俺の凡高での日常   作:ブリザード

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お久しぶりです。
これからタイトル通りるりの実家の話に入るわけですが、原作では3話と長いので3つに分けることにしました。まずは前編です。中、後編はまだ出来てないので、いつになるかわからないですが気長にお待ちください。

あと、新しくDOG DAYSのSSも投稿し始めました。
よろしければどうぞ〜。


番外編6前編 るりのジイサマ

暑い夏の夜。俺は部屋でクーラーをつけながら1人アイスを食いながら、涼んでいた。すると、携帯から着信音が聞こえてくる。携帯には俺の彼女、るりの名前が。

 

「はい、もしもし?」

 

『もしもし、クロ君起きてる?』

 

「おう、起きてるぞ。どうかしたのか?るりから電話なんで珍しい」

 

『えと、その………ちょっとお願いがあるんだけど……』

 

「お願い?明日はるりは実家に帰るんだったよな?」

 

『うん。その事と関係あるの』

 

るりは実家に帰るという事を俺は事前に聞いていた。明日から少し寂しくなるな、と思っていたが、実家に帰る事と関係がある?

 

『その……詳しい事は明日話すから、明日から予定は空いてる?』

 

「明日から?そうだな………予定はないな。大丈夫だぞ?」

 

『じゃあ、明日私と一緒来てくれないかしら?泊りがけで』

 

「え……………………?」

 

明日?るりと一緒に?泊りがけで?るりの実家に?

 

「ちょっと待てるり。いくらなんでもそれは早いだろう。俺たちまだ高校生だぞ?いや、俺の母さんには確かにるりの事を紹介したけど、それは仕方なかったんだし、うん、早いと思うぞ?」

 

『ちがっ!いや、違わないけど……とにかく明日の朝9時にそっち迎えに行くから、よろしく!じゃあ!!』

 

怒られてブチっ、と電話を切られる。いったいなんだった?でも、るりの頼みだから断れないし…………

 

「とりあえず、準備するか」

 

泊りがけの準備をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、クロ君」

 

「お、おう。おはよう」

 

いつも通りのるり。今日は暑いためか麦わら帽子をかぶっている。

 

「じゃあ行きましょ?」

 

「おう。じゃあ母さん、行ってくるな」

 

「行ってらっしゃい黒。母さん応援してるわよ。あなたがるりちゃんの親族にしっかり『この子を愛してます。娘さんを僕に下さい!』っていう姿を」

 

「いわねぇよそんなこと!!」

 

突然のことで俺もるりも顔を真っ赤にしてしまう。でも、いつかそんな事を言う日が来るんだろうな………

笑顔で手を振る母さんには俺も手を振ってるりの隣を歩く。

 

「で、いきなりどうしたんだよ?実家に行くなんて?」

 

「私の実家遠いの。電車で数時間。だから電車で話す事にするわ」

 

「なんだよ、もったいぶらなくてもいいじゃん。俺気になって夜も眠れなかったぞ」

 

これは事実。いきなり恋人の実家に理由もわからないのに来てなんて言われたらそりゃドキドキして寝れなくなる。

 

「そう?じゃあ私が後で膝枕してあげるわ」

 

「え……嘘?」

 

「えぇ、もちろん嘘よ」

 

「ちょっと期待したじゃねえかよ!るりのバカ!!」

 

…………あ、膝枕してもらったことあるんだった。じゃあ別に……いや、でもやっぱりして欲しい。

 

「ほら、早く行くわよ」

 

「はーい……やっぱりして欲しいな」

 

「何か言った?」

 

「いえ、何も」

 

 

 

 

 

 

「実はね、私に曾おじいちゃんが、いるんだけど、もう歳が100歳なの」

 

「100歳!?すごい長生きだな」

 

電車の中で向かい合わせになって座り、なぜ俺が実家に行く羽目になったのか理由を聞く事に。

 

「えぇ。で、昨日私の実家から電話があって、おじいちゃんが死ぬ前に一度娘の彼氏の顔を見てみたいって。見せてくれなかったら、わしの歳の数の分だけ毎日電話するって聞かないらしくて。

 

おじいさんの歳の分………100回か。それを毎日…………

 

「耐えられないな」

 

「おじいちゃんは本当にそういうことしてきそうだから。だから、クロ君の写真を見せたの。それで納得してくれたらいいかな、って思ったから」

 

