楽が殴られて、しばらくして起き上がるとHRは終了した。そして、楽は自席についた途端、いきなり桐崎さんに引っ張られて廊下に出て行った。
「………楽も大変だな」
「そうね。まぁ、私には関係ない事なんだけどね」
「でも、凄いよね。ある意味一条君って」
「確かにな。でも、それがあいつのスキルなんだろ」
俺達は一条が連れて行かれて出て行った扉を見つめながら言う。
ちなみに休み時間はたいてい俺達3人でひと時を過ごしている。宮本はどうか知らないけど、小野寺はクラスの中でもだいぶ人気が高い。そのため、俺と小野寺が仲良く喋ってるのを妬んだり、羨ましがったりする奴がいる。まぁ、そいつらを見つめたらすぐに逃げられたりするんだが。
「あ、戻ってきた。2人一緒に戻って来るってやっぱりあいつら仲いいんじゃねえのか?」
「仲がいい……」
2人が戻ってきたのを見て小野寺が羨ましそうな顔をしている。ちょっとからかってやろう。
「どうしたんだ、小野寺?まるで『私も一条君と一緒にいたいな。いいなー桐崎さん』みたいな顔をしやがって」
「どんな顔なのそれ!!てか、心読まないでよ!」
小野寺が顔を真っ赤にして俺に怒る。やっぱり、小野寺は面白えな。
「ははっ、ごめんごめん。あんまりにもわかりやすい顔してたから」
「もう……からかうのもほどほどにしてよ」
「でも、一緒にいたいのは確かだろ?」
「うっ………そうです」
何か反論しようとしたのか。でも、思いつかず結局本音を喋った。
「小咲。そう思うのならもっと自分からアプローチしなさいよ」
「……そう言われても何したらいいのかわからないよ」
「仕方ないわね……」
宮本が俺にアイコンタクトを送ってくる。それに俺は頷いて返事した。
「おーい!らk『わぁ!!別に今はいいから!!』何だよ、折角小野寺のためだと思ったのに」
楽を呼ぼうとした俺を小野寺が身を乗り出して遮る。楽がこっちを見てクエスチョンマークを浮かべてる。
「あ、キョーコ先生がきた」
先生が来たのでみんながぞろぞろと座っていった。
「キョーコ先生。これはどういうことですか?」
楽がキョーコ先生に言う。
「うん?いやー、お前らが廊下で仲良く話してるのをみたからな。それに桐崎だって日本に来て全然慣れてないんだからと思ってさ。まぁ、何だ。先生の優しさってやつ」
「抗議する!断固抗議する!!」
「ダメだ。じゃあ、頼んだからな一条」
楽と桐崎さんが抗議している理由。それは、楽と桐崎さんだけを席替えして隣同士にしたことである。
結局、先生には逆らえず2人は隣同士になった。
そのまま時は流れて昼休みに……
「やっと、昼休みだ……授業疲れた」
「本当だよね。私も何か疲れちゃったよ」
「小咲はずっと羨ましそうに一条君を見てたもんね」
「るりちゃん!?」
見てたの!という感じでばっとこっちに振り向く。
「そりゃ、もうわかりやすそうに……ねぇ?」
「あぁ。これ以上にないくらいに乙女な顔をしてたぞ」
「うぅ、恥ずかしい……」
手に顔をやり、顔を真っ赤にする小野寺。そんな小野寺を見た後、俺は鞄の中を探り財布を取り出そうとした。
「あ!………しまったな財布も家に忘れたまった。…しゃあねえか。腹が減るけど今日は何も食わずに乗り切るか」
「クロ君。お弁当忘れたの?」
「あぁ。だから購買で何か買おうと思ったのに、財布まで忘れちまった」
はぁ、と溜息をついて机に突っ伏す。
「………クロ君。これあげるわ」
宮本が机に出した4つのパンのうちの2つを俺の机に置いてくれる。
「いいのか?これお前のお金で買ったんだろ?」
「いいわよ、別に。隣でお腹の音をぎゅるぎゅる鳴らされるよりいいもの」
「いや、でも『何?私のパンが食べられないの?』はい。何でも、ありません」
宮本に睨まれた俺はすぐにパンの封を開けてそれを食べる。……うん。美味しいジャムパンだ。
「サンキューな、宮本。このお礼は必ずするから」
「じゃあ、ハーゲンダッツのアイス2個ね」
「了解。また、遊びにいったりした時にちゃんと奢るよ。いつならあいてる?」
「次の日曜ならあいてるわよ。小咲もどう?」
「うーん……2人の中に行ってもいいなら別にいいかな?」
「小野寺、それって『小咲、それはどういうこと!!』はやっ!」
宮本が小野寺の胸倉を掴んでブンブンと揺らす。
「だ、だってるりちゃんにハーゲンダッツを奢るために行くのに、そこに私が入ったら……」
「そんなの私達が気にするわけないでしょ!」
(流石に宮本と2人なら俺は緊張するけどな)
「じゃ、じゃあ私も行くよ」
ブンブンと揺らされた小野寺はすごく疲れていた。
「おう。……結局遊ぶ時はこの3人なんだな」
「別にいいじゃない。ここに一条君がはいってみなさいよ。小咲が大変な事になるわよ」
「確かに」
「うぅ………」
小野寺は顔を赤くして俯く。
「あーーーーーーー!!!」
いきなり1人の男子の叫び声がクラス中に響き渡った。
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