るりちゃんが大好きです。ということでヒロインは
るりちゃんです。
「ふあぁ、もう朝か………」
7時に設定したアラームが部屋中に鳴り響いて目が覚める。起き上がり、カーテンを開けると朝の光が部屋に射し込んできて、俺は反射的に目のまえに手をやる。今日も晴天。清々しい朝だ。
「おはよー。ばあちゃん、じいちゃん」
自分の部屋を出て1階に下りるとじいちゃんとばあちゃんが飯を作って待っていてくれた。
「あら、おはようクロちゃん。昨日はよく眠れたかしら?」
「まぁな。昨日は少し疲れてたし、ゆっくり眠れたよ」
「お前も部活とかで忙しいじゃろうに。あまり無茶をするんではないぞ」
「わかってるよ、それぐらいは」
食パンをかじりなから、俺は笑ってじいちゃんに答える。
この2人は俺が家庭の事情で中2の時にこっち転校してきてからずっと面倒を見てくれている俺の大事な家族だ。
「じゃあ行って来るよ!!」
「はいはい、行ってらっしゃい。今日もがんばってきてね」
「おう!」
玄関のドアを開けて外に出る。太陽の日差しが当たってとても気持ちいい朝だ。
ズボンのポケットからFRISKを2粒取り出して口の中に放り込んで学校に向かう。
神崎 黒。凡矢理高校に通っているごく普通の高校生。………ごく普通の高校生である。
「…しまった、家に弁当忘れた。……まぁいっか。購買でパンでも買うとするか」
学校の校門近くまで鞄の中を探り弁当がないことに気づく。ばあちゃんに悪いことしちまったな……
『おい見ろよ、あいつ神崎だぜ』
『神崎ってあの殺人者の息子の神崎か?』
『あぁ、絡んだりするとボコボコにされるって噂だ。近づかないでおこうぜ』
後ろの方からそんな会話が聞こえてくる。
「殺人者の息子……か」
俺、神崎 黒は幼い頃に俺の親父が人を殺してしまったせいで殺人者の息子って呼ばれるようになった。親父は警察に捕まったが、そのせいで俺の小学校での生活は差別され、いじめられと散々だった。
「まったく、誰だよ。この学校でもそんな事言いふらした奴はよう」
愚痴を言いながらも下駄箱で靴を履き替えて教室に向かう。
教室に入ると俺に気づいた奴が目を背ける。俺は何もしてねえのになんでこんな仕打ち受けてんだ?……まぁ、このクラスでは俺の数少ない友達がいるから別に何も寂しいわけではないけど。
俺は教室での自分の席に向かう。
「おっす、宮本、小野寺」
俺の隣と斜め前に座っている人物に声をかける。
「おはよう、クロ君」
「おはよう。何か今日もみんなに目線逸らされてたね」
宮本 るりに小野寺 小咲。俺の数少ない友人の2人で中学からの付き合い。
俺の家の事情を知っているにもかかわらず俺と仲良くしてくれる。ちなみに2人ともかなり可愛い。
「まぁな。いつもの事でもう慣れたよ」
「……慣れって怖いわね」
「でも、そんなのクロ君がかわいそうだよ。クロ君は何も悪い事してないのに」
「ありがとう、小野寺。そう言ってくれるだけでも俺は嬉しいよ」
そう言って俺は小野寺に微笑みかける。すると、小野寺は照れたように顔を赤くして下を向いた。
俺は苗字で呼ばれるのが大嫌いなため友達には下の名前で呼んでもらってる。
「オース、ってうわ!」
「い、一条君!?どうしたのその怪我?」
いきなり小野寺が顔を上げて声をあげるので俺は後ろを見た。そこにはある意味俺と似た境遇の人物が立っていた。……何故か鼻血を出して。
一条楽。集英組というヤクザの組長の1人息子。ヤクザという間柄のおかけで楽は今までの学校生活が大変だったらしい。話しを聞くに『楽に近づいたら殺される』など今まで中々友達が出来なかったらしい。ちなみに俺の友達でもある。
「………何があったか知らねえけど楽も大変だな」
「そうね。でも、教室入って来る時に鼻血出してるのって中々笑えると思わない?」
「ははっ、確かにな」
どうでもいいような話しをする俺と宮本。もう1度楽の方を見ると小野寺が楽の鼻に絆創膏を貼っていた。……意味あんのか、それ。
「てか、あんなにイチャつきやがって。これで何であいつら付き合ってないんだ?」
「それはあんたとあたし達が仲良くなってからずっと疑問に思ってる事だと思うわよ」
「何度か俺達が付き合えるように手伝ったのに全部不発だったよな」
