幻想郷異変~怒りの日~   作:厨坊

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説明回っぽいです


ChapterⅠ-ⅲ 紅白の巫女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・一体何だってんだよ、畜生」

 

 

着地した際、思い切り叩き付けられた背中を撫でつつ、困惑した表情で青年が呟いた。結構な高度から打ち付けられたとはいえ、実のところ痛みの方は全くと言っていいほど感じておらず、さすっているのは日頃の癖といったところか。或いは背中の汚れを払うためかもしれない。

 

 

青年自身、その判断が付くほどに冷静でいるわけではなく、しかし兎も角現実から目を背けようとしてとった行動だったが、やがてそれを諦めて落ち着いて大きなため息をついた。

 

 

つい先日までだったら今の状況も冗談の一言で済ませられただろう。しかし、そんな現実は青年の中ではとっくに壊されている現実だった。

 

 

何せ、つい先ほどまで異常な殺し合いの真っ最中にいたのであって、自身も異常な連中の仲間入りを目出度くないものの果たしたところだ。今更何が起こっても驚くようなことはないだろうが、それでも困惑を浮かべるのは避けられない事だった。

 

 

それも無理もない。何せ、いきなり地面が抜けたかと思ったら浮遊感が身を包み、下に下にと落下していったのだ。どれくらいの時間、その浮遊感に苛まれていたのかはわからなかったが、それでも結構の間その状態に居たことは間違いなかった。

 

 

次から次へと非常識な展開に鬱陶しく感じる青年だったが、とりあえずは状況を確認することにした。両足に力を込めて地面から立ち上がると、月明かりのみで照らされた夜の闇を見渡してみる。

 

 

しかし、その目に映ってきたのは自然に育ったであろう樹木の群れと、目の前にある長い長い階段のみ。上の方を見上げれば、少しばかり錆付いた赤い鳥居が見えることから、上には神社があることが伺える。

 

 

とりあえず、神社に行けばここがどこなのかわかるかもしれないと考える青年だったが、その為には目の前の長ったらしい階段を登らなければいけない。行動を決めた途端に疲れることが確定して、大きなため息をつきつつ仕方なしに階段に足を向けた。

 

 

尤も、ため息をついたのは階段を上るのがそれほど疲れるからではなく、気分的な問題である。先日まで普通の人間だったために、感覚の方がそれに付いていかないのだ。そのせいか、長い階段を登りきった頃には普通に登ったのと同じくらい精神的な意味で疲労を味わうことになってしまった。

 

 

「ハァ・・・一体どうなってんだよ。これもヤツ等の仕業だってのか?常識外れの奴相手に何を言っても無駄なんだろうが、それでもこれは外れすぎだろ。せめて説明ぐらいよこせってんだ、クソッ」

 

 

登りきって早々ついた愚痴は、ただ虚しく夜の静けさに響くのみ。いるのは青年1人の為に返ってくる答えも返事もなく、更に虚しい気持ちになってしまう。とりあえず神社の賽銭箱の前まで歩くと、せめて神社の名前ぐらいは書いてないかと周りを見てみたところ、案の定目当てのものが青年の視界に入った。

 

 

「何々・・・博麗、神社・・・って、知らねぇよ。ほんと何処なんだよ此処は。博麗神社なんて名前、聞いたこともねぇよ」

 

 

それとも俺が無学なのかと、落ち込みつつその場にしゃがみこんでしまう。本当にこれからどうしようと、わりと現実逃避が入った思考で現状を考えていると、そんな青年の腕を横からツンツンと突く感触が襲ってきた。

 

 

それを感じて横に視線を送ると、そこには困った顔をした金髪の絶妙なプロポーションをした美少女が。それを見て、今まで忘れていた存在の事を思い出してアッと声を上げる青年。少女の方は、漸く自分に向けられた視線に満足しつつ口を開いた。

 

 

「やっと、きづいてくれた。レン」

 

「あ、ああ、ごめんマリィ。って、気付くも何もさっきまでいなかっただろ?」

 

「そういういみじゃなくて・・・レン、わたしのことわすれてたでしょ」

 

 

いじけた様にマリィと呼ばれた少女が口を尖らせると、青年藤井蓮はうっと息を詰まらせた。痛い所をつかれてそんな反応をしてしまったのだが、そんな彼の様を見て更にマリィの表情が険しくなっていく。

 

 

