『更新停止』 東方加速録   作:sinononns

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どうも、sinononnsです。
AW新刊買って来ました!まだ読んでないけど。
今回も最後以外は読んでも原作通りです。なので読まなくても大丈夫です。でも、読んでくれると嬉しいです。感想くれると嬉しすぎて小躍りします。お待ちしております。

それでは、東方加速録[第9話 邂逅]をお楽しみ下さい。


第9話 邂逅

一台の白い乗用車。

その姿を視認した瞬間、ハルユキは自動的に口が動いていた。それと同時にケーブルからハルユキと同様の思念が流れてきた。

 

黒ハ『「バーストリンク!」』

 

バシィィィィィという音と共に世界が止まり青く変わる。ハルユキの体からブタ型アバターが出てきて地面に落ちる。

 

ハ「あ、危なかった。後少しでも遅れたらどうなっていたことかーー。一体誰がこんなことを。ブレーキの音はしなかったし、わざと僕らを狙って!」

 

ぼやきながら停止している車のボンネットに乗り上がり運転席を確認するハルユキだが、その顔はすぐに驚きに包まれることとなった。運転席には獰猛な目に狂気に歪んだ口元、ツンツンした赤毛の髪。この顔はーー

 

ハ「あ、荒谷!なんで、こいつが。まさかこいつが、シアンパイル」

 

黒「いや。ただの怨恨だろう」

 

後ろからいつの間にかいた黒雪姫が声をかけてくる。その声はさっきまでと違って、何時もの凛々しい声だった。

 

黒「しかし、だからこそ予想、警戒しておくべきだった。人が人を襲うのにブレインバーストは必要ない。刃物1本、車1台で十分だ。

………これは、報いなのだろうな。人の心を知ろうとせず、弄んできた私への」

 

自虐的な顔を浮かべている黒雪姫はその顔をハルユキに向ける。その目には、一種の覚悟がある様な気がした。

 

黒「だが君は、君だけは守る。絶対に傷つけさせない」

 

ハ「え?な……何を、言ってるんです」

 

黒「加速の最大最後の力を使って、君を助てみせる」

 

黒雪姫と白い乗用車の間にはハルユキの体がある。自分の体を盾に黒雪姫のダメージを減らすことができる。だから、その順番でよかった。

 

なのに………

助ける?

貴方が、僕を?

そんなの……

 

ハ「ダメだ!そんなのダメだ!そんな力があるなら僕が使って、貴方を助ける!僕は駒なんだから、僕が貴方を助けなきゃいけないんだ!教えてください。最後の力ってなんですか!どうやって使うんですか」

 

黒「君には使えない。このコマンドは、レベル9以上でなければ使えないし、ポイントの99%を消費する。それに、私は君の<親>だ。<親>は<子>を守るのが当たり前だ」

 

ハ「でも……でも………」

 

黒「そんな顔をするな。この状況でも、私には一つの救いがある。いまの私の言葉なら、私の最後の言葉としてなら、君は私のことを信じてくれるだろう。」

 

そう言うと黒雪姫は唐突に瞳を閉じ、淡い微笑みを浮かべ

 

黒「ハルユキ君。私は、君が好きだ」

 

開いたまぶたの中のの、綺麗な黒い瞳が、ハルユキを見つめる。

 

黒「生まれて始めての感情だ。制御出来なくて昨日も朝も失礼な態度をとってしまったが。学校でも、家でも、いつでも君のことを考えて、嬉しくなったり、悲しくなったりしているよ。これが恋というものだったんだな………。なんて素晴らしい………奇跡なんだろう」

 

胸の前で両手を握り、微笑む黒雪姫。

その笑みは暖かく、優しく、心地よく、しかし鋭い痛みを伴って、ハルユキの胸に届いた。

信じたい。信じたい。信じたい。信じたい。信じたい。

 

 

信じたい

 

ハルユキのアバターの瞳から、涙が零れる。涙でかすれる声のまま、ハルユキは聞く。

 

ハ「なんで………なんで僕なんです。こんな僕を……どうして」

 

