幻想郷異変~怒りの日~   作:厨坊

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タイトルネタバレ回です。
皆さんなら、わかっちゃいますよねww?
アレです。


ChapterⅡ-ⅳ 雷轟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『形成』

 

 

示し合わせたように、正にコンマ数秒も違わないタイミングで吐かれた呪文。その瞬間、二つの異変が二人の間で巻き起こる。一つ目は蓮の右腕が、赤黒い凶悪な刃物に変形した事。二つ目は、何も握られていなかった櫻井の手に、炎が巻き起こると同時に現れた古代の剣といったような刃物。

 

 

蓮と櫻井。お互い初めて、形成した武器を見る瞬間だった。相手の武器を見て、それぞれ思ったことは一つ。蓮は予想通りの光景に驚く事はなく、櫻井も蓮の秘める本質に近い獲物を見て笑みを浮かべた。

 

 

「やっぱりね。あなたの形成、あなたの本質にそっくりよ。普段は無害を装っている癖に、やるとなったら恐ろしい本性を見せる」

 

「ごちゃごちゃうるせぇんだよ櫻井。てめぇこそ、嫌になるくらい予想通り過ぎて、頭使ったこっちがバカバカしくなりそうだよこの野郎!!」

 

「あら?女に向かって野郎だなんて、随分口の利き方が悪いわね」

 

「それはお互い様だろうーがっ!!」

 

 

瞬間、何度目になるかわからないが地面が爆ぜ、そしてお互い打ち合わせた刃物の間で火花が散った。蓮の巨大で分厚いギロチンに対して、細身に見える櫻井の刃物は、しかし折れることなく拮抗する。どころか、徐々に蓮のギロチンを押し戻そうとさえしている。

 

 

このままでいれば、先に押されるのは自分の方だと蓮は悟ると、一瞬力を緩めた後、櫻井の刃物に弾き飛ばされつつも大きく自分から飛び退いて距離をとる。

 

 

そのまま間を空けず、再び超速度で櫻井に斬りかかるが、当然そのままでは防がれて先ほどの繰り返しだ。だからこそ、そのままバカ正直に突っ込んだりはしない。蓮は直前で地面を思い切り蹴り上げ砂煙を起こし、目潰しを兼ねた奇襲を仕掛ける。

 

 

「ッ!!」

 

 

通常なら、視界を覆うだけの砂煙も、人外の膂力で蹴られればそれなりの威力にはなる。人間離れした装甲のおかげでダメージは免れても、それ以外の要因は排除できない。

 

 

「オラァッ!!」

 

 

驚愕して固まるというには、あまりにも短い一瞬の迷い。しかし、今の蓮はその一瞬を見逃さない。速度、威力共に過去最高をもって打ち出される凶悪なギロチン。もしもこれが、シュピーネだったのであれば問答無用で切り裂かれ、絶命していたに違いない。

 

彼は元々、聖餐杯と同じ類の人間だ。戦闘よりも、頭が回る。故に、他のメンバーと比べるとどうしても戦闘面では劣る。

 

 

だが、今蓮の目の前にいる櫻井はバリバリの武闘派であり、そして達人だった。視界が潰されたのなら、気配と直感で察知する。迫りくる断頭台の一撃を、櫻井は躱すのではなく刃の側面に当てて受け流す。その結果、刃物同士の擦れ合いで火花が散っただけで、お互いに血飛沫は上がらず再び距離をとることとなる。

 

 

互いに短い間に繰り広げられた激戦に、一旦息を整える。今の攻防、どちらかが一歩でも間違っていれば確実に小さくない手傷を負っていた。それをお互い理解しているが故に、空気を換えるように言葉が飛び交う。

 

 

「随分汚い真似をするのね?可愛い顔してやる事えげつないなんて、本当詐欺もいいとこよ」

 

「ハッ、殺し合いに汚いもクソもあるかよ。ルール有りの試合やってんじゃねぇんだ、そん位理解してんだろ?喧嘩だって今時目潰し位するだろうが」

 

「あらごめんなさい。私、貴方みたいに喧嘩できる友人なんていないからわからなかったわ」

 

「自虐ネタかよ?笑えねぇな」

 

 

冷や汗を垂らしながら蓮が言うと、櫻井は本当に一瞬だけ自分の言葉に傷ついたかのように顔を顰め、それから再び殺気交じりの笑みを浮かべて刀を真っ直ぐに蓮に向ける。その刀身には、先程打ち合っていた時とは比にならない程の炎が湧き上がっている。

 

 