尤も、幾ら険しくしていっても可愛らしさが増すだけで、それを向けられる本人は何とも言えない気分になり小さく笑みを漏らした。

 

 

無意識なのだろうが、彼女のいつもと変わらない態度のおかげで、不安や困惑がスッと溶けてなくなっていくような感覚が彼の心を静めて言った。一体何が起こったのかは知らないが、人外の連中と殺り合うのに比べたら、それ以上に嫌なことなどある筈もない。

 

 

おまけに、今の自分は独りではなく相棒の彼女までいるのだから大丈夫と、自分を心中で鼓舞しながら座り込んだ地面からゆっくりと立ち上がった。

 

 

何が起きたのか全く理解できず、これから何をするべきなのかもわからない。ただ、未だ自分が生きてマリィをその右腕に宿しているということは、そういうことなのだと頭の中でスイッチを切り替える。どんな事情があるのかは蓮にはわからない。

 

 

しかし、ここに来る前の状況を考えるに、ここに来たのが自分だけだとは考えにくい。何より、今の状況が先日から事を構えている連中の仕業だとしたら、答えは言っているようなものだ。そこまで考えたところで、改めて周りを見渡してみると空が真っ暗だったのを思い出す。

 

 

とりあえず、行動するのは夜が明けてからでいいかと、こんな状況でも楽観的に考えて賽銭箱にでも背を預けようとした時だった。

 

 

「おいコラ」

 

「痛ッ!?」

 

 

乱暴な言葉とは逆に、何故か可愛らしい女の声が蓮にかけられたと同時、その頭に衝撃が走った。それで横を見てみれば、そこには紅白の装束に身を包み大きなリボンで髪を束ねている茶髪の少女がいた。その手に握られているお祓いで使うような木の棒を持っていて、おそらくはそれで彼を殴ったのだと思われる。

 

 

しかし、それは何ともありえないことだった。何せ今の蓮は聖遺物の覚醒にあたって、その肉体的強度はタンクローリーが突っ込んできても傷一つ負わない様になっているのだ。それが、少女に頭を殴られたくらいで痛みを感じるとは何事なのか。

 

 

もしや、目の前の色々と派手な少女もヤツ等と同類と考えたところで、腰に手を当てていた少女が口を開いた。

 

 

「ちょっと、こんな夜遅くに男女でいちゃこらしてとは一体どんな嫌がらせよ。しかも神聖な神社で何しとるか」

 

 

「・・・・・・あ、ああ、悪い」

 

 

「悪い、じゃないわよ。わかってるなら、そういうのは他でやってくれない?全く。夜中に話し声が聞こえると思ったら、まさか神社に不届き者が現れるとはね。全く、参拝客もまともに来ないってのに何でこういう変なのばっかりくるのかしら」

 

 

「まともに参拝客が来ないって・・・」

 

 

少女の言葉に呆れてため息をつくと、キッとキツい視線を蓮に送る。ただの人間の筈なのにその眼光は、彼が思わずびくついてしまうほど迫力のあるものだった。それと同時に、自分に縁がある女がそんなのばかりだという事に気が付き、嫌気がさしてしまう。

 

 

「何よ、文句あるわけ?っていうか、見ない顔だし格好もなんか変だし。もしかしてあなた外来人かしら?こんな時間にご苦労な事ね。しかも女連れだし」

 

 

「外来人?何を言ってるんだ」

 

 

「ん?ああ、まぁいきなり言われてもわからないか。女連れでこっちに自然に迷い込むなんて変な話だし、これもまた紫の仕業かしら?だとしたら迷惑なもんね。全く、こんな時間に何を考えてるんだか」

 

 

「・・・全く話についていけない。ってか、こいつも人の話を聞いてないし」

 

 

再び困惑の表情を浮かべる蓮。それと最近の出会いは、人の話をまともに聞かずにペラペラ話し出す奴ばっかだと、ほんの少しの怒りと今更になって目の前の少女は誰なんだという疑問が上がってくる。格好と今までの話を聞く限り、どうやら目の前の神社の縁者らしいが、勝手に文句を垂れているせいで口を挟む暇がない。

 

 

少しはまともな人間を寄越して欲しいものだと思う蓮だったが、自分の存在のことを思い出してまとももクソもないかと諦めの境地に至る。何はともあれ、目の前の少女の愚痴が終わってから事情を聴いた方が速そうだと判断すると、隣でおどおどとしているマリィの手を安心させるように握りしめ、彼はとても大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、あんたたちは一体誰なわけ?っていうか、名前くらいいいなさいよ」

