試合前夜   作:Lounge

8 / 9
この章の執筆にあたり、“オリキャラ“タグを設定しました。学校名からおわかりになると思いますが、この章にはオリキャラが登場します。嫌いな方は読み飛ばしていただいてかまいません。(一応ストーリーはなるべく原作準拠です)


Ex-2.八桝(京都)-Side B

あと一歩、届かへんかった…。東久世叶《ひがしくぜ かない》は悔し涙を抑えられなかった。

 

叶は、自分の麻雀は下手ではないと思っている。幼い頃から親戚と麻雀を打って育ち、京都の強豪である八桝の麻雀部でもレギュラーになるべく毎日先輩と打ち続け、2年になった今年にはレギュラーに選ばれたのだから、これは叶自身の思い上がりではないはずだ。

 

八桝のレギュラー選抜方法は独特のもので、必ず3年と2年を二人ずつに1年を一人レギュラーに選ぶ。前年にレギュラーに選ばれたからといって今年もレギュラーに選ぶということはなく、毎年レギュラーのメンバーは入れ替われるようになっている。そして学年でポジションも決まっている。

 

つまり、レギュラーに選ばれるのは各学年のトップなのだ。だから叶は2年の中ではトップ二人のうちに入っているということになる。もちろん、単にチームとして見るならば叶は一番強いわけではない。レギュラーの3年には個人戦京都府1位の躑躅ヶ崎春乃《つつじがさき はるの》と同じく京都府2位の図書伸子《ずしょ のりこ》がいるし、もう一人の2年レギュラーである鷹司暁美《たかつかさ あけみ》は1年の時からレギュラーだ。1年に負けているとは思っていないが、レギュラーに選ばれた冷泉叡子《れいぜい としこ》には時たま負けることがある。

 

けれども、それはあくまでレギュラーだけでの話で、叶は対外戦では負けなしだった。だからこそ大将というポジションに(学年の規定もあったとはいえ)なったわけだし、事実地方大会とインハイ一回戦はきっちりと大将としての役割を果たしたつもりだった。

 

問題は二回戦で起きた。今振り返れば、いくらでも言い訳する余地はある。

 

まず、当たった相手が悪すぎた。都道府県単位ではなく全国クラスの強豪として共に知られる臨海と東白楽が真っ向からぶつかった。しかし、幸運にも臨海は東白楽を集中的に狙い、東白楽は最下位に沈んだので中堅戦が終わった時には叶はあまり心配していなかった。今、叶が相手が悪すぎたと感じているは残りの一校、南北海道の有珠山である。

 

事態が動いたのは副将戦。八桝は2年二人の試合を残すのみになり、叶と暁美は臨海に離されないように、という指示のみを受けた。そのまま臨海のみを警戒していた暁美は、有珠山に役満の直撃を喰らい点差を大幅に縮められた。叶は副将戦の遅れを挽回しようとして、予定と違い攻撃的な麻雀を打とうとした。

 

予定と違うことをしようとすれば、必ずどこかに綻びが生じる。叶は最悪のタイミングでミスをした。

 

小さな和了を見逃し、大物手を狙いにいったのだ。確かに臨海に喰らいつくにはそのやり方が妥当だったが、幸運の女神は叶に微笑んではくれなかった。

 

「それロン、32000」

 

有珠山の恐ろしいところは、副将と大将だけで遅れを取り戻せてしまうところだ。叶は役満に振り込んでしまい、これが八桝の逆転負けの原因となった。

 

終局時、有珠山と八桝の点差は僅かに200。あの役満さえなければ、準決勝に進んでいたのは有珠山ではなく八桝であった。

 

今年は先輩と、決勝の舞台に立ちたかった。

あと一歩。後悔は意味を成さない。




オリキャラを出すと性格設定とか楽だよね。多分八桝のssを書くならこのキャラで書きます。

Q:なんで八桝?

A:地元京都の代表だから。

ちなみに八桝は京都市の北、花背の地名です。つまり八桝は山中の全寮制女子高!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。