「是非その剣を売って欲しい!この通りだ!」
現在、俺の目の前で美男子が頭を下げて懇願している。
ここはリンガイア王国。
世界でも1、2位を争う程の軍事国家で城塞王国として有名だ。
突然凶暴になり始めた魔物たち、巷では魔王が復活したのではないかという噂が実しやかに囁かれていた。
俺はこの国ならば、そう易々と魔物達の侵攻に遅れは取らないだろうとリンガイアにやってきた。
道中、何度か魔物に襲われもしたが、チート装備の特殊な力でどうにか撃退。
リンガイアへ辿り着いた俺は、いつも通りに露天を開いた。
本日の商品はコレだ!
特やくそう(HP90回復)100G
超万能薬(HP90~120回復・眠り、麻痺、毒、猛毒、混乱回復)300G
世界樹の雫(パーティーのHPを完全回復)3000G
世界樹の葉(死者蘇生)10000G
エルフの飲み薬(MP完全回復)3000G
爆弾石(イオラの効果)170G
砂塵の槍(マヌーサの効果)6600G
ムーンアックス(攻撃した相手を混乱させる)8800G
ウィングエッジ:9000G
普通のチーズ:10G
辛口チーズ:15G
おいしいミルク:5G
高価な物ばかり取り揃えると全く売れない日もあるので普通の客にも手が届く値段の商品も並べておく。ドラクエⅧのチーズだ。
戦いの役には立たないが需要はある。
俺は吹雪の剣を自分の側に置く。最近かなり物騒だからだ。
強引に商品を持って行こうとしたりする者。
そして難癖つけて営業妨害をする奴が出てきたのだ。
今回も…。
「テメェ!舐めてんのか!」
「そうだ!足下見やがて!こんな値段ありえねぇ!」
「いいえ、適正価格です」
俺は文句を付けてきた二人組の男にピシャリと言い放った。
男たちは顔を真っ赤にして睨みつけている。
「買う気がないのなら、ご遠慮ください。
他のお客様のご迷惑になりますから」
「な、何だと!?」
「俺達は客だぞっ!?」
「お客様、値切りの交渉ならば当然の事、
しかし度が過ぎれば唯の営業妨害です。お引取りを」
「こ、この糞ガキがぁっ!」
男達は腰に差していた短刀を抜き放った。
周りから悲鳴が上がった。
ヤレヤレ、最近はこういった客が多くて困る。
俺は側に置いてある吹雪の剣に手を掛け、そして―
「やめないかお前た「氷結っ!!」…うわぁぁぁあああ!?」
吹雪の剣に込められた力を放つと同時。
誰かが割り込んできたような気がした。
「「「うわあああああああああっ!!!!」」」
「……あ」
割り込んできた誰かは男二人組と共に吹雪と突風に巻き込まれ吹き飛ばされる。
リカントを一瞬で凍りづけにする吹雪の剣。
本来ならマヒャド級の威力を出せるが、手加減して放つ事が可能だ。
そうでなければ辺り一帯が銀世界になっている。
そんな事よりも…。
「大丈夫かな?」
「……うくくっ…だ、大丈夫だ」
巻き込まれたのは青年のようだ。
蒼銀の髪の凛々しい顔立ちの美青年。
青年は服についた氷や霜を払いながら立ち上がった。
「す、すいません。大丈夫でしたか!?」
「ああ、平気だ。それよりも君は凄いな。
商人でありながら、あれほど高度な呪文を使うとは」
「いや、さっきのは呪文じゃなくですね」
俺は吹雪の剣を見せて言った。
「この剣の力なんですよ」
俺が吹雪の剣を見せると青年は目を見開いて驚いた。
「な、それじゃあその剣は伝説の武具なのか!?」
伝説の武具?
何言ってんだこの人。
別に勇者以外でも装備出来るぞ。俺も出来るし。
「いえ、伝説の武具じゃなくて俺が作った―」
「―なんだって!?これほどの剣を君が!?」
青年は吹雪の剣を手にとって刀身を覗き込む。
まるで剣に魅入られたように夢中になっている。
「……吹雪の剣といいます」
「吹雪の剣……、北の勇者たるボクに相応しい…っ!」
北の勇者?
どっかで聞いたような。どこだっけ?
それにしても勇者を名乗るとは…。
前のお客さんは格好がⅢの勇者だったし。
流行ってんのかな?
「頼む!」
青年がいきなり大声を上げた。
「どうかこの剣を売ってくれ!」
ナルホド、吹雪の剣が欲しくなったわけですか。
確かに欲しくなるのも頷ける。
何せ俺でさえ愛用している一品だからね。
しかもドラクエⅤの吹雪の剣。
なんと攻撃力105!
