俺の凡高での日常   作:ブリザード

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第34話 劇のホンバン。そして……

「お、始まった始まった。凄いな桐崎さん。あんだけしか時間なかったのによくあんなにすらすら台詞を言えるもんだ」

 

少ししか時間がなかったのに桐崎さんは台詞を覚えて見事にジュリエットを演じている。

 

「……あれ?次の台詞なんだっけ、ロミオ様?」

 

観客が全員ずっこけた。さすがに全ての台詞は覚えられなかったみたいだ。

 

「……おいコラ、ジュリエット!その台詞は大事なところだろうが!」

 

「しょうがないでしょ!出たしっからこんなまどろっこしい台詞を覚えられないわよ!」

 

「台詞にケチ付けんな!」

 

グダグダだ。こんな様子じゃ観客の様子なんて全然ダメだろうな。

 

『なにこれ、ギャグなのかな?』

 

『おもしろいねー』

 

…………以外に受けは良かったようだ。

 

「よ、よ〜〜〜しジュリエット。緊張してるのはわかるからとりあえず一から仕切り直しだ!」

 

「もっ、もちろん!バッチこいよ!」

 

「ジュリエットはそんな事言わねえよ!」

 

なんだ、このロミオとジュリエット。これじゃあロミオとジュリエットっていう題名のただの漫才じゃねえか。……まぁ、観客の受けはいいからいいと思うけど。

 

『屋敷から抜け出そうとするロミオ。召使いの制止を聞かず、ジュリエットの元へ行こうとします』

 

「本当に行ってしまうのですか?キャピュレット家の者があなたの命を狙っています」

 

「例えどれほど危険でも私は行かなければならないのだ。今も彼女はあのバルコニーで私も待っている」

 

『止まらないロミオ。しかしここで召使いはある決意をするのです』

 

ん?と動きを止める楽と召使いの鶫。オリジナル設定か?

 

『実はこの召使いはロミオに恋をしていたのです』

 

「はぁ!?」

 

『召使いはこれが今生の別れとなると思いロミオに告白するのであった笑』

 

あ、笑い声が聞こえる。集のやつ本気で面白がってやってるな。

 

「あ、あの……ロミオ様。私はロミオ様の事が…………好………………って言えるかバカ者ーー!!!」

 

『おぉっと、この召使い。存外恥ずかしがり屋だったようです。告白失敗です!!』

 

鶫が文句を言いながらもこっちに戻ってきた。何だ、これは。

 

「お待ちください!」

 

「……ん?」

 

今度、突然現れたのは顔を真っ赤にしたマリー。あれ?マリーって風邪で休みじゃなかったっけ?

 

「私の名は……ジョセフィーヌ。私はロミオ様の…………本当の恋人ですわ!!」

 

『なんと〜、ここでまさかのロミオ二股疑惑!なんということでしょう。これが事実なら純愛どころではありません。女の敵です!』

 

「えぇっと、ジョセフィーヌ。君は何か誤解をしているようだ」

 

「まぁ!まさか忘れたとおっしゃるので?私にあんな事までして……結婚の約束までしましたのに!」

 

『2人の中は思ったより進んでいたようだ!』

 

なんか楽しそうだな。俺も出てみたいなぁ…………って、

 

「城野崎?なんで俺の背中を押している?」

 

「どうせこれが最後の大イベントだ。お前も舞台に出て行ってこい!」

 

城野崎は笑って俺の背中を押してきた。そのせいで俺まで舞台に出ることになってしまった。突然の事に観客もマリーも楽も驚いている。……こうならやけだ!!

 

「私の名前はマルゴリッヒ。私はマリー…………じゃなかった。ジョセフィーヌの恋人だ!」

 

『おぉっと、突然出てきたマルゴリッヒ!ジョセフィーヌの恋人発言だー!!』

 

「私の愛する恋人を奪うなど言語道断!まして愛する女性がいるというのに…………どういう事か説明してもらうぞ、ロミオ!!」

 

『ロミオ、愛する女性がいるというのにマルゴリッヒの恋人を奪うという行為にまで行こうとしていた。最低です。人間のクズです!!』

 

すまん楽…………でも、こんな感じでいいのだろうか?

