能力や展開には作者の勝手な考えと解釈が反映されます。
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例えるならば、そこはまるでそう。どこまでも深く、どこまでも暗く、そしてどこまでも何もない。それを見た者は、それが誰であっても同じ感想を抱くであろう。
ここはどこまでも虚無に満ちていると。いや、そもそもどこまでも暗いというのならば、それは見えているとは言えず、距離感などはつかめる筈もない。
光も音もないこの空間では、何が有ろうと全てわからないの一言で片付いてしまうだろう。そんな、どこまでも何も見えない空間であったが、突然にフッと小さな輝きが湧き、その周辺だけを照らし出した。
そこには、何かがいた。姿形はおそらく人間であると推測はできる。光によって照らし出された影も、人型を映し出していて違和感がないように思えた。だが。その影の主は、光に照らされたモノの姿は、まるでこの空間と同じく、どこまでも不気味な存在だとしか言いようがないような存在であった。
その人物を見ようとすれば、姿がぼやける。その存在を認識しようとすると、その過程で認識したものが何重にもぶれる。ハッキリと言ってしまえば、その人物を明確にとらえることができない。これを不気味と言わずなんというのか。何より、その人物から感じられる気質というものだろうか。
それが途方もなく、歪み、曲がり、狂っているものだと、見る者すべてを不快にさせる。そんな、敢えて例えるならば幽鬼のような男は、やがて腹の底から腐りきったような、しかし嬉しそうな笑声を突如として上げ始めた。
「フ・・・フフフフ・・・フハハハハハハハハハッ!!」
その笑声はどこまでもこの虚無空間に響き渡り、反響し、静かだった空間を狂気と狂喜で満たし始める。やがて抑えられなくなったのか、細身の体を自身で抱えるように腹部のあたりをきつく抱きしめて、ひたすら笑声を上げ続ける。
それが止んだのは一体どれほどの時が経ってからだろうか。
それはまるで刹那の時間であっあたかのようにも感じられるし、途方もない時間のようにも感じられた。どちらにせよ、笑声が止んだ虚無空間であったが、今ではその空間も虚無と言えるだろうか?
否、そこはもう虚無ではなかった。だが、それ以上に不気味さを増した狂気の念に満ちた空間であった。
もしも最初からこの空間に人がいたとしたら、急に変わった空間の雰囲気を感じ取り、まるでその男の腹の中にいるようだと思うことだろう。
「いやはや・・・これで一体何度目か。最早数得ることなどできぬし、しようとも思わないが、これほどまでに繰り返すと不思議と回数を気にしてしまうものだ。女神の抱擁による最期、ただそれのみが望みだというのに・・・」
男の言葉は、事情を知らないものが聞けば、それはさも意味不明な言葉に聞こえるだろう。当然である。事情どころか、初めて会った人間の内面事情を察することができる人間など、いようはずもない。
いるとすればそれは、人の形をしたナニカである。だが、ことこの男の願いに至っては、それが幸運であるといえるであろう。
逆に、もしもこの男の願いがわかってしまったとすれば、その瞬間、頭の中身が沸騰しても可笑しくない。それほど、この男の願いの根底にある思いというのは、酷く歪んでいるものだった。
「しかし・・・これほどまでに繰り返したというのに、全く進歩がないというのもバカらしい事実だ。ここはひとつ、盤上を取り払い、仕切り直し・・・いや、新たに作り出すというのもありやもしれぬ」
そんな相も変わらず意味不明な言葉を吐き続ける男は、言葉を言い終えてから数秒、口元をこれ以上ないくらい歪め、そして先ほどまでとは比べ物にならない狂喜の笑みを浮かべた。
そんな男の目線の先にあるのは、新たに発生した光点。水晶のようなものに映し出された映像、いや光景は、この現代では珍しい手のくわえられていない自然という言葉があう場所を映し出していた。
「霊地的な要素はこれ以上ないくらいに破格、そしてそれ以上に強い器の存在も感じる。これならば問題はない。これが果たして吉とでるか凶とでるか・・・いずれにしても、失敗したのであれば再び繰り返すだけなのだがね。そう、私の願いが叶うまで。未来永劫、何度でも。それが那由他の先ほどの回数であろうとも」
男は心底楽しげな表情を浮かべ、やがて結論を下した。口元にいたずらを思いついたような子供のような笑みを浮かべ、まるでオーケストラの指揮者のように腕を振り上げ、含み笑ってタクトをふるう。
「さぁ、此度のクランギニョルを始めよう。我が息子、そして此度舞台に選ばれた地の住人よ。期待の程はそれほどしていないが、それでも私は希おう。どうか私に、私達に、未知を魅せてくれ」
その瞬間、男のワードを歯車として、ここではない何処かでその舞台演者たちが劇に上がった。
