ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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書き溜めが…。


本日の目玉商品『ゾンビキラー』

タケルとポップが戦っている頃、ダイもまたオロチゾンビの元へ急いでいた。

騎士の鎧は既に自分の動きやすいように動きを阻害するパーツを剥がしていた。

肩当てと胸当て、そして頭にはサークレット。

その姿は正に勇者に相応しいものだった。

 

「あ、危ないっ!!」

 

視線の先ではオロチゾンビが逃げ遅れた母娘に向かってブレス攻撃を行おうとしていた。

母親は瓦礫に足を取られて身動きが出来ないようだ。

ダイはタケルから渡されたゾンビキラーを抜き放つとオロチゾンビと母娘の間に割り込んだ。

オロチゾンビの凍える吹雪。そしてダイの『海波斬』は、ほぼ同時だった。

鋭い剣閃がブレス攻撃を両断し、更にその先にいるオロチゾンビを襲う。

ゾンビキラーという名刀によって放たれたダイの技は正に強力の一言だった。

八つの頸の内、一気に三つの頸を刎ね飛ばした。

しかし痛みも恐怖も感じないヒドラゾンビは構わずに残りの頭がブレス攻撃を放とうと息を吸い込む。

 

「くっ、早く逃げろ!」

 

ダイは母娘を庇うように前に出るとオロチゾンビを強く蹴り飛ばした。

オロチゾンビの巨体が揺れブレスが中断される。

 

「こっちだ!」

 

ダイは母娘から注意を逸らすために挑発するようにオロチゾンビの目の前を横切る。

その時だった。

ゴポッ、ゴポポ…ズズズズズッ!

 

「な…、さ、再生したっ!?」

 

驚くべき事にヒドラゾンビの頸が新しく生えてきたのだ。

腐り落ちそうな状態は相変わらずだが、それでも元の状態に再生してしまう。

 

「ひっ」

 

その悍ましいまでの様子に母娘も、周りの人間達も小さく息を呑んだ。

このままだとマズイ。ヤツを完全に倒し切るには再生速度を上回る攻撃を一気に叩き込ましか無い。

自分の攻撃手段ではそれは二つだけだった。

その内の一つは自分の意志で使いこなす事が出来ない謎の能力。

ならば答えは一つ、『アバンストラッシュ』以外にない。

このゾンビキラーに全ての力を込めて振り抜けば、完全に倒しきる事が出来るだろう。

しかし、問題は周りに住人たちだ。

彼らを護りながら大技をヒドラゾンビ相手に決めるのは難しい。

 

 

ダイはチラリと逃げ遅れた母娘を見た。

そこには先程の占い師の二人組が来ており、必死に瓦礫を退かそうとしている。

戦士風の男たちも老婆に叱咤されながら怯えた表情で瓦礫相手に奮闘している。

 

「ダイくん」

 

「レオナ!?」

 

「他の人達はもう避難したわ!後は…」

 

「わかってる!でもこの状況じゃ…っ!!」

 

ダイは必殺剣の構えを取ろうとするが瞬間、強烈な尾撃が鞭の様にダイへ振り下ろされる。

十分に距離が開いているなら兎も角、こんな状況ではのアバンストラッシュは難しい。

かといってヒドラゾンビと距離を取れば、今度は逃げ遅れた人々が標的になる。

 

「くそっ!」

 

このままだとジリ貧だ。

どうにかしてこの状況を打開しないと。

そんなダイの苦境に更に追い打ちが掛かる。

 

「…ダイ…っ!…姫さんっ!!」

 

「ポップ!?それにタケル!?」

 

視線の先には意識を失ったタケルを傷ついた身体で背負いながらも現れたポップだ。

飛翔呪文によってコチラに向かってくる。

その後ろからドラゴンゾンビが三頭、後を追ってきていた。

 

「済まねえっ!三頭、仕留め損なっちまったっ!逃げてくれ!」

 

「そ、そんな…」

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

男たちは瓦礫から手を離すと一目散に逃げ出していく。

戦場はパニックに陥ってく。

 

「チクショウ…、このままじゃ…」

 

「ポップ、危ないっ!!!」

 

ポップ自身も気が付かなかった。

焦りで何時の間にか飛翔呪文の高度が落ちていた。

そこにドラゴンゾンビの突進が迫る。

 

「…っ、どけポップッ!!」

 

何時の間にか意識を取り戻したタケルがポップを突き飛ばした。

 

「タケル!?………タケル!!!!」

 

数トンもの巨体による突進。

それは正に痛恨の一撃だった。

ポップを庇うように咄嗟に身体を入れ替えたタケルは身を守る行動が出来なかった。

 

「ああ、あ……ああっ!!!」

 

