機動戦士ガンダムSEED Destiny 聖なる解放者   作:もう何も辛くない

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三話目です
ついに、セラの存在にシエルが気づく…?

そして、戦闘シーンが…
今回は結構ひどいです


PHASE3 出撃する女神

「…遅いな」

 

 

敵の戦艦を次々と撃沈させていく中、ネオがぼそりとつぶやいた

 

今、敵の新型機三機を奪っているであろう三人が、未だに帰艦してこない

 

 

「失敗ですかね?」

 

 

艦長がネオに問いかける

 

 

「失敗するような奴らなら、こんな作戦、頼んじゃいないさ」

 

 

だが、ネオは迷いなくこう言い放った

そして、席から立ち上がる

 

 

「出撃して時間を稼ぐ。スウェン、お前も俺と来い」

 

 

「了解」

 

 

ネオとスウェンは艦橋から出ていく

 

パイロットスーツも着ないまま、それぞれの機体に乗り込んでいく

ネオは紫色のMAに

スウェンは、ガンダムに

 

 

「よし、行くぞ。出たらすぐに敵さんが来るからな!」

 

 

ネオがそう言って出撃していく

そして、スウェンも

 

 

「スウェン・カル・バヤン。エクステンド、出る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラは、見つけた灰色の戦艦にザクを着艦させた

格納庫にいる人たちが、混乱している

戸惑いの表情をこちらに向けている

 

このザクが、ここに配属される予定はなかったのだろう

 

セラは、申し訳ない気持ちを感じながらカガリを支えてハッチから降りていく

 

 

「え?」

 

 

「誰?」

 

 

と、まわりから聞こえてくる

 

それだけでなく、兵たちが銃を向けてくる

当然の反応だ

 

セラとカガリが、床に足をつける

それと同時に、赤い髪の少女が二人に銃を向けながら近づいてくる

 

 

「本艦はこれより発進します!各員、所定の作業に就いてください!」

 

 

その時、放送が入ってきた

セラとカガリは上を見上げる

 

 

「動くな!」

 

 

それを見ていた少女が怒鳴り声をあげる

 

 

「お前たち、軍のものではないな?なぜその機体に乗っている!?」

 

 

質問を重ねる少女

相当警戒しているようだ

 

カガリがその質問に答えようとするのを、セラは腕で制する

それは、自分の仕事だ

 

 

「そちらの機体を勝手に使ったものは謝る。だが、その銃を下ろせ」

 

 

セラは上から見下ろすような口調で告げる

少女は表情を歪ませる

 

 

「こちらは、オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ氏だ」

 

 

少女が驚きの表情を浮かべ、思わずといったように銃を下ろす

その他の兵や作業員も、戸惑いの声をあげている

 

 

「俺は随員のアベル・ヒビキ。デュランダル議長との会見の途中、騒ぎに巻き込まれ、避難もままならないままにこの機体を借りた」

 

 

この場にいる、セラとカガリ以外の全員があいまいな表情で互いと見合わせている

 

これなら、何とかなるな

と、セラは思った

 

 

「議長はこの艦に入られたのだろう?お目にかかりたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

ミネルバの艦橋のモニターには、奪われた三機を追って、シンたちが宇宙空間に出ていくところが映し出されていた

 

 

「あいつら!何を勝手に!」

 

 

それを見ていたアーサーが困惑の声をあげる

 

 

「インパルスのパワー、危険域です!」

 

 

「えぇ!?」

 

 

さらに追い打ちをかけるような報告に、アーサーの顔が青ざめる

だが、艦長であるタリアは冷静だった

 

 

「インパルスを失う訳にはいきません。ミネルバ、発進させます!」

 

 

セリフの前半は、ただの建前だった

少年、少女たちを見殺しにするわけにはいかない

それが本当の理由だった

 

タリアは、デュランダルに視線を向ける

デュランダルは、タリアと視線を合わせて頷く

 

タリアもまた、強くうなずき返した

 

 

「ミネルバ発進シークエンス、スタート。本艦はこれより、戦闘ステータスに移行する!」

 

 

指示した後、タリアは再びデュランダルに視線を向ける

 

 

「議長は、下船を」

 

 

そう進言するタリア

だが、デュランダルは首を横に振った

 

 

「タリア、とても残って報告を待っていられる状況ではないよ。

私には権限もあれば義務もある。…私も行く。許可してくれ」

 

 

艦の上では、艦長の命令は絶対だ

だが、タリアは、デュランダルが乗艦することを許可した

 

そして、デュランダルに見えないように小さくため息を吐いた

 

 

 

 

 

 

