俺の凡高での日常   作:ブリザード

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なんて題名なんだよ、無理やりにも程がある。
だが仕方ない。思いつかなかったんだ!!
ということで、黒の中学時代の話です。
今回はイチャイチャがないんです、ほとんど。
そして文字数発の一万越えです。パチパチー!!

ではどうぞ。


番外編4 クロクンの昔話

これは俺が中学二年の時。ちょうど俺が凡矢里中学に転校してきた頃の話だ。その時の俺は友だちというのは九州の頃にいたマリーしかおらずそれ以外はただの赤の他人。そんな風に見ていた。あの二人に出会い仲良くなるまでは……

 

 

 

 

 

 

 

 

中学二年の6月頃。俺は凡矢里中学転校してきた。特別友達なんて作る気はなかった。だから、自己紹介も適当にした。

 

「九州の学校から転校して来ました、神崎黒です」

 

「…………そ、それだけ?」

 

「他に何か?」

 

「いや………じゃあ神崎君の席はあそこだ。宮本さん、神崎君にこの学校の事を色々教えてあげて下さい」

 

俺は先生に指示された席に向かう。

 

『なにあれ、感じ悪……』

 

『もっと何か言えないのかよ』

 

周りから野次のようなものが飛んでくる。だが、俺にはそんなのは知った事じゃない。

 

「隣あんたか?」

 

「見たらわかるでしょ。宮本よ」

 

「……神崎だ」

 

「知ってるわ」

 

「あっそ」

 

これが俺と宮本るりの出会いだった。第一印象としてはクールな感じな女の子。あと、すごいちっこい。

 

「それでは、HRを始める。まずは………」

 

HR。そんなものはどうでも良かった。ただ、授業を聞いて、テストを受けて成績を取る。それさえできればなにも問題はない。そう思い俺はクラスを見渡した。特に変わった事はない。ただ、一人の女子を除いて。

 

「こいつ………すごいかわいいな」

 

俺の左斜め前の席にいる女の子。名前も知らないし、どんな性格なのかもしれないが第一印象は可愛いだった。すごいもてそうな気がする。

 

「………以上で、HRを終わる。1限目の用意をするように」

 

先生が出て行くとクラスは席を立ってどこかに行くやつや、みんなで談笑するもの。俺はぼっちだ。だけどどうでもいい。どうせあの事が知れ渡ればみんな俺から離れていく。気にする必要なんてない。そう思っていた。

 

「ね、ねぇ、転校生さん?」

 

オドオドしながら、一人俺に話しかけに来た。誰かと思い顔を上げると俺の斜め前にいるすごく可愛い女の子。さっきは斜めから見てたからわからなかったけど、正面から見ると本当に可愛いのがわかる。少し顔が近かった事から俺の顔は少し顔が赤くなるのが感じた。

 

「わ、私小野寺小咲っていうの。神崎君……だっけ。よろしくね」

 

「あ、あぁ。よろしく」

 

「私の後ろにいるのが宮本るりちゃん。私の一番の友だちなの」

 

「ちょ、小咲。恥ずかしいからやめて」

 

俺には関係ない話を話し出す宮本と小野寺。席を立ってどこかに行こうとしたがもうすぐ授業が始まるためにそれはやめておく事にした。

 

「……神崎君、放課後か昼休み時間あるかしら?」

 

「ん?なんで?」

 

「あなたに学校を案内するように先生に頼まれたからよ」

 

「あぁ………別にいい。勝手に覚えるから」

 

「そう?なら、いいけど」

 

それはただの大きなお世話だ。人の力なんか借りなくても俺は自分で覚える。

 

「え、えっとー……あ、神崎君は何か得意な事はないの?ほら、スポーツとかさ」

 

なんでいちいちそんな事を気にするんだ、小野寺は。そんなの聞いてもどうする事もないだろ。

 

「まぁ、しいていうなら水泳だな。昔から泳ぐのだけは得意だ」

 

「水泳!?水泳だって、るりちゃん。るりちゃんと同じだよ!!」

 

