ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

26 / 110
日常
再会の予兆


一方その頃……。

洸夜と総司の知らない所で、とある問題が発生していた。

 

同日

 

現在、???

 

そこは広いフロアで周りに飾られている装飾品を見ても高級な物と分かる。

そんなフロアで紅い髪をし、毛皮の様なコートを羽織っている女性が周りにいる部下らしき者達を怒っている様子が有った。

そして、全身を隠す様な服を着ている付き人らしき金髪の女性はその様子を静かに見詰めていた。

 

「何故、私の許可なくこの様な事をした!」

 

そう言って近くの机をバンッ!と叩く紅髪の女性。

そして、その音にビクッ!とする部下らしき人達。

 

「で、ですが、ご当主。幹部の汚職等が原因での“桐条グループ”の大変な時期は何とか乗り越えました。しかし、それでも世間的にはまだ風当たりが強いので……」

 

「ご当主の“お見合い”話をして、少しでも世間やグループ内を明るくしようと……」

 

そう言ってビクビクしながら語る部下達に、紅髪の女性はため息を吐いた。

 

「……お前達がそう考えるのは納得出来るが、私はまだ、身を固める気は無い!」

 

「で、ですが、ご当主! 相手のご両親は、国々とのパイプを持っておりますし……それに、見合い相手も高卒ですが、学力・行動力共に問題無いとの事ですし……何より、このお見合いは先代のご当主が決めた事なのです」

 

「お父様が……」

 

部下のしつこい言葉に、イライラし始める紅髪の女性だったが父の名前を出された事で耳を傾ける。

 

「はい……当時の話によれば直に見て気にいったらしく……本来ならば、もう少し早く行う予定だったのですが、先代のご当主の不幸等が重なり、今に至ります」

 

「……そうか」

 

少し考え込む紅髪の女性を見て、部下達は手応え有りと判断したらしく、ここぞと化かしに話し掛ける。

 

「それにご当主も、誰かに支えられた方が仕事等も捗るのでは?」

 

「それとも、どなたか心に決めた方でもいるのですか?」

 

「ッ!?」

 

部下の何気ない言葉に、無意識に二年前の事を思い出す様に考え込んでしまう。

その様子に部下達も少し焦りを表す。

しかし、頭からその事を振り払い何も無かったかの様に振り向き口を開いた。

 

「分かった。そのお見合いを受けよう。日時や場所が決まったら報告しろ」

 

女性の言葉に、部下達はそれぞれ喜びの言葉を上げるのだが……。

 

「その変わり、共に行く人員は私が決める。それが最低条件だ」

 

「えっ! ですが、ご当主……」

 

「何か文句があるのか?」

 

「ヒッ! い、いや、何でも有りません! そ、それでは私達はこれで……!」

 

そう言って、一睨みすると部下達は逃げる様に去って行く。

そして、部下達が居なく成ったのを確認すると近くの椅子に腰を下ろした。

 

「心に決めた者……か」

 

「大丈夫ですか? “美鶴”さん」

 

「“アイギス”……」

 

金髪の女性“アイギス”に紅髪の女性“美鶴”は顔を下に向けて口を開いた。

基本的に一人で頑張って来た彼女がこう言う表情をするのは珍しく、それを知っているアイギスは余計に心配してしまう。

 

「先程の言葉……洸夜さんの事を思い出したのでは?」

 

「……否定すれば嘘になるな」

 

「美鶴さん……」

 

アイギスは知っている。

美鶴だけでは無く、明彦達も洸夜が居なく成った後に自分達の過ちに気付き、後悔している事を。

この事を知らないのは、風花・乾・コロマル・チドリぐらいだ。

5特に、風花と乾には伝える事は出来ない。

彼女達は、あのメンバーで人一倍懐いていたからだ。その為洸夜が居なく成った理由をごまかして聞かせているのだ。

だから、余計罪悪感が有るのだ。

 

「そう言えば、どなたをお見合いに連れて行くのですか?」

 

話を変える為か、アイギスはお見合いの方に話を振る。

 

「それは君と明彦に同行をお願いしようと思う。君と明彦が一緒ならば、安心出来る。無論、自分の身は自分で守るつもりだがな」

 

そう言うものの、自分でも何処か無理をしている様に感じてしまった。

元々、お見合い自体乗り気では無いのだが、今は亡き父の名が出たならば無下には出来ない。

 

 

「あっ……そう言えば、お見合いのお相手に関する話を聞いてませんでしたね」

 

「そう言えばそうだな……まあ、顔も知らない相手との見合いも面白そうだ。それよりもアイギス。明彦に連絡をして貰えないか?」

 

と言いながらも、元々興味が無いお見合いなのだから相手に興味等は微塵も無い。

しかし、念のために明彦には連絡しなければ成らない。

 

「分かりました。それでは少し席を外します。え~と……携帯はどう使うんでしたっけ?」

 

「……」

 

少し心配な言葉を発しながらアイギスが部屋を出ていくのを確認すると、静かに窓から空を眺める。

その内心では、自分達が傷付けた友であり、自分にとって大切な男性である洸夜について考えながら。

 

「お前は今、何処で何をしているんだろうな……洸夜」

 

この時、美鶴は知るよしも無かった。

洸夜が桐条とは関係の無いシャドウの事件に巻き込まれている事に。

そして、もう一つ。

美鶴が貰い忘れた、見合い相手の資料。

そして、名前が書かれている欄に……『瀬多 洸夜』と書かれている事に。

 

 

END


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。