クロノを作り上げた連中は相当自己中心的な考えを持った連中なのかもしれない。何せ自分たちの都合で地球人類を監視しようというのだ。その自分勝手さはまさに自分か忌み嫌う神みたいなモノ、その傲慢さはあのグレイスやリボンズの比ではない。

 

 

……と、まぁ実際は自分の妄想に等しい推測から成り立つ推論だからあまり当てには出来ないが、一応これである程度の情報のマトメは出来た事だと思う。後はエルガン氏から教えて貰ったサイデリアルなる単語とクロノの関連性を導き出すだけである。

 

そうそう、ZENさんとカヲル君から預かったジン君は現在オーブにて安静にして貰っている。あそこはリモネシアに似て穏やかな気候に恵まれ、静養するには最適な所、きっと傷の治りにも良い方向へ作用してくれるだろう。あそこにはシュナイゼルの奴も時々視察に訪れるって言うし、縁があればアイツに拾われる事もあり得そうだ。

 

そんな訳で再び一人で行動しているのだが次の行動指針を決める為にもう一つ頭を捻る必要が────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるっさいな~。今大事な所を書いてるんだから静かにしろよ。一体どこの艦───って、なんかコレ、デジャヴ?」

 

日記を書き綴っている最中聞こえてくる戦艦の航空音、どこかで覚えのある既視感に首を傾ける彼の視界に入り込んできたのは、先日別れたばかりのZ-BLUEの戦艦達の姿だった。

 

どうして彼等がここにいるのか、そんな疑問が頭に浮かんだ時、突如、彼等を呑み込むように光が輝き出した。

 

「何コレまぶしっ!?」

 

目が眩む閃光に視界が奪われたシュウジは成す術なく光へと呑み込まれ……次の瞬間にはZ-BLUE共々、この世界から姿を消していた。

 

 

 

 




今回Z-BLUEは某弁当さんから座標を受け取った所に遭遇した流れとなっております。


主人公視点

ボッチ「オーブはリモネシアとよく似ている。そんな国を巻き込む訳にはいかない!(使命感)」

カガリ視点

魔人「ククク……余計な詮索は身を滅ぼしますよ」


大体こんな温度差。

次回は遂にアイツが登場!? また見てボッチノシ

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