「わかるわよそんなの。私、水泳部なの。あなたも入る?この学校人数少ないから自由に泳げるわよ」

 

水泳か………元々部活はやる気なかったけど、じいちゃんとばあちゃんが心配だから。

 

「まぁ、見学くらいなら」

 

「そう。じゃあ今日の放課後。早速きてちょうだい」

 

こっちの予定は無視なのかよ。まぁ、幸い今日はなんもないから別にいいけど。

 

「わかった。けど、なんも用意ないぞ?」

 

「部室に新品のがあるから大丈夫よ」

 

………こいつ、なんで女子なのに男子の事情を知ってるんだ?

 

「こらー、着席しろ。1限目はじめるぞー」

 

先生が入ってきたのでみんなが席に着席する。1限目は……現国か。だるい。適当に聞き流すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何一限から爆睡してるのよ。あなたいきなり先生に目つけられてたわよ」

 

「俺とした事が聞き流すつもりが寝てしまうとは……」

 

「神崎君……」

 

次こそちゃんと………次は数学か。聞き流そ。中二の数学なんてちょちょいのちょいだ。余裕余裕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた何寝てるの?やる気ないの?」

 

「……くそ、次はもっとうまく寝る努力をしないと」

 

「授業はちゃんと受けないとダメだよ、神崎君」

 

数学の時間、睡魔に襲われ、いつの間にか寝てたようだ。おかげで先生に怒られた。

 

「次はちゃんと受けるか」

 

次は社会だし、その次は理科だ。これなら大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、さっきまでのが嘘のように起きてたわね。どういう事かしら?」

 

「俺は数学は寝てても教科書読めば解けるんだよ。国語も文章読めばできるし。勘違いすんなよ、あれは睡眠学習だ」

 

「どうでもいいわそんな事。それよりあなたどうする?一緒に食べる?」

 

「いや、いい。一人で食う」

 

みんなが机をくっつけて食べる中、俺は一人鞄の中から弁当を取り出した。

 

「神崎君、一緒に」

 

「いいのよ、小咲。無理に誘わなくても」

 

「でも…………わかった」

 

なぜ、小野寺は執拗に俺に構うんだ。別に一人でいいのに。それに比べ宮本はいい奴だ。俺の事をよく理解してくれてる。俺は一人でいいんだよ。マリーが友達でいてくれるなら、それでいい。

弁当の中身を上げると、がんばれ、と白ご飯の上にある海苔で書いてある。ばあちゃんが俺のことを心配して作ってくれたんだろ。……ありがと、ばあちゃん。

 

「いただきます」

 

ばあちゃんの期待に応えたい気持ちもあるが、結局それが不幸になる可能性がある。てか、いずれそうなる。だから俺は友達を作らない。

 

「……ねぇ、神崎君」

 

「ん?」

 

「あなた、最初小咲を見た時、こいつかわいいな、とか思ってたでしょ」

 

「ぶふっ!!!」

 

「えっ!?」

 

お茶を飲んでいた時にそんな発言されたら、誰だって吹いてしまうだろう。俺は案の定、お茶を前方に撒き散らした。

 

「な、何言ってんだよ!!」

 

「最初に席に着いたあと、クラスを一通り見渡したら小咲を見た瞬間あなたの動きが止まったわ。おそらく小咲をかわいいなとか思ったんでしょ?って聞いてるの」

 

「ち、ちげぇよ!」

 

くそ、あの時の事見てたのかよ。最悪だ。

 

「この動揺っぷり。よかったわね小咲」

 

「何が!何がなの、るりちゃん!」

 

くそ、めんどくさくなってきた。今この場から去りたい。誰とも構わず屋上とかで一人のんびりしたい。

 

「わ、私の事なんてどうでもいいの!それより、神崎君はいえどの辺にあるの?」

 

「俺の家?なんで?」

 

「……なんとなく?」

 

よくわからない奴だ。そして、本当にどうでもいい。

 

「どの辺って言われても周りに何もないから説明できない」

 

