自分のサイトではアップしたのに、こっちに投稿するのをずっと忘れていた。
てへぺろ☆
「…は? 侵入者…?」
しばしの沈黙を破ったのは、呆然と呟かれたエドワードの声だった。
対する少女は、愛らしい顔を邪悪に歪め、くつくつと笑う。
「ふふ、魔力とは違う何かの力を感じて来てみれば…。この学園都市の結界を抜けてきたということは、それなりにやれるんだろう?」
エドワードの疑問など気にも留めず、少女は羽織ったマントの内側から、液体の入ったフラスコを二つ取り出す。
何をするつもりなのか検討もつかないが、何やら不穏な気配を感じ取り、エドワードは慌てて声を荒げる。
「お、おい、ちょっと待て! 訳を話せば長くなるが――」
「下がレ、エド!」
とにかく相手の敵意を収めようとするエドワードを、リンの鋭い声が遮った。
驚いて振り返ると、普段は笑みで隠している鋭い眼光を、空に浮かぶ謎の少女に向け、血に塗れた刀を構える、リンの姿があった。
「あの子ハ、人間じゃなイ」
絞り出すように告げたリンの言葉に、エドワードは目を見開いた。
シンの格闘技に精通し、人の気配を察知する能力を持つリン。
先の作戦では、
そんな彼が指摘した、人の形をした、人でないもの。
それは――
「
「いヤ、奴らの気とも違ウ。だガ…人にしては異質すぎル。油断しない方がいイ」
そう言われ、エドワードも空中の少女に向けて、身構える。
二人の会話を聞いた少女は、ほう、と興味深そうに笑った。
「私を一目で人間ではないと見抜くか。なかなかいい目をしてるじゃないか」
――そして。何の前触れもなく、躊躇いもなく。
手に持っていたフラスコを、エドワードたちに向かって投げつけた。
空中で二つのフラスコはぶつかり合い、高い音と共に割れ、中の液体が混ざり合う。
『氷の精霊17頭。集い来たりて敵を切り裂け。【魔法の射手・連弾・氷の17矢】』
少女の口が、エドワードたちには意味が分からない言語で、言葉を紡いだ。
次の瞬間――
いくつもの鋭く尖った氷柱が、液体の中から飛び出し、二人へと襲いかかる!
「なっ!?」
一瞬、呆気にとられながらも、エドワードは両手を合わせ、その手を地面へと押し当てた。
もちろん折れた左腕が悲鳴を上げるが、今は構っている暇はない。
雷に似た光――錬成反応と共に、地面から質量をかき集められて出来た壁が、エドワードたちを守るためにせり上がる。
ガキィィン!
壁に大量の氷の矢が、激突する。
当然、砕けたのは氷の方だが、これが人体に当たればどうなったか――考えるまでもない。
「っ、錬金術!? 陣も無しにか!?」
驚愕の表情で見上げるエドワードの視線を受け止め、少女は楽しそうに笑った。
「なかなか面白い術だ。ククク、気に入ったぞ、小僧。お前の相手は私が直々にしてやろう」
「何が気に入った、だこのクソガキ! 殺す気か!」
高慢な態度の少女に、青筋を浮かべたエドワードが怒鳴る。
元々、喧嘩っ早い少年である。むしろここまで大人しくしていた事の方が珍しい。
「てめぇ降りてこいこの野郎! 一発殴る!」
「落ち着ケ、エド! 相手の戦力もこの場所もまだ分かってないだロ、まずは出方を窺っテ…ていうカ、あんな小さい女の子相手に本気で殴る気なのカ?」
早速両手を合わせ、臨戦態勢に入ったエドワードに、リンが制止の声を上げた。
だが。
「老若男女平等! 先にケンカ吹っかけてきたあいつが悪い!」
憤慨しながら怒鳴り返すエドに、リンは頭を抑える。
「大人げなイ…」
リンは知る由もないが、以前にエドワードが口にした「男女平等」よりも進化している。輪を掛けて大人げなかった。
一方、空中では。
「…クソガキ、だと…?」
怒りに口の端をひくつかせ、少女が低く唸っていた。
彼女の小さな呟きは、地上の二人には聞こえなかったが、少女の雰囲気が急に凶悪なものに変わったことには気付いたようだ。
ゆらり、と。
怒りを抑えるためか伏せていた顔を上げて、エドワードを睨み据えて。
少女は犬歯を剥き出しにして、怒鳴る。
「この私を前にしてそんな口を叩くとはな。上等だ、叩き潰してやろう――このチビが!」
――それは、禁句だった。
ブチィッと、何かが盛大に切れた音がした。
エドワードは俯き、ぷるぷると小刻みに震えている。
次に何が起きるか察したリンは、諦めた表情で耳を塞ぎ、天を仰いだ。
そして。
「誰が、豆粒どチビかあああああああぁぁ!!」
エドワードの怒りに満ちた怒号が、辺り一帯の空気を震わせた。
最早避けられぬ戦いが、今始まったのである。
呪文の一部が長すぎて、ふりがなにできなかったです。
読みにくかったらすみません。
【追記】
呪文のルビを撤廃し、表記を変更しました。