帰宅部活動記録1945   作:長命寺桜

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最終話  帰宅部のもっと長い日

牡丹「アダムとイブ。彼らは――地球に生まれた最初の生命体。38億年前、2人は原初の海の中で出会った。だが2人の恋は同時に、38億年に及ぶ長い長い戦いの宿命が、始まりを告げた瞬間でもあった! 『産めよ、増やせよ、地に満ちよ!』 生命は神の言葉に従い、生き残りと生殖をかけた、果てしない戦争に向かっていった。

 より強く、より賢く、より多く。やがて武器を手にした人類は、地上、海、空、全ての生物を支配し、生態系の頂点に君臨した。人類は、生存競争を勝ち抜き、唯一の勝者となったのである。

 万物の霊長となった人類が求めた物――それは、豊かで、満ち足りた、安全な生活であった。だが増えすぎた人類を養うのに、水の星地球ですら小さすぎ、社会はあまりにも非効率すぎた。飢餓、貧困、そして戦争。古代から延々と繰り返される凄惨な争い。過ちは何度でも繰り返される。戦争は原初から定められた宿命なのか、あるいは――

 今日、人類の歴史に、新たなる戦いの火蓋が、切って落とされる―――!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

―――― 深夜 都内某所 ――――

 

 

 

夏希「何物創世紀だよッ!」

 

 

桜「ちょっと夏希ちゃん! 帰宅部恒例の動物ネタコーナーにツッコミ入れちゃ駄目でしょ!」

 

夏希「ええっ……アダムとイブって動物なんですか?」

 

 

クレア「そうよ桜さん! それに最初の生命がアダムとイブだって確証はないわ! 最先端科学をもってすれば女の子同士での交配も可能。つまり、生命はイブとイブによって創造された可能性も否定できないのよ!」

 

 

花梨「な、なんですってー!」

 

 

夏希「っていうか、そもそも単細胞生物に性別はありませんから! で、何なんですこの状況。こんな真夜中にいきなり呼び出して。ここ、クレア先輩ん家の核シェルターですよね?」

 

 

 

クレア「そ、そうだったわね。あの……実は…………」

 

牡丹「待てクレア。私から話す」

 

 

 

花梨「えっ……な、何かあったんですか!? もしかして、また空襲とか⁉」

 

夏希「花梨、今平成だってこと忘れてない? 東京に空襲なんかある訳ないでしょ!」

 

花梨「そっかーなら安心だね♪」

 

桜「空襲じゃないなら、一体何なの牡丹ちゃん! もしかして、遂に萩調流とのラストバトルとか!?」

 

 

牡丹「いや、そういうんじゃない。みんな、心して聴いてくれ。我らが祖国、『美しい国』日本は――――」

 

 

 

 

桜・花梨・夏希「………………ごくり」

 

 

 

 

 

牡丹「あと3分で滅亡するッ!」ズォオオオ!

 

 

 

 

桜・夏希・花梨「なっ………… な ん だ っ て ーーーーーー!!」

 

 

 

 

花梨「もっ、もっと早く言って欲しかったです! 私、昨日作ったビーフ・シチューをコンロの上に置いたままなんですよ! 冬だからって軽い気持ちで出てきちゃったじゃないですか!」

 

夏希「いやそういう次元の問題じゃないからー!」

 

桜「め……滅亡ぅ……⁉ そんな! 私、まだやり残したこといっぱいあったのに!」

 

夏希「そうですよ! そんな急に日本滅亡とか言われても!」

 

 

桜「けど、滅亡するんじゃ仕方ないね。それじゃ、最後に何やるか決めよっかー」

 

牡丹「うむ」

クレア「そうね」

花梨「はい、決めましょう!」

 

 

夏希「いやいやいやいやいや、ノリ軽すぎですから! 大体なんで日本が滅亡するんですか!?」

 

牡丹「ああ。なんか憲法9条が改正されたから、中国が核ミサイルを発射したそうだ」

 

夏希「うぇえええ!?」

 

クレア「九重財閥のAWACSによると、約1000発が日本列島に接近中よ。おそらく、東京は跡形もなく消し飛ぶわね」

 

夏希「……ま、マジですかそれぇえ!? あたし達死ぬのぉ!?」

 

桜「あっはっはっは! あいつらビビり過ぎでしょッ! これは安倍ぴょん超GJだね!」

 

夏希「グッジョブちゃうわッ! ちょっと待ってくださいよ! そんな話、信じられるわけないでしょ! いくら中国だってそんな馬鹿なことはしませんよ!」

 