「互いに思いあってるのに何でかしら?」
「こうなったら、もういっそばらしちうか?お前ら2人両想いだぞって」
「……それも面白いかもね」
宮本は少しだけクスッと笑った。それを見た俺は咄嗟に顔を背ける。
「どうしたの?」
「何でもねえ。何でもねえから」
そう、と言って宮本はさっきまで読んでいた本を読み出した。
すると、朝のHRを知らせる予鈴がなった。
廊下にいる生徒や教室で喋っていた生徒が自席に座って行く。楽や小野寺も自席に座っていた。
予鈴がなってしばらくするとクラスの担任のキョーコ先生が入って来る。そして、いつもの日常のようなHRをして連絡も終わる。
「よーし、じゃあ最後に。今日からこのクラスで一緒に過ごす転校生を紹介するからな。入って、桐崎さん」
キョーコ先生が扉に呼びかけるように言うと、廊下から1人の女の子が教室に入ってきた。
「初めまして。アメリカから転校してきた、桐崎千棘です」
その転校生は俺が今まで見てきた女の子の中の誰よりも可愛い気がした。長い金髪に碧い目にチャームポイントみたいなうさぎの耳のような赤いリボン。その他の全てが桐崎さんのいい所を表している。
「うわぁ……………」
あまりの可愛さに少し顔を赤くして見ていると隣の宮本に肘打ちをくらった。
「グフッ!…いきなりなんだよ!」
「……別に」
そう言うと宮本は窓の方を見つめた。
「母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りバッチリなので、みなさん気軽に接してくださいね」
ニコッと自己紹介を終えると男女両方から声が上がった。
「うおおおおぉぉ!かわいい!!」
「すっげー美人」
「キャ――――!!足細ーい!」
「何あのスタイル!モデル並みじゃね?」
「おい、ハーフだってよ」
「あんな可愛い子見たことねぇ!」
クラス全員が俺と同じ事を思ったのかまるで何かのコンサートのように声が響き渡る。それほどの美しさを桐崎さんは持ってるって事か……
「じゃーひとまず、テキトーに後ろの空いている席に座って」
「はい」
キョーコ先生はしばらくこれを止めることは出来ないと思ったのか、生徒達を無視して桐崎さんに座るように指示をする。その時……
「「あ――――!!!」」
先生でも止められなかった声援を2人の大声によってそれが止まった。
1人は転校生の桐崎さん。そして、もう1人はヤクザの組長の息子であり俺の友達の一条楽だった。
「あなた、さっきの……」
「さっきの暴力女!!」
暴力女って事はあの鼻血はこの桐崎さんのせいってことか?見かけによらず怖いことするんだな……
「ちょ……な、なによ、暴力女って!?」
「さっき校庭で、オレに飛び膝蹴りを食らわせただろ!」
「ちゃんと謝ったじゃない!」
「あれが謝っただ!?あれのどこが!!」
「謝ったって言っているじゃない!何よ、ちょっとぶつかったくらいで被害妄想やめてよね!」
「どこが?どこがちょっとだよ!こっちは気絶しかけたっつーんだよ!!」
「へーそう。血圧低いんじゃないの?こっちは謝ってんだから許してもいいでしょ!?女々しい人ね!」
言い合いをしてるうちに2人だけの空間に入ってしまった楽と桐崎さん。こうなってしまえばもう誰も口出しすることも止めることも出来なくなってしまう。てか、転校生の美女とあって1分もたたないうちにこんなに喋りあえるなんて楽しかいねえよ。ある意味、あいつのスキルだろ。
そして、楽は桐崎さんの態度に腹が立ったのか。
「それが謝っている態度かよ!この猿女!!」
こんな美女に猿女。いくら、腹が立ったからってそこまで言う楽もどうかと思うぞ。
「誰が猿女よ!!」
転校生の怒りが頂点に達したのか、勢い良く楽をぶん殴った。そのパンチの威力は、1番後ろの席よりも後ろの床まで吹っ飛ばす威力だった。吹っ飛ばされた楽に俺は近づき言った。
「今のはお前が悪い」
その言葉にクラス全員が一斉にごもっともです、と頷いたような気がした。
転校生にぶっ飛ばされた楽と、楽をぶっ飛ばした転校生の桐崎さん。この2人の関係はあんな関係になるなんてこの時の俺はまだ知らなかった。
どうでしたか?
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