 

 

炬燵のテーブル片肘をつき、呑気に煎餅を齧りながら博麗神社の巫女である博麗霊夢は2人に言葉を投げかけた。それを聞いて、そういえば名前も言ってなかったなと今更ながらに気付き、蓮は自分の名前とマリィの名前を告げることにした。

 

 

「そういや、お互い名前も言ってなかったっけな。俺は藤井蓮、こっちの金髪の女の子はマリィ」

 

「・・・・・・それだけ?」

 

「は?いや、名前を言えって言ったのはそっちだろう?そっちの方こそ名前くらい言ったらどうなんだよ。見たとこ、あんたも日本人みたいだけど」

 

「・・・こんな夜中に、よそ様の神社でこそこそしてたのぐらい謝ってほしかったんだけど・・・まぁいいわ。私は博麗霊夢、この博麗神社の巫女よ」

 

 

霊夢と名乗った少女はそれだけ言うと、自分で入れた茶を一口啜る。人の自己紹介にそれだけとケチ付けたくせに、自分の方はどうなんだと蓮は思わなくもなかったが、口には出さなかった。

 

 

代わりに、彼女に出されたお茶と一緒に出かかったその言葉を飲み干す。何はともあれ、右も左もわからない状況の今の状態では下手に高圧的に出ない方がいい。

 

 

一先ず蓮は、少しばかり湧きつつあった怒りの念を、隣でボーっとしているマリィを見て気持ちを和らげる。それから、目の前の彼女に聞くべき内容を頭に浮かべ一つ一つ解消していくことにした。

 

 

「じゃあ質問いいか?」

 

 

「お賽銭を暮れるなら受け付けるわよ」

 

 

「金とんのかよ!!」

 

 

思わず反射的につっこんでしまう蓮。しまったと思った時にはもう、言葉は口から飛び出していてどうしようもなかった。そして、こんな風に何気につっこみ体質になってしまった原因である悪友を思い浮かべ、思わず苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

思えば、今のような苦労体質になってしまったのは半分以上その悪友のせいなのかもしれない。初対面の相手に、しかも恥じる事も遠慮する事もなく賽銭を面と向かって要求する巫女も、神職としてどうかと思うものだがそんなモラルは彼の頭の中ではとっくに壊れている。

 

 

そんな常識的な事は、ここ2週間もたたない間に非常識の塊のような連中によって木端微塵に壊されたといった方が正しい。

 

 

「何よ、そんなにけちることないでしょう?こんな夜中に他人様を叩き起こして、お茶まで用意させたんだからそれくらいしてくれても罰は当たらないでしょうに」

 

 

「神社の巫女が言うセリフじゃないよな、それ。ったく」

 

 

ぼやきながら、仕方ないと言いたげにポケットに入った財布を取り出す蓮。しかし、財布の中にあるのは千円札が殆どで小銭の類は数枚程度しかなかった。札を出すのは賽銭としては不釣合いだなと判断すると、そのなけなしの小銭を炬燵の上にチャラチャラと音を鳴らして放るようにして置く。

 

 

と、その小銭を見た霊夢は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、隠そうともせずに舌打ちをする。そんな彼女の態度を見て頬が引きつる蓮だったが、時を待たずして吐かれた言葉が蓮の湧き上がった感情を霧散させる。

 

 

「そういえば、あんた外来人だったわね。向こうの通貨なんて貰っても、使い道がないじゃない。うっかりしてたわ」

 

 

「待て、だからその外来人ってなんなんだよ。見たところ、ここは外国じゃないだろ?神社なんてあるし、あんたは巫女だし。景色もどう見たって日本の田舎って感じだ」

 

 

「ん?ああ、そうだったわね。そこから説明しなきゃダメか、めんどくさい」

 

 

これまた露骨に顔をしかめる霊夢。よっこいしょと、およそ年頃の少女がだすべきではない言葉を吐いて、元々だらけていた姿勢を更にだらしなく崩す。心底めんどくさそうなその様子は、別段礼儀にうるさくない蓮でさえ何か言いたくなるものがあったが、ここで話の腰を折っても仕方がない。大人しく、文句も言わずに彼女が話の続きを話すのを待つことにする。

