ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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鳥籠の紅い鳥

 

 

4月19日(火)晴れ→曇

 

現在、雪子姫の城最上階

 

千枝の影との戦いから翌日総司達は今、雪子がいる城の最上階にいた。

此処に来るまでの間にシャドウ達とも戦闘をしたが、千枝はペルソナを上手く扱い、戦力として心強い。

 

「この先にあの子と、シャドウがいるクマ」

 

クマの言葉を聞いて皆の顔付きが変わる。

今までの流れならば、またシャドウが暴走する可能性が有るのだから。

そう成らない事を祈るしか無い。

そう思いながら総司は他のメンバーに顔を向けると、既に千枝の顔には覚悟が写っていた。

 

「この先に雪子が……」

 

「ああ、俺達で天城を助けようぜ!」

 

「皆、油断するなよ。相手は今までの様に暴走する可能性もある」

 

此処にくるまでの間、極力最低限の戦闘は避けて来たから、体力精神力ともに余裕がある。

 

「ところでよ、此処まで来て難だけどさ……」

 

ついさっきまで、気合いを入れていた陽介が何気なく口を開く。

 

「……(言いたい事は分かる)」

 

総司も陽介の言いたい事が分かるからあえて黙る。

 

「ん?何かあんの?」

 

陽介の言いたい事が分からない千枝が早くしてよ、と言わんばかりに陽介に聞き返す。

だが、千枝のその態度に陽介は怒りを表す。

 

「何かあんの?じゃねぇよ!!。天城を助ける為とは言え今日は俺達、学校サボってんだぞ!」

 

そうなのだ総司達は今朝、千枝から『今日は学校休んで雪子を救出するからジュネスで待ってる!』と言うメールが届いた。

そして、総司と陽介は周りにバレない様にテレビの中に来たのだ。

 

「いいじゃん別に!。雪子の命が掛かってんだよ!」

 

「言いたい事は、分かるけど!俺らの担任ってあのモロキンだぞ!。よく考えてみろ、男子二人と女子二人が学校を休んでんだ。あのモロキンの事だ、変に勘繰って最悪、自分の家に連絡されてる……」

 

その言葉に千枝は顔色が変わり、モロキンを知らないクマは話しについて行けず混乱している。

 

「(って言うか……家に連絡されるのは、かなりまずい。昨日の補導の一件は見逃して貰ったが、昨日の今日で学校をサボった連絡が来たら多分……兄さんが黙ってない)」

 

そんな事を考えていた総司は戦いの前なのに気分が悪くなる。

 

「もう! 此処まで来たんだからいいじゃん! モロキン何か忘れて雪子の所にいくよ!」

 

そう言って扉に向かう千枝に続き、陽介とクマも扉に向かう。

 

「くそ! こうなりゃ自棄だ!」

 

「クマには何の事か分からないクマよ」

 

そして、総司も皆に続き扉の前に行くが、その表情は余りにも暗くなっているだろう。

そして、その表情を見て心配したのか、陽介と千枝が話し掛けて来る。

 

「どうした相棒? 表情がヤバいぞ……?」

 

「瀬多君らしくないね? 何か心配事?」

 

「兄さんの事で少しだけ心配なんだよ。昨日の今日で学校をサボってしまったから……」

 

総司の言葉に納得した表情をする二人。

陽介と千枝も昨日の一件で、洸夜は怒ると怖いと言う事が分かったからだ。

 

「でも、雪子の為だし……きっと誰かの命の為って言えば許してくれるよ!。何か有ったら私と花村もフォローするからさ!」

 

「ああ! 任せろって! 俺達は相棒の味方だ!」

 

「ありがとう二人共(だけど、兄さんがそんな事で許してくれるとは思えない気がする……逆に誰かの命を理由にする事に激怒するかも知れない……)」

 

そう思いながらも総司は雪子の救出を優先し、目の前の事に意識を向けた。

 

 

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現在、堂島宅

 

現在、洸夜は総司達の担任の先生からの電話に出ていた。

理由は総司・千枝・陽介の三人が何の連絡もないまま学校に来ていない為だ。

その事を聞いた瞬間、洸夜は言い訳が出来ず。

そして今は、担任の暴言とも取れる言葉を聞いている状態だ。

 

