Maskd Rider Wizard Re:Magic 作:バルバトスルプスレクス
ドライブが始まった今、「今更ウィザード?」何て声など『ディフェンド、プリーズ』して気にせず頑張ります。
応援や感想が自分の励みです。
ハルトが目を覚ます。視界に入るのは自分の部屋の天井。提げて十年近く経つハエ取りテープがいまだ健在で、同時に現役でもある。今日は休日。学校も休みだ。
休みならば丁度良い、指輪を試す必要もある。と、思っていたハルトは着替えを済ませるとリビングへと向かう。その途中で祖父で指輪づくりを趣味に持つ刀魔シゲルが、卸したてのヤスリを手にハルトに声を掛ける。
「おはようハルト。休日なのに早いな」
「おはよじっちゃん。若い内から健康意識しないとね」
「……そうだな、ハルト」
ハルトの身体は仏壇に向けられており、繁も同じ方に視線を向ける。
二人の男女の遺影、それはハルトの両親の遺影だ。二人が亡くなったのは、ハルトとコヨミがソウの書斎に入り込んだ日から一年後の寒い冬。共働きの両親が、ハルトのインフルエンザの一報を聞いて車を走らせて、信号無視で飛び出して来たトラックが激突。即死の状態で、遺体の状態は、体の半分程が言葉に出来ない程酷い具合で、事故の凄まじさが窺えていた。
それ以来シゲルはハルトの親代わりとなった。それは今も変わらない。
「…なぁじっちゃん。今度の墓参り、二人の好きだったプレーンシュガー供えようか」
「……そうだなハルト。それはそうとだ、コヨミちゃんが来てるぞ。今リビングに居るから顔洗いなさい。そしてひ孫の顔を見せてくれよな」
「…じっちゃん、痴呆が始まったのか?」
洗面所で顔を冷たい水で洗う。眠気スッキリ。顔に残る水滴をタオルでふき取り、ハルトはコヨミの待つリビングへと向かう。そこにはソファに座ってシゲルが出したであろう緑茶を飲んでいるコヨミ。訪問の理由は指輪とベルトの事で、コヨミはソウの書物で調べた事をハルトに伝えに来たのだ。
まずわかった事は、聖なる者は両の手に魔法石の輝きを宿した魔法使いである事。邪なる物は人の姿に偽り同胞を増やす傾向を見せると言う。それがソウの書物にあった事実。まるで夢物語にしか聞こえない。だがこれは現実。
「んで、おっちゃんにはもう言ったのか?バックルの事に指輪の事」
「……言える訳ないわ。父さんに母さんが心配するかもしれないし…ハルトのおじいちゃんだって」
「じっちゃんにはそんなに心配かけたくないしな」
言って後頭部を掻くハルトだが、コヨミがキョトンとした表情をしているのを見て、その視線を追うと、その先には『名前図鑑』と銘打った本を手に二人を生暖かい目で見るシゲルと、いつの間に来たのかソウまでそこにいた。その二人の視線は、ハルトとコヨミのバックルと指輪に向けられていた。
この状況にハルトは頭を抱え、座って目頭を押さえ、一息ついた所で二人に尋ねる。
「じっちゃんとおっちゃん、いつからそこに?」
『最初っから最後まで』
「父さん…」
「また私の部屋に入ったと思ったら……」
こうなると後々面倒な事が起きる。そう予感するハルトは、コヨミを一度見てただ一人の家族と幼馴染みの父親に、今日までの事を告白した。
日食のあの日の事、指輪とバックルの事、それらを包み隠さずに二人に伝えた。
それを聞いた二人…シゲルは孫の手を取り指に嵌めた指輪を見つめ、ソウは娘の頭を撫でる。
「…じっちゃんにおっちゃんは……俺とコヨミの」
「ハルト、もう良い何も言うな。しかしソウ…よもやこの二人が……」
「ええ、どうやら二人には真実を話さなければならないようですな」
シゲルとソウの二人が顔を見合わせていった。
◇
ソウの口から語られたのは、ハルトとコヨミが誕生する以前の話。
かつてシゲルは特殊な鉱石を使った指輪造りの一人であり、ソウはその指輪を使役する者としてこの世界を裏側から秘密裏に救っていたと言う。主に武装集団を相手に。
