幻想郷異変~怒りの日~   作:厨坊

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今回は日常回、というか平穏回です。
戦闘を入れたいですが、とりあえず主人公達の活躍を入れるためと、それぞれの陣営を動かすためには伏線を張らないといけないので。


ChapterⅡーⅰ 日常Ⅰ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳥の小さな鳴き声が、朝日と共に窓の隙間から入り込み、朝独特の冷たい空気が蓮の頬をさした。人外になった影響か、人間だった頃よりあらゆる感覚が鋭くなったせいで、いつもならこの季節は布団から出難い筈が、彼は一瞬で目を覚ました。

 

 

「・・・朝か。ってか、ここって時間の感覚とかどうなってんだ?時計とかあんのかね」

 

 

一人呟いた言葉が、朝のシーンとした部屋の中に静かに響き渡り、それが余計に虚しさを感じさせた。元から一人暮らしだったために、正直その光景に何かの感覚を覚えるわけでもないが、ここが異世界だからなのか、妙に蓮は心寂しさを覚える。

 

 

それどころか、普段はあまり考えないようにしている、悪友である遊佐司狼の事や幼馴染の事なんかも頭の中を駆け回っていた。

 

 

特に幼馴染の少女は、普段は蓮や司狼に憎まれ口ばかり垂れたり、平気で蹴ったり殴ったりして仕舞いには竹刀で殴りかかってくることも珍しくないのだが、蓮と司狼が殺し合い染みた喧嘩になった時などは、本人達以上に心配するような人間なのだ。

 

 

今現在、司狼がいなくなったことで若干落ち込んでいたというのに、これで蓮までいなくなったらどうなるのか。彼はそんな彼女の心境を何となく察してしまい、誰もいないにもかかわらず気まずそうに顔を反らしてしまった。

 

 

すると、そのタイミングを狙っていたのか、それとも本当に偶然だったのかはわからないが、昨日蓮が同盟を結んだ巫女である霊夢が、掛け声も無しに襖を勢いよく開けて現れた。

 

 

「おまっ、ノックぐらい・・・」

 

「何だ、起きてたのね関心関心。それじゃ、さっそく手伝ってもらいましょうか」

 

「人の話を聞けって。ったく、お前、本当に俺の知ってる奴に嫌味なくらい似てるな」

 

 

特に自分勝手な所とか、と蓮が口に出さずに思っていた。するとそんな彼の内心を表情を見て察したのか、霊夢はムッと顔を顰めてススッと蓮の前までやってくるとそのまま拳を振り上げて蓮の頭に振り下ろした。

 

 

「痛ッ!!?」

 

「ほら、早く立ち上がる。寝食の世話はするといったけど、手伝いも無しにいさせるわけじゃないわよ?こっちだって暇じゃないんだから」

 

「暇じゃないって、滅多に人来ないんじゃなかったのか?」

 

「・・・何か言った?」

 

「・・・・・・何でもねぇよ」

 

 

蓮は大きなため息をついて認識を改めた。似てるのは司狼だけじゃない。香純の性格も半分くらい入ってると、いよいよもって嫌気がさしつつあった。

 

 

これでは結局、元の世界とあまり変わっていないという事ではないか。腐れ縁との関係は、どうやら異世界に行ったとしても消えないようだと蓮はもう一度大きなため息をつくと、少し遅れて先に部屋を出て言った霊夢の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これあんたの分ね」

 

「・・・サンキュ」

 

 

霊夢からご飯の持った茶碗を受け取り、蓮は短く礼を言ってテーブルの上に置く。テーブルの上に載っているのは、今受け取ったご飯が盛ってある茶碗と魚一匹が載った更に味噌汁の入ったお椀、それと箸置きに乗った竹の箸のみ。決して贅沢とは言えないメニューだが、基本朝は食べない蓮からすれば十分なものだった。

 

 

