Maskd Rider Wizard Re:Magic 作:バルバトスルプスレクス
幽霊ライダーゴーストも佳境に入り、新ライダーエグゼイドのレベル1に驚き、クウガのブルーレイ購入に悩む今日この頃皆さまはいかがお過ごしでしょう。
まずは遅れました事、マジですんませんでした!
小説家になろうページの方とも並走してやってますが、中々進みませんすみません。
ですが、エタるつもりは毛頭ありませんのでこれからも応援ご感想よろしくお願いいたします。
黒きローブを靡かせた一人の魔導士の登場に、リンコは勿論ミノタウルスでさえも驚きを隠せずにいた。しかしその隙にコヨミがリンコを連れて退避。それに気付きつつも、現時点で厄介な魔導士に注意を向ける。
黒いローブを翻し、真紅のルビーの装甲と仮面。極め付きはベルトと指輪。
「…さぁ来いよ、バケモノ!」
指をくいっと動かした挑発行為をミノタウルスに向けてするウィザード。バックルを操作し、コネクトの指輪を使役して出現した魔方陣から魔法銃剣ウィザーソードガンを召喚し、刃先を撫でる。
対するミノタウルス。懐から灰色の小石の様な物体を取り出すと、それを辺りにばら撒いた。そしてそれは間をおかずヒトの様な形を成した。”
『魔法使いが出るとは何とも分が悪い!』
「あ、おい…!逃げんのかよ……!」
「ハルト、今は!」
「だよな、おし!」
ミノタウルスを追いかける前に、ウィザードは右手の指輪を交換。バックルを操作して右手をかざす。
<ルパッチマジックタッチゴー!ルパッチマジックタッチゴー!>
変身の時とは違う歌の様な音声が響き、ウィザードは右手をバックルに翳す。
<コネクト、プリーズ!>
魔方陣を浮き上がらせそこに右腕を伸ばして何もない空間から銀色の剣を取り出した。片刃の刀身を軽く撫で、目の前の使い魔達を見据えて切りかかる。一振り、二振りと剣を振るって使い魔を一体一体確実に処理していく。指輪をしているため、パンチなどの攻撃は指を痛める為に出来ないがそれの代わりか流れる様な蹴りを交えた攻撃が使い魔達に直撃する。
やがて最後の一体を切り捨てたウィザードは魔方陣を展開し、変身を解いた。
リラックスの一息ついた後のハルトはリンコとコヨミの無事を確認してまた一息ついた。
「コヨミ、リンコちゃん大丈夫だった?」
「大丈夫。逃げられちゃったね」
既にどこかへ消え去ったミノタウルス。今度いつまたリンコを狙うだろう、だがその時に仕留めるしかない。
その狙われたリンコは、未だに理解が追い付かないでいた。自分を狙う化け物が出たと思ったら、級友のハルトが変身して化け物を追い払った。端的に言ってしまえばそうなのだが、この事実を認めてしまえば今まで自分が体験したことが殆ど否定してしまいそうだったから。
尚も困惑している心境のリンコよりも、ハルトとコヨミは次の授業の時間を確かめていた。
◇
ミノタウルスは廃工場の一角に逃げ込んでいた。
当初の目的は果たす事は出来なかったが、それ以上の収穫はあった。今はそれだけで十分だと一息つくと、突然背筋が凍るような鋭い視線を感じた。振り返ってみると、そこには三体の怪物がそこにいた。緑色の身体に堅牢な体躯をした亀に似た怪物シェンウー、朱色の身体に美しい一対の翼を魅せ付けた怪物フェニックス、そして白亜の身に鋭い爪を生やした怪物タイガー。
『よーミノタウルス。何ここに戻ってきてんだよ』
シェンウーがミノタウルスに掴みかかってそう言った。
『ま、待て待ってくれよ……俺だって好きで逃げたわけじゃねーんだ!』
今度はフェニックスがミノタウルスに問いかける。
『ではなぜ逃げた?貴様には楽な仕事を押し付けた筈だ』
『ま、魔法使い……魔法使いが出たんだ、本当だ!!』
『魔法使い……か』
タイガーはそう言って自身の爪を二度三度ほど軽く振りながら呟いた。
