ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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完二の影

同日

 

洸夜が大型シャドウと対峙していた頃、総司達は……。

 

『ウッホッホ、これはこれは、ご注目ありがとうございまぁす!。ついに潜入しちゃった、ボク完二!』

 

「「「「「……」」」」」

 

現在、総司達は完二の影と対面していた。

だが、余りの存在感に総司達、特に総司と陽介は絶句している。

当たり前だ、この状態で絶句しない男子はいないだろう。

汗臭い大浴場、フンドシつけたヤバそうな男子、最早この場にいるだけでも相当精神が鍛えられそうにすら思える。

しかし、そんな総司達の思いを知ってか知らずか、完二のシャドウは……。

 

『あ・や・し・い熱帯天国から、お送りしていまぁす!!』

 

テンションを上げ、更に声のボリュームを上げる。

そして、完二の台詞と共に上から題名が降ってきた。

 

『女子禁制! 突☆入!?愛の汗だく熱帯天国!』

 

「「「「!!!」」」」

 

題名を見た瞬間、総司達は更に絶句してしまった。

言葉が出ない。

まさにこの事を指しての言葉とも思えてしまう。

そして、その様子にそれぞれが口を開いた。

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……! いろんな意味で……! 俺らの貞操危ないじゃないのか!?」

 

身体を震わせながら総司の肩を揺らす陽介。

そんな陽介に落ち着けと言う意味で肩をポンと置く総司。

 

「確か雪子んときもノリとしては、こんなだったよね……? いや……場合によってはもっと酷いかも……」

 

「えっ! う、うそ……! こんなじゃ……無いよね……?」

 

完二の姿と自分を交互に見ながらそう呟く雪子。

まさかとは思いたくないが、フンドシで暴れている状況とどっこいどっこいとは

m思いたくはなかった。

するとその時……。

 

ワー!ワー!ワー!

 

突然、何処からとも無く歓声が聞こえ始めた。

その声はまるで、この世界の外から聞こえてくる感じがする。

そう思った総司達の頭に有る考えが過ぎる。

 

「この声、まさか……!」

 

「外の人達の声!?」

 

「“番組”が流れている反響って事?」

 

「これ放送されてんの!?……完二くん、新たな伝説が生まれそうだね」

 

その伝説は恐らく、嫌でも胸に刻まれるだろう。

そんな事を苦笑いしながら総司達は思っていた。

 

「まぁ、シャドウなんだけど、外の連中には分かんないしな……」

 

ウオー!ウオー!ウオー!

 

「シャドウもめっちゃ騒いでるクマ!」

 

クマの言葉通り、周りからシャドウ達の咆哮が響き渡る。

そして、総司達がシャドウに警戒していると、完二のシャドウは再びマイクを持ち直し、喋り始める。

 

『ボクが本当に求めるモノ……見付かるんでしょうか、んふっ』

 

「「ゾクっ!寒気が!?」」

 

ウインクしながら喋る完二のシャドウの言葉に、謎の寒気を感じる男二人。

そして、そんな様子を見ながら完二のシャドウは……。

 

『それでは更なる愛の高みを目指して、もっと奥まで突☆入! 張り切って……行くぜ、コラアァァ!!』

 

そう言って完二のシャドウは走り去ってしまった。

 

「完二くん!」

 

「待て!早まるな!」

 

「馬鹿言ってないで、追うぞ!」

 

完二のシャドウに調子を狂わされながらも、これ以上は完二自身の身も危ないと思い総司達は奥へと進んだ。

 

========================

 

現在、大浴場最深部

 

「この先か?」

 

「そうクマ! この先にカンジクンがいるクマよ」

 

あれから総司達はシャドウを退けながら先に進み、そして今、巨大な扉の前にいる。

その扉の向こうからは、扉を越えて微かにだが完二のシャドウの声が聞こえていたb

 

「中に入りたくねぇ……」

 

「陽介、思っても口にはするな。俺だって入りたくは無い……」

 

扉を前にして、そう呟く陽介に注意する総司だが、実際にこの部屋の奥に入るのに躊躇ってしまう。

流石に先程から、フンドシだけの完二の姿ばかり見て総司と陽介の精神は折れ掛かっている。

しかし、実際に入らない訳には行かず、総司達は扉を開けるとそこには……。

 