「はい……はい……帰ったらちゃんと言い聞かせますので……はい、必ず」

 

『本当に頼みますよ!全く転校して間もないのにも関わらず、男女四人で休んで何をしているんだか……! 全く、どんな教育をしているんだか知りたいですな!』

 

「ッ!……返す言葉もございません……!」

 

総司達の担任である諸岡の言葉に一瞬、堪忍袋が限界を超え掛けたが今回の一件はこちら側に非があるのは明白な為、洸夜は黙って言葉を受ける。

 

『それでは私は失礼しますよ!』

 

ブツッ!プー、プー。

 

「チッ! 言いたい放題言いやがって……! それにしても総司達の野郎、昨日の今日でやってくれるな……!」

 

総司達がいる場所は恐らくテレビの中。

雪子を救出する為に向かったのだと予想出来る。

だが、助ける猶予もまだ有る筈。

それにも関わらず、昨日の今日での出来事。

今後もこの様な事が起こる度に、誰かの命を助けているんだから学校ぐらい良いだろう。

等と言う、命の重さを軽く考える様な考えが生まれ続けたら、堂島達を含めテレビの世界を知らない殆どの人からの信用を失ってしまうかもしれない。

テレビの中に入って人助けしているなんて、誰も信じる訳がないのだから。

しかも、誰かに休む事を伝えていたならば未だしも、誰にも何の連絡もしていないという始末。

これでは、フォローしようにも出来る訳が無く、只、回りの人達を余計に心配させるだけだ。

 

「(成長の為とは言え、彼女を見捨てた俺が言える義理では無いが……誰にも連絡しなかったのは誉められない) ……今日はバイトが無くて良かった」

 

総司達の軽率な行動に洸夜は、内側から溢れてくる怒りを何とか抑えるとテレビの中へと入って行く。

 

 

 

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現在、雪子姫の城最上階

 

『老舗旅館?女将修行? そんなウザい束縛まっぴらなのよ!』

 

「や……やめて……」

 

現在、総司達は雪子と雪子?を見付け対峙していた。

 

「雪子……」

 

雪子の苦しみが分からなかったからか、雪子?の言葉を聞き、表情を暗くする千枝。

そんな中、雪子?は話を続ける。

 

『生き方……死ぬまで何から何まで全て決められてる! あーやだ!嫌だ!。伝統?誇り?そんなのクソ食らえよ! あんな旅館、潰れれば良い! 私はモノじゃないんだから!……それがホンネよ。ねえ?……もう一人の私』

 

「ち……違う……違うッ! あなたなんか…-」

 

雪子?の言葉を聞いて雪子は、それを否定しようとする。

 

「!……まずいぞ!」

 

「ダメ! 雪子ッ!」

 

「言うな!」

 

不穏な空気を感じ総司達は雪子を止めようとして声を上げるが間に合わず……。

 

「あなたなんか! 私じゃないッ!」

 

その言葉が引き金となり、雪子?から闇が溢れ出る。

 

『ふふふ……あはははははははは!! そうよ!私は私あなたじゃないわ!』

 

雪子?がそう叫ぶと、闇が集まり上から鎖に繋がれた鳥かごが降って来る。

そして、中から顔が人面の紅き鳥のシャドウ『雪子の影』が出現した。

 

『我は影、真なる我……ふふふ、力が……力がみなぎってくる』

 

「あ……ああ……何? 何なの……!」

 

「雪子! クマ君! 雪子をお願い!」

 

「任せるクマ!」

 

雪子の事をクマに任せて総司達は武器を構え、前にでる。

 

『なに? 何なのあんた達、邪魔よ!。来て王子様!』

 

シャドウがそう叫ぶと、冠を被り赤い服を着て剣を持つシャドウ『白馬の王子』が出現する。

 

「いきなり召喚か……」

 

「大丈夫、数ならこっちの方が勝ってる」

 

「皆……いくぞ!」

 

「「「ペルソナ!」」」

 

総司達はそれぞれのペルソナを召喚し、シャドウ達に掛かっていく。

 

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現在、雪子姫の城

 

洸夜は現在、総司達を追って城の階段を上っていた。するとそんな時、ワイトが騒ぎ始める。

 

『カシャシャ!』

 