三体の怪物は、ミノタウルス以上の魔力を有しており、その他の同胞たちからはリーダー格として扱われており、部下の怪物たちに指示を出す事が主だ。
今回ミノタウルスに指示を出したのはフェニックスだった。彼は短く『ふむ』と小さく呟いた後、シェンウーに蹴り伏せられているミノタウルスに視線を合わせる。
『ミノタウルス、今回のミスは大目に見てやろう』
『ほ、本当かフェニックス!』
『だが、今度は魔法使いも一緒に……だ。それを忘れるな』
威圧感を漂わせながら言ったその指示をミノタウルスは短く返事してすぐにその場から立ち去った。
残ったシェンウー、フェニックス、タイガーの三人は、ミノタウルスの報告にあった魔法使いを気に掛ける。彼らの更に各上の存在で、自分ら怪物…総称をファントムなる魔力生命体の長・カーバンクルからその存在がいると言う事は聞いた事があった。もし、ミノタウルスの証言が嘘ではないとすると、こちらの目的達成の弊害になるかもしれない。
『んじゃ、俺はカーバンクルに魔法使いが出たって事伝えとくぜ』
『頼むぞシェンウー。しかし、魔法使いか……フェニックス、貴様は心当たりはあるか?』
『知らん。が、近い内に顔を見に行くとしよう』
『それもそうだな。貴様のゲートを見極める目、頼りにしているぞ』
そう言ってフェニックスは赤い鳥の羽根をまき散らしたと思ったら、まるで最初からそこにいなかったかのように消え去っていった。後に残った羽根は風に舞いあげられると、砂状に変化して消えた。
最後に残ったタイガーは、人間の姿に変わり懐から煙草を一本取りだして一服する。
「……もしかしてお前は、魔法使いと一緒にいるのだろうな。だとしたら、貴様は我々の敵だ…ドラゴン」
◇
その日の放課後、生徒会の仕事を終えたリンコはシュンペイをおまけに引き連れてハルトの家に招かれていた。家主のシゲルは二人を快く迎え入れると、ハルトのいる彼の部屋に通され、そこにはハルトだけでなくコヨミもそこにいた。
二人が幼馴染の関係を知っているリンコとシュンペイは、下世話な妄想を抱くが今はそんな場合ではないと直ぐに頭の中を切り替えた。
リンコがハルトとコヨミに聞きたかったのは、今日リンコを襲った怪物とハルトが変身した赤い魔法使いの事だ。彼女はいの一番に問いかけ、ハルトが「ここは実物を見せた方が早い」と、手形の指輪でベルトを現出し変身しようとするが、変身用の指輪を取るハルトの手をコヨミが阻止した。
「ハルト、無駄に魔力を消費しちゃダメ」
「だよなー。っし、ならこれはどうだ」
<ユニコーン、プリーズ!>
蒼い一角獣の模様が掘られた指輪をベルトのバックルに翳すと、ハルトの前に青白く発光する魔方陣から小さな
「他にもあるよ?」
<ガルーダ、プリーズ!>
<クラーケン、プリーズ!>
今度は真紅の
微笑ましい場面を提供したハルトは「な?」と小首をかしげてリンコとシュンペイに見せた。
「次は私だね」
次にコヨミもベルトを現出して紫と黒の指輪を手に取って、ハルトと同じようにバックルに指輪を翳す。
<プラモンスター、ナウ>
<プラモンスター、ナウ>
コヨミのベルトはハルトのそれとは違い、音声も低くまた魔法を顕現する声も違っていた。
現れた漆黒の
これである程度理解できたリンコは、まだ自分が狙われる理由が解明されていなかった。
「どうして……か。それは……」
先程までにリンコとシュンペイ向けていた視線を逸らすハルトとコヨミの表情は途端に曇らせ、終いには顔を俯かせてしまった。
余計な事を聞いてしまったとリンコは焦り、違う話題を切り出そうとするがしどろもどろで何の話題を出すかを迷っていた。身近に起きた出来事、笑い話等を話そうかと必死になって切り出そうと慌てだす。
「それは……追々話すよリンコ。でも今は……話すのにちょっと整理できてないから」
愛想笑いでコヨミがそう言ったが、その表情は一向に良い方には変わらない。
今日はもうそれで終わりとなった。
◇
