星空?なにそれおいしいの?   作:たこ焼き王国

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ちょこちょこ更新していきます。
遅かったり放置してしまうときもありますが、長い目で見ていただけると幸いです。


第一話 俺の日常

 俺の名前は伊藤 祐樹(いとう ゆうき)

 

 そこらへんにいる普通の高校生だ。

 

 ただ一つ特異な点を挙げるならば、俺は授業中だろうが休み時間だろうが、とにかくゲームをやり続けるゲーマーだという事。

 

 そして、そのゲーム自体はというと「ドラゴンクエストIX ~星空の守り人~」で、あの大人気シリーズの第九弾目に発売されたゲームなのだが、本編に謎解きなんてものは、ほぼ存在せず個人的に言わせてもらえば、いわゆるヌルゲーだった。

 

 だが、しかしその後が問題だった。

 

 実は、このソフトにはシリーズ史上初の異様な機能が搭載されている。

 

 RPG《ロールプレイングゲーム》とは、ゲーム内で生活を体験するゲームという意味であるが、このシリーズの場合、自らが世界を救う勇者になり悪の魔王を倒してゲームクリアで終わり。という流れのものが主流なのだが、このソフトには『廃人仕様』ともいえる要素が搭載されていた。

 

 一つ目は、『宝の地図』。

 

 これは、約100パターンを軽く超えてしまう量があり、その全てがLv《レベル》で分けられたダンジョンになっている。

 

 そのダンジョンの最下層には、必ず一体ボスが居て一番強い奴になるとLvの最高値である99にしても倒せないボスが現れる。

 

 そこで、二つ目の『転生』だ。

 

 これは、Lv99から更に強くなりたい場合に使うものだ。

 

 やり方は簡単。

 

 Lv99までレベルを上げた後、『ダーマ神殿』に行く。

 

 その奥にいるおっさんに話しかけ、選択肢が現れるので『転生』を選ぶ。

 

 『転生』の条件として、Lv99になっていないと行えないという点がある。

 

 しかし、『転生』による効果は絶大で、Lv99からLv1+1という表示に変わる。

 

 だが、多くの人はレベルが下がると言い弱くなるんじゃないか?と思われるかもしれないが、Lv1と『転生』を10回やった状態であるLv1+★では、ステータスに恐ろしい差が生まれてしまう。

 

 なぜかというと、このシリーズの特色の一つである『職業』だ。

 

 この『職業』には下級職業である戦士・魔法使い・僧侶・武道家・盗賊・旅芸人と、上級職業であるバトルマスター・魔法戦士・レンジャー・パラディン・賢者・スーパースターの計十二種類がある。

 

 『職業』毎にLvアップによって得られるスキルポイントを割り振って使用可能となるスキルまたは特技とよばれる技能を取得することができる。

 

 このスキルの中には、ステータスアップの恩恵が得られるものもあり、このスキルを利用して強くしていくとさっきも言ったようにステータスに差が生まれるわけだ。

 

 しかし、『転生』無しのLv99でもアイテムと頭脳があればなんとかなる。

 

 俺には頭脳がなかっただけだ。

 

 しかし、俺にはある別の目的がある。

 

 それは、すべての値のカンスト《カウンターストップ》と完全クリアだ。

 

 そのためには、全10種類にもなる職業のLv99+★化と『せんれき』に表示されている値の群れをカンストさせることが必要だ。

 

 そしてまだ、このソフトを完全攻略するには足りない。

 

 三つ目に、『クエスト』というまた厄介なものがあり、NPC《ノンプレイヤーキャラクター》の頼まれごとをしなくてはならない。

 

 これにも膨大な種類があり、簡単なものから各地を飛び回りさまざまなアイテムを納品しなければならないという面倒くさいものまである。

 

 しかし、この最強となった主人公に困難などあんまり無い!と、言いたいところだが。

 

 プレイヤーの気苦労を考慮に入れなければ、という条件が入る。

 

 しかし、その膨大にあったクエストものこりあと少しというところまできている。

 

 そのうち二つのうちの一つが終わりそうである。

 

 『セントシュタイン城』で昼夜かまわず寝転がっているおっさんからの頼まれごとで、「トトとかいうガキに渡すようにたのまれた手紙を『ゴールドタヌ』というモンスターに取られたらしい」