何せ、あまりの熱量に櫻井の刀の周りが熱で歪んで見える程だ。

 

 

直撃どころか、掠りでもすればどうなるのか。それは一目瞭然の結果である。現状、近接戦では結局の所蓮は不利を覆すことができない。加えて櫻井の武器は刀と炎の二つに対し、彼の武器はギロチン一つであり相手とは異なり遠距離攻撃は出来ない。

 

 

このまま何も対策を取らなければ、そのまま負けることも考えられてしまう状況だ。蓮が櫻井に勝利するための条件は、相手に奥の手、つまり想像を出させる前に倒すことが絶対条件だ。だからこそ、それを考えれば今の状況は悪くはないのだが、それでも一杯一杯。

 

 

「(くそっ、どうすりゃいい!!経験も実力もあっちが上、おまけに俺は万能型じゃないんだ!!今の所、何か一つでも勝ててる部分がない以上、総合力で負けてるこっちが圧倒的に不利だ)」

 

「どうしたの?来ないならこっちから行くわよ!!」

 

「クソッ!!」

 

 

一向に対抗策が見つからず、次第に焦燥感に狩られる蓮だがそれに囚われるわけにはいかないと、蓮は必死に内の敵と外の敵に応戦する。下手に焦ってへまをすれば、それこそお陀仏になってしまう。何せ、さっきまでの櫻井とは違い、今の一撃一撃は直撃すればそれこそ蓮を葬りかねない威力を秘めている。

 

 

幾ら蓮の聖遺物が破格で、形成位階に至って防御力も上がっているとは言っても限度がある。空気を歪め、数メートル離れていても感じさせた熱気を放っている櫻井の直撃を受ければどうなるか。結果は火を見るより明らかだ。こうして打ち合っていられているのも、後どれ程が限界か。

 

 

筋力だけは勝っているからいいものの、攻撃のリズムや癖を見抜かれれば、それこそカウンターや見切られて斬られるのも自明の理というものだ。

 

 

「(どうする?どうすればいい!!)」

 

 

既に二桁を超える斬撃をガードし、捌き、躱す蓮の心の内は焦燥が勝りつつある。そしてそれを見抜いたかのように、櫻井が更にスピードを上げ、手数を増やし蓮に斬りかかる。そして今までで限界に近かったそれが、遂に数発蓮の左腕や胴体に掠り始めた。瞬間、当たった部位が煙を上げ上がった血飛沫を即座に蒸発させる。

 

 

斬られる痛みと、焼かれる痛み、そして魂を削られる。三種類の激痛に悲鳴を上げ、悶えたくなるがここでそのような行動をとれば即座に決着となる。蓮はそれを精神力で耐えきり、悲鳴の代わりに怒号を張り上げ烈火の一撃と共に櫻井の身体を10メートル後方に弾き飛ばす。

 

 

結果、ダメージは与えられなかったものの、刃を伝った衝撃が櫻井の腕を痺れさせ少しの隙が出来る。そしてそれを見計らったかのように、ふと蓮の精神に呼び掛けるように第三者の声が耳朶をうった。

 

 

『聞こえるかしら蓮?』

 

「っ!?その声!!」

 

『しっ!!声は出さずに聞いて。喋る時は、何かを考えるようにすればこっちに伝わるから』

 

『っ!!こんな感じか?』

 

 

霊夢の言った通りに頭で考えるようにすると、即座にそれを実行に移す事に成功する。正直、色々と疑問がある蓮だったがそこは気にしていられない。余計な事を気にしている暇は、今の彼にはないのだから。こうしている今も、痺れが切れた櫻井が再び斬りかかってくる。それを必死に捌きながら、蓮は霊夢の呼びかけに対応する。

 

 

実力的に負けている蓮が、そんなことをぶっつけ本番でできているのは、頭で考えて行動するより本能が勝手にそうさせているという事に他ならない。霊夢もそれがわかっているからこそ、今は余計なことは言わず、言わせずただ用件だけを伝える。

 

 

『見てる限り、今の貴方じゃ勝ち目は薄いわ。あんたが接近戦だけしかできないのに対して、向こうの女はいざとなったら遠距離から炎をぶっ放せばそれで勝てるんだしね。だから、ちょっとだけ手助けしてあげる』

 

『手助けって!!お前にあいつを打開できる術があるってのか!?』

 

『さぁ?それはやってみなきゃわからない。けどやらなきゃ出来ることもできない。幸いにして、あっちは私の事なんか気にもかけてないようだし、上手く隙を突けばいけるかもしれないわ』

 

『隙を突くって、一体何をする気なんだよ!!』

 