「そっかー……じゃあ仕方ないよね」

 

そんなこんなでこの日の昼休みは過ぎていった。この日はそのまま授業を受けて放課後になった。

 

「やっと終わった。じゃあ帰るか」

 

「あなた、水泳部の見学くるんじゃなかったかしら?」

 

あ、そういえばそんな事を言ったのを忘れていた。

 

「悪い、忘れてた。じゃあ、さっさと行こうぜ」

 

「あなた…………まぁいいわ。小咲も来る?」

 

「いや、私は今日家の手伝いがあるから帰るよ。ごめんね、るりちゃん」

 

そう言って小野寺は教室を出て行った。て事は、宮本と二人か。会話が弾む気がしないな。まぁ、弾まなくてもいいんだけど。

 

「じゃあ案内するわ。こっちよ」

 

「よろしく」

 

俺も宮本のあとを追って教室をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、泳ぐの本当に速いのね」

 

「なんだよ、嘘だと思ったのか」

 

「いえ………私の想像をはるかに超えていたから」

 

「でも、そういうお前も速いじゃねえか。男子の俺と同等の速さってどういう事だよ」

 

俺は今水泳場で宮本と泳ぐ速さを競い合っていた。俺は水泳には自信があったため負けるわけなんてないと思っていたが、宮本は俺と同じくらいのスピードで泳いでいた。俺が少し速いくらいだ。

 

「私は元々泳ぐのが好きなのよ。要は趣味なの。健康にもいいって聞くしね。それより、入るつもりになった?」

 

「……いやいい。部に入る気は起こらなかったから」

 

「そう?まぁ、入りたくなったらいつでも私に言ってちょうだい」

 

「おう」

 

そんな事は一生ないと思うけどな。

 

「それじゃ俺先に帰るから」

 

「そう。わかったわ。また明日」

 

宮本に一言いい、俺は男子更衣室に入って体を拭き制服へ着替えた。久しぶりに泳いだから気持ちよかったな。そういえば俺が水泳が得意なの気付いたのってマリーのおかげだっけ。…………マリーに会いたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二週間後

 

俺が転校して来て2週間経った。最初の自己紹介がしょうもなかったせいか、教室に入っても誰も俺の事を気にしていなかった。おはようも言って来ない。二人を除いて。

 

「おはよう神崎君」

 

「おはようー。今日は授業寝ちゃダメだよ?」

 

そう、小野寺と宮本だ。転校して来てから一緒にいてくれるのはこの2人だ。なんで俺に絡むのが。他の奴らと同じように俺の事を無視すればいいのに。

 

「……おはよう」

 

「知ってる?今日の1限目体育で水泳をするのよ。男女混合で」

 

「そうなのか?」

 

て事は、転校初日以来になるのか。水泳をするのは。

 

「もしかしたら、あなたの水泳の速さでモテモテになるかもしれないわね」

 

「そんな事あってたまるか。てか、あったら嫌だし」

 

「あら、男子はモテモテになりたいのかと思ったのだけれど」

 

別にそんなつもりはねえ。俺は女の友達なんてマリーがいれば十分だ。

 

「……でもよかった。神崎君、なんか仲良くなれるか心配だったんだけど。喋ってくれる人でよかったよ」

 

小野寺が笑顔でそう言うが、俺は別に喋りたいと思ってるわけじゃない。ただ話すのに付き合ってるだけだ。仲良くしてるつもりもない。

 

「なんて言えないな。言ったらめんどいだろうし」

 

「なんか言ったかしら?」

 

「いや、なんでもない」

 

うん。この2人とは上辺だけの付き合いをしていたらいいだろう。いちいち絡む必要なんてない。

 

「そういえば、聞きたいことがある」

 

「なにかしら?」

 

「なんであいつはあんなに他の奴らからびびられてるんだ?」

 

そう言って俺が指差したのは、二人の男子のうちの一人。一人はクラスの中でもけっこううるさいメガネをかけた男子。もう一人はクラスのみんなにびびられてる男子。俺が指したのはもちろん後者だ。