 

牡丹「夏希…………テレビ付けてみろ」

 

 

 

―――――

 

アザラシ「ウィーーーーーーーーーーン! ミサイル発射情報だよ♪ 当地域に、着弾する可能性がありまーす。屋内に避難しぃ、テレビ・ラジオを付けてください!」

 

―――――

 

 

夏希「ジ……ジーザス……」ダラダラダラ

 

 

桜「さて、それじゃ最後の部活、始めよっか! 私のやり残したこと。それは、夏希ちゃんにコントバトルを挑むこと!」

 

夏希「こ……この極限状況でそんなの挑まれましても……」

 

 

桜「夏希&愛ホールディングスのショート・コントは確かにハイレベルだよッ! でもね、お笑いでてっぺんを取るにはまだまだ足りないッ! だから私は、自分のコンビを結成して、夏希ちゃんにお笑いの厳しさを思い知らせようと思った!」

 

 

牡丹「まさかのお笑いバトル路線か! これは燃いバトルが期待できそうだな!」

 

クレア「ついに桜さんの本気が見れるのね! 楽しみだわぁ♪」

 

夏希「…………もしやこの人達、既におかしくなってるぅ⁉ 今、そんなのやってる場合じゃないでしょ! 花梨も何か言ってやってよ!」

 

 

 

花梨「ふっ……安藤夏希。名前通り、あんドーナツのように甘い女だね」

 

夏希「えっ!? な、何そのキャラ⁉」

 

花梨「私は『あいかりん』の相方をなっちゃんに盗られてから、全てを失った! 生きる意味も、お笑いで天下統一するという夢も! 何もかもをだよ!」

 

夏希「あんた……そんな夢持ってたっけ? 私と古石のネタ見てみたいとか言ってたじゃん……」

 

花梨「でも私は出会ったの。愛ちゃんを越える最高の相方に。その人は、きっと、なっちゃんもよく知っている人だよ」

 

 

夏希「はぁ……?」

 

 

花梨「そして……その人は当然、なっちゃんのことを知り尽くしているッ! あなたに倒せるかな、なっちゃん!」

 

 

夏希「こ、この流れはまさか……⁉」

 

 

花梨「クックック……ようやく気付いたみたいだね。いくよ、なっちゃん! この私、元『あいかりん』ツッコミ担当、塔野花梨と!」

 

 

桜「帰宅部部長にして『グレネード乱痴気』の異名を持つ、道明寺桜!」

 

 

桜・花梨「2人のニュークリア・コンビ! その名も……ッ!」

 

 

 

夏希「…………」

 

 

 

桜・花梨「さっかりんですッ!」

 

 

 

夏希「人工甘味料かよ……」

 

牡丹「捻りのない直球ど真ん中。実に桜らしいな」

 

 

 

クレア「か……花梨さんが桜さんとコンビを……私を差し置いて花梨さんとコンビを組んで、あんなことやこんなことを⁉ うぐぐ……だ、ダメよ私、そんなことを考えては!!」

 

夏希「何を考えてるんだこの人は……!」

 

クレア「事故に見せかけて、道明寺桜を始末しようなんてッ!!」

 

夏希「言っちゃったよ! 即、言っちゃったよ! せめてもうちょっと我慢してから言ってくださいよクレア先輩ッ!」

 

 

 

さっかりん「さっかりんの、核ミサイル・ショート・コント!」

 

 

夏希「笑えないから! 今それ言われても絶対に笑えないからッ! てかそれ以前に! コントなんかやってる場合じゃないでしょうッ!」ドンッッ!!

 

 

 

桜「えぇー……でもかなり練習したしぃ」

 

花梨「そうだよ! 私と桜先輩はなっちゃんたちに挑むために、地獄のような特訓を繰り返してきたんだよ!?」

 

夏希「いやいやいやいやいや!! そうじゃなくて、話を最初に戻そうよ! 日本があと3分で滅びるんだよ!? ショート・コントやってる場合じゃないでしょうがッ! ていうか、もうすぐその3分たっちゃうよッ!」

 

 

 

桜「ホーリィ・マリー! ど、どうしよ、クレアちゃん⁉ ここここっ……このままじゃ……大変なことになるよ!?」

 

夏希「やっと危機感を持ってくれましたね!」

 

 

 

桜「カップ焼きそばにお湯入れたの忘れてたよッ!!」ゴゴゴゴゴゴー!!

