るりside
はぁ、私何してるんだろ……クロ君に手を出すなんて最低ね。
「るりちゃん、ちょっと待ってよ!!」
「………あ、ごめん小咲。歩くの速くて」
「うん、それはいいんだけど……大丈夫?さっきのるりちゃん凄く怖かったよ」
「えぇ、大丈夫よ。迷惑かけてごめんね」
そう言って私達はまた歩き出す。今度は小咲にあわして。
「ねぇ、るりちゃん。クロ君は何のようもなく女の子をキョーコ先生をストーキングしたり、着替え見たりしないと思うんだ。だから、一度話しあってみようよ」
そんなの私だってわかってる。中2からの付き合いだし、部活も一緒。そんなに一緒にいたらクロ君がそんな事をするわけないって事は十分わかってる。でも…………
「何かクロ君がキョーコ先生と一緒にいたと思うと、腹が立って。なんでかな。小咲なら全然腹が立たないのに………」
(それってただの嫉妬なんじゃ……でもこれ言った方がいいのかな?)
「小咲はどう思う?」
「えっ!?そうだな………やっぱり友達だから余計腹が立ったんじゃないかな?」
「ふーん……やっぱりそうなのよね」
私がクロ君に嫉妬なんかするわけなんかないんだし、きっとそうよね。
「で、るりちゃんはどうしたいの?このままじゃクロ君と喋ることなんか出来ないと思うよ」
確かに、このままクロ君と喋らなかったら色々困る。部活でもそうだけど、やっぱり仲良くしていたいし。
「………私が一方的に悪いみたいになってるけど、よく考えたらクロ君も少しは悪いことあると思うんだけど」
「…………それはそうかもしれないね」
「だから、頑張ってクロ君と話し合って見る。今日何があったのかを」
「うん。それがいいと思うよ!私も協力するから一緒に頑張ろう!!」
「…………ありがとう、小咲」
明日から頑張らないと。
るりside out
昼休み
「いっつも思うけど楽の弁当って凄い健康的だよな」
「舞子の言う通りだな。これってお前のお母さんの手作りか?」
「いや、俺の手作りだけど」
「マジかよ!この年で手作りとか……流石は一条だな。クロはどう思う?」
「………………」
「おーい、クロー?」
「へっ!?何だ、昼休みか!!?」
「いや、もう昼休みだぞ」
「おい、クロ。最近ちょっと調子おかしいけど大丈夫か?」
「あ、あぁ。大丈夫だから心配すんな」
あれから三日たったが、俺はまだ宮本にビンタされた事が立ち直れないままでいた。学校に来たら、実はそんな事がありませんでした。みたいな事を期待したけど、そんなのはなかった。いつもなら小野寺と宮本と飯を食ってる筈なのに最近は楽、集、城野崎の3人と飯を食っている。はぁ、俺どうしたらいいんだろ。このまま宮本と喋れない学校生活なんてやだぜ。
「………るりちゃんの事か?」
「あぁ。昨日お前がいきなりいなくなって散々だったよ。変な誤解を生むわ、宮本にビンタされるわ」
「いやー、悪かった。あの時に綺麗なお姉さんを見つけて思わず声をかけちまってなー」
「…………まぁ、過ぎたことをどうこういっても仕方ないし、もういいけどよ」
はぁ、宮本と仲直りしたいな……でもあいつ今小野寺と桐崎さんと食べてるしな…………
「まぁ、こうなったのも俺達のせいでもある。ここは俺達が手伝ってやろうじゃないか」
城野崎がいきなり立ち上がって自分の胸をドン、と叩いた。手伝ってくれるのは嬉しいけど。
「お前らが手伝われるとロクなことがないからやめてくれ。自分で頑張るよ」
「「えぇ!!?」」
コンマ0.1秒も狂わずに同時に声をあげる城野崎と集。二人はお互いの顔を見合わせて何故か笑った。
「とりあえず、宮本と二人きりにならないとな……」
放課後
「ダメだ。まったくそんな事が出来ないと」
小野寺も宮本も桐崎さんにつきっぱなしだ。昨日何かあったのかな?てか、これじゃ宮本に謝れねえよ。
「はぁ、どうしよう………」
「お、お困りですか、クロ君、じゃなくて少年」
外にあるベンチで悩んでいると何かの着ぐるみをした女子生徒が現れた。何でわかるかって?声でバレバレなんですよ。
「おい、小野寺。何がしたいのかわからないが、暑いだろ。とりあえずそれを脱ぐべきだと思うぞ」
「な、なんのことしょうか?私は小野寺ではありません。私は………えと………そう!森の妖精。森の妖精なのです!」
はぁ、誰の差し金だよ。小野寺にこんなことさせるなんて。でも、ほっとかないと聞きそうにもないし。
「まぁ、いいか。森がまったくない学校に現れた森の妖精さん。俺に何のようだ?」
「細かいことを気にしちゃだめ。校門の前である女子生徒が君の事を待っています。速く行ってあげてください」
女子生徒…………
「宮本か!?」
「そう。るりちゃ………女子生徒が待っています。速く行ってあげて下さい」
「わかった。サンキュー!!」
返事をして全力ダッシュで校門前まで向かった。
「………頑張って、クロ君。…にしてもクロ君のためとはいえこんな格好させられるなんて、舞子君もるりちゃんも酷いよ。絶対私で遊んでるよね、これ」
「宮本!!」
「………クロ君」
森の妖精(小野寺)が言ったとおり宮本は校門前で待っていた。全力ダッシュで来たため多少息を切らしながら宮本の正面に立つ。
「はぁ、はぁ…………宮本。そのこの前は『この前はごめんなさい』……へっ?」
俺が先に謝ろうとしたのに、何故か宮本に謝られた。どうしてだ?悪い事したのは俺なのに……
「いきなりビンタしちゃって。クロ君がストーカーとかしない人だって言うのはわかってるのに。何か事情があったじゃないかっていうのはわかってた筈なのに」
「いや、待て。確かにストーカーしたのは事情はあるけど、したのは事実だ。だから、宮本は悪くない。悪いのは全部俺の方だよ」
「ううん、いきなり突っ走った私が悪いの」
「いや!宮本に勘違いさせるような事をした俺が悪いんだって!」
「いや、私が…………って私達はいつまでお互いに謝りあってるの?」
「確かに。一回落ち着こう。そして、話し合おう」
深呼吸して、さっき走って来て疲れた息も整えて……よし、完璧!