 

「あー、一条君の事?一条君は実家がヤクザで、組長の息子なのよ。集英組っていう。そのせいでみんなにびびられている」

 

なるほど。て事は少し俺と似てるところがあるのかもしれないな。ハブられてるところだけだけど。

 

「よーし、みんな座れー。今からHRするぞ」

 

先生が入ってきたのでみんな自分の席に座る。

 

「みんなが知ってるように今日は一限目から体育だ。プールだからってはしゃいで怪我しないようにな。それじゃ出席確認をする。安藤……」

 

プール……楽しみだけど、めんどくさいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「ねぇ、神崎君って水泳得意なの?」

 

「なんで速く泳げるの?私、教えてほしい!」

 

「私も私も!夏休み入ったら海とか行くし、それまでに教えてほしいな!」

 

…………なんか宮本の言う通りになった。今まで机の周りに何て誰もいなかったのに、今はどうだろう。水泳の授業を終え昼休みになると、女子が周りにいっぱいいる。

 

「別に普通だ。練習したらみんなあれくらいできるようになる」

 

「えー、無理だよー」

 

「そうそう。神崎君が凄いんだよ!」

 

俺から離れてほしい。むやみに絡まないでほしい。あの事が……あの事件がみんなに知れ渡れば、どうせ、みんな俺から離れるんだ。俺に絡むな。

 

「泳ぎなら俺じゃなくて、俺の隣の宮本に教えてもらえ。俺より泳ぐの早い」

 

そう言って俺は小野寺と弁当を食べてる宮本に指を指す。

 

「確かに、宮本さんもうまいけど、私は神崎君に教えてほしい!男子みんなを楽々抜いちゃう神崎君かっこよかったもん」

 

「私も私も!!」

 

これは何を言っても引き下がらないんじゃないかな。

 

「みんな……神崎君困ってるよ。そのくらいにしたら?」

 

困ってる俺を見て、小野寺が声をかけてくれた。それを見た女子たちは一瞬ムスッとしたが、すぐ笑顔に戻った。

 

「寺ちゃんも泳ぎ苦手なんだから教えてもらえばいいのに」

 

「私はいいよ。るりちゃんに教えてもらう事にする」

 

「………まぁいいけど。じゃあ神崎君。またよろしくね」

 

女子たちは俺から離れて自分の席に戻っていった。

 

「ふー、小野寺、ありがと」

 

「えっ、あ、ううん。気にしなくていいの。神崎君が困ってそうだったから」

 

「それでも助かったよ」

 

俺たちは互いに笑いあった。……あれ?なんで俺小野寺と友達みたいに笑いあってんだ?おれの友達はマリーだけで、他は別に………

 

「どうかしたの?」

 

「……なんでもない」

 

…………なんでだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後。

 

俺の恐れていた事が起きた。プールの件でしばらく俺は女子と喋る機会が多かった。もともと気にしていなかったが、それも終わりになるのだ。

いつものように教室に入る。だが、今日はいつもと違い、俺が教室に入った瞬間、俺の方にみんなが向いた。一瞬ビビったけど、俺は自分の席に座った。

 

「神崎君………」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「黒板……見て」

 

黒板?なんでそんなものを、と思ったが、黒板を見た瞬間理解した。何故みんなが一斉にこっちに向いたのか。何故、こんなに空気が重たいのか。

 

『神崎黒の父親は人殺し!』

 

黒板にでかでかとそう書いてあった。いつかはこうなる事は分かっていた。だが、分かっていてもやっぱり辛い。

 

「……やっぱりか。そうなるんだな」

 

俺は席を立ち黒板の前まで立って、黒板に書いてある文字を全て消した。そして、教卓の前に立つ。

 

「そうだよ。俺の親父は俺が小さい頃に人を殺した。で、どうだ?幻滅したか?引いたか?別に構わねえよ。いつかこうなると分かっていた。だから自己紹介もあんな風にふざけた。人とあまり関わらないようにした。