 

クレア「な、なんですってぇーーーーーーーー!? カップ焼きそばを戻す最適な時間は、2分45秒! それは桜さんが長年のカップ麺生活によって探り当てた神の時間! それを逃してしまうなんてッ!」

 

牡丹「くっ……! あれは、桜が最後の晩餐にと、私達部員に用意してくれた最期のカップ焼きそばだったのに!」

 

花梨「早くお湯を捨てないと……麺が伸びてしまいますよッ!!」

 

 

 

夏希「あんたら本当に……どれだけボケれば気が済むんだよッ!! しかも! よりにもよって、どうして最後の晩餐がカップ焼きそばなんですかッ! この前焼きそばパーティーするって言って、結局できなかったじゃないですか!! なのに、なんでカップ焼きそばなんです!? 答えてください! 答えて……答えてくださいよ……!」

 

 

 

桜「夏希ちゃん……」ジャー……

 

花梨「そこでお湯、捨てるのかよ♪」ビシッ!

 

桜・牡丹・クレア「…………」

 

 

 

花梨「……あは☆」

 

 

 

夏希「いやですよ……私……まだ死にたくありませんよ……焼きそばパーティするまで……死ねないんですよ……! クレア先輩だって、そう思わないんですか!?」

 

 

 

クレア「……そうね。今日のカップ焼きそばは、技術的な意味で前の焼きそばよりも劣る。桜さんの最期の愛が込められているとはいえ……正直に言って、前のよりも美味しいとは思えないわね」ズズー

 

花梨「そこで焼きそば、食べるんかよ~ッ!!☆」ビシィ!

 

桜・牡丹・クレア「…………」

 

 

 

花梨「……あ、あれぇ?」アワアワ

 

 

 

夏希「牡丹先輩!! お願いします! 今こそ、萩月流の真の力を見せてください! 例え核ミサイルが1000発降ってこようとも、牡丹先輩なら迎撃できますよね!? できますよね!? できるって……言ってくださいよ……ッ!」

 

 

 

牡丹「………………出来ないことはない」

 

夏希「な、なら早くッ!!」

 

牡丹「駄目だ、夏希! そこまで強引に世界の流れを書き換えると……全宇宙規模で物理法則が滅茶苦茶になってしまう。私達は……いや人類そのものが、最初からいなかったことになるんだ」モグモグ

 

夏希「でも生き残る可能性も……ほんの少しはあるんでしょ!? ありますよね!?」

 

牡丹「0.00000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000001%ほどな」

 

 

 

花梨「宝くじかッ☆」ドヤッ!

 

桜・牡丹・クレア「…………」

 

 

 

花梨「これもダメですかぁ!?」(>_<)

 

 

 

夏希「それでも……それでも確率がある以上ッ! やってください、牡丹先輩!」グワシ!

 

桜「夏希ちゃん……」

 

牡丹「…………すまない」

 

夏希「謝らなくていいです……萩月流で、世界を救ってくださいよッ!」

 

 

 

桜「やめなよ、夏希ちゃん。牡丹ちゃんは……神様じゃないんだよ。それにこの作品は……日常系なんだ。セカイ系じゃ……ないッ! ミクロな関係で、マクロな世界は変えられないんだよッ!」

 

クレア「悔しいけれど…… 愛の力じゃ、世界は救えないのね……」

 

夏希「そんな……もう……私達は死ぬしか……ないってことですか!?」

 

 

 

 

花梨「うふふっ……本当にそう思いますか、皆さん」

 

 

 

夏希「花梨! あんたさっきからちょっとふざけすぎだよ! あんたもちょっとは真面目にッ!」

 

クレア「夏希さん、こんな時に喧嘩はダメよ!」

 

牡丹「気持ちは分かるが、嫌な思いをして終ってもいいのか!?」

 

夏希「でも花梨が!」

 

 

 

花梨「私はッ! 愛で救えないものなんて、この世には無いと思うなッ!」

 

 

 

夏希「このっ……! 花梨……いい加減にしないとッ!」

 

 

 

 

?「なつめろ……いい加減にするのはあんただよ!」

 

 

 

 

牡丹「だ、誰だ!? 侵入者か!?」

 

クレア「シェルターが開いてる⁉ まずいわ、着弾までに閉めないと死の灰が入るわよッ!」

 

 

 

桜「愛……愛ねぇ……って、愛ぃ⁉ はっ……まさかッ!?」プルプルプル

 

 

 

夏希「……はぃ? 愛がどうしたんですか、桜先輩」

 

 

 

 

?「ひーとつ、一人で頂点(てっぺん)めざし」

 

 

 

 