 

 

「あんたが何でここに来たのかはわからないけど、ここは日本であって日本じゃない。いえ、日本の中にあるけど別の場所って言ったらいいのかしらね。詳しい話をすると長くなるんだけど、兎に角ここはそういう場所なのよ。ここまではいいかしら?」

 

 

「スマン、正直つっこみ所が多すぎて何を言えばいいのかわからないんだが」

 

 

「却下・・・と言いたいところだけど、仕方ないわね。あんたと私が今いるこの場所は、例えるなら鏡の中の世界みたいなものなのよ」

 

 

「鏡の中?左右が逆にできてるとか、そういう意味か?」

 

 

「違うわよ。例えって言ったでしょ?あんたバカなの」

 

 

ピクピクっと、蓮の頬が何度か引き攣った。米神を触れば、青筋が浮かんでいることがはっきり分かるくらいのレベルだ。他者から見ても怒っているとわかる態度だったが、霊夢は全く気にしていない様子だ。会話を隣で聞いていたマリィですらおろおろとしているというのに、大した神経である。

 

 

「いい?例えば、鏡の中に自分のいる世界とは全く別の世界があったとする。だとしても、普通に考えればそんな世界に干渉できるわけもないし、かといってそちらに行けるわけもない。当然よね?そんなことができるなら、それこそ世の中何でもありだもの。

 

ゲームやフィクション?っていうんだっけ。そういうものの中ではありかもしれないけど、現実としてはありえない」

 

 

「・・・ああ」

 

 

「でも、それは真っ当な手段ではというだけ。そしてあなたは、その真っ当ではない手段でこちらに来ちゃったってことよ。私が考えられるパターンとしたら、知り合いのオバカ妖怪が暇つぶしで招き入れたか、それともあなたが元いた世界で存在を忘れ去られたかってとこなんだけど」

 

 

「待て、ちょっと待ってくれ。なんだよその妖怪だとか存在を忘れ去られるだとか」

 

 

これ以上、非常識な事態に驚かないと決めていた蓮だったが、その2つ、特に前者は聞き捨てならなかった。霊夢の話をそのまま受け取るとして、彼とて元いた世界ではイカレタバケモノと殺し合いをしただけあって、人間離れした物の存在を否定する気はなかった。

 

何せ、初めて会った時のヴィルヘルムやらルサルカやら櫻井やらは、普通に考えればありえない力を有していたし、今の蓮も同じくらい非常識な力を有している。

 

 

その証拠として、彼の首にはマフラーで隠されてはいるものの、酷く不吉で端から見れば気味の悪い斬首痕が、首の周りをぐるっと回って刻まれている。それは彼の首が斬り飛ばされた証であるし、それでも今生きているというのが彼の異常性を示している。

 

 

しかし、そんな彼でも妖怪というのは聞き捨てならなかった。何故なら、そんな自分を含めて今は人外の連中でもそれはあくまで後天的な話であるはずだからだ。初めは誰も彼も真っ当な人間、と

は言い難いだろうが普通の人間と変わりのない存在だったはずだ。

 

 

それが聖遺物を得るなりして、今のような桁違いのバケモノへと進化した。故に、その存在の根底は紛れもなく人間であるはずなのだ。

 

 

にもかかわらず、目の前の少女は妖怪などと平気な口で言ってのけた。それは言外に、人間の進化版などではなく生まれからして化生の身の存在が、ここには存在しているという証明に他ならない。

 

 

「人外のバケモノならともかく、妖怪だとか・・・マジでそんなイカレタのがいるってのかよ」

 

 

「まぁ信じられないのはわかるけどね。ここはそういう場所なのよ。何せここは幻想郷。所謂忘れ去られたこの世の楽園ってとこなんだから」

 

 

「楽園だって・・・?」

 

 

「そうよ。ここは外の世界で忘れ去られた・・・っていうか、幻想となってしまった存在の集う世界。外と完全に隔離され、真っ当の手段では知ることも干渉することもできはしない。それにいるのは妖怪だけじゃないわよ?