正直に言う、俺が水泳できたからって絡んできた女子。うざかったよ。俺は仲良くする気なんてないのに、いいように絡んできて。めんどくさかったよ。これを知ったからみんながどうするか知らないが、絡む気がないなら俺に絡まないでくれ」

 

教室がシン、静かになった。俺は自分の席へと戻る。俺の言葉がそこまで聞いたのかわからない。だけど、これで俺に絡むやつはいなくなる。九州にいる頃と同じだ。

 

「……………」

 

なぜか宮本が無言でこっちを睨んできている。

 

「ん?なんかあんのか、宮本」

 

「いえ、別に」

 

「あっそ」

 

それからというもの、こういう話は一瞬で拡散するものであり、俺の親父が人殺しだというのは3日もしないうちに学校中に広まった。おかげで俺は今スーパーぼっちライフを送ってる真っ最中だ。廊下を通る時はみんな俺を見ると避ける。整列する時は俺との間を少し開ける。俺を見るたびに噂話が広がる。そして………

 

「おい、神崎。ちょっと付き合えよ」

 

数人の男子がニヤニヤしながら俺のところまで来た。これも九州にいた頃にあった。

 

「……………」

 

「シカトかよ。おーい、聞こえてるんですかー?」

 

「………成績悪いバカたちに貸す耳なんてありません。どうぞお引き取り下さい」

 

あはははっ、笑っていた男子だったが俺の一言でそれが一転した。どうやら怒らせてしまったようだ。

 

「てめぇ、調子のってんじゃねえぞ」

 

「調子乗ってんのはどっちだ?男子数人で俺の前まで何するつもりだ?……あぁ、そうか。一人じゃ何もできないからって数で俺を圧倒しようってわけだ。集団引き連れて、俺強いアピールか?なるほど、成績悪い上にヘボいわけだ。残念なことですね」

 

うわ、調子乗ってるのって俺じゃん。これ言い過ぎたかも。

売り言葉に買い言葉とはまさにこのことなのだろうか。俺に突っかかっていた男子が拳を振りかぶった。

 

「あんまり人を怒らせるもんじゃねえぞ、神崎!」

 

男子が俺を殴ろうとしてきた。俺は躱す気もなく、それを受けようとした。

 

「ねぇ、隣でうるさいんだけど」

 

が、その拳は途中で止まった。

 

「ん?なんだよ宮本。これは俺らの問題だ。邪魔するな」

 

「聞こえなかったの?読書の邪魔だって言ったの。それにあなた、周りが見えてないの?他のクラスからわんさか人来てるわよ」

 

「なに?」

 

俺を殴ろうとした男子が辺りを見渡すと宮本の言う通り、確かに他のクラスから俺たちの様子を見に来た人でいっぱいになってる。

 

「………ちっ」

 

男子は舌打ちして俺から離れていった。

 

「…………ふぅ」

 

「あなた、なんで男子の喧嘩買ったの?」

 

「……別に。お前には関係ない」

 

「助けてあげたのにそれはないと思うんだけど」

 

「そうだな。じゃあ一応礼は言うよ。ありがと」

 

礼を言うと、宮本ははぁ、とため息をついて再び読書に戻った。てか、こいつは自分の読書のために助けたのか?それとも…………いや、考えるのはやめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なにこれ。俺、小野寺が呼んでたっていうから仕方なく来たんだけど」

 

天気の悪い日。今にも雨が降りそうだ。俺が今いるのは体育館裏。一人の男子が小野寺が呼んでる。大切な用事があるから来て、と伝えてくれって頼まれたらしく、仕方なく来たんだけど………

 

「よう、神崎。この前はどうも」

 

この前絡んできた数人の男子たちがそこで待っていた。

 

「お前なら来ると思ったぜ。なんか知らねえけど、小野寺と宮本とは仲良いもんな、お前」

 

「いや、別に仲良くないし」

 

「でも正直びっくりしたぜ。俺の友達の親父が警察官でよ。神崎の話をしたら、何かその話を出してきてさ。それで知ったんだ。お前の親父は人殺しだって」

 

