ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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大浴場の戦い

 

5月18日(水)曇

 

現在、テレビの世界

 

完二がテレビの世界に入れられてから翌日。

洸夜は、現在テレビの世界に入り完二の救出に来ていた。

この間の番組の影響もあってか、完二の母親に疲労の色が出ていると話を聞いている。

その為、コレ以上余計な心配を掛けさせる訳にはいかない。

何より、完二は態度や口調等はともかく、根は優しい少年。

そんな彼の命を、この様な事で散らせる訳には行かない。

 

「相変わらずの霧……か。だが、まあいい。今は完二の場所を把握しなくては……ワイト!」

 

完二の探索の為にワイトを召喚する洸夜。

そして、召喚されたワイトは相変わらずの格好で宙をフワフワと浮いている。

 

「さて、ワイト。早速何だが「分からないだッ!?」……今度はなんだ?」

 

洸夜がワイトで探索しようとすると、下の方から話し声が聞こえ始める。

その若い声からして、その声の主が総司達である事が分かる。

何やら揉めている様にも聞こえるが……。

 

「あいつ等は一体、テレビの中に来てまで何を揉めているんだ……」

 

そう思いながら洸夜は、総司達から見つから無いように下を見てみると、そこには総司達とクマが話をしていた。

そして、その中でクマと陽介が何やら揉めていた。

 

「お前にも完二の居場所が分かんないと困んだよ! こんな世界、とても闇雲になんて進めないしよ……」

 

「ムムムム……“カンジクン”のヒントが欲しいクマよ。そしたらクマ、シューチュー出来る予感がひしめいてるクマ……たぶん」

 

クマの言葉に頭を悩ます総司達。

どうやら今回は、いつもの様にすぐに場所が分からない様だ。

 

「……情報が無いとコレ以上は探索出来ない、か。どうやら、あのクマは美鶴と同じで探索能力がそれ程高い訳では無いらしいな」

 

元々、美鶴が探索やサポートをしていたのは単純に探索タイプの力を持つ者が居なかったからだ。

だから、風花がメンバーに加入するまでは多少能力が低くとも当時、探索能力を唯一持っていた美鶴がサポート係をするしかなかったのだ。

ちなみに、洸夜がワイトを誕生させたのは風花が加入した後の為サポート係は出来なかった。

そして、クマが美鶴と同様のタイプだと分かると洸夜は、その場でため息を吐くいて仕方ないと言った感じでワイトに指示を出す。

 

「ったく、仕方ない……ワイト、完二の居場所を捜してくれ。恐らくは最近出来た筈だから、直ぐに分かると思うが」

 

『カカカカカカ……!』

 

洸夜の指示に、ワイトは持っている錆びた鎌を振り上げると、そのままの状態で停止する。

 

この状態は簡単に言えば、探索中と言う意味。

ちなみに、ワイトを誕生させた当初、この状態を見た洸夜はこのまま動かないのでは?と良く思っていた。等と思っている内にワイトは鎌を持ち直し、フワフワ浮きながら移動を始める。

 

「見付けた様だな。お前にはいつも助かっている」

 

そう言って洸夜は、総司達にバレない様にワイトの後を追う。

 

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現在、熱気立つ大浴場

 

「此処か……」

 

いつもの広場から少し離れた場所に、その場所はあった。

その周りからはムシムシとした熱気、そして熱苦しい程の湯気が立ち込められている。

 

「暑い……だが、そんな事を言っている場合では無いな。オシリスッ!」

 

洸夜は、周りの暑さのせいで流れる額の汗を拭いながらオシリスを召喚する。

 

ズズズ……!