 

言い切ると同時に、これまでで最大の威力の斬撃が蓮に振り下ろされる。一瞬死を覚悟する蓮だが、それよりも早く自然に右腕がその一撃を受け止めた。完全に対応できなかったそれを受けられたのは、マリィの手助けによるものなのだろうが、それに礼を言う間も惜しい。蓮は再び櫻井を弾くと、その場を走り櫻井との距離を離す。

 

 

櫻井もそれを追ってくるが、距離をそれほど詰められていないところを見ると、とった策は捨てたものではないらしい。蓮はとりあえず時間を稼ぐことに決め、霊夢との念話を続ける。

 

 

『私が隙を見て、あの女に一撃入れるわ。正直効くかどうかわからないけど、効かなかったとしても陽動にはなるだろうし、一瞬位なら隙も作れると思う。だから』

 

『その一瞬の隙を突いて、櫻井を倒すってか。どっちにしろ、それ位しか策がない以上、やるしかないだろ!!』

 

 

そこで一旦足を止め、直ぐ真後ろに迫っていた櫻井目がけて振り向きざまの一撃を叩き込む蓮。遠心力の加わったギロチンの一振りは、しかし今度は吹き飛ばすには至らず、櫻井は地面を削りながら2メートル程下るに止まった。それに若干驚く蓮だが、即座にその驚きを捨て霊夢に呼び掛ける。

 

 

『隙は俺が作ればいいんだろ?』

 

『ええ。やけに自信満々だけど、何か策でもあるのかしら?』

 

『策と言えるかわからねぇけど、あいつは見たとこ図星を突かれると激昂して突っ込んできそうなタイプだからな。ちょっと煽ればどうにかなるかもしれない。尤も、突きすぎて今以上にヤバイ事になるかもしれないが』

 

 

それでも、今の蓮にはそれしか出来ることがない。まともに打ち合って勝てないなら、それ以外の要素で揺さぶりをかけてやるまでだ。口八丁にはそれほど自信がない蓮だが、現状を打開する策がそれしかないならやるだけだ。蓮は霊夢の返答を待たず、早速それを実行すべく櫻井に言葉を投げかけた。

 

 

「一つ聞いていいかよ櫻井」

 

「へぇ?この状況で私と会話する余裕があるとは驚きね」

 

「生憎と余裕はないが、それでもこっちにも聞いておかなきゃならないことがあるんでな。だから、冥土の土産ってことで答えてくれると助かる」

 

「冥土の土産・・・ね。いいわ、私で答えてあげられることなら聞いてあげる」

 

「そうかい、ありがとよ」

 

 

全く心にも思っていない声色で礼を言う蓮。だがその実、心中では自分の呼びかけに答え、策に乗ってきそうな櫻井に感謝していた。

 

とりあえず第一段階はこれで成功。だったら後は、最後までやりきるだけだ。掌に浮かぶ汗を拳を握って誤魔化しながら、蓮は言葉を投げかける。

 

 

「お前は何で、ヴィルヘルムやルサルカ達と同じ黒円卓に属してるんだよ。見たところ、お前はあいつ等と仲がいいってわけでもないだろうし、仲間意識なんかを持ってるようにも見えない」

 

「・・・・・・」

 

「だからと言って、シュピーネが言ってたラインハルトをこの世に呼び戻すって目的を持ってるとも思えない。ヴィルヘルムやルサルカはどう思ってるのかはわからないけど、お前は俺と年も大して変わらない風に見える。そんな奴が、社会の教科書にも載ってるラインハルトなんて奴と、面識があるとも思えないしな」

 

 

蓮の言葉に、櫻井は先程までの態度を一変。険しい顔をして、蓮の問いに何も答えない。だが、蓮の言葉を聞いていく内に、その表情をただ悲しげに変えていく。そのせいか、先程までの殺気と炎が弱くなってさえいる。予想外の展開だが、今ならいけるかと蓮は思うが直ぐに思い直す。

 

 

焦りは禁物だ。櫻井の殺気や炎は弱まったものの、未だ臨戦態勢のまま。彼女ならば、今の状態からでも即座に反応し蓮を斬り捨てる

 

余裕がある。だからまだ速い。蓮は冷静に事を判断し、会話を続ける言を選ぶ。そしてそれを推すように、今までだんまりを決め込んでいた櫻井が、ゆっくりと言葉を零し始めた。

 

 

「あなたの言う通りよ藤井君。私は別に、あなたの言う様にハイドリヒ卿をこの世に呼び戻そうだとか、彼らに仲間意識をもっているとかそんな感情は初めからない。そもそも私は、ハイドリヒ卿なんて昨日まで会ったことすらなかったんだから」