つまり、クラス内に俺の親父は人殺しだって広めたのはこいつのわけか。てか、なに友達の手柄なのに自分の手柄みたいに自慢してんのこいつ。

 

「俺はお前が気にくわないんだよ。ちょっと水泳ができるからって女子にちやほやされて。さらに、小野寺と宮本と仲良いお前がよ」

 

「だから仲良くねえし。てかそれただの嫉妬じゃねえか」

 

「………さっきからそのスカした態度もムカつくんだよ!!」

 

この前俺を殴ろうとした男子が、俺の胸ぐらを掴み、壁に押し付けてくる。勢いよくいったせいで背中を打ち呼吸が苦しくなった。

 

「転校初日から俺はお前が気に入らなかった。あの時の挨拶もそれからのお前の態度も全て、全て!!」

 

「いや、そんなこと言われても困るんだけど。俺にどうしろと?」

 

「なーに。少し痛い目にあってもらいたいだけだよ」

 

その男子の合図で俺を数人の男子が囲った。……これ九州にいた頃しょっちゅうだったな。結局誰も助けてくれないこの状況。もうなんかめんどくさいわ………殴られてもいいか。

 

「いいよ。殴れよ。それでお前の気がすむならな」

 

「……だから、その態度をやめろって!!」

 

「先生!こっちです!!」

 

殴られると思った瞬間、前と同じように誰かの声が聞こえ、殴ろうとした手が止まった。

 

「先生!はやく!」

 

「ちっ、またかよ!神崎、次覚えてろよ!!」

 

男子たち数人は走って俺から去っていった。その瞬間力が抜け俺は地面に座り込んだ。てか、また殴られなかったな。俺はついてるのか?

って思ったら、ポツポツと雨が降り始めた。その雨は段々強くなり大雨にと変わった。

 

「やっぱりついてないな……」

 

「本当、ついてないみたいね」

 

上から声が聞こえ、顔を上げると、何故か、傘をさした宮本と小野寺が立っていた。

 

「なんで二人がここにいるんだ」

 

「たまたまよ」

 

「………たまたまで体育館裏に来るやつがいてたまるかよ」

 

そういえば、さっき聞こえた声も女の声だったな。おそらく、小野寺がこの状況を見てとっさに呼んだんだろう。いもしないはずの先生を。

 

「で、俺に何の用だ?用がないなら帰って欲しいんだけど」

 

「……そうするつもりだったんだけど、今のあなたを見てるとそうもいられなくなったわ」

 

「神崎君、はやく体拭かないと風邪ひいちゃうよ。その前にこれ以上濡らさないように傘を……」

 

小野寺は持っていたカバンから折りたたみ傘を取り出した。だけど、そんな事はどうでもいい。

 

「………なんでお前らは必要以上に俺に構うんだ?」

 

「え?」

 

「俺は殺人者の息子だぞ!怖くねえのかよ!俺が何かするかもとか思わねえのかよ!!」

 

「……………神崎君」

 

「最初からそうだった。お前らは俺に絡んできて。俺は別にどうでも良かったのに!俺はこの学校で友達なんて作る気はなかった。いや、友達なんていらない。どうせ、親父の事を知ればみんな俺から離れていくから!!今回も案の定そうだったよ。水泳ができるからって絡んできた女子はみんな俺から離れた!男子たちは怒りをぶつけるように、からかうように俺に突っかかるようになった。俺はそれでも構わなかった!そんなのは向こうの中学で慣れてたから!でも、どうして。どうしてお前らは俺を二回も助けた!なんでお前らは俺と普通に話そうとする。そんなのはいらないのになんで…………なんでだよ!」

 

溜まっていたものを吐き出すかのように俺は宮本と小野寺に怒りをぶつけていた。二人は悪くない。むしろ、俺を助けてくれたのに。

 

「もう俺に構わないでくれ………俺のせいでお前らにも何かあるかもしれない。だから…………」

 

「………………はぁ」

 