「まず、聞かせて。何でクロ君はキョーコ先生をストーキングしてたの?」
「あぁ。実は…………」
俺は宮本に伝わるように説明した。何故、そうなったのか。何故、スーツをきていたのか。何故、キョーコ先生の着替えもみたのか。その全てを宮本に話した。
「…………なるほどね。多少はクロ君のせいだとしてもほとんどは舞子君達じゃない、悪いの」
「いや、あいつらの考えに乗った俺も悪いと思うしな」
「そこよ。私が腑に落ちないのは。どうしてその話にクロ君はのったの?断ればよかったのに」
「えっ!?いや、えっと………」
どうしよう。写真もらったからとか言えないしな……何かいい言い訳を。
「その、集達に泣いて頼まれたんだよ。ファミレスで土下座までされて。そんなことされたら断ることもできないだろ?」
「まぁ、それはそうね。私ならその二人蹴飛ばしてるけどね」
「はははっ、まぁそれは冗談だとして『冗談じゃないわ。本気よ』……そうですか」
なんだろう。凄え宮本が怖い。宮本だけは敵に回したくないな……
「宮本。3日前の事は許してくれるか?」
「さっきも言ったけど、私がいきなりビンタしたのもあるんだから許すも許さないもないと思うわよ」
「いや、でも何かスッキリしなくて」
「じゃあ、仲直りとして今度の日曜日に小咲もつれて三人で何処かに遊びにいくこと!これでいい?」
「……あぁ。それで仲直りなら絶対行くよ!!」
「じゃあ、約束ね」
「あぁ、約束だ」
こうして俺達は一応仲直りをしたことになったと思う。一時はどうなるかと思ったけど、何とかなるもんだな。
「…………そういえば、小野寺は?」
「小咲なら一条君に告白してる筈よ」
……………………what?
「お前ら俺がいない間に何があったんだ?」
「ちょっとね。私が念押ししといたから多分大丈夫だと思うんだけど……あら、小咲が来たわ」
校内から小野寺が出てくるのを見つけて俺達は小野寺に駆け寄る。
「るりちゃん、そのごめん」
「無理だったの?」
「うん。告白はしようとしたんだけどね」
「ちっ、この根性なしめ!!」
「えぇ!?」
宮本が舌打ちしながらも小野寺も睨む。だが、すぐに溜息をついた。
「まぁ、あんたにしたら頑張ったんじゃないの?」
「るりちゃん…………」
「けど、次は成功させなさいよ!」
「りょ、了解です」
告白出来なかったみたいだけど本人が納得してるから別にいいか。
「あ、クロ君も仲直り出来たんだね。おめでとう」
「あ、あぁ。小野寺もありがとうな。あんな恥ずかしい格好してまで俺に伝えに来てくれて」
「な、何のことかわからないよ」
この後に及んでまだしらばっくれようとしてるのか?仕方ない。
「とりあえず、帰ろうぜ。今日はなんか色々疲れた」
「うん、そうだね。るりちゃんも行こ」
「えぇ。また明日からよろしくねクロ君」
「こちらこそ、よろしく頼むよ」
校門を出て俺達はケンカする前の状態のように一緒に帰った。やっぱ、この二人と一緒にいると凄く落ち着くわ。もう、喧嘩しないようにしないとな。
「そういえば、今度の日曜日って水泳部男女共に部活だぞ」
「あっ、忘れてた」
結局遊びにいく話はなしになってしまった。
「おぉ、やっときたか。わざわざ向こうからご苦労だったな」
「いえ。クロード様のご命令とあれば、私は全然。それで、私はどうして日本に呼び出されたのでしょうか?」
「お前に二つ頼みたい事がある。まず一つがこれだ。実は千棘お嬢様がその写真の者と付き合っていてな」
「な、なんと!?そのような事は初めてお聞きしましたが………」
「あぁ、だが妙におかしいのだ。付き合ってるのに付き合ってるように見えない。おまけにお嬢様以外の女子ともイチャコラしてる最低のやつだ!!!」
「ゆ、許せませんね、その男」
「あぁ。だから、この男、一条楽の調査を頼む。そしてもうひとつはこれだ」
「この男は?」
「神崎黒。一条楽のクラスメイトなんだが、神崎というとあいつを思い出したんだ。調べてみると、実はこいつはあの男の息子だとわかった」
「なっ!?あの男の……………息子」
「あぁ。だから、お前には一条楽の調査と神崎黒の制裁を頼みたい」
「………………」
「誠士郎?返事は」
「あ、はい。了解です、クロード様……………神崎黒、貴様だけは許さんぞ」
次から鶫が出てきます。
感想と訂正があればお待ちしています。