「写真…………どんな?」

 

「ただのクラス名簿よ。そんな事はどうでもいいの。

そしたら、その電話相手が明日その子を実家に連れてきてって。明日私が実家に帰るんだからちょうどいいだろうって言われて、それで……」

 

「こうなったわけか。納得だ」

 

「ごめんなさいね、迷惑かける羽目になっちゃって」

 

「いや、別にいいぞ。俺も最近お前と遊ぶか部活してるかでしかなかったからな。泊りがけで出かけたかったのもあるしちょうどいいから。それに、相手はるりだし」

 

「そういう恥ずかしい事は言わなくてもいいの」

 

とか言いつつも顔を赤くしているの。それは隠せないみたいだな。でも………泊りがけか。デートはしょっちゅうしてるけど、泊りがけは……

 

「初めてだな。楽しみだ」

 

「田舎だから何もないわよ?」

 

「いいよ。それじゃあ俺はるりの彼氏として、曾おじいさんにちゃんと挨拶させてもらうとするかな」

 

「余計な事は言わないでね?」

 

「りょーかい」

 

そこからは2人で何気ない話をして電車とバスの旅を過ごした。……膝枕はしてもらえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「でも、話聞いてると、るりの実家すごそうだな?」

 

「千棘ちゃんや一条君の家に比べれば全然よ」

 

「へぇ………………いや、どこが?」

 

確かに楽の家とは大きさが違う。それでもでかい。めちゃくちゃでかい。

 

「この辺りが大地主だったらしいから」

 

「……うちの学校、お嬢様多いな」

 

桐崎さん、マリー、るり。凡矢里高校三大お嬢様と名付けよう。うん。すごくいい感じだ。

 

「るりお嬢様〜、お待ちしておりました」

 

「…………親戚?すごく美人な方ですね」

 

「あらやだ。褒めても何も出ませんよ?女中の里中です。どうぞよろしく」

 

「あ、こちらこそよろしくお願いします、神崎黒です」

 

和服を着た女性。楽の家に近い感じなのか。すごく美人で綺麗だ。

 

「…………フンッ!」

 

「痛ぁ!何すんだよ」

 

「……別に」

 

俺が他の女性に色目つかってるから嫉妬したのか。本当にうちの彼女はかわいいな〜。

 

「おっかえり〜〜〜〜〜!!」

 

「げっ!!」

 

「マ〜〜〜イプリチィガ〜〜ル!るうぅぅぅりちゅわ『フン!』げぶぅ!!」

 

いきなり大声で飛びついてきたご老人にるりは思いっきり飛び蹴りを食らわした。

 

「ひどい、こんな幼気が老人に暴力なんて」

 

「幼気な老人は大声で叫びながら飛んでこないわ」

 

ごもっともです。てか、もしかしてこの人が?

 

「ここまで来るの大変だったでしょう?お話は家の中の方でなさいませんか?」

 

「あ、はい。そうさせてもらえると」

 

里中さんの提案で家の中に入って話をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、お見苦しいところ見せて申し訳ない。自己紹介がまだでしたな。わしが宮本るりの曾じいにあたる、宮本武蔵です」

 

「えっ!?」

 

「いきなり嘘つかないで。吉三でしょ、吉三。クロ君も真面目に反応しないで」

 

「あ、びっくりしたよ。本当なのかと」

 

「そちらがるりの彼氏さんか?名前を聞かせてもらっても?」

 

「あ、はい。僕が彼氏の神崎黒です。るりさんにはいつもお世話になってます」

 

俺とるり、そして吉三さんの3人でご飯を食べる事に。

 

「そうですか。最近は体を悪くしてしまって。るりの方に会いに行こうと動けませんので。もういつ死んでもおかしくない。あ、わしおかわり」

 

「はーい」

 

いや、後5年……いや、10年はいけると思います。ってつっこみたい。

 

「るりはどうかね?あんまり迷惑かけてないかのう?」

 

「め、迷惑なんてそんな。るりにはいつも助けてもらってばかりで。自分が中2の時にハブられてる自分を助けてくれたり、高校に入っても助けてもらってばかりで。恩を返そうにも返せきれないくらいで。優しいですし、可愛いですし、頼りになりますし。自分には本当にもったいないくらいで………あ、すいません長々と」

 

「ちょ、クロ君。恥ずかしいから変なこと言うのはやめてよ」

 