 

「やはり、出たか……」

 

オシリスの召喚と同時に出現するシャドウ。

それを見た洸夜は、まるで待っていたかの様なそぶりでシャドウ達を見据え、オシリスを前に出す。

 

「オシリス……」

 

『電撃ハイブースタ!』

 

洸夜の呼び声と同時にオシリスの身体から電気が溢れ出し、オシリスは大剣を掲げる。

今から洸夜が行うのはただのシャドウ退治ではなく、総司達に居場所を教え様としているのだ。

どんなに探知タイプでは無いとはいえ、多少は能力が有るなら大きな力等の反応には嫌でも気付く筈。

つまり……

 

「分からないならば、大きな力を放ち、嫌でも気付かせるまでだ……オシリス!」

 

『マハジオダイン!』

 

『☆▲★○#ッ!?』

 

ドッゴォォォォンッ!!

 

洸夜が指示を出した瞬間に周りが光ったと思い気や、オシリスの放った雷が轟音と共に辺り周辺に降り注がれ、辺りを一掃した。

 

 

========================

 

 

「ドッヒャアッ!!!?」

 

「ど、どうしたッ!?」

 

「「クマくんッ!?」」

 

先程まで鼻に力を集中させていたクマが突如叫んだ事に驚く総司達。

そして、心配して皆がクマの下に駆け寄ると、クマは何やら鼻を凄い勢いで動かしていた。

 

「かんじる……かんじるクマ!。ものスゴイ力を、あっちの方からかんじたクマよ! こっちクマ!」

 

「あっ! おいクマ! ちょっと待てって……行っちまった」

 

「呑気に言っている場合じゃないだろ。クマを追うぞ」

 

自分達の言葉も聞かずに行ってしまったクマに、総司達は呆気に成ってしまったが、直ぐに頭を切り替え、クマを追っていく。

 

========================

現在、熱気立つ大浴場

 

「此処クマ!」

 

「なッ!? 此処は……!」

 

「い、一体何が有ったの……?」

 

クマを追って来た総司達が見たモノは、完二が映っていた大浴場。

しかし、その大浴場の入口辺りにはとても巨大な焦げ跡が刻まれていた。

余りに巨大なその焦げ跡を見るだけでも、どれだけの威力だったかぐらいは予想出来る総司達。

その為、余りの事に呆然としてしまったのだ。

 

「クマ……一体此処で何が?」

 

「クマにも分からないクマよ、センセイ。クマはただ、ここで強い力を感じただけクマ」

 

「つ、強い力って事は……誰かが?……いや、なにかが何かやったんだよね……?」

 

「何ビビってんだよ里中。誰かって、シャドウしかいねえだろ」

 

この状況を見て、内心では恐怖を覚えていた総司達に、陽介は少し茶化す感じに千枝に話す。

どうやら、まだ事の重大さに気付いてないらしい。

その陽介の態度に、千枝と雪子は注意を促す。

 

「……花村あんたさ、この状況を理解出来てる?」

 

「え? 何がだよ?」

 

「花村くん。少なくとも、この辺りにこんな事が出来る様なシャドウがいるかもって事なのよ。今の私達じゃあ、勝てるかどうか……」

 

雪子の言葉の通り、これ程の力を持つシャドウでは、いくら戦い慣れ始めた自分達でもどうなるか……それに、コレをやったのが本当にシャドウなのかどうかも分からない。

そう思っていると……。

 

「なあに、辛気臭いなってんだよ。相棒も、らしくないぜ。相棒には、俺達とは違って他にもペルソナが使えるだろ? ほら!、とっとと完二の奴を助けにいこうぜ!」

 

「あ、待て陽介!」

 

「待ってクマ!」

 

総司達は、さっさと走って行ってしまった陽介を追う為に、完二が入るである熱気立つ大浴場へと入って行った。

 

そして、その後ろから総司達を見ていた人物がいた。

 

「……やり過ぎたな」

 

総司達が大浴場の中に入ったのを確認すると、洸夜は建物の影から姿を現し、自分がやってしまった周りを見て呟いていた。

 

「(それにしても、人数が増えた事によってアイツ等に油断が生まれ始めたな)」

 

基本的に人は沢山の人数がいる場合、無意識に他人任せにする場合がある。

その為、総司達(主に花村だが)は正にこの状態に有る。

 

