ネーミングセンスには期待しないでください。
祐樹が異世界『カラム』へと転移されている間。
創造神セーレが住まうハザマでは、彼女自身の想像をこえた事態が起こっていた。
時は
創造神セーレが自らの世界の救世主として祐樹を転移させるための儀式を終えたところだった。
彼女は、祐樹の体が儀式陣の中におぼろげに消えていく様を見送りまずはひと段落ついたと、安心していた時であった。
「くふふ、そうはさせぬぞ。セーレ?」
その声をかわぎりにして、白い輝きを帯びていた儀式陣にわずかずつだが、黒が混ざり始めてた。
「だっ、誰ですか!……っ!?」
そして、次に彼女が驚いたのは、本来転移の儀が終了した後、この世界に体を慣らすために体の最適化を施してから転移座標を指定する工程があるのだが、驚くべきことに体の最適化の儀が中止させられており祐樹の体は元の世界にいた頃のままになってしまっている。
このままでは彼は、住環境の激変による病気・もともとすんでいる人間たちよりも弱い肉体。
それらによって最悪の場合せっかく見つけたこの世界の救世主になるであろう人物をみすみす死なせてしまうことになりかねない。
そこで、急いでなぞの声に対抗してみようとしたが、もう手遅れだった。
なんと相手はセーレが熟考している短い間に攻撃を受けた最適化の儀自体を破壊していた。
そこまで来てこんなことをする相手の正体を見破った。
「神であるこの私に対抗できうる力を持つのは”コーク”あなたしか、いませんっ!」
「ふっ、見破ったか、確かに私は魔界を創造したもの『コーク』だ。しかしあまりにも遅すぎたようだなぁ。おまえは昔からそうだったが、今も変わらないようだな、いったい何人の異世界人を殺せば気が済むのだ?」
「こ…殺してなどいない!すべて転移に水を差してきたのはあなただろうコークッ」
「『そのせいで彼らは死んでいってしまった。』とでも言うつもりだったかな?」
「…っ」
「だいたいお前が人間が増えすぎたから世界の均衡を保つために魔族をつくったじゃないか、あれが発端だろう。」
「それは、認めますが、あなたが今の魔族軍を作り出した張本人でしょう。」
「ああ、確かにな私はもともとは普通の魔族だった。」
『普通の』魔族だった。という言葉を聞いてセーレは驚いた。
実はコークの生まれた原因がセーレにはわかっていなかった。
セーレは人間のことで頭がいっぱいになっており魔族のことなど気にも留めていなかったからだ。
はじめて語られるコークの過去にセーレは耳をかたむけた。
「ひたすら何の目的感情を持たずただただ機械のように人間を殺す毎日、そこでほんの少しの疑問感情が生まれたとき私に天啓が届いたのだ、いやあれは天恵だったのかもしれない。」
「天啓?」
「そうだ、その送り主の名は、創造神オメテオトル様だ。」
「オメテオトル!」
創造神オメテオトル、かつてセーレを創造した神の名である。
いわばセーレの上司ともとれる存在。
オメテオトル様は、複数の世界を創造した神をも創造した複数の神の長である。
オメテオトルの考え方は実に公平で平等だが、なにも考えていないようにも思える。
強い意思を持った願いならその世界のルールに反しないことであれば大抵の事は叶えてくれる。
「そのときオメテオトル様に魔族たちへの私の疑問をぶつけてみると、「その者達に住処を与え
「そのころからですね、魔族が人間を駆逐しなくなり暗黙の時代が訪れたときは」
「ああ、そうだな確かに魔族には人間を襲わせず、より下位にいる獣を魔族化して作った魔獣を使って人間の技術や社会構造を盗んでいた。」
「あれは魔獣というのですか。あの普通ではない強欲で凶暴な獣たちは…。」
しかし、コークは新たに存在を『作った』と言った。
存在を作るということはすなわち『創造を行った』であるから自分と同じ力を得ているということに相違ないであろう。
だが、ひとつの世界に二人の同じ創造をつかさどる神が二人いるというのは、どうなのだろうか。
やはり、その真実こそ
そこでセーレは、さすがにオメテオトル様とあろうものが同じ能力を有する二人を共存させるわけはないだろう、ということで一縷《いちる》の望みをかけてコークに問うてみることにした。
「さきほどあなたは『魔族化』といいましたね?」
「ああ、それで魔獣は生まれたのだ」
「『魔族化』とは何をどうするのですか?」
正直セーレは、だめもとでコークに質問をした。
だが、恐らくこれには答えてはくれないだろう。
なぜなら恐らく『魔族化』というのはコーク自身が編み出した方法なのだろうからだ。
創造されているのならわざわざ『魔族化』と、区別をつけて言わなくても、創造したと言えば済むことなのだから。
それゆえ次のコークの発言にはいい意味で裏切られ、さらにこの世界の創造主であるセーレすら知らなかったある重大な情報を知ることになるのである。
「わざわざそのことを聞いてくるのであれば創造主であるセーレ…お前は知ってるんだろうなぁ…」
知らないとは、口が裂けてもいえないセーレである。
「まぁ、お前のその質問意図は確認ということなのだろうが、まぁ簡単なことだからこたえてやるよ。」
「お前の生み出したこの世界『カラム』だっけか?その生きとし生けるもの全てには魔力限界といういわばボーダーのようなものが存在していて、そのボーダーを越えると途端に思考回路、まぁ意識だな。それが魔力に侵食されて生物は興奮状態に陥る。そこまでは人間のなかにもたまにいる
その言葉を聞いてセーレは愕然とした。
まさか、自分の知らないようなことがこの世界『カラム』には組み込まれているんだということに。
そいて同時に人間と魔族の研究にここまでの差がでているのだと。
まだまだセーレはこの世界についてしらなかったのだと。
ここでふとセーレは思い出した。
それはセーレがかつてオメテオトル様と一緒に世界創造を行ったことを。
もしかしたらそのころにはすでに世界にはこの法則が組み込まれているのでは?と思った。
そんな時コークが突然思い出したかのようなくちどりで口を開いた。
「あれ?
そうなのだ、セーレは、なんとない雑談へとコークを誘い込むことによって、転移陣への興味を移そうとしていたのであったが、その目論見は成功し祐樹は無事に『カラム』へとたどり着くはずである。
「ええ、まんまと引っかかりましたね、コーク。わざと雑談に誘い込むことによって謀略、策略嫌いで素直なあなたはまんまと引っかかったのですよ。その隙に祐樹君には申し訳ないですが、いちから体を再構成していただくことにより体の適正化を図ることにしました。」
「くそっ!この腹黒女め。まぁいい後々、祐樹……だったか?の無力化をすればいいだけのことだ。」
「早速作戦を
そういったきり、コークの言葉がハザマに響くことはなかった。
「ふぅ、コークのあの純粋さには、敵であっても
そのころには転移陣の輝きは消え失せ、セーレの姿もなかった。
ハザマにまた
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2014/06/18/ルビ振りができてませんでした。修正しました。