『G』の日記   作:アゴン

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スパロボのグランゾンを見てたら急に書きたくなって投稿しました。




破界篇
その1


 

○月×日

 

普段は日記を付けない自分だが、事態が事態なのでこれを機会に日記をこまめに書く事にした。

 

まずは状況を見直そう。……そう、確かいつものように大学の講義を終え、友人と一緒に帰り一人暮らしのアパートに帰宅。ここまでは覚えている。

 

問題はその後だ。バイトに備えて少しばかり仮眠を取って目を開けてみれば────見知らぬコックピットの中にいた。

 

訳が分からないって? 大丈夫、俺も一ミクロンも理解出来ていない。じゃあ何故そんなに冷静かって? 知ってた? 人間て自分の理解能力から外れた出来事を前にすると返って冷静になれるものなんだぜ? 心理学の先生辺りがそんな事言ってた。

 

そして何故そこがコックピットなのか……まぁ、簡単な話、そうとしか言えないというのが正直な所だ。

 

操縦桿らしきものから複雑そうなコンソールパネル、そして目の前に広がるのは全面に映し出された巨大モニター。

 

ガンダムとかでよく見る全天式な感じだが、真後ろとかはまだ確認していないのでそこら辺はまだ不明だが……うん、やっぱコックピットとしか言いようがないや。

 

……何故自分が此処にいるのか、分からない事だらけだが、一つだけ分かった事がある。それは日記を書く前、混乱しながら辺りのコンソールパネルを触った時、モニターに映し出され形式番号と機体名を見たとき、俺は軽く絶望した。

 

“DCAMー00 グランゾン”

 

それが、現在自分が乗る機体である。

 

……訳が分からないよ。

 

 

 

 

○月◇日

 

グランゾンのコックピットて、意外と寝心地良いんですね。流石シュウ博士、細かい所にも拘っていらっしゃる。

 

……はい、バカ言ってる場合じゃなかったね。けど現実逃避していないと心がへし折れそうなんだ。分かってくれバァーニィ。

 

昨日日記を書き終えた後、コックピットハッチを開けて外に出て見ればモニター越しで見た映像と同じ広大な砂漠が広がっていました。そして振り返った先で凶悪な面構えのグラたんに再び絶望、夢であって欲しかった自分の願望は粉々に砕かれてしまった。

 

“グランゾン”スーパーロボット大戦で知られる対異星人用のアーマードモジュール。その機体性能はある機体と本気で戦わせれば宇宙が終わるとされる程の性能で、単機だけで戦場を支配出来るとされるチート機体である。

 

積み込んだ動力源は対消滅エンジンだとかブラックホールエンジンだとか、色々物騒なシステムを積んでたりとヤバ気要素てんこ盛りなこの機体、ただそれだけ危険なモノを積んでいる事もあり、先ほども言ったように機体性能は本当にチート化している。

 

まず速さ。全長27メートルと85トンの重量の為に瞬間的な速さこそないが、最高速度は魔装機神屈指の速さを誇るサイバスターを上回り、火力は最大出力を出したら下手すれば銀河が終わってしまうふざけた性能である。

 

他にも色々チート要素はあるが、それもこれも全てシュウ=シラカワ博士がこのグランゾンの本来の搭乗者である事が大きい。

 

スパロボ自体はαシリーズとあとは携帯ゲーム機(割と最近の)位しか知らない為、詳しくは説明できないが、グランゾンはシュウ博士と数名の博士号を持つ天才科学者達によって設計、生み出されるが破壊神ヴォル……ヴァルクスス? ヴォルクルスだっけ? ……まぁ、そんな名前の邪神に半分操り人形みたいにされた状態でグランゾンを強奪。時折暗躍し、時折スーパーロボット軍団と敵対したりと割と重要な役割を担った人物と機体とされている。

 

最近ではシュウ博士はラ・ギアスと呼ばれる異世界の王族だったって話が出ていたりして色々驚き要素があったりしている人物だ。

 

さてそんな色々凄い話が絡んだこのグランゾンとそれに乗り込んでしまっている自分だが……うん、本当にどうしよう。

 

グランゾンに乗り込んでいたりしているからシュウ博士に憑依してしまったのかと危惧したが、残念な事にグランゾンの装甲の反射に映っていたのは凡人面の見慣れた自分の顔でした。これで俺もイケメンの仲間入りだと何気に期待しただけにちょっぴり残念だと思ったのは内緒である。

 

けれどそれの為に余計に分からないことが増えた。何故自分がここにいてグランゾンのコックピットに居座っているのか、そしてシュウ博士もこの世界にいたりしているのか……。

 

前半は早いところ究明したい所だが後半は……うん、止めよう。もしあの人がこの世界にいるのなら、あの人にとって自分はグランゾンを強奪した盗人とされる。

 

いつの間にか乗っていたのを強奪したと言うのは変な話かもしれないが、そんな理屈が通らないのもシュウ博士の怖い所である。

 

ならば自分のやるべき事は一つ。自分が今いるこの世界の事を早急に調べ上げ、シュウ博士を探しだし、グランゾンの返上と心の底からの謝罪と元の世界に帰るために全力を尽くすのみ。

 

問題はこのグランゾンをどうするか………(日記はここで途切れている)

 

 

 

 

○月△日

 

昨日は日記が途中で終わってしまった。が、それも無理もない事だろうと心の内で言い訳しておく。

 

