へるぷみー
痛い
どこがとかじゃなくて全部いたい
体が内側から張り裂けてくるような感じだ
まだ…………終わらないのかな
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「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
やっと痛みがおさまってきた。
「なんだったんだよ、さっきの」
ガストレアに噛み付かれたと思ったら、そこから何かが入り込んで来て…………
あれっ? なんか違和感が?
「なんで喋れてるの?」
そう、私は喋ることなど出来るはずがない赤ん坊だったはずだ。
一体何故喋れるようになっているんだろう。
そう思い、近くに乗り捨てられたままだった車に近づいて行き、バックミラーを使って自分を見てみると、
「えぇ!?」
そこに映っていたのは『
「ナ、ナニコレ」
色々と動いてみるが、鏡に映った少女は私と寸分狂わず同じ動きを繰り返した。
「いや、いやいやいやいやいやいや! なんで尻尾がはえてるのさ!」
因みに裸だったため、後ろを向いて確認してみると確かに直接、尻尾ははえていた。
「あっ! そう言えばさっきの運び屋のやつらがガストレアは獲物にガストレアウィルスを注入するって言ってたような…………」
そこから加速度的に最悪な、そしておそらく真実であろう予想が浮かんでくる。
「私が…………ガストレアになった?」
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「いよっと!」
私が足に力を込めて跳躍してみると軽く10メートルを越えた。
無論そこから着地しても体はびくともしなかった。
「ははは…………本当にバケモノになっちゃったな」
ガストレアになったという予想を考えた彼女は自分の体を調べていた。
その結果わかったのは、99%自分がガストレアになってしまったということだった。
近くにあった森で試しに木を殴りつけてみると、呆気なく腕が貫通し、遠くを見ようとすると、数キロ先の景色もハッキリと見え、何よりも時より鏡でーーバックミラーを取り外して持ってきたーー見た自分の眼は常に血のような赤色をしていた。
しかし彼女は、特に何の絶望も悲壮感もまとわせていなかった。
なぜなら、
「『最早、人間に未練などない』」
彼女は、
しかし、人間を憎むでもなく、ただただ
「でも、取り敢えずは…………やっぱり、服が欲しいかな」
そう思い、彼女は常に危険と隣り合わせの未踏査領域を進んでいくのだった。
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「うーんやっぱり、酷い状況だなぁ」
数時間程走ったーーとは言っても今の彼女が全力で走ると時速60キロ程なのだがーー所にあった廃墟に来たのはいいが、とても街としての面影を残していなかった。
それもそのはず、この場所は未踏査領域の奥も奥、
とても人が来れるような場所ではなく、ガストレアに荒らされ放題だからだ。
「せめて着るものがあればいいなあ、後これもどうにかしたほうがいいし」
そう言いながら後ろを向いて自分の尻尾を見た。
尻尾は狐の尻尾の様な感じで、これじゃあ何の役にも立たないと思い、変化させられないかと思った所で尻尾が変化し始めた。
「わわっ!」
毛がまとまっていき、最終的には細くより長くなり、ナルガク⭕ガの尻尾のようなっていた。もちろん9本ともである。
数十分たつ頃には、変化も収納も自由自在になっていた。因みに戻すときは電化製品のコードの様にーーあそこまで速くはないがーー体の方に取り込まれていくようになくなっていった。跡などは残っていなかった。
呼び方は狐型の方を『
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街の跡地に着いてから数時間、早くも問題が発生していた。
「お腹へった…………」
そう、空腹である。
いくら、ガストレアになった所で、結局は生物なのでお腹は減るのである。
「何処かに缶詰めぐらいないかなぁ」
今は、先ほど入った民家で見つけた、穴や破れた部分のある、元純白のワンピースの様なものを着ていた。
しかし、見つけたものは後にも先にもこれだけで、てんで食糧などはみつからなかった。
「やっぱり、森で果物とか、山菜みたいな食べれるものを探したほうがいいのかな?」
そう言いつつ、民家に入って物色していると子供部屋を見つけたのだった。
「…………
そこにはぬいぐるみや人形があったので、女の子の部屋だということがわかった。
「…………私の部屋とは大違いだ」
自分の前世の部屋を思い出すと、そこにはパソコンが一つあるだけで、それいがいの物はほとんどなかった。
少しの間、感傷に浸っていると、ふと童話の本を視界の隅に見つけた。
色々と種類があって、その本のタイトルを眺めていると、
「そういや、私ってまだ名前がなかったな」
そして一冊の本をおもむろにに手に取ると、
「よし! 私の名前は今日から『アリス』だ!」
本のタイトルは『不思議の国のアリス』。前世の記憶かあるというイレギュラーな自分にぴったりだと思ったからである。
そして嬉しそうな顔をして家を出ていくアリス。
そして浮かれていたアリスは自分をじっと見つめてくる視線に気付くことはなかったのだった。