ここまで本格的に朝食を食べるのは、世話になっていた幼少の頃以来な為に、彼はありがたく、しかし手早く朝食を胃の中に掻き込んでいく。結局、ものの5分もしない内に朝食を片付けた蓮は自分が使った食器類を手早く洗い、洗い終えた頃に霊夢が持ってきた食器もついでに洗って、食後の食休みを用意されたお茶を飲みながら過ごす。

 

 

 

頭の中で考えているのは、昨夜蓮が眠ろうとしたその直後に起きた、突如感じた巨大な悪寒についてだ。遠くの方からでも感じてきたプレッシャーは、紛れもなく黒円卓の連中の者であった。

 

 

 

それが誰のものなのかまでは分からなかった蓮だが、これまで会ってきたヴィルヘルムやルサルカや櫻井のそれではなかった。

 

 

しかしそれでも、アレの気配がとんでもない奴の気配だという事は蓮にもわかっていたし、最終的には倒さなければならない者だとも理解していた為に、驚きよりもそちらの方が重く蓮の肩に圧し掛かっていた。

 

 

「だがとりあえずは情報収集か。連中もいつまでも大人しくしているとは思えないしな」

 

「そうね~、昨日のとんでもない気配の事も気になるし。方角的に紅魔館の方から感じたから、レミリア達が死んでなかったら向こうから情報持ってくるかもしれないわ」

 

「レミリア?それって誰だよ」

 

 

蓮が霊夢から出てきた人命に首をかしげると、そういえば説明してなかったかとぼやきつつ、霊夢は簡単に説明をする。

 

 

「レミリアってのは吸血鬼よ。見た目は幼女って感じの」

 

「幼女・・・ってか吸血鬼だって?」

 

「そうよ。で、そいつの根城が昨日感じた謎の気配?の感じた方角にあるわけ。ここからだとそう遠くないから、こっちから出向くのも悪くはないと思うけど、すれ違いになったら面倒くさいしね」

 

「・・・本当、何でもありなんだなこの幻想郷ってとこは」

 

 

もう悩むのも面倒くさいと、蓮は幻想郷関連で頭を悩ませるのは止めにする。気にしていたらそれだけで日が暮れてしまいそうだ。とりあえず、霊夢の話から情報が向こうから来てくれるのだとしたら有難い。

 

 

だったら、それまでの時間を無駄にする気は蓮はなかった。残っていたお茶を一気に飲み干すと、サッと立ち上がってその場から10メートル程先に進んで立ち止まる。

 

 

それからゆっくりと目を閉じると、意識を深く沈めていき満足したところで、今度は右手に意識を集中させる。思い浮かべるのは、シュピーネという男に殺されそうになった時に感じたあの感覚、そして発現させる為の呪文。ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと息を吐く。間違っても暴走させるわけにはいかない。

 

 

こんな所で躓く様では、ハッキリ言ってヴィルヘルムや他の連中と満足に戦うこともできないだろう。火事場の馬鹿力ではだめなのだ。何時でもあの力を自分の意思で発現し、しっかりと制御して戦うことが出来るようにならなければならない。敵は少なくとも、聖遺物の第三位階『創造』を使いこなしているのだから。

 

 

現状、第二位階『形成』までしか使えていない蓮では、今のままではいけないのだ。だが、焦っても仕方がない。無いもの強請りをしたところで、それが叶う所ではないというのは身に染みて理解している。

 

 

だからこそ、今は出来ることを精一杯熟す。その為に、今こうして少年漫画の特訓のような真似をしているのだから。下らない雑念は全て捨て、聖遺物に意識を乗っ取られない様に頭の中をクリアにする。彼の聖遺物は、その人格とは裏腹に紛れもなく凶悪な斬首刀なのだから。

 

 

やがて意識を完全に聖遺物の事だけに向けるのを成功すると、蓮は最後に大きく息を吸い込んで吐くと同時に小さく、しかし力強くソレを発現する為の祝詞を呟いた。

 

 