ダイはそんなタケルの姿をただ見ているしか出来なかった。

ゆっくりとタケルの身体が宙へと投げ出され、そして勢い良く地面に激突した。

ポップが駆け寄りタケルの身体を起こして…、そして悔しそうに涙を流して俯いた。

タケルは死んでしまったのだ。

 

「…う、ううぅ……うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

プツン、ダイの中で何かが切れた。

額に輝くは竜の紋章。

ダイは竜の騎士へと覚醒し猛然とヒドラゾンビへ突撃した。

ヒドラゾンビもブレスによって反撃するが、竜闘気によって守られたダイは相手に攻撃を物ともせずにヒドラゾンビに肉薄した。

ダイはヒドラゾンビの巨体を踏みつけた後、流れるように背後に周り尾を掴む。

そしてドラゴンゾンビの群れへと投げ飛ばした。

続けて瓦礫を破壊して母娘を助け出す。

 

「早く逃げろ」

 

ダイの怒りの表情に母娘は顔を青くする。

その神々しい輝きと鬼のような威圧感。

占い師はその姿に目を丸くする。

 

「あ…、あの紋章はまさかあの方は竜の騎士さま…!?」

 

「まさか…竜の騎士さまの戦いを見られるなんて…」

 

「竜の騎士?」

 

レオナは初めて聞く言葉に首を傾げる。

 

 

 

 

「はああああああっ」

 

ダイは剣を高く掲げると電撃呪文ライデインを唱えた。

ゾンビキラーは電撃を帯びバチバチと火華を放つ。

ダイは一箇所に固まったドラゴンゾンビとヒドラに向けて最高の奥義を振り切った。

黄金の剣閃が雷を纏いながら目標に直撃。そして轟音。

パラパラと砂塵が舞い、そこには最早肉片一つ残らずに敵が消滅していた。

同時に竜の紋章も役目を終えて輝きを失った。

 

「……っ、タケル!?タケル!!!」

 

戦いが終わり、ダイは表情を一変させた。

その表情は先程までの凶暴な戦士の顔ではない。

親しい人間を気遣う普通の少年の顔だった。

ダイはポップと共にタケルの顔を覗き込む。

 

「酷い…」

 

後から来たレオナも思わず口元を覆った。

身体中、酷い状態だ。腕も足もズタボロで。

それに呼吸もしていない。

 

「レオナ!」

 

ダイの言葉にレオナは直ぐに気を取り直してベホマを掛ける。

しかし、まるで効果がなかった。

傷も塞がらなければ、タケルは目覚めもしなかった。

 

「う、嘘だ…、タケル、しっかりしてよ!!」

 

その時だった。

タケルの身体が眩い光を放ち始めた。

風が香る様な翠風が青葉の様な光を運び、碧い光へと変わる。

神秘的で幻想的な光景。

タケルの傷はみるみるうちに塞がっていき、そして。

 

「あれ?オレ…」

 

「うそ…」

 

レオナが信じられないという顔をした。

ダイやポップも同様に。そして周囲に人々も…。

 

「生き返ったの…か?」

 

「は?生き返る?何言ってんだ?」

 

タケルは訳が分からずに首を傾げる。

そして厳しい表情になってポップに詰め寄った。

 

「そうだ!ポップ!ドラゴンゾンビは!?どうなった!?」

 

「そ、それならダイが倒しちまったよ。すごかったぜ…それよりもお前」

 

「…あん?」

 

「何かまた道具でも使ったのかよ。まさか生き返るとは思わなかったぜ」

 

「は?イキカエル…?何を?」

 

「心臓は完全に止まっていたわ…ベホマでも効果が無いし…」

 

タケルは皆の言葉に漸く気づいた。そして思い出したのだ。

自分は咄嗟にポップを庇い、そして敵の痛恨の一撃を受けて……。

死んでしまったことを。

 

 

タケルの手には何時の間にか青葉が握られていた。

よく似ているが『世界樹の葉』ではなかった。

青葉は空気に溶けるように消えてしまった。

 

「そっか…じゃあオレ、本当に…」

 

タケルは立ち上がる。

そして周囲からの視線を感じ辺りを見渡した。

町の住人達だ。

何か化け物を見る様な目で此方を見ている。

 

 

タケルは納得した。

おそらくダイの戦いを間近で見てビビってしまったのだろう。

タケルは一歩前に出ると。

 

「おい、アンタら。助かったんだからもっと嬉しそうな…」

「近づくな化け物っ!!!」

「…っ!?」

 

いきなりの非難の言葉にタケルの足が止まる。

ダイに向けての言葉か?いや、コイツはオレを見て化け物といった。

タケルは思わず喉を唸らせる。

 

 

