試合前夜   作:Lounge

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お久しぶりです。てか3ヶ月放置っておい。
放置してる間に有珠山エピソードめっちゃ更新されてしまったので、設定変えて書き直したらさらに時間が経ってしまっていたでござる。


4.有珠山(南北海道)-Side B

 しかし、結成してまもない私たちでもここまでこれるもんなんだね。獅子原爽は驚いていた。

有珠山高校の麻雀部がまともに活動しはじめたのはおよそ10ヶ月前のことだ。それまでの麻雀部は麻雀部なのに麻雀をしないゆるゆる部活だったのだ。麻雀をやっていないのだから、インターハイに出るなど夢の話だと思っていた。

 

 

 真屋由輝子との出会いがなければ、きっと私たちの今はなかっただろう。

 

 

 ユキと出会ったのは偶然だった。たまたま買い出しの帰りに前を通った中学校の中をチラッと見た時に、派手に転んでプリントの山を撒き散らしていたのが彼女だった。周りには誰もいなかったので、助けに行こうと言ったのはチカだったか揺杏だったか。プリントを拾い集め、友だちがいないというユキの話を聞いて部活に誘ったのは確か私だ。

 

 名ばかり麻雀部にユキが来るようになって、私たちは初めて部活で麻雀をした。これも彼女が「麻雀部なのに麻雀をしないのか」と言ったからだった。ユキの家から雀卓を譲ってもらい、麻雀をする。新しい経験だった。分の価値を見いだせない彼女に、麻雀の雑誌を持ち出してアイドル路線を提案したのは揺杏だ。ユキを大改造して、かわいい顔と大きな胸を目立たせた。インターハイに出ようとしたのも、彼女に注目を集めるため、目立たせるためという理由が一つとしてあった。

 

 ユキが副将を務めているのも、このあたりに理由がある。インターハイにおいて、どの高校も強い選手はだいたい先鋒か大将におく。そのため、先鋒や大将には注目される選手が集まりやすい。だから、彼女を副将にすることで、目立ちにくい副将の中で目立たせようとしたのだ。これは結果的に有珠山高校が勝ち進むためにも有利に働いた。先鋒にした成香が麻雀を始めてまもないこともあって、中堅まで点数を削られることが多く、麻雀ができるユキが副将を務めることで、前半の失点をフォローできるのである。今までの試合は、そうやって彼女と私で他校を捲り勝ち進んできた。臨海が出てきたときは飛ばされないか心配したが、ユキが失点をカバーし、私が八桝を捲り逃げ切れた。

 

 準決勝ともなると、初出場の私たちにはかなり厳しい試合になるだろうな、と爽は思う。臨海はもちろん、大阪の姫松も怖い。きっと明日は本当に中堅までに飛ばされかねないような試合になるのだろう。けれど、明日の試合で一番怖いのは、同じ初出場校の清澄だ。2回戦は中継で見たが、強豪と言われる姫松を下して1位通過を決めていた。しかし何より問題なのは、清澄の副将が昨年のインターミドルチャンピオンであることだ。これではユキは目立ちにくい。さらに、ユキと私で捲って逃げ切るのも難しい。

 

 ここまで来たなら、優勝したい。そのためにも私がユキをフォローしなければ。爽は自分に言い聞かせた。


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