 

 しかし、このモンスターには『宝の地図《ち ず》』攻略のときに犠牲になってもらっているので手紙は取り返し済みだ。

 

 あとはトトという少年だが、これも別のクエストのときに『サンマロウ』で見かけているので、探さずに済む。

 

 ということで、主人公の専用技『ルーラ』を使って目的地に飛ぶ。

 

 『サンマロウ』の教会のすぐ横の墓地にいるトトという少年に話をかけ、手紙を渡してクエスト終了となった。

 

 のこり一つのクエストは、「なんでも燃やせるものをもってきてくれ」というもので、『カラコタ橋』にいる焚き火にあたっているおじいさんからのクエストで、これは誰しもが真っ先にやるクエストだと思われがちだが、こんな簡単に終わるクエストは後にのこしておくのが俺の主義なので、残しておいた。

 

 理由をいうと、あとあとメチャメチャ面倒くさいのが大量にたまっていたらやる気がなくなるだろうと、見越して最後にのこしておいた。

 

 だって、学校の定期テスト毎に提出物があるが、ワークの宿題が終わったとおもっていたら別のワークの宿題が待っていることがあるとやる気なんておこらなくて、禁断の書でもみながらやってしまおうかな?と心のやみと闘わなくてはならなくなるだろう?あれと同じさ。

 

 しかし、さいごのクエストをやってしまおうと思っていたが、リアル《現実》のクエストをこなさなくてはならないことを思い出した。

 

 そう、先生が机の間を縫って徘徊しだしたのだ、これにはクラスの男子何人かもスマホいじりをやめ、背筋がピンッとなりいい姿勢でノートを取り出した。

 

 先生が近くに来たので、メニューを開き中断の書にセーブをして、電源を切り上着の裏にある胸ポケットに入れた。

 

 ここにも自分のこだわりがあるのだが、まぁばれにくくなるということだ。

 

 そして、俺はいかにもまじめに授業をうけているかのようにノートをとりだした。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 この日のすべての授業が終わり、俺はどの学年の生徒よりも早く学校を後にした。

 

 帰宅後、自分の部屋がある二階へと急いでのぼり、上着を脱ぎベッドに放り投げた。

 

 高校指定の通学カバンから件のソフトの入った携帯ゲーム機を取り出し、折りたたみ式になっている本体をひらいた。

 

 そこから本体側面についているスライド式のスイッチをONの方へと滑らしゲームの起動を待った。

 

 数秒後タイトル画面が表示され『続きから』を選択。

 

 場所は、『サンマロウ』にてクエストを終了したあとからだった。

 

 最終クエストの目的地は『カラコタ橋』という橋に町……というよりか、スラムといったほうが正しいのではというところである。

 

 今回はその橋の下にいる、老人になにか燃えるものを差し出すクエストである。

 

 このクエスト、用は燃えるもの……可燃物ならなんでもいいのだ。

 

 どんなに重要なものでも「本当にいいですか?」という確認のセリフを吐くでもなく火にくべてしまうのだ。

 

 だから、俺はもうすでにアイテムの個数はカンストさせているのでアレを出してしまってもかまわないだろう、だってたくさんあるのだから。

 

 『せかいじゅのは』を。

 

 これは、ダンジョンの攻略が滞っていた際に『あめのしま』に暇つぶしに通い続けていたときに入手したものだ。

 

 そのとき、アイテムの個数もカンストさせたら更にクリアの価値があがるよなぁ、と思って無駄に各地へとアイテムの採取に飛んでいた。

 

 過去を振り返っていると、バンッ!とクエストのクリアを示す、CLEARの文字がクエスト内容にスタンプの様に押された。

 

 すべてのクエストを達成し、称号を期待してゲーム画面を覗いてみたらパソコンがバグった時などにみられるプログラムの羅列が見えたが、俺の意識は遠いていった。

 

 

 

 

 

 

  

 

 




お読みいただきありがとうございます。
感想お待ちしております。
指摘等ありましたら感想のほうによろしくお願いします。

2014/05/31 本文にて転生したらステータスが上がると書いておりましたが、
       自分の勘違いでした。ので、改訂しました。 
       メリー さんありがとうございました。
       

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