シンたち三人は…いや

シンは、あの三機を追って宇宙空間に出て行った

そして、シエルとレイは、そんなシンを追って行っていた

 

 

「シン!深追いするな!」

 

 

「ここは戻ろう!シン!」

 

 

レイとシエルがシンに呼びかける

だが、シンは聞く耳を持たない

 

 

「どこだ…、どこにいる!」

 

 

まわりを見渡して、奪われた三機を探す

その時、三機に向けてビームが放たれた

 

三機はそれぞれ違う方向に機体をずらして回避する

 

 

「ほう、五機目の新型か…。そして、あれは…」

 

 

ビームを放った人物

ネオは三機を分析していた

 

そのうちの二機は、見たことがない

あの二機も、ザフトが開発した新型の機体だろう

 

 

「ヴァルキリーか?」

 

 

そして、残りの一機

あれは、ネオも知っていた

 

前大戦を集結に導いた

その象徴となる四機の機体の内の一機

ヴァルキリー

 

 

「なるほど…。これは、俺のミスかな?」

 

 

ネオは、初め、この二機の新型を奪取しようと考えていた

だが、ヴァルキリーまでいるのなら別だ

 

 

「ガーティ・ルー!撤退だ!すぐに戦闘宙域から離脱しろ!」

 

 

ネオは撤退を選んだ

ただでさえ、この場にいすぎたのだ

もうすぐ、かなりの質量の戦力が自分たちを襲うだろう

 

そして、この新型の三機

間違いなく、分が悪いのは自分たちだ

 

 

「スウェン、俺たちは時間稼ぎに徹するぞ!」

 

 

「了解」

 

 

二人は、三機に向かっていった

 

 

「俺が新型の二機を相手する。お前はヴァルキリーを」

 

 

「了解」

 

 

同じ返事をするスウェン

だが、指示には従う

 

エクステンドを駆って、ヴァルキリーに向かっていった

 

 

「この機体は…?」

 

 

シエルは、自分のほうに向かってくる機体を観察する

真っ黒な機体

これは

 

 

「ルースレス…?」

 

 

そう

ルースレスに似ていた

 

そのルースレスに似た機体

エクステンドは、両腰、そして両肩に装備しているビーム砲をヴァルキリーに連射する

 

放たれた砲撃を、シエルは舞うような動きで回避する

 

シエルは、この機体を使っての実践は、ヤキンでの戦い以来だった

シミュレーションはこなしてきたものの、それでも実戦には遠く及ばない

だから、勘が鈍ってはいないかとどこか心配していた

 

シエルはサーベルを抜き、砲撃を掻い潜りながらエクステンドに接近し、サーベルを振り下ろす

一方のエクステンドも、対艦刀を抜いて迎え撃つ

 

 

「…大丈夫」

 

 

思っていたよりも、勘は鈍っていない

それでも、ヤキンの時よりも動けていないと感じるが、それも微々たるものだ

この程度の相手なら、それでも十分だ

 

シエルは、鍔迫り合いをしている相手に機体を蹴り飛ばす

エクステンドは、その衝撃に逆らわずに後方へ飛ばされる

 

 

「…?」

 

 

その動きに、シエルは違和感を感じた

 

なぜ、抵抗しない?

 

だが、チャンスには変わりない

ライフルを撃って追撃をかける

 

 

「!」

 

 

体制を崩していたはずのエクステンド

放たれたビームを、回避した

 

そして、そのまま体制を立て直してそのままこちらに向かってくる

 

シエルはサーベルを構えて迎え撃つ体制を作る

 

その時だった

 

 

「…!?」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

動き出したミネルバ

 

 

「避難するのか?この艦は…。それほどまでに、プラントのダメージは甚大なのか…?」

 

 

カガリが天井を見上げながらつぶやく

セラは、カガリを見るが、その言葉に答えない

 

今、セラとカガリはまわりを武装した兵に囲まれながら通路を歩いていた

まるで、監視されているみたい…、いや、実際に監視されているのだろう

 

 

「コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!パイロットは、ブリーフィングルームに集まってください!」

 

 

その時、警報が流れた

 

コンディションレッド…?

 

弾かれたように、セラは赤髪の少女に詰め寄った

 

 

「戦闘に出るのか!?この艦は!」

 

 

少女も、戸惑った表情でセラを見る

この少女も、状況を読み取りきれていない…?