「う、ォォオオオオオオオ!?んだ、コレハァ!?」
「ッ、一体・・・!?」
「これは・・・・・・」
「まさか・・・」
「ひっ・・・!?」
「きゃあああああっ!?」
「・・・・・・」
「ふん」
「・・・・・・」
「ん~?」
様々な困惑な声と、そして不満そうな気を放つ演者たち。当然の事態に、頭の中は困惑を占めているだろう。当然だ。なぜなら彼らは、彼女らは、突如として下に下に落ちているのだから。しかし、そんな中でもただ一つ、別格とでもいえる器の存在が小さく微笑を浮かべて虚空に向けて言葉を吐いた。
「これも卿の計らいか?我が友、カールよ」
それに対する応えはない。だがしかし、言葉を吐いた男には友人の笑い声が頭の中で木霊していた。それを気のせいやら自身の想像と考えることはなく、男は中空に向けて言葉を吐いた。
「よかろうカールよ。では、始めようか。私も卿と同じく、希おうではないか。この狂おしい既知を、脱却不可能な牢獄(ゲットー)を壊して、私に未知を見せてくれ」
その言葉を最後に、黄金の獣と呼ばれる彼も、その姿を消した。彼らが向かったその先。そこは、幻想郷。ある意味では、彼らが行き着くには真っ当な場所なのやもしれない。
「っ!?紫様!!」
突如、均衡が保たれていた結界をすり抜けて幻想郷に入り込んだ異物の気配に、それを感知したキツネ耳を生やした少女が悲鳴のような声を上げた。その声に言われるまでもなく、紫様と呼ばれたキツネ耳の少女と同じ綺麗な金髪を長く伸ばした少女は、その異変に気づき眉を潜めていた。
「藍、アナタから見て結界に干渉された痕跡はわかるかしら?」
「え?いえ、それは私には何とも・・・っていうか、結界のことに関しては、基本的に紫様が管理されているので私にはそれほど深くわかりませんよ」
「それにしては、結界に何かが干渉したのは分かってた癖に~。まぁでも、何はともあれ私と霊夢の結界を壊すことなくいとも簡単に干渉をするなんて。これが何者の仕業だとしても、ただモノじゃないようね」
片目を閉じて、可愛らしく肩を落とす少女。この少女こそ、幻想郷の創始者にして守り神と言っても過言ではないすきま妖怪、八雲紫。そしてキツネ耳の少女が、九尾の式神の八雲藍である。
幻想郷は紫とこの楽園の巫女、博麗霊夢の結界によって外界との接触を遮断しており、その結界の強靭さはとてつもないレベルである。
それをいとも簡単に、しかも壊さず突破するとは一体どれほどの所業なのか。それが分かるだけに、紫と藍の2人はそれを脅威に感じているのだ。
「まぁ、それは追々調べておけばいいとして、とりあえずは幻想郷に入り込んだ目的を調べるべきかしらね?」
「簡単に言いますね?そう言って調べるのはいつも私なんですから」
「あら?式神なんだから、主の意向をくむのは当たり前の事でしょう?幸いというべきなのか、今回結界に干渉したモノは、結界の破壊を目的としているわけでもなさそうだし、それは気にしなくてもいいでしょう。それが目的ならば、わざわざ幻想郷の中に入り込まなくてもこれだけの腕前を持っているのだから、外界から結界を壊すなんて難しくなかったでしょうし」
「確かに一理ありますが、それでも悠長に調査するというのもいかないような気がしますが。これは私の勘ですが、今回幻想郷に入り込んだ異物ですが、何か良くないモノを感じる気がします」
藍が会話で緩みかけていた空気を引き締めるように、眼光を鋭くキュッと唇を引き締めて言った。すると、それは紫も同意見なのか緩んだように見える表情が、よく見れば眼だけは笑っていないのが分かる。
それを見て、藍は自分のなすべきことを理解した。それ以上は何も言わず、ただ首だけで頷いて音も立てずにその場を去る。
後にただ一人残された紫は、膝の上で丸くなって眠っている藍の式神である橙の頭をやさしく撫で、傍らに置いてあるお猪口に残った酒を一気に煽って頭上の月を見上げる。
「どうやら、また騒がしいことになりそうね」
紫の予言めいたその一言は、夜の闇にまぎれて消えていったが、その予感だけは消えることなく頭の中に残り続けた。
初めまして、厨坊です。
初めての小説投稿になります。
最早使い古されてそうな設定ですが、付き合ってくれる方はどうぞよろしくお願いします。
あと展開的に不愉快なことになるかもしれませんが、それが受け入れられないという方は申し訳ありません。
Diesキャラ勢はクロスオーバーになると扱いが難しいですが、きちんと考えて進行させていきます。
ですがニートの表現力と言い回しが難しくてやりづらいです。読んでいる皆さんに、あのニートのうざったらしい高笑いが脳内再生されていると嬉しいのですが・・・・・・無理ですね、すいません(笑)
では第1話で再び会いましょうノシ
PS.投稿は不定期になると思います。