「それは良かった。るりは少し気難しいところもある子だからのう。…………それで、もうチューはした?」

 

「そういうこと聞くんじゃない!」

 

………ここで、はい。もうしました、って答えたら俺一体どうなるんだろ。少し試してみたい。

 

「そうかそうか。るりにこんなかっこいい彼氏ができる日が来るなんてのう。わしはもういつ死んでも安心じゃ」

 

「おじいちゃん」

 

「今日は泊まっていくんだろう?ゆっくりして行って下さい」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

3人で話をしながら、るりは時々切れて飛びかかっていたけど、楽しい話をしながら食事をとった。

 

 

 

 

 

 

「しかし、るりのおじいちゃん、本当に元気だな。いつ死んでもおかしくないなんて言ってたけど、全然そんなことなさそうじゃん」

 

「ないのよ、悪いところなんて」

 

「へっ?」

 

「昔から死ぬ死ぬって言って、ワガママし放題なの。おかげで私がどれだけ振り回されてきたから」

 

「でも、それだけるりのことが好きってことなんじゃ?」

 

「どうだか、からかいがいがあるってだけなんじゃない?…………あ、私一度部屋に戻るから、クロ君はあっちの客間で休んでて。後でお風呂案内する時に声かけるから」

 

「りょーかい」

 

るりと別れて客間を目指すことに。にしてもでかい。外観とは違い中に入るとどこにいるのかわからなくなってしまうほどに。

 

「ヘタしたら楽の家と同じくらいなんじゃないのか、ここ?」

 

あっちの客間と言われてそこに歩いていたが案の定迷ってしまった。

 

「どうしよう。とりあえず、適当に歩くか」

 

「神崎さんどうかしたのですか?」

 

適当に歩いて探そうとしたところ、里中さんが声をかけてくれる。

 

「客間ってどっちですかね?」

 

「あぁ、神崎さんが泊まる部屋なら、客間じゃなくて、椿の間です。そこの突き当たりを右に行ったところですよ」

 

「あ、そうなんですか。わかりました。ありがとうございます」

 

椿の間だな。突き当たりを右に……と。

 

「ここか」

 

椿の間って書いてあるしここなんだろう。ドアを開けて入ろうとする。

 

「…………え?」

 

なぜか着替え中で下着姿のるりが。

 

「……………………」

 

無言でドアを閉める。いや、実家だしそういう展開あるかもとかは思ったけど、まさかいきなり!?じゃなかった。

 

「すまん、るり。里中さんに客間の場所聞いたらここだって言われて……それで」

 

「…………怒ってないからいいわよ。それより入って」

 

「あ、あぁ。失礼します」

 

一応一言言ってから部屋に入ることに。そこには服を着て顔を真っ赤にしたるりが。

 

「その、えと、ごめん。わざとじゃない」

 

「いいわよ別に」

 

「お布団お持ちしましたよー。ってどうかなさったんですか?」

 

気まずい空気の中、里中さんが部屋に入ってくる。なぜか布団を持って。

 

「いや、なんでもない。それより、なんでクロ君がここにいるの?里中さん」

 

「あれ?だっておじい様が神崎さんは今日お嬢様の部屋に泊まるように、と」

 

「またあのジジィ!!」

 

「るり、言葉遣い言葉遣い」

 

でも、るりと2人で寝るのか。…………いいなそれ。

 

「俺は別に構いませんよ?るりが嫌じゃなければですけど」

 

「ちょっとクロ君!?」

 

「るりは嫌か?別に変な気起こすわけじゃないし。実家で起こす気もねえよ。俺も多分このままだと客間で1人で寝ることになるから、それは寂しいなって思うんだけど、どう?」

 

「いや、でも……」

 

「大丈夫だよ。るりの嫌がることはしねえから」

 

「…………わかった」

 

「おし。里中さん、布団はこのままでお願いします」

 

「はーい。にしてもお2人は本当に仲がよろしいんですね。安心しました…………お嬢様、神崎さんちょっとよろしいですか?」

 

笑って布団は床に置いた後、すぐに暗そうな顔をしてこっちを向いた里中さん。

 

「実はおじいさまのご容態が本当に良くありません。今日半ば強引に呼んだのもそのためで……今はお嬢様の前では気丈に振舞っておられますが、先生のお話ではもう長くないと……」

 

いきなりのことで俺もるりもすぐに言葉を言うことはできなかった。




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