 

 

認めたくはないけど、妖精やら神様やら天狗やら。そんな外の世界じゃ空想の生き物になっちゃった存在が、わんさかいる世界なの。まぁ、少ないけど人間もいるし人里もあるしね」

 

 

霊夢の言葉に、今度こそ蓮は顎が外れるかと思うくらい口を開いて固まった。ここ最近で常識外のことについてはだいぶ慣れたつもりだったが甘かった。今現在、蓮がいるこの幻想郷という地は、非常識なんて言葉では片付けられないほど、この世の理から外れた場所だったのだ。

 

 

目の前の少女から聞かされた真実に、彼は柄にもなく途方に暮れてしまった。黒円卓の連中も、大概ジャンル違いのバケモノ揃いだったのが、ここでは普通の存在とまではいかなくても珍しいものでもないという認識なのだ。

 

 

「本当、どうなってんだよ」

 

 

こんな時は、いつもくだらない軽口を言ってバカにしてくる悪友の存在が、心底欲しくなる。だが、無いものねだりをしても仕方がない。何より、蓮はその悪友とは絶賛絶縁状態にあり元の世界でもどこにいるのか知らない状況なのだ。

 

 

蓮はさらに悪くなる状況に唇を噛み締め、他人の家にもかかわらず唾を吐きたくなる気分に陥った。

実際にそんなことをしようもんなら、目の前の少女に何をされるか分からない為行動には移さなかったが、それでも悪態をついてしまうのは仕方がない。

 

 

蓮はこれ以上ないくらい大きなため息をつき、未だ隣で危機感というものを持っていないのか、呑気にお茶を啜っているマリィを恨めし気な目で見た。

 

 

「マリィは何て言うか、やっぱずれてるよな」

 

「ん??レン、どうかしたの?」

 

「いや、どうかしたって・・・こんな意味わからない状況に陥って、どうにかしない方が凄いと思うんだがな。俺も大概常識外れな存在になったつもりだったけど、そりゃないだろ。マリィは不安に思ったりしないのか?」

 

 

蓮が若干呆れた視線をマリィに送り直すが、彼女はそれを気にした風もない。こりゃ本格的にダメかなと諦めかけたとき、マリィがふっと笑って不安そうに顔をしかめる蓮の頬に優しく触れた。

 

 

「だいじょうぶだよ、レン」

 

「・・・マリィ?」

 

「わたしと、レン、いっしょ。だからだいじょうぶ。2人ならきっと、なんとかなるから。なんとかしてみせるから。だってわたしは・・・」

 

 

その為のモノでしょう?と、その顔に似合わぬ大人びた艶やかな色を表情にのせて、蓮の耳元で囁いた。そんな彼女の恥ずかしげな行動に、顔を赤く染めた蓮だったが、直ぐにあの時の誓いを思い出してフッと自身も笑みを浮かべた。

 

 

「そう・・・だったな。頑張ろうマリィ。独りなら無理でも、俺達2人で」

 

「うん・・・」

 

 

蓮の言葉に、向日葵が咲いたかのような明るい笑みを浮かべるマリィ。そう、彼らは決して独りではないのだ。黄金の器を持つ彼女には、時の伴侶が付いていて、そしてその逆もまた然り。彼がいるから彼女はまともでいられるし、彼女がいるから彼もまたまともでいられるのだ。

 

 

そんな、この状況でも希望を持てる雰囲気を作り出していた2人だったが、ここがどこで誰が目の前にいるか。それをすっかり忘れていた。その結果。

 

 

「で・・・何あんたたちは、勝手にいい雰囲気を作り出して世界に入っちゃってるのかしら」

 

「うぉ!?」

 

「え?」

 

 

蚊帳の外になっていた巫女の、冷水を浴びせるかのような冷たい一言が、2人を正気に戻した。いそいそと体裁を取り繕うと姿勢を正す蓮を、冷たい目で睨み付ける霊夢。こればかりは、きっと誰であっても彼女を間違っているとは言わないだろう。

 

 

質問をしておいて、勝手に自分の世界に入り込んで連れてきた女といちゃこらする。霊夢の事を深く知っている某白黒の魔女がいれば、弾幕をぶっぱなさないのが不思議なくらいの状況だった。

 

 

兎も角、こうして幻想郷の情報をほんの少し入手することができた蓮とマリィ。しかし、彼らは未だ知らなかった。こんなゆったりとしている状況の中、別の場所では文字通り生死をかけた殺し合いが繰り広げられていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ダブル主人公回でした。作者ではマリィの女神度が高くかけないという、低スペック仕様。
女神さまを汚してしまってすみません。
でも殺されるなら女神の膝のうえd「超新星爆発」・・・灰になりますた

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