それがどうだと言う事なのだが、ソウはハルトとコヨミの付けていた手の平型の指輪をベルトのバックル部分に近づける。
<ドライバー・オン、ナゥ!>
聞こえてきたのは電子音の様な音、現れたのはバックル部分が手の形をしたベルトだった。続けてバックルを操作すると、低く一定の歌のような詠昌がベルトから聞こえて来る。そのバックルに、ソウは左手の指輪を翳す。
<チェンジ、ナゥ!>
すると、ソウの背後から魔方陣が展開し、ソウを包み込む。そうして現れたのは、白いローブを纏ったヒトだった。
「私達はこの姿を、魔法使いと呼んだ。今の私の姿はワイズマン。以前は白い魔法使いと言う通り名で通っていた」
言い終え、ワイズマンは足元から魔法陣を展開して変身を解き、元のソウの姿に戻った。
ソウの変身の一部始終を見て、ハルトは右手の手の形をした指輪をバックルに翳す。
<ドライバー・オン、プリーズ!>
ハルトのはソウと違い歌の様な音がやけに甲高く、ナゥがプリーズと変わっていた。それは分かるが、その後の動作、所謂『変身』に使う指輪が分からないでいたハルトは、ベルトにホルダーがある事に気が付き、そこから無造作に取った赤い宝石…一般的にはルビーの宝石に似た指輪を左手の中指に嵌めてバックルに翳した。
◇
それから、一週間近くが経とうとしていた。
ハルトとコヨミの通う高校の生徒会室では、最近の生徒たちの素行不良等の問題を議題にしていたのだが、ある人物を除いて殆ど聞き流したりのらりくらりといい加減に聞いているだけだ。
一人白熱しているのは御門リンコ。生徒会唯一の真面目ちゃんの通り名で知れ渡っている。
「聞いた限りでは、無断欠席等の校則違反が良く目立ちます。それを何故、見逃すようなことが目立つのでしょうか?!」
リンコの怒りの矛先、生徒会長の
「ま、君の意見は間違いないね。でも、我が校の風習を忘れたわけじゃないよね?生徒の自主性を重んじ、過度の規制は枷となるって」
「ですが会長!」
「それにだ、主に君が言っているその校則違反者の共通点、下手に刺激しない方が賢明なのだよ御門クン」
「…くっ!」
副会長、書記、会計やその他の役員が半目でリンコを睨みつける。彼らにとってリンコは目の上のたんこぶ。鬱陶しいこの上ないと内心思っていた。
生徒会に入ってからこれだ。自分自身真面目に、いけない事はいけないとはっきりと言ったつもりが、それを鬱陶しく感じる彼らには届かないようだ。
会議が終わり、蝦夷島とリンコだけが残る。
「…君は知らないようだね、この学園の黒い所を」
「………え…?」
蝦夷島が言った事に、リンコは一瞬思考が停止した。
「……君が校則違反だと言う連中、その共通点を知ってるね」
「…彼らの親族がこの学園の教師、理事、県議と言う事ですか?」
「あとは、この学園の……いや、これ以上は話せない。とにかく、おとなしくすることが利口だよ?」
蝦夷島の表情が一瞬だけ曇るのをリンコは見逃さない。何かある、そう核心する彼女は蝦夷島と別れて自分の教室へと向かう。
生徒会室での出来事がとても気に入らないようで、やや地団太に近い歩き方になっていた。
自分は至って真面目だ。なのに何故自分をうとまうのだろう。生徒会は生徒の模範となるべき組織であり、模範となる生徒でなければならないのだ。それなのに何故彼らは堕落しているのだろう。
何故だ何故だと自問自答していると、誰かがリンコを呼び止めた。リンコはその方へ視線を向けると、生活指導でありリンコの憧れの教師の御原ウシオが眼鏡の位置を直していた。数か月前の日食の日、ハルトとコヨミが行方不明になったあの日から日にちも経たない内にこの学校に赴任してきた。
「御原先生、どうしたんですか?」
生徒会とは別の生徒を正す役割を持つ教師の彼をリンコは目標とし、憧れを抱いていた。
リンコはウシオには自分の不満は吐かず、アドバイスを受ける。それだけでよかった。
「それじゃ、そろそろ会議だからね」
