ブラック・ブレットー白き少女ー   作:虚無龍

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 今回は早く仕上がりましたよ!

 後、細々とした呼び方や名称に関するアンケートを活動報告にて実施するので、よければご協力ください。


危機

「うぅ、すみません。みっともない姿を晒してしまって」

 

 夏世は一通り泣き続けると、泣き止み、今度は人前で泣いた事を理解し、顔を赤くして恥ずかしそうにしながら謝ってきた。

 

「別にいいから。ストレス溜まったままて過ごし続けるといつかパンクしちゃうからね」

 

 ちなみに、アリスはいまだに夏世を抱き締めたままだ。

 

 するとそこに、

 

「動くんじゃねぇッ」

 

 愛用のXD拳銃を構えた蓮太郎が飛び込んで来たのだった。

 

 それを見たアリスはというと、

 

(やべっ! 見られちゃったよ。どうにかして逃げないと)

 

 逃走する気満々だった。

 

「お前、アリスか? 何でこんな所にいるんだよ」

 

「あー、えーっとねぇ。…………人に話せないような内容の仕事しているもんで、聞き出すのは諦めて♪」

 

 と、茶化す様に言ってみたが、

 

「誤魔化すな。まさかお前、蛭子影胤の協力者だったりしないよな」

 

 有無を言わさぬ迫力でアリスをにらんでくる蓮太郎に対して、半端な嘘では通じないと思い、

 

「裏の仕事で、依頼人に元陸上自衛隊東部方面隊七八七機械化兵士特殊部隊『新人類創造計画』の蛭子影胤のデータを取って来いって言われてね。まあ、金持ちの道楽だよ」

 

 蓮太郎はなおも懐疑的な目を向けたが、少しして、諦めた様に銃を下ろした。

 

「おい延珠、来てもいいぞ」

 

 と、出口の方を向いて言うと、延珠が入って来て、

 

「おい蓮太郎、何か話し声が聞こえたが何が…………ってアリス!?」

 

「あ、あははは。はぁ」

 

 目撃者が増えていくことにため息をつかざるを得ないアリスだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「じゃあ、私はそろそろ行くから」

 

 少し延珠と話したあと、アリスが出ていこうとすると、

 

「待て、俺はまだ納得してないぞ。ここにいる理由を話して貰うまで俺の監視下に入ってもらう」

 

「…………蓮太郎って蛭子影胤を倒しに来たんだよね」

 

「ああ、それがどうかしたのか?」

 

 アリスは無表情に、

 

「蛭子影胤って機械化兵士なんでしょ? それを倒す為には少しでも多くの戦力があった方がいいはずだ。もしかしたら蛭子影胤と戦闘になった人達が全滅するかも知れない。蓮太郎はそれでもいいのかな?」

 

「っ! お、俺は…………」

 

 その時、夏世の傍らに置いてた黒い受話器の様なものからノイズと共に野太い男のうなり声が聞こえてきた。

 

 それに、蓮太郎がはっとしている間にアリスは素早く武器を回収して走り去っていった。

 

「な! お、おい! 待ちやがれ!」

 

 蓮太郎の声を背に浴びてアリス森の中に消えていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 アリスが蓮太郎のもとから走り去ってから、しばらくたった。

 

 アリスは黒いイヤホンの様なものを耳にあてていた。

 

『お前は…………ッ。伊熊…………将監か』

 

 それは走り去る時のどさくさに紛れて蓮太郎に取り付けた自作の超高性能盗聴機だった。

 

 盗聴機から聞こえてくる声から状況を察するに、蓮太郎が到着した頃には先見隊は全滅していたらしい。

 

「あーあ、だーから言ったのに」

 

 アリスは興味無さそうに呟いた。

 

 それから少し経つと、蓮太郎が影胤に接触したらしく二人の声が聞こえてきた。

 

 今回アリスが仕事を達成してもなお、未踏査領域に来たのは、影胤と蓮太郎の情報を手に入れる為だった。

 

 蓮太郎の方は最初の頃は警戒する価値なしと、判断していたが、得たいの知れない予感の様なものを感じて手に入れておいて損はないだろうと考えたからである。

 

 そして、丁度ネタばらしが始まったようだ。

 

『俺も名乗るぞ影胤。元陸上自衛隊東部方面隊七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』里見蓮太郎』

 

「何!?」

 

 この蓮太郎の言葉にアリスはなんの芝居もなしに本心で驚いた。

 

「…………私が感じてた嫌な予感はこれか。何が危険性なしだよ。相当なものじゃないか。影胤の斥力フィールドを破って充分な衝撃をあたれられるなんて…………」

 

 アリスが蓮太郎の情報を手に入れ、イヤホンを一時的に外した時、それは聞こえた

 

 

 ーーーーーー

 

 

「ん? これは…………ガストレアの仲間を呼ぶ周波数帯? …………行ってみるか」

 

 嫌な予感がしたアリスはその方向に駆けて言った。

 

 

ーーーーーーーーー夏世視点ーーーーーーーーー

 

 

「蓮太郎さん、早く行ってください」

 

 私はそう言って徹底抗戦の構えをとった。

 

「ここは任せる。ガストレアを止めろ。ただし無理はすんじゃねぇぞ」

 

「安心してください、劣勢になったら逃げますので」

 

 嘘だ。

 

 私が逃げたりしたらそれだけで蓮太郎さんはガストレアの波に飲まれて確実に死ぬ。

 

 …………そして、逃げなければ恐らく私が死ぬ。

 

 …………私自身、何故会って間もない蓮太郎さんを命を賭けてまで守ろうとするのかは分からない。

 

 だけど、蓮太郎さんとアリスさん。この二人だけは死なせたくない。

 

 蓮太郎さんは穴だらけだけど正しい言葉を私に言ってくれた。いつもなら反論なんて直ぐに出来るのに、何故か出来なかった。

 

 アリスさんは私に優しくしてくれた。私が何を言っても、人を殺したことがあると言っても、私の事を受け入れてくれた。

 

 どちらもそれだけと言ってしまえばそれまでだけど、私は何が何でも守り抜くと決めた。

 

 それなのに、

 

「ぐ、あぁぁぁあっ!!」

 

 左腕を噛みちぎられた。

 

 既にショットガンは機関部から叩き折られた。

 

 かなりの量の体液も送り込まれてしまった。

 

 意識の混濁は見られないが、既に体はほとんど動かない。

 

 なんの確証もないが、蓮太郎さんはきっとあの殺人鬼を倒してくれるだろう。

 

 アリスさんはどうしてるのか分からないが、きっと無事だろう。

 

 ガストレアを全部倒しきりたかったが、もう無理なようだ。

 

 無くなった左腕が再生を始めている。

 

 …………この様子なら体内侵食率も50%を越えているだろう。

 

 これで私が生き残る道は無くなった。

 

 あの二人さえ生きていればいいと思ったが、少しだけ欲を言うと、

 

「もっと…………生きていたかったなぁ」

 

 その時だった。

 

 

 グォォォォォ!!!

 

 

 私の目の前に真っ白な龍が現れて、私を助けたのは。


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