 

「何を言ってるいるのだ、ジョセフィーヌ。君は昔からそう言って僕を困らせる。結婚なんて出来るわけないだろ?だって、僕らは……血の繋がった兄妹なのだから!!」

 

『なんと衝撃の事実!2人は兄妹だったー!!』

 

「そういう事だ、マルゴリッヒ。君の彼女は僕とは結婚できない。だから、君がもらってくれ」

 

くっ、咄嗟にそんな設定が思いつくとは楽も中々やるな。

 

「…………私はマルゴリッヒ様の事も大好きです。しかし、ロミオ様の事は本気で愛しています。愛する心にそんなものは関係ありません。ロミオ様、結婚しましょう!!」

 

『ジョセフィーヌ止まらない!!兄を健気に思うジョセフィーヌ。ロミオは。そして、マルゴリッヒはどうするのか!!』

 

マリーも楽も止まらないな。どうしたらいいんだろう。

 

「………わかってくれ、ジョセフィーヌ。僕が進む道は両家を巻き込む血塗られた道だ。そんな道に体の弱い可愛い妹を巻き込みたくないんだ。だから、君はマルゴリッヒと幸せな家庭を築いていってくれ」

 

楽がマリーの両手を握ってそう言った。すると、マリーは目をハートにさせてそのまま倒れてしまった。

 

「そういう事だ。後は頼んだぞ、マルゴリッヒ」

 

「…………君がジョセフィーヌを奪おうとしたのには変わらない。後でしっかり罰を受けてもらうからな。それまで死ぬんじゃないぞ」

 

俺はマリーをお姫様だっこをしてそのまま舞台裏へと歩いて行った。

 

「お疲れクロ」

 

「お疲れ様クロ君」

 

「なんかすごかったね、クロ君も橘さんも」

 

戻ってきた俺に城野崎、小咲、中村の3人が俺に声をかけてきた。

 

「おう。城野崎、後で覚えてろよ」

 

「何のことかわからないな。それより、先に橘さんを保健室に連れて行ってあげるべきじゃないのか?」

 

マリーも見ると、顔を真っ赤にしてしんどそうにしているがとても幸せそうな顔をしている。楽に言われた一言がそんなに聞いたのだろうか。

 

「それもそうだな。じゃあ、俺は保健室行ってくるから。あとはよろしく」

 

「おう。しっかり決めてこいよ」

 

「クロ君、頑張ってね」

 

どうやら城野崎と小咲には俺が保健室に行った後、何をしようとしているのかがわかってるようだ。

 

「おう。2人とも、サンキューな」

 

マリーを抱っこしたまま俺は保健室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす。って、誰もいないのか?」

 

俺は誰もいない保健室に入り、マリーをベットに寝かせる。

 

「…………マリーも色々ありがとう。俺行ってくるから」

 

「………………がんばってください、クロ様」

 

「起きてたのかよ。本田さんはちゃんと呼んだから後できっと来てくれるからな」

 

「わかりました。ありがとうございました、クロ様」

 

「うん。それじゃあ!」

 

俺は保健室を出て走り出した。るりを探すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた。なんで私があんな目に遭わないといけないのよ。何かやけ食いしてやろうかしら。これも全部クロ君のせいだわ」

 

「俺のせいなのかよ。呼び出したのは先生なんだぞ」

 

「うわっ!!」

 

るりの後ろからいきなり声をかけたせいでるりはびっくりして後ずさる。そして、いつものように俺を睨んでくる。こんなやり取りはもう何回目だろうか。

 

「どうしたの?もう先生の用は終わったのかしら、マルゴリッヒさん」

 

「聞いてたのかよ。…………そうか、放送で全部流れてたからな」

 

「えぇ。あなたが橘さんをそういう風な目で見てることもしっかりね」

 

「待て誤解だ。あれは劇に合わせてそう言っただけだ」

 

「さぁ、それはどうかしら?」

 

いつものように俺をからかってくる。こんなやり取りをしたのももう何回目かわからない。るりと出会って楽しい事も苦しい事もいっぱいあった。だから、そんな体験をさせてくれたるりにちゃんと気持ちを伝えないとな。

 

「るり、今から暇か?」

 

「この通り、1人でやってた宣伝の仕事も変わってもらったから今は1人ですごく暇よ」

 

「そうか。じゃあさ…………俺と文化祭まわらないか?」

 

「…………1人で仕事をさせた罰よ。何か奢りなさいよ」

 

「……了解しましたよ、お姫様」

 

そう言って俺とるりは歩き出した。

 




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