「ん? ワイトのこの騒ぎ様は……やはりシャドウが出たか。だが、花村や千枝ちゃん達のシャドウとは比べモノにならない力を感じる……少し急ぐか」

 

そう言って洸夜は、城の階段を再び上り始めた。

 

===============

 

「はぁ……はぁ……」

 

「里中! お前は一回下がれ」

 

『ふふふ、どうしたの? そんなモノ?』

 

 

現在の総司達の状況ははっきり言って結構ツライところだ。

総司達の身体はボロボロで、顔や服にも傷が出来ている。

 

「流石にマズイ!。あの王子野郎……真の抜けた顔をしてるけど強いぞ!」

 

そう、雪子のシャドウの所まで行こうとするとあのシャドウが妨害をして、その隙に雪子のシャドウが攻撃を繰り出し現在に至る。

 

「負けられない……負けられないのよ!。雪子を絶対助けるんだから!」

 

「千枝……」

 

千枝の言葉にクマの側にいた雪子が呟く。

 

「喰らえ! トモエ!」

 

『ブフ!』

 

トモエの放つ氷が、シャドウを襲うが……。

 

『ふふふ……王子様には傷を付けさせないわ! 白の壁!』

 

パキィィンッ!

 

シャドウの前に白い壁が出現しトモエの放つブフを防ぐ。

 

「そんな!」

 

「くッ!千枝の影の時と一緒だ!」

 

「クソッ!(どうする?。何か手がないか弱点が無くなった今、どうすれば……弱点? そうだ!)」

 

弱点が無くなった事で焦っていた総司だが、ある当たり前の事に気付く。

 

「千枝! 俺にタルカジャを頼む!」

 

「え? なんで?」

 

総司の言葉に千枝は白馬の王子と攻防してながら口を開くが、何故今このタイミングでタルカジャなのか意味は分かっていない様だ。

 

「いいから!」

 

「もう、分かったよ!。トモエ!」

 

『タルカジャ』

 

千枝にタルカジャをかけてもらい、総司は自分の力が上がるのを感じた。

 

「よし! いくぞ!イザナギ!」

 

総司はイザナギを召喚し、シャドウ達に向かって走り出す。

そして、それを見たシャドウは嘲笑うかの様に笑い出す。

 

『あははは!。まだ来るの? そろそろ死んでくれる!』

 

シャドウがそう言うと俺の前に『白馬の王子』が立ち塞がるが……これが総司の狙いだ。

 

『スラッシュ!』

 

『!!!』

 

『白馬の王子』が前に来た瞬間に、イザナギで全力でたたっ斬って『白馬の王子』はそのまま両断する。

 

「(弱点に執着していたから気付かなかったが、弱点じゃなくても相手には効く筈だ……当たり前の事だけど)」

 

「「!……そうか!」」

 

陽介と千枝も、総司の意図に気付きシャドウに向かって走り出す。

そして『白馬の王子』が消えた事により『雪子の影』から冷静さがなくなり、咆哮を上げる。

 

『そんな! 王子様!王子様っ!』

 

『召喚!召喚!』

 

何度も召喚を使うが『白馬の王子』は出現しない。

 

「あのシャドウはもう出ないようだな……」

 

「今がチャンス」

 

「一気に畳み掛けろ!」

 

此処ぞとばかしに陽介と千枝は駆け出し、シャドウに向かって突っ込むが……。

 

『ふざけるな! ふざけるなぁぁぁ!!!』

 

『焼き払い!』

 

総司達の行動に怒りをあらわにしたシャドウは辺り構わずに炎を放つ。

しかし、千枝が前に炎に突っ込む。

 

「トモエ!」

 

『ブフ!』

 

トモエから氷が放たれ、炎が相殺され道が出来る。

 

「今度は俺だ! 行け!ジライヤ!!」

 

『ソニックパンチ!』

 

『ぐわぁ!』

 

ジライヤから放たれる物理技がシャドウに直撃し、シャドウは倒れるが決定打には成らず、再び立ち上がると身体に光が発生する。

 

『まだ! まだ私は!!! アサルトダイブ!』

 

そう言うとシャドウは、総司に目掛けて突っ込んでくる。

しかも、その攻撃はシャドウの全力を持っての攻撃。直撃したら、ただではすまない事は総司達も分かっている。

しかし、此処で逃げる訳にも行かない。

 

「陽介! スクカジャだ!」

 

「任せろッ!ジライヤ!」

 

『スクカジャ!』

 

ヒュウウン!