黒「理由はたくさんあるが、と言うか恋に理由はいらないとも思うが。それならきっかけを教えよう。ハルユキ君、君と私のファーストコンタクトを覚えているか?」

 

ハ「もちろん覚えてます。でも、それが何か?」

 

黒「あの時のゲームの記録な。あれは加速を使ったんだ」

 

ハ「え?」

 

黒「加速無しでは君の記録の足元にも及ばなかった。君の興味を引き説得しやすくするためにどうしても更新したかったから、仕方なくね」

 

黒雪姫は視線を空に向けながら言葉を続ける。

 

黒「私は6年前、たった八歳の時にバーストリンカーになった。それからは、ひたすら強さと速さを求め、幾多の敵をレベル9になった。そこからさらに友の血までもこの両手に染めた。そんな私ですら、君のハイスコアには全然届かなかった。

ハルユキ君、君は速い。誰よりも速くなれる。私も、他の王も超えて。速さこそが最大の力だいつか君は加速世界最速のリンカーとして、その名を知られる様になるだろう。六王を倒し、その地平すら超えて、ブレインバーストの根源へとたどり着くだろう。そして知る。我々の脳と魂に秘められた究極の可能性を」

 

黒雪姫の瞳には何処か遠いところを見る様なものがあった。それはもしかすると王達のその先見据えているのかもしれない。

 

黒「私は、君があのゲームをプレイする姿を見て震えたよ。いままでにないほどに戦慄し、また感動した。人は、これほど速くなれるのかと。《エウレカ、我ついに見出したり、停滞した世界を再び加速する真の王を》と、心の中で叫んでいたよ」

 

ハ「僕が誰よりも速い?」

 

ハルユキは の声は涙で濡れていた。顔もぐちゃぐちゃで、視界も強力なライトエフェクトで歪んでいた。

 

ハルユキには信じられないことだったが、今の黒雪姫の言葉を疑うことは許されなかった。

 

黒「でも、現実世界の君はとてもフラジャイルで、切ないほどに痛々しくて………。未来の王に跪きたい。それと同時に君を守って、包んであげたいそんな二つの気持ちがどんどん大きくなって、気づいたら、君しか見えなくなっていた。気づいたのは、昨日のことだったが」

 

ハ「昨日?」

 

黒「きみが倉嶋君の話をした時にね。嫉妬する、というのも始めてのことで自分で自分を制御出来なかった。気づくのが遅すぎたかな。いや、遅すぎたということはないだろう。こうしてちゃんと、告白できたからな。さあ、そろそろ時間だ」

 

ハ「時間ってなんですか……。何をするんですか!僕は何もあなたに返せていないんです!あなたに……何……ひとつ………ッ!」

 

涙で喋れないハルユキの唇を何かがふさいだ。目の前には目を閉じる黒雪姫の顔があった。しばらくすると黒雪姫の顔が離れ、それと同時に唇をふさいでいた感覚も消えて行った。目に涙を浮かべながら黒雪姫は言う。

 

黒「きっと……また会えるから」

 

黒雪姫の顔から涙がこぼれる。

立ち上がる黒雪姫の足にしがみつきながら、ハルユキは必死で止める。

 

ハ「やめてください先輩!先輩!」

 

しかし、体格差がありすぎるため、止められない。黒雪姫は白い乗用車の前に立ちはだかると、コマンドを唱える。

 

黒「フィジカル・フル・バースーーーっ!」

 

バシィィィィィィィィィィィィ!

 

黒雪姫が言い切る前に、凄まじい音が響き、黒雪姫の視界は暗転する。暗闇の中には、炎で縁取られた英文が一つ。

 

【HERE COMES A NEW CHALLENGER‼︎】

 

END




いかがでしょうか。
次回は東方キャラがついに対面します。お楽しみに。
前も言いましたが、この作品はAW原作1巻の内容終了あたりで更新停止します。理由は活動報告を出しておくので、そこで確認してください。

それではまた次回。
いつかはわかりませんが。

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