俺が言いたい事を全て言うと、何故か宮本がため息をついた。

 

「言いたいことはそれだけかしら?」

 

「えっ?」

 

俺にとっては予想外の返答だった。俺が驚いたのをほっといて宮本は話を続ける。

 

「あなたの気持ちは置いとくとして。あなたのお父さんは確かに人を殺した。それは私も自分で調べてそれを知ったわ。だから、あなたが今そういうことも言いたくなるのもなんとなくわかるわ。けど、一つ言わせて。

あなたは何をしたの?」

 

「つっ!」

 

「人を殺した?暴力をした?何か嫌われるような事をしたかしら?私はあなたが何もしてないと思うのだけど。まぁ、教卓で言ったことは多少怒らせる事だったかもしれないけど、あんな事されれば当然よね。けど、殺人者の息子だからってあなたは何も悪い事をしてないじゃない」

 

「そ、そうだよ。神崎君はただの被害者であって何も悪い事してないよ。なのに、男子がみんな………」

 

この二人は一体何を言ってるんだろう。俺が殺人者の息子。そんなのは全く関係ない。そう言ってるのか?

 

「それにあなたはこの前もさっきも。散々ひどい事を言った男子を殴ろうとしなかった。ただ、言葉で言い返すだけ。流石にこの前のは言いすぎだと思ったわ。でも、暴力をしないという事はあなたが優しい男だって事よ」

 

「な、何言ってんだよ。俺は」

 

「それにあなた。小テストとかいつも満点取ってるでしょ。あれだけテストで寝てるくせに。つまり、家で結構勉強してる真面目タイプ。違うかしら?」

 

あってる。てか、宮本のやつそこまで俺の事を観察してたのか!?恥ずかしいんだけど。

 

「そしてもう一つ。あなた友達なんかいらないとか言ったけど、あなたがそう言ってる時、とても辛そうな顔してたわよ。ねぇ、小咲?」

 

「うん。なんかその言葉を言うのが辛そうに見えて、こっちまで悲しくなっちゃうような」

 

「ち、違う!俺は友達なんかいらない!」

 

「それはあなたと友達になった子が離れていくからでしょ?」

 

「そ、それは………」

 

「あなたの本音は友達を欲してる。私はそう思うけど」

 

全て当たってる。まるで宮本に俺の心を見透かされてるような気分だ。最悪だよ…………

 

「………………そうだよ。俺は確かに一人は嫌いだよ。一人でいると親父の事とか、病気になった母さんの事を思い出すから。だけど、俺と友達になったやつはみんな俺から離れた。俺の友達やめて、いじめてきたやつもいたよ!そうなるなら、友達なんていらない!俺は友達を作らないし、誘われても断る!そうしてきたんだ!友達作っても作らなくても結果は同じ!事件の事を知れば俺から離れる!同じなんだよ!!!」

 

全てを見透かされて逃げ道がなくなった俺はまた二人にぶつけるように正直に吐いた。

 

「正直、二人はすごくいい奴だよ。友達になったら楽しいと思う。でも、俺と友達になれば他の奴らがお前らにちょっかい出すかもしれない。そうはしたくない。だから、俺はお前らとは友達にならない」

 

俺はきっぱり言い切った。これでいいんだ。二人とは友達にならない。それがいいに決まってる。

 

「…………何言ってるの?」

 

「……はい?」

 

「友達にならない?なんでそんなのあなたに決められないとならないのよ」

 

「な……何言ってんだよ。今の話聞いてたのか?」

 

「ええ。聞いたわ」

 

「だったら!」

 

「私と小咲はあなたと友達になりたいからここに来たんだけど」

 

「…………え?」

 

「ねぇ、小咲」

 

「うん。私、神崎君の友達になりたい!るりちゃんが男の人とあんなに話すの初めて見たし、私ももっと神崎君とお話ししたいもん!」

 

小野寺がニコッ、笑って俺に手を差し伸べて言った。

 