 

スクカジャを使用した事で総司は身体が軽くなるのを感じた。

そして、突っ込んでくるシャドウの真下に一瞬にして潜り込む。

 

『なにッ!?』

 

真下に潜り込まれた事で困惑するシャドウだが、総司は一瞬でも良かったから隙が欲しかった。

 

「俺達の勝ちだ。イザナギ!」

 

総司はイザナギを召喚すると、真下から一気にシャドウを大剣で斬ると言うよりも大剣で殴り上げた。

 

『ギャアアアアッ!』

 

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総司の攻撃を受け、倒れたシャドウだが、まだ消えていなかった。

 

『誰でも良かった私を連れ出してくれるなら……何処でもいい……ここじゃない何処に……此処は……私には苦し過ぎる』

 

シャドウはそう呟いているが動く気配がなく、そしてそれを見て千枝が前にでてシャドウを睨む。

 

「これでおわりよ!」

 

そう言って留めを刺そうとした時だった。

 

「やめて!」

 

「……雪子?」

 

「天城さん?」

 

雪子が留めを刺すのを止め、シャドウの前にでる。

しかし、いくら倒したとは言え、先程は雪子を殺そうとしたシャドウ。

生身の雪子には、危険なモノである事には変わらない

 

「ちょッ! 雪子!?」

 

それに気付き、慌てて止めようとする千枝に雪子は……。

 

「大丈夫……後は私が……」

 

そう言う雪子の顔は先程とは違い笑顔だった。

文字通り、その笑顔に迷いは無い。

 

「逃げたい……誰かに救ってもらいたい……旅館の後継ぎなんてクソ食らえよ!」

 

「ゆ……雪子?」

 

「天城……さん?」

 

普段の雪子からはありえない言葉が出て来て皆も驚く中、雪子は話しを続ける。

 

「そうね、確かにそれも私の気持ち。あなた私だね……私ばっかり辛い目に可哀相な私……縛られてばかりで自由に成れない」

 

「……」

 

雪子の話しを皆が黙って聞く。

 

「けどね、父さんや母さんを始めとした旅館の人達も皆、家族みたいで……知ってる?。小さい頃からみんな優しくしてくれてたんだよ?。……子供の頃だけじゃない、今だって優しくしてくれる」

 

雪子は話をしてる最中でも自分のシャドウから目を離さない。

まるでその姿は、自分から逃げるのを止めた様な姿だった。

 

「だからこそ、そういう中で育ってきたから今の私があるの。旅館なんて潰れればいいって思ったりもするけど、やっぱり私の家、私のいられる場所。……潰すなんてできないよ。もちろん、あなたも……」

 

「「「……あ」」」

 

シャドウにそう言って、手を差し出す雪子を見て俺達はつい声が出てしまった。自分から出たシャドウ・・言わば、彼等もまたもう一人の自分。

しかし皆、彼等を否定した結果……暴走し、襲い掛かってくる。

 

「……(シャドウ達も犠牲者なのかも知れない)」

 

そう思いながら総司はシャドウに手を差し延べる雪子を見ていた。

 

「前は今まで千枝が手を差し延べてくれたけど……今度は私が連れて行ってあげる。そうじゃなきゃ、いつまでも逃げてるだけでお母さんからも旅館からも向き合う事なんて出来ない……それにほら」

 

「あれは……(兄さんの鈴)」

 

総司が不思議がる中、そう言って雪子は着物の中から紅い鈴を取り出して、笑顔でシャドウに見せた。

 

「私の事を見てくれているのが、千枝だけじゃないって分かったから」

 

雪子がそう言った瞬間、光が溢れ、シャドウが花びらを撒き散らせながら頭に華の飾りをつけ、周りには華の様な衣を纏うペルソナ『コノハナサクヤ』になる。

 

「今度は大丈夫だから、一緒に行こう……コノハナサクヤ」

 

そう言って雪子とコノハナサクヤは手を取り合う。

そして周りの花びらは二人を守る様にずっと舞っていた。

 

END


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