「ハァー。そろそろ本格的に調査したいんだが、まだまだ総司達だけでは危なくて任せられないな(特にメンバーの汚点は花村だな。順平もそうだったが、遊び気分でペルソナを使い、シャドウに挑めば最悪、仲間を危険に晒し……死ぬ)」

 

そう思いながら、総司達の行動に頭を悩ませる洸夜。ハッキリ言って、今の総司達に全て任せる事は出来ない。

しかし、此処でいつまでも考えている訳にも行かない為、洸夜は静かに大浴場へと足を進めた……その時

 

ズズズ……!

 

「早速のお出迎えか……(初めて見るタイプの奴もいるな)」

 

洸夜の前に現れたのは、虫型シャドウ『死甲虫』。

台座に乗っている『静寂のマリア』。

鉄球型のシャドウの付いた首輪をしている獣型のシャドウ『ニザームアニマル』等のシャドウが姿を現す。その中には、タルタロスではいなかったタイプのシャドウも存在する。

 

『シャシャ……!』

 

『……』

 

『グルルル……!』

 

そして、シャドウ達はそれぞれが意味も無い声を発しながら敵意を剥き出しにして洸夜に牙を向く。

そして、それに答える様に刀を抜く洸夜。

 

「掛かってくるなら相手をしなければな。ベンケイ!、マゴイチ!」

 

洸夜がペルソナを召喚すると、そこには巨大な姿で全身を鎧と武器を纏ったペルソナが召喚される。

そして、ベンケイの隣には顔の半分を烏をイメージさせる様な仮面を付け、一つ一つが銃口で出来ている黒い羽の様な足まである長いマントを身に付けており、両手には火繩銃の様な物を、更にそのペルソナの周りには沢山の銃が浮いているペルソナ『マゴイチ』が召喚される。

 

「ベンケイ! マゴイチ!」

 

『デスバウンド!』

 

『秋雨撃ち!』

 

 

洸夜の指示に、ベンケイは拳を叩き付けて衝撃波を放ち、マゴイチは銃を右から左に乱射してシャドウに攻撃する。

 

『…!!?』

 

『ジャ……!?』

 

それぞれの攻撃がシャドウを襲い、何体かのシャドウは消滅したが、残りのシャドウ達は空中に逃げて攻撃を交わす。

 

「あれを避けたか……少しは骨の有る相手が出て来た様だな!」

 

『シャシャシャシャッ!』

 

洸夜が喋っている間にも、『死甲虫』が洸夜目掛けて突っ込んで来る。

シャドウ特有のアルカナを示す仮面の様な物が付いた角が洸夜を襲うが、洸夜はそれを横に跳んで攻撃を避ける。

だが……。

 

「ぐッ! 後ろか……!」

 

突如、後ろから銃の様な攻撃をされた洸夜。

だが、物理無効を持ったベンケイのお陰でダメージは無いが服に傷が着く。

そして洸夜は、攻撃の来た方に視線を向けるとそこには、明らかに他のシャドウとは大きさが違う、二体のシャドウ。

レスラーの様な姿の『闘魂のギガス』と、銃と手錠を持ち、警官の姿をしたシャドウ『狭量の官』が姿を現す。

 

「大型シャドウ……! 他の奴ら同様、今度は完二に影響された突然変異のシャドウか……」

 

毎回と言って良い程、影響されたシャドウにそう遇する洸夜。

しかし、今回は二体同時に相手をしなければ成らないそう思った洸夜は……。

 

「……ヨシツネ! ヤタガラス!」

 

洸夜は鎧を纏い、刀を肩に乗せたペルソナと三つの足を持つ烏のペ大浴場の戦いルソナを召喚する。

そして、ベンケイとヨシツネ。

マゴイチとヤタガラスが互いに並び、シャドウと対峙する。

 

「久しぶりにやるぞ……ミックスレイドだ」

 

END


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