 

「・・・だったら何でだ?俺と同じ年で、同じ日本人で、戦争なんて知らないし関わることもない筈のお前が。何であんな連中と絡んで、平和な街を壊そうとするんだよ?」

 

「ふふ、そうね。私もあなたと同じように、平和な街で平和に暮らしていたらそんな考えを持ったかもしれない。でも、私はあなたのように平和ボケした脳味噌をしてるわけでも、考えを持っているわけでもない。私の考えなんて、あなたには決して理解なんてできないだろうし、してもらおうとも思わない」

 

「・・・・・・」

 

 

表情とは真逆に、眼光を凄ませる櫻井。その眼は決して何かを刷り込まれたとか、言われてやっているといった感じはない。ただひたすらに、自分の意志で、自分の目的の為にやっているといった感情を見せていた。さっきまでとは逆に、今度は蓮が黙り込んでいると、櫻井はただ一方的に話し続ける。

 

 

「私達がスワスチカを開く目的は二つあるのよ。一つはハイドリヒ卿をこの世に呼び戻すという、何十年も前からの目的。そして残るもう一つ。これが私が、黒円卓に属してスワスチカを開く最大の目的。他の誰に強制されるわけでも、誰かの為にやっているわけでもない。私の望みであり、私のたった一つの願い」

 

「・・・・・・」

 

「スワスチカを開く二つ目の目的。それは、多大な数の人間の魂を供物にしてスワスチカを開けば、獣の恩恵を受けられるっていうこと。それこそその数は数百かもしれないし、数千かもしれない。それでも私の願いを、それで叶えることができるなら私は絶対にそれを成し遂げる必要がある。だってそうすれば私は兄さんと・・・私の愛する家族を取り戻すことができるんだから」

 

「お前・・・」

 

 

櫻井のその願いを聞いて漸く、蓮は彼女との相性が最悪だと感じていた理由に思い至った。櫻井の言い分から察するに、彼女の願い。

 

それはかつて失ったであろう家族を、再びこの世に呼び戻すという事なのだ。それは何という酷い願いか。失ったものは取り返せない、果てなき永遠ではなく、今を生きるこの刹那を愛していたい。それが藤井蓮という少年の、ただ一つの願い。

 

 

それに対し、彼女の願いは蓮の思いを真っ向から否定する者に他ならない。自分自身は数え切れないほどの人間を犠牲にしながら、嘗て失った大事なものを取り戻すというエゴ。それは蓮からすれば死者に対する冒涜であり、刹那を生きる人間への限りない裏切りであると同時に冒涜に他ならない。

 

 

だからこそ、それを知ってしまった蓮には最早彼女を認めることも、彼女の願いを肯定することも、彼女の境遇に悲嘆することも同情することもできなくなった。胸の内から湧き上がるのは、どうしようもないくらいの憤怒の念。最早言葉にするのすら怒りを覚えるが、それでも蓮はその思いを言葉に出さずにはいられなかった。

 

 

それが例え、この状況を更に最悪にしようとも、自身の命がこれ以上危険にさらされようとも。

 

 

「お前、バカだろう?」

 

「何ですって?」

 

「聞こえなかったのか?バカだって言ったんだよ、櫻井。昔失った家族を蘇らせる為に、今を生きてる無関係な人間を犠牲にするだって?ふざけてんじゃねぇぞ櫻井!!」

 

「な!!」

 

 

瞬間、櫻井の怒りが体中から湧き上がった。先程まで意気消沈していた心の内は燃え上がり、萎んで迫力をなくしていた炎とその熱が今まで以上に湧き上がる。傍目にみている霊夢ですら、今の光景には驚きの声を漏らして唖然としていた。それは櫻井の力に対してであり、蓮の行動に対してでもある。しかし、彼はそのどちらに対しても華麗にスルーする。

 

 

否、そもそも今の蓮の頭にはそんなことを考える余裕も、考える気もなかった。あるのは、自分のたった一つの現実と願いに泥をぶち撒け、唾を吐き捨てた櫻井への怒りの念。その全てを吐き出すべく、蓮は再び怒号を上げる。

 

 

「くだらねぇだろうがよ!!失ったものは取り返せないし、お前の言う数百や数千ぽっちで還ってくる命なんて元の価値の寸分のもんでもねぇ!!大事だったんだろ?涙し焦がれて、これ以上はないって位の大事な家族だったんだろ?だったら、何よりも大事に思ってたてめぇが、てめぇでそのバカげた理論で大事な者を汚してんじゃねぇよ!!」