だっていきなり“フラッグ”が襲ってきたんだもん! ビックリするのも仕方ないじゃん! ……いや、実際は襲われたというよりも警告みたいな感じで通信回線に入ってきただけなんだけどね。

 

つーかこの世界の事があのフラッグのお陰で一気に分かってしまった。よりにもよってガンダム00の世界とか、戦々恐々の思いである。

 

危うく捕まりそうになったが、そこは流石のグランゾン。バーニア噴かせたかと思った瞬間爆発的な加速で一気にフラッグを置き去りにして離脱成功。

 

グランゾンを意のままに動かせた事に自分もテンションが上がりまくり「ククク……」と意味深な笑みが漏れてしまった。

 

え? 何故グランゾンを動かせたかって? それがもう自分でも何が何やら、フラッグに呼び掛けられた時、混乱しながら操縦桿を握り締めるとアラ不思議、グランゾンの操縦方法が次から次へと頭の中へ浮かび上がって来るではありませんか。

 

勿論武器の使い方も動かし方と同時に頭に叩き込まれたが……けど、そんなもの使うつもりは今の所ない、だって無人機とかなら兎も角いきなり戦えとかそんなの出来るわけないじゃない。

 

怖いし。つかフラッグに呼び止められただけで逃げ出す自分に戦う度胸なんぞある訳がない。つか実際、自分はグランゾンに乗ってて何故か操り方を知っているだけの素人だ。

 

そしてこのグランゾンの本来の持ち主であるシュウ博士は戦いの介入を嫌う人だ。下手な戦いでグランゾンに傷を付けるものならそれこそシュウ博士に宇宙から存在を抹消させられる。

 

シュウ焉の銀河。最近はそう呼ばれている博士に命を狙われたとあっては、安心して寝ることも出来やしない。ひとまず日本に行こう。ここがガンダム00の世界だと言うのなら日本も当然ある筈。

 

いい加減腹も減ってきた。グランゾンを隠したら食料を調達する事にしよう。

 

ただ、あのフラッグの乗ってた人。割と聞き覚えのある声なんだけど……誰だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見たか、カタギリ」

 

『あぁ、凄い機体だな。あの巨体でアレ程の加速……興味深いマシーンだ』

 

「ああ、噂のスーパーロボットとも違う様だし、男としてあの機体には少しばかり興味がある。……しかし」

 

『?』

 

「あの機体を駆る者、些か危険な臭いがする」

 

『……根拠は?』

 

「声を聞いたのだ」

 

『声を? あの機体のパイロットかい?』

 

「恐らくはそうだろう。通信越しでほんの僅かな笑い声しか聞き取れなかったが、その声色から底知れぬ“ナニか”を感じた」

 

まるで此方の全てを見透かした───暗く、深い奈落を思わせる不気味な笑い声。

 

ユニオンのエース、グラハム=エーカーは地平線の彼方へ消えた蒼く禍々しい機体に、今後訪れる世界の暗雲を直感ながら感じ取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月□日

 

ユニオンのフラッグから死に物狂いで逃げ延びて翌日、自分は高性能チート機体であるグランゾンを使ってネットワークに介入し、この世界に関する情報を集めてみた。

 

それによる結果は……この世界は想像以上に混沌としているという事だ。

 

ユニオンや人類革新連盟、AEUという三大国家の存在は昨日のフラッグとの邂逅で明らかになっている。だが、問題はそれだけではなかった。

 

まずユニオンはとある大国との合併を果たしている。“神聖ブリタニア帝国”そう、あのブリタニアだ。

 

他の二国もそれぞれ何らかの組織と絡んでいるみたいだし、加えて次元獣とかいう不可思議な怪物も確認されている。

 

大時空振動とそれによる多元世界。これらが原因で複数の世界が融合してしまったとされるこの地球には他にも異質な部分がある。

 

まず日本。エリア11と呼ばれる国と日本と呼ばれる国、二つの日本が存在している。

 

加えて月も二つで片方は陰月と称され、時空による歪みの所為で調査が不可能とされている。

 

他にも暗黒大陸と呼ばれる未知の大陸が存在したりと色々問題を抱えているこの世界で既に自分のお腹は一杯である。

 

……そうそう、お腹一杯という事で思い出したがあれから無事自分は食料を確保できた。場所はエリア11にあるとあるスラム街。グランゾンと身につけた衣服以外戸籍も何もない自分は残されたお金でその日の食料を調達。

 

スラム街にある廃棄された人気のない倉庫にグランゾンを隠してコックピットで食事した。

 

今の自分が持つ通貨でも使える事に驚いたが、それよりも問題は明日からだ。既にお金も尽きた為に食料を買うことも出来ないし、何より命の危険がこの世界には常に付きまとっている。

 

ていうか、食料を購入した際の周囲の目がコェェ、スラム街って初めて来たものだから萎縮した自分は格好の獲物に見えたのだろう。途中送って貰った赤い髪のバンダナ女性に出会わなければ身包みごと……いや、命すら取られていた事だろう。

 

いつかまたどこかで改めてお礼をしたい所だが、まずは自分の身を何とかしなければ……。

 

いっそグランゾンで買い物してみるか? ……止めておこう、色々な意味でダメになる気がする。

 

でも買い物籠を持ったグランゾンが買い物をする姿を想像して……少し笑ってしまった。

 

あぁ、どうかこれが夢でありますように。目が醒めたら自分の部屋で起きられますように、そう願いながら今日の日記は終了する事にする。

 

 

 

 

 




基本的に短めです。


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