では、どうぞ〜
「最近のクロ君、絶対何か隠してるわ。それも多分とても大切な事を」
私は劇の練習のある小咲を無理矢理連れ出して2人でクロ君の家に向かっている。
「う、うん。それはなんか見ててわかる。けど、私達がそれを直接聞きに行っても…………」
「わかってるわ。小咲を巻き込んだ事も自分勝手な事も」
「だったら、なおさら……」
「…………ただ、黙ってるだけの自分なんて嫌なの。それに…………」
「それに?」
「親友を……………私の好きな人を助けてあげられないのは自分として許せない。それが例え間違っていたとしても。自分がそれで傷ついたとしても」
小咲の前だから私の気持ちを正直に告白した。はっきりと。すると、小咲は驚いた顔をして私を見ていた。
「るりちゃんがやっとクロ君の事を好きって認めた。私夢でも見てるのかな?夢なら覚まして欲しい」
「じゃあ、覚まさせてあげるわ」
私は歩いている足を止めて、小咲の方を向いて、頬をギュッと引っ張った。
「ほら、夢ですか?これは夢ですか?」
「いふぁい、いふぁい。いふぁいからこれはゆめじゃありまふぇん」
小咲の引っ張っていた頬を離す。引っ張ったせいで小咲の頬は真っ赤になっていた。
「もう、酷いよるりちゃん!何もここまでしなくても」
「あんたが変なこと言うのが悪いのよ!私は正直に言ったのに」
「…………あのー」
小咲と言い合いをしているといきなり声をかけられそっちの方へ向く。そこには女性が立っていた。でも、この人どこかで見たことあるような…………
「ごめんなさい。さっきの話が聞こえていたから声をかけちゃって。一つ聞いてもいいかしら?」
「なんですか?」
…………ちょっと待って。さっきの話を聞いてたって。じゃあ、私の好きな人がこんな誰かもわからない人に聞かれたってこと!?
「その、さっきから時々名前が出てくるクロって…………神崎黒の事?」
「つっ………………なんでそれを?」
「あ、やっぱりそうだったの。じゃあ自己紹介しないとね」
自己紹介?一体何のことかしら?
「私、神崎黒の母の神崎翠と言います。クロがいつもお世話になっております」
え、今なんて?母?この人がクロ君のお母さん?
「となると、あなた達は…………小咲さんとるりさんね。クロが最近帰ってくるといつもあなた達の事を話してるわ。特に、るりさんの事を」
「クロ君、怒るわよ。そんなに人のこと話さないでよ。しかも特に私の事って何!恥ずかしいじゃない!」
今ここにはいないクロ君を怒る。でも、そんな事をしても意味があるわけがないわね。
「でも、どうして…………クロ君のお母さんは別々に暮らしてるって」
「翠でいいわよ。立ち話もなんだしとりあえず家にいらっしゃい。お茶くらいは出しますから」
そう言ってもらったので、私達はクロ君の家に向かった。
「それで今日はどんな用で来たのかしら?あ、これお茶ね。あと、お菓子も」
「「ありがとうございます」」
クロ君の家に上がり、私と小咲が隣同士。翠さんが私達と向かうように座る。…………このお茶菓子、とても美味しそう。
「色々聞きたい事はあるんですけど、今一番聞きたい事は、最近学校でのクロ君の様子がおかしいんです?」
私が聞きたい事を小咲が代わりに聞いてくれた。…………このお茶菓子、本当に美味しわね。
「クロの様子がおかしい?」
「はい。なんかいつもと違って少し避けられてるというか。今までお弁当食べるのも一緒だったのに最近は1人で食べるとか言ってて。うまく説明できないけど、クロ君何かおかしいんです」
「小咲、クロ君何かおかしいは親の前で言うことじゃないわよ」
「はわっ!そ、そういうつもりで言ったわけじゃないよう!!」
クロ君何かおかしいって、クロ君が変な人って言ってるみたいじゃない。
「……………そう。クロの様子がおかしいの。あの子そういう事は顔にあまり出さない子なのに。2人に話すのはそんなに苦しいのかしら」
「やっぱり、何か知ってるんですか?」