 

「くだらないですって?汚したですって?何もしらないあなたなんかが、先の今まで平和にバカみたいな日々を送ってきたあなたなんかに言われたくない!!」

 

「下らねぇだろうが!!ゴミだろうがよ、そんなもんは!!替えがきかないから唯一無二なんだろうが、失ったら取り返せないからこれ以上ないくらい大事なんだろうが!!そんな事もわからねぇてめぇが、何よりも大事だなんてそんな大層な言葉吐いてんじゃねぇ!!そんな下らねぇ理由で、そんな下らない自己満足で、俺の刹那(いま)を汚すんじゃねぇ!!」

 

 

瞬間、蓮と櫻井の殺気が威力をもってその場を打ち壊した。地面が割れ、石畳が割れ、神社がきしみ、生い茂る木々が切り裂かれ、焼け、炎上する。どちらも本気。それは今、この場の雰囲気をこそが証明していた。

 

 

「いいわ!!藤井君、殺してあげる!!でも感謝してよね!?あなたには私が感じた思いを味あわせずに、今ここで処分してあげるんだから!!」

 

「思わねぇし、そんなことを考える意味もねぇよ!!」

 

『霊夢!!』

 

 

櫻井の怒りが最高潮に達したのと同時、蓮が心中で叫んだ。それを聞いた霊夢が、待ってましたとばかりに、その瞬間用意していた札と弾幕を櫻井目がけて放った。怒りに燃え上がり、蓮の言葉に逆上していた櫻井はそれに気付くのが果てしなく遅れた。否、そもそも彼女の事を戦力に入れていなかったこともあるのかもしれない。

 

 

聖遺物を持っていない霊夢のような人間では、自身をどうにかするには足らないと。必殺の構えに入っていた櫻井は、そこで漸く自分の思い違いに二つ気付いた。一つは、博麗霊夢を自分にとってはとるに足らない人間だと侮っていた事。もう一つは、彼女の放つ攻撃が自身に当たっても何も意味がないと思っていた事。

 

 

故に、霊夢の弾幕が櫻井の身体の数ヵ所に当たった瞬間に思い知る衝撃は、ダメージ以上に大きかった。

 

 

「なっ!?」

 

 

驚きの声を上げて、構えを崩し奥の手を出そうとしていた意識がパッと離れる。脳内に浮かべ、口に出そうとしていた詠唱の言葉は文字通り霧散する。それにしまったと思った時にはもう遅い。怒りに燃え上がりつつも、霊夢を信じて足裏を爆発させて真っ直ぐ櫻井へと向かった蓮は目と鼻の先。振り上げられたギロチンは、櫻井の首を斬首せんと急速接近していた。

 

 

これは最早躱すことは叶わなず、奥の手を出す暇さえ与えられない。

 

「(殺った!!)」

 

「(殺られた!!)」

 

 

蓮は必殺の機会を手にした事を悟り、櫻井は必殺の機会を回避できないことを悟り、両者はそれを心中で叫んだ。そしてそれを証明す

 

るように、蓮の振りぬいたギロチンの刃は紛れもなく必殺の軌道を描き、50cm、30cm、10cmと近づき・・・

 

 

「■■■■■■■■■■ッ!!」

 

 

突如、劈く言葉にならない雄叫びと、それに劣らぬ雷鳴と黒い稲妻が二人の距離を突き放した。




豆腐メンタル、アホタルさん回でした。
まず一言、櫻井さん強くし過ぎたでしょうか?
自分なりには、彼女はメンタルブレイクされない限り、蓮と戦っても負けないんじゃないかと思ってます。何せ彼女、剣の腕前はかなり強いでしょうし、海外でも経験値積みまくってるでしょうから。

彼女が不憫なのは、というか弱く見えるのは、蓮がパワーアップしすぎて色々能力負けしてるのと、周りの連中が強すぎるからだと思うんですよ私は。

まぁここの所の解釈は難しいんでしょうが、ここの小説ではこういうもんなんだと納得していただければ幸いです。


あと一番の問題が一つ。霊夢さんのキャラ、ちと戦闘に対して消極的というか、空気過ぎましたかね?


作者的には、この櫻井戦でこれから戦いにどう対応するか見極めるのがあったためにこうしたんですが。サポートに徹しすぎましたかな?


まぁ、問題があればその都度言ってください。
自重するかは問題としてキリッ







最後、アホタルさんの渇望によってカインタンINしたよぉ(お呼びじゃねぇビシッ

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