書いてたと思ったら真ちゃんと一緒に書いてたので今回はソロでお届けしますよ。
それでは本編をどうぞ!
秀徳高校 【 高尾和成 】
『なんでもできてすごいね』
『話しかけやすいよね~』
『コミュ力高いよね』
なんてよく言われる。その分、と言っていいのか分からないが、異性からのアプローチもそこそこあったりする。…が、「今はバスケに集中したいから」と相手の気持ちに応えることは無い。
……と言っても、これは建前だ。
バスケの事が嘘かと言われたらそうではないが、一番の理由は他にある。
「高尾ー!」
声の方へ振り向くと、そこには秀徳高校の制服に身を包んだ幼馴染の姿があった。
黒く長い髪の毛を頭の上で1つに結び、それは馬のしっぽの様に風になびく。
「お、美咲!おはよー」
彼女は神崎美咲。俺の幼馴染だ。小さい頃からずっと一緒で、俺の影響でバスケが好きになったらしく、中学の時にはバスケ部に所属していた。高校、現在では男子バスケ部のマネージャーとなった。
「朝練ないと思ったら日直なんて、ツイてないよね私たち」
「本当なー。最近冷えてきたし……」
街路樹の葉を見ると、ほんの少し赤や黄色に色づいている。季節の移ろいが視覚的に見えるのは何だか面白い。
「そういえばさ」
「ん?」
彼女の吐く息がほんの少し白く濁る。
「この前2組の子に告られてたでしょ」
「え、知ってたのか?」
驚いた。あまりそう言う事は人に話したりはしないのだが…特に彼女には恋愛のことは話したいという気は一切ないため、なおさらだ。
「たまたま友達に聞いただけだよ。…で、付き合ってるの?」
彼女の視線は白い息に注がれている。
…俺の方を一切見ないのは、今まで恋愛の話を一切したことないからなのだろうか。
何となく、歯切れが悪いようにも感じる。
「いーや?今はバスケに集中したいからなー。断った」
「…ふーん。あんな美人さん振っちゃって、もったいないね」
「妙に突っかかってくるな~。あ、もしかしてアレか?嫉妬?」
きっと彼女は「何ばかなこと言ってんの」「なわけないでしょ!」なんて言葉を返してくるのだろうと思っていた。だが、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「……そうかもね」
予想外の反応に、思わずドキリとする。伏せたまつげは黒く長く、濡れた瞳は何を思っているのだろうか。…高鳴る胸の鼓動の理由を、俺は知っている。小さい頃から分かっていた。
「…好きな人とか、いねーの?」
「異性」として意識し始めたのは中学生の時。お互い名前で呼び合っていたのだが、クラスメイトの1人が『お前ら付き合ってんの?』と、からかってきた時に気が付いたのだ。「あ、俺こいつのこと好きなんだ」って。
それがきっかけで俺は自分の気持ちに気が付いたけれど、それと同時に美咲は俺の事を「和成」と呼ぶ事をやめた。きっと、彼女も意識していたのだろう。あの時は思春期真っ盛りだったから。
「いるよ。たぶん」
「なんだそりゃ」
彼女が誰を好いているかなんて分からない。俺であって欲しいという願望だけが大きく膨れ上がる。他の奴なんかに触れられたくない。
俺は、自分が思っているよりもこいつのことが、好きなんだ。
「そんな曖昧な答えなら、俺がもらっちまうぞ」
「……え?」
「お前の事」
とっさに出てしまった言葉だが、後悔はない。むしろ好都合だ。
「ふふ、悪くないかもね」
彼女が小さな言葉を放った瞬間、彼女によって胸ぐらをぐいっと引っ張られる。突然の出来事に驚きつつ、頬に触れた一瞬の温かく柔らかい感触が長く残った。
「人の事はすぐ分かるのに、自分の事となるとからっきしだよね」
「は、はあ?何の事だよ?」
処理が追い付かない。彼女の行動といい言動といい、脳が爆発しそうだ。
そんな俺の姿を見て、彼女はいたずらに微笑む。風がひゅうっと彼女の長い髪を揺らした。
「鈍感だよね、和成は」
微笑む彼女の頬は、熟れた赤い林檎のようで。
それはきっと、俺も。
どうも、作者です。
女の子の扱いには慣れてそうだけど、本命の子にはなかなか手を出せない高尾和成を目指してたんですけどね。なんか違ったよね。でも個人的にはお気に入りです!
皆さんはどんなお話が好きでしょうか…もっと甘くした方が良いかしら…悩みどころです。
それではこの辺で。
読んでくださってありがとうございました!