『形成』

 

 

瞬間、蓮の周囲の空気が冷たく重たいものに変わる。それと同時に右腕にも変化が起こり、瞬く間に彼の腕は奇妙な刃物を宿した形へと変化した。色は黒く、まるで黒鋼を思わせるその色は酷く暗く、見る者全てに畏怖の念を感じさせるような形状をしていた。

 

 

内側に反り返ったその刃物の役割は、まるで人間の首を斬首するかのようであり、それは間違っていない。何故なら形状こそ全く違うものの、彼のその右腕は紛れもないギロチンなのだから。中世の世に在って、ありとあらゆる人間の首を落とし生き血を啜ってきた、残虐にして速やかに死を与える殺人道具。

 

 

それが蓮の聖遺物であり、マリィの本当の姿である。しかし、形を成しただけでは成功とはいえない。

 

 

「ッ!!」

 

 

突如として湧き上がる殺意の奔流に流されぬよう、蓮は歯を食い縛って自分の意志を縫い付ける。シュピーネの時の様に、しっかりと自分の意志の力をもってこの力を制御しなければ、このギロチンの刃は暴れ回り、あらゆる生物の首を跳ね飛ばして回るだろう。しかしそれはさせない、させるわけにはいかない。

 

 

「くっ、させるかよっ」

 

 

力をもって押さえつけるのではない。それではダメだ。そんなやり方では、聖遺物を使いこなすことなどできはしない。否、使いこなすという考えこそ、間違っている。一方的な力ではだめだ。何故ならば、彼は彼女と一緒に戦い抜くと決めたのだ。

 

 

だからこそ、蓮は彼女に語り掛けるように、優しく、確固たる意志をもって制御する。

 

 

その結果、

 

 

「っ、はぁ、ふぅ・・・何とか、なったか?」

 

 

荒い息と冷や汗を吐き出し、蓮は右腕のギロチンを見る。しっかりと形を成して右腕に宿るソレは、そこに確かに蓮とマリィの意志が尊重されるように安定して姿を為していた。

 

 

実戦形式ではない為完全に成功とは言い難いが、それでも聖遺物の形成はこれで二回目で蓮自身、その出来栄えには納得のいくものがある。コツは掴めた、これなら実戦でも問題ないと蓮が自己完結させたその時、ひょっこりと霊夢が後ろから現れた。

 

 

「へぇ・・・なんか物騒なもの持ってんじゃない?」

 

「おい、急に後ろから話しかけるなよ。つうか、絶対に触れんなよ。冗談抜きに危ないから」

 

「分かってるわよ、そこまで命知らずじゃないわ。それより、昨日あんたの隣にいたマリィって子の気配がするけど、もしかして彼女なのコレ?」

 

 

言って、霊夢が蓮の右腕を指す。それに少し驚いた顔をする蓮だが、コレ呼ばわりにはカチンと来たらしく、ピクリと額に青筋を立てて霊夢に抗議する。

 

 

「コレじゃねぇよ、マリィってのは合ってるけどな。このギロチンがマリィの本体で、マリィ自身はギロチンの人格っていうか、意志っていうか・・・よくわかんないけど、そんなもんらしい」

 

「ふ~ん・・・何か複雑なのねぇ。どうでもいいけど」

 

「自分で聞いといてそれかよ?」

 

「はいはい、わるぅございました。とりあえず、それをそこらで振り回すのだけは勘弁してちょうだいよ。神社ぶっ壊れでもしたら、洒落にならないんだから」

 

「お前は俺を何だと思ってるんだよ」

 

 

霊夢の言葉に憤慨する蓮だが、霊夢自身は興味が尽きたのか神社の縁側で新しく淹れたお茶を呑気に啜っている。そんな彼女を見ているとヒクヒクと口元が引き攣る蓮だが、あまり感情を昂らせるわけにもいかず大人しく怒りを治めることにする。

 

 

 