『もうやめようよ、嘘をつくのはさ……』

 

「オ……オレァ……!」

 

そこには、完二と完二?が対峙していた。

 

「完二くん!」

 

「間違いない。本物の奴だ」

 

『ボクはキミの“やりたいこと”さ……』

 

「違う!」

 

完二は否定するがシャドウは話を続ける。

 

「女は嫌いだ……偉そうでわがままで、怒れば泣く、陰口は言う、チクる、試す、化ける。何でも有りだ」

 

「あ~何かよく分かる気がする……」

 

陽介はそう言って千枝を見る。

何故、千枝を見たのかは分からないが、陽介の視線に気付いた千枝は顔を赤くして抗議する。

 

「わ、私はそんな事しないよ!? そんなぐちぐち陰口見たいな事を言わないしさ!」

 

「確かに……。(逆に蹴り倒しそうだ……)」

 

「でも、男の子とかって、女子が何を言っても手とか出せないから辛そうなイメージがあるよね……」

 

「確かに」

 

「たまに思うね」

 

雪子の言葉に頷く陽介達、だが、総司は雪子の話を聞き、ある事を思い出す。

 

「いや、兄さんは普通に手を出すよ」

 

「「「「えっ!」」」」

 

総司のまさかのカミングアウトにクマまでもが声を上げる。

 

「センセイ!お兄さんがいたクマ!?」

 

「そっちか……」

 

「お前は黙ってろって! でも、手とか出すと女子って最低!最低!とか言わないか?」

 

陽介の言葉に納得したのか、女子である千枝達も頷いている。

 

「兄さんの話では確かに言われたらしいけど、兄さんが『だったら手ぇ出される事してんじゃねぇ!』って言ったら皆黙ったらしいよ」

 

「「「納得……」」」

 

何と無くだが、洸夜の性格が分かってきたらしく、陽介達は苦笑いしながら頷き、洸夜と接触した事の無いクマは意味が分からずに、首を傾げている。

すると、そんな会話をしている間にも完二とシャドウは話をしていて、状況に動きが見られた。

 

『皆、ボクを見て変人変人ってさ……。笑いながらこう言うんだ。裁縫好きなんて気持ち悪い、絵を描くなんて似合わない。男の癖に男の癖に……! 男って何だ? 男らしいって何なんだ? 女は怖い……よね!』

 

「こ、怖く何かねぇ!」

 

完二?に食ってかかるが完二?は話をやめない。

 

『男がいい……男の癖にって言わないし…!この間のお客さんみたいに受け入れてくれる男がいい……』

 

シャドウの言葉が癇に触ったのか、完二はシャドウの方を睨み、声を上げた。

 

「さっきから、何なんだてめぇ! 俺と同じ顔しやがって!」

 

完二の言葉にシャドウは歪んだ笑みでニヤリと笑った。

 

『君はボク……ボクは君だよ。分かってるだろう?』

 

「ふざけるな! お前なんか……お前なんかが……!」

 

シャドウの言葉を聞いて、否定しそうな完二の言葉に総司は止めに入る。

 

「ダメ!完二くん!」

 

「言うな!」

 

しかし、皆の言葉は完二に届かず、完二はあの言葉をシャドウに放つ。

 

「俺の訳ねぇだろう!」

 

そして、その否定の言葉が引き金になり、シャドウから闇が溢れ出す。

 

『ふふふ、あはははははははは! 僕は君!僕は君さ!!!』

 

完二の影は闇を纏うと、巨大な体に男と女のマークを持ち薔薇に包まれているシャドウ『完二の影』と筋肉質なシャドウ『タフガイ』と『ナイスガイ』が現れる

 

『我は影、真なる我! ボクは自分に正直なんだよ。だから、邪魔物は消えろ!』

 

「ば、化け物……!」

 

余りの出来事に、身体が動かなく成ってしまった完二を見て、総司達は行動を開始すると、完二の前へと出た。

 

「皆! 行くぞ!」

 

「「「「ペルソナ!」」」」

 

そして、この場所で完二のシャドウとの戦いが幕を開けた。

 

END


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