 

 

「セラ…!」

 

 

その時、カガリは、セラを本名で読んでしまった

セラは振り返る

 

 

「…セラ?」

 

 

少女が、訝しげな眼でこちらを見てくる

 

偽名を使っていたセラ

 

怪しまれてしまうのは、当然のことだった

 

 

 

 

 

 

 

 

シンとレイが、紫色のMAと戦っているとき、視界に灰色の戦艦が飛び込んできた

 

 

「ミネルバ!?」

 

 

そう、あの灰色の戦艦

それは、自分が配属された母艦、ミネルバだった

 

そして、ミネルバから信号弾が発射される

 

 

「撤退!?」

 

 

そこでシンは、自分の機体のエネルギー残量に気づく

もう、あと三十秒も戦闘していれば、FSダウンを起こしていただろう

 

 

「シン、戻るぞ。俺の機体もエネルギーが危ない」

 

 

レイから通信が入る

セイバーもエネルギーが残り少ないらしい

シンは、しぶしぶといった表情で、機体をミネルバに向けた

 

 

 

 

 

 

シエルにも、ミネルバ

そして、撃たれた信号弾が見えていた

すぐに撤退を開始する

 

 

「…?」

 

 

だが、撤退していくシエルを、エクステンドは追わない

逆に、エクステンドも母艦に戻っていく

 

あの戦闘は、ただの足止めだったのだろうか

だから、全力で戦っていなかった…?

 

 

「…」

 

 

シエルは、首を横に振る

そのことを考えるのは、今ではない

 

シエルは、スピードを上げて帰艦していった

 

 

 

 

 

 

「インディゴ五十三、マーク二十二ブラボーに不明艦一!距離、百五十!二機の機影が、着艦しています!」

 

 

「諸元をデータベースに登録。以降、対象をボギーワンとする!」

 

 

報告を受けたタリアが指示を出す

 

その不明艦が、母艦であることは間違いない

 

 

「ボギーワンを討つ!ブリッジ遮蔽、進路インディゴデルタ、加速二十%、アンチビーム爆雷発射用意…。

アーサー!何してるの!」

 

 

タリアの指示と共に、艦橋がゆっくりと下降していく

そこは、CICと直結している場所だ

 

指示を出して、最後にぼぅっとしているアーサーを一喝するタリア

 

 

「うあ…、は、はいっ!」

 

 

アーサーは飛び上がりながら返事を返す

そして、表情を引き締めて、副艦長として指示を出す

 

 

「トリスタン一番二番、イゾルデ起動!対象、ボギーワン!」

 

 

アーサーの指示に従って、次々と兵器が起動していく

 

 

「このままボギーワンを叩きます!進路、イエローアルファ!」

 

 

ミネルバは、トリスタンを放ちながらボギーワンに向けて進んでいく

ボギーワンは、そのミネルバから逃げるように進んでいる

 

ボギーワンも、かなりの高速艦のようだ

だが、それでもミネルバにはかなわないだろう

現に、今も少しずつ二隻の距離は接近していっている

 

その時だった

モニターに映っていたボギーワンが、両舷から飛び出していた物体を切り離した

 

 

「ボギーワン、船体の一部を分離!」

 

 

重量を減らし、速度を上げるのが目的なのだろうか

 

二基の物体はこちらに向かってくる

 

 

「!」

 

 

そこで、タリアは気づいた

敵の狙いが

この物体の正体が何なのかを

 

 

「撃ち方待てっ!面舵十!機関最大!」

 

 

タリアが慌てたように指示を出す

ミネルバの操縦士も、その指示に従って迅速に舵をきる

 

だが、遅かった

 

二基の物体が、爆発を起こした

爆発による光に視界を遮られる

 

クルー、そしてデュランダルが目をつぶる

 

そして、光が収まり、視界が晴れた時には

 

 

「ボギーワン!レッド八十八マーク六チャーリー!距離五百!」

 

 

こちらの射程範囲内から抜け出していた

 

 

「やってくれるわ…!こんな手で逃げようなんて」

 

 

タリアがいら立ちを含ませた声でつぶやいた

逃げられてしまった

 

それが、タリアをイラつかせる

 

 

「大分手ごわい部隊のようだな…」

 

 

タリアの背後から、デュランダルが話しかけてくる

 

 

「ならばなおのこと、このままあれを逃がすわけにはいきません。そんな連中に、あの機体が渡れば…」

 

 

「あぁ。私のことは気にするな。あれの奪還、破壊は現時点での最優先事項だ」

 

 

デュランダルがそう言い放つ

タリアは頭を下げた後、クルーたちにボギーワンの位置を確認させる

 

そして、ボギーワンを追うという号令を出す

 

 

「艦長」

 

 

その時だった

上の階層に戻ってきた艦橋に、通信が入ってきたのは

 

 