それから右腕のギロチンをブンッと勢い良く一回振ると、同時に形成を解いて彼も縁側に座り直した。しばし無言でお茶を啜りあう二人。やがて十五分も経過して、太陽が丁度雲の切れ間から再び顔を出したその時、ヒュンという短い風切り音の後、二人の人影が姿を現した。

 

 

「メイドと・・・幼女か?」

 

「早速来たわね。さっき説明した、紅魔館の連中よ」

 

「どんな説明をしたかは知らないけど、私を幼女と呼ぶのは止めなさい、命が惜しかったらね」

 

「じゃあ何て呼べばいいんだよ?」

 

 

いきなり殺気を叩き付けてきた幼女改めレミリアに、蓮は小さくため息をついて言葉を返す。人間だった頃ならいざ知らず、人外に成り果ててしまった蓮はレミリアの殺気程度では怯みはしない。そんな彼を見て、彼女は面白くなさそうにフンと鼻を鳴らす。

 

 

「レミリア・スカーレット、吸血鬼よ。こっちのメイドは十六夜咲夜。一応よろしくと言っておくわ、気に入らないそこの外来人」

 

「・・・藤井蓮だ。よろしくな、レミリア。と・・・」

 

「咲夜でけっこうですわ」

 

「ああ、そう。こっちも別に敬語とかつかわないでいいぞ。俺も礼儀がなってるとはいえないしな」

 

 

蓮がそういうと、咲夜は少し悩んで素振りで考え込み、それからしっかりと頷いた。

 

 

「それはそうと、用があってきたんじゃないのレミリア?だったらさっさと話してくれないかしら。お茶ぐらいだすから中に入りなさいよ」

 

「ええ、そうさせてもらうわ。咲夜もいいわね」

 

 

レミリアの言葉に、咲夜は無言で頷き、二人一緒に神社の中に入っていく。蓮もそれに続き、二人の後を追って中に入り、朝食を食べた部屋に戻る。それから霊夢が無言で追加に来た二人分のお茶を用意するとそれを配り、彼女も腰を下ろした。

 

 

蓮は緑茶を出された吸血鬼を見て妙な顔をするが、普通にそれを飲んでいるのを見ると興味をなくして天井を見上げた。吸血鬼だという割には、蓮の中にあるとある男のイメージとはかけ離れている。背中に見える翼は確かに驚くべき代物であるが、見た目が見た目なだけに残念感を否めない。

 

 

とは言え、これから話を聞く立場である蓮は機嫌を損ねるわけにもいかない為に、そこはあえて口を出さなかった。そんなゆっくりとした空気が二分も続いただろうか。丁度霊夢が湯呑をテーブルの上に置いたところで、レミリアが気を見計らったのか口を開いた。いよいよ聞かされる情報に、蓮はしっかりと耳を傾けて頭の中にしまう準備をするのだった。

 

 

 




日常回でした。
次回も説明をしながら、これからどうするか、レミリアも交えて説明をする回です。
自分でも早く戦闘に入りたいのですがね、いきなり戦闘を入れては話の構成がめちゃくちゃになる上に、蓮が序盤で創造位階になっちゃいますし、東方キャラの活躍もいれられなくなっちゃう・・・


ああ、二次創作ってやっぱり難しいなwww
片っぽの陣営に力入れすぎると、クロスオーバーと言う名のdies勢による虐殺が始まっちゃうし・・・
dies勢って、死に方も格好いいからそこんとこむずかしいですよね?


ちなみにこのルート、マリィルートが終わってkkkを通じ、氷室ルートに行く。それが本家の流れですが、これはその氷室ルートの本当手前、って感じです。

























































個人的に、蓮の嫁の一人であり、最重要人物の彼女ル〇〇カさんの氷室ルートでの記憶を呼び起こす
為のルートって考えもありますのでww


何かさらっとネタバレしてしまったような・・・心の寛大な方は、聞かなかったことにしてくれれば幸いです。



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