翌日の通学路。リンコは寝坊したシュンペイを無残にも置き去りにして足早に学校に向かっていた。
別に彼女も寝坊して遅刻と言う状況ではなく、昨日の事で自分自身に腹が立ち自然と歩く速度が速くなっただけだ。ハルトとコヨミの地雷を踏んでしまった事は事実だが、二人はリンコの事を責めていなかった。どころか少しよそよそしく感じた。
だから、今日会ったら謝ろう。昨日は言えなかったけど、今日はちゃんと言って謝ろう。
校門の前でそう決心したリンコ。潜ればいつもと変わらない学園生活の一日が始まる。
そうなるはずだった。
「………え?」
目の前に広がるのは、そんな願望が一瞬にして崩れ去るような光景だった。
多人数で一人を蹂躙し、花壇を彩っていた花々は踏みつぶされ、挙句に殺し合いに近い乱闘が繰り広げられていた。その中にはリンコの友人達や蝦夷島が居た。一人だけじゃない、ハルトとコヨミそしてシュンペイを除いた知人や友人の姿がそこにいたのだ。
膝から崩れ落ちるリンコだったが、視界の端で誰かの差し伸べる手が見えた。その主はリンコの憧れの教師、御原ウシオ。彼は心配ないと言った柔和な表情を向けている。
この人だけは私の味方だ。この人と一緒だったら……。
差し伸べられたウシオの手を握った瞬間、リンコの中で何かが割れた。
『君の知っている御原ウシオは半年前に既に絶望して死んだ。それにしてもやっと絶望してくれたなァ、御門クン』
ウシオの姿が、昨日自分を襲った
訳が分からない。状況が掴めないリンコは、ようやくある事実に気が付いた。自分の手が、腕が、身体が紫色にひび割れていたのだ。次第に彼女は自分は死んでしまうのか、と恐怖に駆られだした。
『何、心配いらん。俺ら仲間になるだけだ』
「仲間…?」
『ああ。ただ、人間としてのお前は死に、ファントムとしてのお前に生まれ変わる』
それだけだ、と最後に付け足したミノタウルス。その声音はヒトを安心させるものではなく、恐怖を与えるものだった。
ひび割れの速度が速まって来た。これでもう彼らに謝る事は叶わない。もう自分は死ぬのだ。文字通り自分は自分でなくなってしまう。そうなると自分はどんな怪物になるのだろう。どうせなら、天使の様な怪物に生まれ変わりたいとさえ思う。
ついには走馬灯さえも見えはじめるリンコ。信じていた人は怪物となって裏切り、自分は友を傷付けた。後悔からか、涙ながらに呟いた。
「……誰か、たす……け、て」
その時だ。五つの銀色の銃弾が、ミノタウルスに直撃した。
「悪いけど、リンコちゃんは友達なんだ」
「あんた達の仲間になんか絶対にさせないんだから!」
声のする方、自分に銃撃した相手をミノタウルスは目を向けた。そこにいたのは、校門を潜りながらこちらに歩いてくるハルトとコヨミの二人だ。彼らの腰には指輪の魔法使いの証であるベルトが出現しており、更にハルトの手には銀色の銃が握られていた。
『また邪魔をするか、魔法使い!』
「バケモノが存在する限り、俺とコヨミは大いに邪魔してやるさ。行くぞ、コヨミ!」
「うん!」
二人はバックルを操作し、左手に変身用の指輪をはめて変身する。
<シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!>
<シャバドゥビタッチヘンシーン…シャバドゥビタッチヘンシーン…>
『変身!』
<フレイム、プリーズ! ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!>
<チェンジ、ナウ>
ハルトが黒衣の、コヨミが純白の魔法使いにそれぞれ変身を遂げる。
対するミノタウルスは前回と同じように使い魔を複数体召喚し、拳を鳴らしてかかった。
『さぁ、ショータイムだ』
二人の魔法使いは友を掬う為に、ミノタウルスに果敢に立ち向かう。
続く
最後になりますがS.I.Cのウィザードインフィニティスタイル造形イイですね