戦闘中使用するとマヒャドの効果!
最後まで愛用できる最高クラスの攻撃力の剣ですよ。
どうしようかな?
それ、売り物じゃないんだよね。
何せ俺の護身用として錬金した剣だし…。
「お客様、それは売り物ではございません。
コチラの剣は如何でしょう?お客様にピッタリですよ?」
俺は玉鋼の剣を取り出すと、青年に差し出した。
「違う!」
青年は腕を振って叫んだ。
「ボクは、ボクに必要な剣は、その吹雪の剣だけだ!
どうかこの通りだ!その剣をボクに売って欲しい!」
終いには青年は頭を下げて頼み始めた。
それを見た他の客や通行人がヒソヒソとし始める。
「ノヴァ様があんなにしてまで頼んでるのに」
「ひどい!ノヴァ様が可哀想!」
「大体、あんな冴えない奴があれほどの剣なんて似合わねーだろ?」
「宝の持ち腐れだな」
どうやら青年はこの国では有名人であり人気者のようだ。
それ以上に俺のライフは今にもゼロになりそうだよ!
こんちくしょう!わかったよ!売ればいいんだろ!
ククク……、売ってやるよ!買えるものならな!
「わ、分かりました。お客様の熱意に負けました」
「ほ、本当か!?あ、ありがとう!」
俺の言葉に青年の表情はパァっと明るくなった。
俺の手をとってブンブンと上下に振って礼を言っている。
どんだけ気に入ったんだよ吹雪の剣。
「吹雪の剣、60000Gになりま~す!」
ピシリッ!
周りが凍りついた。
吹雪の剣を実際に使ったみたいに。
そしてまた周りがヒソヒソと話し始める。
「聞きました?60000Gですって!」
「さっきの二人組の言う通りだわ。完全に足下見てますよ」
「ノヴァ様は勇者だぞ!もっとまけろ!」
「そうだ!そうだ!」
「やめないか!みんな!」
ノヴァは周囲を一喝してコチラへと向き直り頭を下げた。
「すまない、街の皆が失礼をした。
代金は城のものに届けさせる。剣は使いの者に渡してほしい」
「は、はい。毎度ありがとうございます…」
か、買うのか?マジで?
60000Gだぞ!?どんだけ金持ちなんだよ!?
ゴールドは魔物から生まれる世界じゃないんだぞ!?
超大金なんだぞ!?
「ノ、ノヴァさま、よろしいのですか?将軍が何と言うか…」
兵士が二人、ノヴァに詰め寄っている。
今まで気が付かなかった。護衛の人かな?
「し、心配ないさ。これも正義のため。
パパも…いや、父上も分かってくれるさ」
将軍だって?
良い所の坊ちゃんどころじゃない!
本物のセレブかい!?
「この吹雪の剣は『氷結』の号令でその力を発揮します。
使用の際はくれぐれもご注意下さい」
「わかった。『氷結』だな。覚えておこう」
ノヴァ様が去って約1時間後、城の使いが来た。
そして確かに60000Gを支払い、吹雪の剣を購入していった。
将軍家パネェ…。
「店じまいするか…」
護身用に片手間で作った吹雪の剣。
まさか60000Gに変わるとは…。
60000Gは冗談だったんだけどなぁ。
ヤバイ!ニヤニヤが止まらない。
こうなったら吹雪の剣、また錬金しても良いかもしれない。
材料に余裕はあるしな。
いや、そんな事よりも重要な事実に今気づいた。
もっと早くに気づけよ俺のアホ!
「ダイの大冒険か…」
主要人物に有ってんじゃん。
アバンとポップ組じゃなくて北の勇者で気づくとは…。
まぁ、イイ買い物していったからな。
やっぱりお客様は神様だな。
という事はどれだけレベルが上がっても魔法は覚えないだろうな。確かこの世界は特殊な呪文を除き、契約しないと魔法は習得出来ない筈。
俺のMPって有り余ってんだよな~
自衛のためにも是非とも呪文書がほしい!探してみるか!
さて、今後の方針も決まったことだし今夜はパァーッと楽しむかな。
パ、パフパフとか…。
本日のタケルのステータス
タケル
性別:おとこ
職業:錬金術師
レベル:6
さいだいHP:37
さいだいMP:515
ちから:20
すばやさ:16
たいりょく:20
かしこさ:256
うんのよさ:256
攻撃力:60
防御力:65
どうぐ
E:雷帝の杖
E:ビロードマント
E:力の盾・改
E:幸せの帽子
E:スーパーリング
呪文・特技
錬金釜 採取 大声 口笛
寝る 忍び足 穴掘り
ドラクエの身の守りは素早さ÷2ですね。