「戦闘中ということで、ご報告が遅れました。本艦発進時に、格納庫にてザクに搭乗した民間人二名を発見。

身元を確認したところ、オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ、そしてその随員であることが判明」

 

 

「え?」

 

 

タリアが驚愕の声を出す

デュランダルも、タリアに休むことを勧められて、艦橋から出ようとした足を止め、引き返してくる

 

 

「今は、士官室でお休みいただいておりますが…」

 

 

頭を抱えたくなる

 

そんな気持ちを抑えて、タリアは通信を入れた少女

ルナマリアに返事を返してから、デュランダルと共に、士官室に足を向けた

 

だが、タリアは一つ気になっていた

通信が入ってきて、デュランダルは驚愕の表情を浮かべて戻ってきた

その時、デュランダルが一瞬

 

笑っていたような気がしたのだ

 

 

 

 

 

 

 

ミネルバに着艦し、戦闘が行われたことに驚きはしたが、もう戦闘は収まったらしい

セラとカガリは、あの後、この士官室に案内された

今は休んでいる

 

 

「…ん?」

 

 

扉がノックされる音がする

カガリが出ようと、立ち上がる

それを制して、セラが扉に向かう

 

 

「…議長。それに…?」

 

 

扉を開けると、二人の男女

 

一人はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル

そして、もう一人は白いザフト兵の服を身にまとった女性だった

 

 

 

 

 

 

シエルは、戦闘から戻り、今はヴァルキリーの整備を手伝っていた

基本、機体の整備はそれを専門とする人が行うのだが

 

まわりから、話し声が聞こえてくる

皆、戦闘が行われたことに少なからず戸惑いを覚えているらしい

 

このまま戦争になるのではないかと心配する声もあがっている

 

 

「なあ、あのザクのパイロット、誰なんだ?」

 

 

その時、シンの声が耳に入ってきた

シエルがシンに目を向ける

 

シンは、ルナマリアに話しかけたらしい

 

緑色のザク

あれは、ミネルバ配属の機体ではないはずだ

 

 

「あぁ、あれに乗ってたのは、オーブのアスハよ」

 

 

「アスハぁ!?」

 

 

「!?」

 

 

シンの驚愕の声が聞こえてくる

 

その声が聞こえたのか、マユがルナマリアに近づいていく

 

 

「ルナさん、それって本当ですか!?」

 

 

マユがルナマリアに詰め寄っている

 

 

「ええ。ほんと、びっくりしたわよ…。けど、あれを操縦してたのは、護衛の人だそうよ?…あ」

 

 

シエルは、ルナマリアが話している内容が気になり、整備を他の人たちに任せて、三人の傍に向かっていく

 

 

「どうした?何か気になることでもあるのか?」

 

 

シンが、シエルの接近に気がつき、視線を向けながらルナマリアに問いかける

 

 

「うん…。その護衛の人、名前を…アベル・ヒビキ?…て、名乗ったんだけど」

 

 

そこでルナマリアは言葉を切る

 

 

「それ、偽名みたいなのよ」

 

 

「え?」

 

 

シエルがその言葉に反応した

 

偽名?

 

そんなものを使うような人物が、カガリの護衛なのか

シエルはカガリのことが気になった

 

 

「代表がとっさに呼んだのよ。えっと…なんて言ったかなぁ…」

 

 

ルナマリアが、なんて呼ばれていたかを思い出そうとする

十秒ほど経っただろうか

シンが、もういいよと言おうとした時だった

 

 

「あ!そうよ!セラ!セラって呼んだのよ!」

 

 

「!?」

 

 

「セラ?誰だ?マユは知ってるか?」

 

 

「わからないよ…」

 

 

シエルの顔が驚愕で染まる

 

セラ…?

 

 

シンたちがセラとは誰なのか

それを話し合っている中、シエルは戸惑っていた

 

セラが、なぜこんなところにいるのか

いや、それは決まっている

カガリの護衛だろう

 

なら、なぜカガリはセラを護衛に選んだ?

セラはまた、その力を振りかざしてしまったのか

 

 

「シエルさん…、どうしたの?」

 

 

「え?」

 

 

考え込む中、マユに話しかけられた

見ると、ルナマリアもシンも、心配げにこちらを見ていた

 

 

「あ…、別に…。ただ、オーブの代表は、どんな人なんだろうって…」

 

 

その言葉に、ルナマリアは首を傾げる

シンは、不快な表情になり、マユは微妙な表情になる

 

シエルは再びセラのことを考え始める

 

 

 

再会は、近い




今回はここまでです
セラとシエルの会話は、まだ先になるかも…

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