間違いなく自分は化け物などではない。

自分が生き返ることが出来たのは、間違いなく世界樹の加護によるものだろう。

しかし、しかしだ。この町の住人達はそんな事は識らない。

確かにこの世界において蘇生させる法はある。

ザオラルによる蘇生だ。しかしそれもかなり条件が限定されており確実ではない。

タケルはひとりでに勝手に蘇生したのだ。

理解できない。あまりにも不自然。

町の住人にこのような目を向けられるのは必然だった。

まさかの事態にタケルは戸惑うばかりだ。

そして急激に腹の底が冷たくなっていくのを感じた。

 

「……はぁ?おい…何を言って」

 

タケルは周囲を見渡すが、住民は目を合わせないように反らしたり俯いたり。

そして視線の先に女の子を見つけ。

 

「ああ、さっきの…助かって良かった…」

 

「娘に近づかないで!」

 

母親が傷ついた足を引きずりながらも娘を守るように抱きしめる。

 

「な、何で?何で皆そんな事を…」

 

この状況に戸惑ったのはタケルだけではなかった。

皆の余りの態度にダイは前に出る。

何故こんな空気になるんだ。タケルが助かって、皆が助かって良かったじゃないか?

戦いの後、こんな気持になったのは初めての事だった。

 

「…ひっ」

 

手の伸ばした先の女の子が怯えた表情で母に抱きつく。

 

「ど、どうしたの?」

 

「こ、こわい…、こわいよ!お兄ちゃんたち怖いっ!!」

 

「怖い?オレたちが…、な、なんで…」

 

「君が人間じゃないからだよ…ダイくん…」

 

「誰だ!?」

 

「おっと、人間じゃないのはそこの君も同じかもしれないね…」

 

「…タケルもだと?」

 

「ふふ、人間は勝手だよねぇ…命懸けで守って貰っておいて…でも納得だよ。君の余りにも人間離れした戦い振りを見て怖くなったんじゃない?中にはゾンビみたいに勝手に復活しちゃう子もいるみたいだけど…」

 

現れたのは全身黒装束に身を包んだ道化師だった。

 

「僕はキルバーン。ただの使い魔さ。口悪い友達は死神なんて呼ぶけどね」

 

 

 

 

遂に出てきたか。

タケルは自身に向かられた恐怖の感情。

そしてその事で中に渦巻く感情を抑えながらキルバーンを睨みつけた。

 

(…あの小悪魔は…キルバーン本人の姿がない…どこだ?)

 

タケルは小悪魔の姿を探す。

 

「はぐりん…」

 

タケルはこっそりとはぐりんに指示を出すと、毒針を持たせる。

はぐりんは凄まじい速さで皆の目に止まらない様に姿を消した。

 

「お前がコイツラを操っていたのか?」

 

「ふふふ…不死の竜は気に入ってもらえたようだね。用意したかいがあったよ」

 

「どういう意味だっ!?」

 

「最近ボクたちの間でも君の話題が上がっていてねぇ…なにせ魔王軍の軍団長を立て続けに退け遂には前の総攻撃をも跳ね除けた」

 

死神は歌うように話す。

 

「それで君の正体を見極めようとドラゴンゾンビをプレゼントしたのさ。お陰で君の本当の姿、正体に確信を持てたよ」

 

「オレの本当の姿?正体っ!?どういうことだっ!!!」

 

「ふふふ、近いうちにまた会お…」

 

そこでキルバーンの動きが止まる。

 

「こ、こいつ…、なにするんだ!?やめろっ!」

 

瓦礫の影から小悪魔が飛び出す。

追いかけるようにはぐりんも飛び出した。

 

「…おやおやピロロ…姿が見えないと持ったら」

 

キルバーンははぐりんにじゃれつかれているピロロを見て愉快そうに笑う。

 

「ふ、ふんだ!助けてくれてもいいじゃないか!」

 

「ごめんごめん。それにしても『はぐれメタル』とは珍しいな。さぁピロロから離れたまえ」

 

その時だった。

 

「はぐりん!!!」

 

タケルの大声。

ただの大声じゃない。これは相手を威圧し身を竦ませる『雄叫び』だ。

世界樹の加護を自覚したタケルが身につけた新たな力。

その声にピロロは身を竦ませ一瞬動きを止める。

今が最大にして最後の好機。当たれぇええええええええっ!!!

 

「バイキルト!」

 

タケルは手にした槍を目標目掛けて全力で投擲した。

 

「『穿け』地獄の魔槍ッ!!!」

 

言霊による武具の能力の発動。

槍から凄まじいまでの死の呪いが放たれる。

槍は禍々しい黒い光線と化し小悪魔に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:247

防御力:116

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

 




ここで引っ張ります。
ピロロさん(キルバーンの安否が気になります)
そして化け物扱いされたのはダイだけではありませんでした。

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