牡丹「な……何だこの声⁉」

 

 

 

 

?「ふたつ、ふるうは笑いの兵器」

 

 

 

 

桜「見て! あそこにいるのはッ!」

 

 

 

 

?「みっつ、深淵(みぶち)の笑いへと!」

 

 

 

クレア「……無理矢理すぎやしないかしら」

 

 

 

?「至ってくれようあいかりんッ!」

 

 

 

夏希「……………………古橋……愛」ドヨーン

 

 

愛「夏の字、愛に世界は救えぬと申したな」

 

夏希「何なのそのキャラ……だいたい」

 

愛「帰宅部は日常系。愛の力だけでは、世界を救えない!」

 

 

花梨「それでも……あいかりんの力なら?」

 

 

夏希「あいかりん……またあんた達、何のつもりだ?」

 

 

愛「見ればわかるよ!」

 

 

 

あいかりん「ちゃーちゃちゃ・ちゃちゃちゃちゃ! ちゃちゃちゃ・ちゃちゃちゃちゃ! ちゃちゃちゃ・ちゃちゃちゃ・ちゃーちゃちゃちー!」

 

 

 

愛「あいかりんの、パトリオット・ショートコント! 『辞任』」

 

 

愛「うーお腹痛いよー! 駄目だ、お腹が痛すぎて職務ができないよ!」

 

花梨「お腹が痛いの? 総理のお仕事続けられる?」

 

愛「うう……辞めよっかなーどうしよっかなー」チラチラ

 

花梨「ところで総理、今年を漢字1字で表すと?」

 

愛「"愛"!」

 

花梨「"責任"でしょッ!!」

 

あいかりん「ふふんッ!!」

 

 

夏希「はぁ? 何これ……って、なぁあああにぃいい!? 空間に裂け目が⁉」

 

 

 

――――

 

アザラシ「宇宙の法則が乱れる!」

 

――――

 

 

 

愛「夏の日、果てしなく青い空、限りなく広い海、僕らはどこまでも行けそうな気がした、これからあんたを2014年12月14日午前7時に戻すよ!」

 

 

夏希「はぁぁあ!? 戻すって……あんたまさか……またタイムスリップを⁉」

 

愛「なっちーの! あんたが投票に行かなかったから、こんなことになったんだよッ! あんたの責任だ! 今すぐ投票所に行って、ちゃんとした政党に投票するんだよッ! そしたら未来は変わる!」

 

夏希「……と、投票⁉」

 

 

愛「そうだよ! 未来を変えるのは、安藤夏希の一票なんだ!」

 

夏希「はっ……分かった! あたし、未来を変える! 必ず未来を変えて、みんなを滅亡の未来から救って見せるッ!」

 

 

桜「……何言ってるの夏希ちゃん! そんな事できる訳がないよッ!」

 

 

夏希「できるかどうかじゃない。やるんですよ、桜先輩! 未来は、私の手にの中にあるんですッ! 掴んでみせますよ、私たちの未来をッ!」

 

 

愛「その意気だよ! 行ってきな、夏の字ッ!」

 

 

夏希「古橋、サンキュー!」

 

 

 

 

――2014年12月14日午前7時 東京 某投票所――

 

 

 

 

夏希「って………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

夏希「あたし選挙権ねぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

桜「だから止めたのに……」

牡丹「何だったんだ、今のくだり……?」

クレア「やれやれだわ」

花梨「ごめんなさい……やっぱり愛じゃ世界は救えませんでした」

愛「ちゃんちゃん」

 

夏希「って終わりかいッ!!」

 




くぅ~疲れましたw これにて終戦です!
実は、日中戦争してたら石油禁輸されたのが始まりでした
本当は対米開戦するつもりなかったのですが←
(ナチの)ご厚意を無駄にするわけには行かないのでバスに乗り遅れるなと挑んでみた所存ですw
以下、愛国者達の英霊へのメッセジをどぞ

倉澤「みんな、死んでくれてありがとう
ちょっと臆病なクズが帰って来ちゃったけど・・・気にしないでね!」

裕仁「いやーありがと!
朕の尊さは二十分に伝わったかな?」

源田「死んでくれたのは嬉しいけど全然使えない奴らね・・・」

冨永「死んでくれありがとな!
正直、出撃前に言った私の気持ちは嘘だよ!」

宇垣纏中将「・・・ありがと」ドカーン

では、

裕仁、倉澤、源田、富永、俺「皆さんありがとうございました!」



裕仁、倉澤、源田、富永「って、なんでブサヨくんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

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