「私はあなたのその真面目なとことか優しいところとか結構好きよ。

周りの事なんか気にしなくてもいい。そんなに不安なら私があなたの友達になって、あなたのそばにいてあげるわよ」

 

宮本は俺の前にしゃがみ、小野寺の手に重なるように手を差し伸べて言った。

………何言ってるんだこいつらは。今日何回こう思ったか。いじめられてた俺を助けてきたり、俺の心をすべて見透かしたり、俺の友達になるとか言ったり…………本当に

 

「お前ら、意味わかんねえ。本当に意味……わかん…ねえよ」

 

俺はその言葉に感動して涙を流しながら宮本と小野寺の手を取った。降っていた雨がいつの間にか止んでいた事にその時気づいた。

 

「じゃあ改めて。私は小野寺小咲。るりちゃんの大親友です!」

 

「宮本るりよ。よろしくね」

 

二人は笑って自己紹介する。俺も涙を拭って、笑顔で言った。

 

「神崎黒だ。クロって呼んでくれな」

 

………母さん、マリー、ばあちゃんにじいちゃん。俺、友達ができたよ。男じゃないけど、この先すごく楽しみだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそー……なんでいつもあんな邪魔はいるんだよ」

 

「なぁ、もうやめようぜ。俺別にあいつに恨みねえんだけど」

 

「うっせぇ!いいから次の手を」

 

「なぁ、お前ら」

 

「あん?なんだよ………ってお前!」

 

「そろそろやめねえと、神崎かわいそうだろ」

 

「うるさい!お前も口出しすんのかよ!!」

 

「ったく、めんどくさ『坊っちゃーーん!!遅いから迎えに来ましたぜー!って何だこいつらは』なんでこんな時にお前は来るんだよ!」

 

「坊ちゃんになんかあったら、お前らは…………ただですまさんからのう?」

 

「「「す、スンマセンでしたー!!!」」」

 

「あ、おい!……まぁいいか。帰るぞ、竜」

 

「ヘイ、坊ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからというもの、何故か俺へのいじりが一瞬でなくなり、それからは宮本と小野寺と楽しく学校生活を送り始めた。入ろうと思わなかった水泳部に入り、宮本とともに男女で一緒に大会で優勝したり。花火大会やクリスマスや初詣に行ったりして楽しんだ。その時の宮本の格好にドキッ、としたのは言うまでもない。

文化祭の時に、俺の中で少し噂になった一条楽とその友達、舞妓集と仲良くなり、二人ともつるむようになった。でも、基本は宮本と小野寺と一緒にいる生活だった。

 

それから月日は流れて高校二年。今では、友達になろうと言ってくれたるりが俺の彼女となり、一緒にいる。小咲もいるし、マリーもいる。楽も集も城野崎も鶫も桐崎さんも一緒ですごく楽しい日々を送れてる。本当にあの時のるりの言葉がなければきっと俺は………

 

「クロ君、どうかしたの?」

 

「………いや、俺はやっぱりあの時からるりの事が好きになったんだなって思ってさ」

 

「いきなり何言ってるのよ!!」

 

顔を赤くしながら俺の鳩尾めがけてるりの拳が飛んできた。が、それは途中で失速した。俺の腹にあたる頃には拳が軽くあたる程度だった。

 

「るり?」

 

「………私だって……」

 

「なんて?」

 

「なんでもないわよ!!」

 

「ぐほっ!」

 

結局、俺の鳩尾にるりの拳がめり込んだ。

 

「痛え………」

 

「変な事言った罰よ。早くいきましょ、アイス食べたいわ」

 

「はいはい、了解ですよお姫様」

 

今なら言えるだろう。俺の彼女は色々な意味で最強だ。俺は今、最高の人生を送れていると。

 




どうでしたか?
これはまだ未定で原作の進み具合で決まるんですが
もしかしたら、次で本当の最後になるかもです。
多分その最後はわかると思うんですよ、るりちゃんメインの話なんで。
けれど、原作でるりちゃんメインの話が出ればまた書くかも。
次の更新はいつかわかりませんが次回もお楽しみに!

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