「はい、ありがとうございました」
ウシオと別れても尚表情が明るいリンコは自分のクラスへと歩いて行く。
目的の教室に入ってすぐ馴れ馴れしくひ弱な男子生徒がハルトとコヨミを連れてリンコに近づいてきた。見慣れたくしゃくしゃな黒髪、人懐っこい表情。リンコの双子の弟の御門シュンペイだ。
「あ、姉さんハルトさんがよんでるよ!!」
「ちょっとシュンペイ一体何よ!」
「あーゴメンリンコちゃん。別にそんな急用じゃないんだけど…」
「シュンペイが勝手に何かを勘違いしてたらしいの」
「シュ・ン・ペ・イ?」
人騒がせな弟の折檻をする姉を見て、ハルトがリンコのちょっとした変化に気が付いた。コヨミも同じように気が付いたようでそれについて追及すると、先程のウシオとのやり取りを自慢するかのように語り始めた。それを聞いていく内にシュンペイは呆れてしまうが、ハルトとコヨミは違っていた。何かを感じ取っていたのだ。
以前にも…日食のあの日から今日までの間に見たウシオのあの感覚。人とのそれとは違う異様な感覚を二人は感じ取っていた。しかしそれをリンコに言う必要はない…と、ハルトとコヨミはアイコンタクトする。
◇
数日後の放課後、校舎裏で一人の生徒が複数の生徒に壁際に追い詰められていた。生徒会でも問題にあげられていた生徒がグループで一人を相手にいじめをしていた。
追い詰められていた生徒は助けを請う。そこを離れた場所でリンコが目撃して助けに行こうとしたその瞬間、突然金縛りにあったかのように体の動きが止まった。
「な…ん……」
『君に絶望を味わわせるためだ。悪く思わないでくれ、これも同胞を増やす為でね』
校舎の陰から現れた牛と人を合わせた様な異形…ミノタウルスそのものが後ろ手でリンコの眼前に現れて言った。
突然の出来事で理解が追い付かないリンコ。眼前に現れた怪物と奥で起きている多対一の一方的な暴力を目に、自分が自分でなくなる恐怖に突然襲われてしまった。
それを見てミノタウルスはほくそ笑んだ。が、脇からハルトの跳び蹴りが決まって即座にリンコからそちらに標的を変えたミノタウルスは鼻息を荒くして抗議する。
『一体何のマネかな?邪魔するなんて余程のバカなんだね』
「バカはあんただよ。コヨミは向こうの方を頼むよ、ここは俺がやる」
「うん」
コヨミが追い詰められている生徒を助けに向かった後、ハルトはミノタウルスを見据えて右手に指輪を付けながら問う。
「悪いけど、リンコちゃんは俺の友達だからあんたなんかに絶望させて貰っちゃ困るんだ」
<バインド、プリーズ!>
何もないミノタウルスの周りに、赤い魔方陣が浮かび上がると中心部から赤い結晶が鎖となって絡みついた。
魔法。科学が進んだ現代に生きて来たリンコは、信じられないと言った様な表情でゆっくりとハルトと鎖を交互に見やった。視線に気が付いたハルトは、軽くウィンクして右手のバインドの指輪を手の形をした指輪に代え、左手にまた別の指輪を嵌めて、ミノタウルスに言い放ちながらバックルを操作する。
<ドライバー・オン、プリーズ!>
「さてと、付き合えよ。俺の最高のショータイムにな」
<シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!>
「変身!」
左手の指輪のバイザーを下ろし、それをバックルに当てると魔法石の指輪から出る魔力が具現化され、現れた赤い魔方陣がハルトを包み込んだ。
<フレイム、プリーズ! ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!>
『まさか……貴様は…っ!!』
「俺は希望の魔法使い。お前みたいな
今この瞬間、
続く
小説版平成ライダーもフォーゼまで出ているんですけど、ウィザードも出るのかなと疑問に思っている今日この頃。
因みに、現在自分が所有してりるのは、クウガ、W、オーズ、フォーゼの四冊でお気に入りはクウガです。