「もし、知ってるなら教えてください」
私と小咲2人で翠さんにお願いする。
「…………わかったわ。わざわざ来てくれたんだもの。2人には話すわ。ただし、これを聞いてクロを嫌いにならないでね」
「「わかりました」」
「じゃあ、話すわ」
それから私達は翠さんの話に驚きながらもしっかり聞いた。翠さんがクロ君のお父さんの事件のショックとそこから、クロ君を中学まで1人で支えてきて過労になって倒れた事。医者にしばらく無理はしないほうがいいと言われ2人で別々に暮らし始めた事。そして、今年になってやっと身体や生活が落ち着いて来たため、もう一度クロ君と暮らさないかと提案するためこっちに来た事。
「…………ということなの。あの子も何か考えがあってのことだと思うの。言わなかった事はあまり責めないであげてね」
私達はその話を聞いて何も言えなかった。小咲も私もただ驚いているだけだった。
「にしても、クロったらこんな可愛い子2人を悲しませちゃって。しかも、1人はクロの事を好きだって言ってくれてるのに」
「なっ!?」
「まぁ、その原因を作ったのは私なんどけどね」
やっぱりあの話聞かれてたんだ……しかも、知らない人じゃなくてクロ君のお母さんに。
「あ、大丈夫よ。別にクロに言いふらしたりはしないから。むしろ、あなたの恋を応援するわ。頑張ってね!」
「…………ありがとうございます」
応援してもらえるのはありがたいけどもしクロ君が九州に行くって言ったら、うまく付き合えたとしても意味ないんじゃ………………
「……って、私何考えるのよ!」
「るりちゃん!?」
いきなり声をあげた私にびっくりする小咲。
「…………そろそろクロが帰ってくる時間だわ。2人はもう帰った方がいいんじゃないの?クロを呼ばずにうちに来たのは理由があるんでしょ?」
「あ、そうですね!るりちゃん、行こっ!!」
「え、えぇ。ありがとうございました」
「いえいえ、また来てね」
私達はクロ君と会うわけには行かないので急いでクロ君の家を出た。そして、私の家くらいまで来ると歩いていた足を止めた。
「………………ねぇ、るりちゃん。クロ君の事どうするの?」
「どうするって言われても……引っ越す引っ越さないを決めるのはクロ君だわ。それを私達が口出しする権利はないわよ」
「でも、このままじゃとクロ君と別れちゃう事に。私、そんなの嫌だよ。まぁ、引っ越ししない可能性もあるけど…………」
「そんなの私も嫌に決まってるわよ。でも、どうしようもないじゃない。確かに、クロ君が引っ越さないっていうならそれが私達にとっては一番いいわよ。だけど、私達から『引っ越ししないで』とか言ってもクロ君のためにはまったくならないわ。だから、私達には何もできない。
そう言うと、小咲は黙り込んだ。私もそれ以上の事は何も思い浮かばなかった。
「………………もし、クロ君が引っ越しすることを決めたなら私はクロ君に告白をしないし、向こうから例えされたとしても付き合わないわ」
「えっ………………ど、どうして!!?」
「そんなの後が辛いからに決まってるじゃない。私はそれに耐えられる気がしないからよ」
「…………けど、いいの?そんな嫌な別れ方になったとしても」
「別に。後から辛くなるくらいなら私はそうした方がマシだわ。引っ越しするならどっちにしろ辛いんだから。………………それじゃ」
私はそう言って家の中に入った。
「クロ君、このまま別れるなんて絶対に嫌よ」
そう言うと、小咲の前では抑えていた感情が一気に溢れ出して来て自分ではもうどうしたらいいかわからなくなった。
そして私達は文化祭本番を迎える事になった。
どうでしたか?
るりちゃんと小咲の中ではクロが完全に引っ越しするみたいになってますけど
そんな事は全くないですからね。最終的に決めるのはクロです!
あと、クロのお母さんが悪役みたいな気がするのは気のせいでしょうか?www
感想と訂正があればお待ちしております