ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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本日の目玉商品『破邪の剣』

フレイザードの謀略の手から逃れた後、俺達は地底魔城から離れた森の中で身を休めていた。オレは一人ずつ回復魔法を掛けていく。

ダイ、ポップ、マァムに続いてヒュンケルにも…。

 

「暫くじっとしてろよ、ベホイミ…」

 

「あ、ああ…、だが良いのか?オレは…」

 

ヒュンケルは顔を伏せながら呟いた。

その背中には悲壮感が漂っていて、身体中に刻まれた傷同様痛々しい。

 

「んー?いいんじゃね?」

 

原作知識からの確信も有ったのだろう。

ヒュンケルはもう大丈夫だ。

オレは何でもないように言った。

 

「な、なんだよ?」

 

ヒュンケルは目を見開いて俺をじっと見た。

そ、そんな目で見るなよ…。

 

「いや、俺は魔王軍の元・軍団長だぞ?お前たちの敵として多くの人間を殺してきた…この国も俺が滅ぼしたんだ…」

 

「あー、そうか…、でもさ、そんな事俺に言われてもなぁ…。まぁ、罪の意識があって償う気なら俺じゃなくてレオナ姫に裁いてもらえば?」

 

「つまり、俺にお前たちと共に戦えと?」

 

「俺じゃなくてダイ達とだけどな…」

 

「そうよ、ヒュンケル…私達と一緒に行きましょう!」

 

「マァム…」

 

「そうだよ!」

 

「まぁ、なんだ…オメエみたいな奴でも戦力になるからな…」

 

「ダイ、ポップ…」

 

アバンの使徒、四人の間に確かな絆のようなものを感じた。

なんか良いなこういうの…。

友情芽生えちゃってるよ。

感慨深い…。

だがヒュンケルは頭を振って俯いた。

 

「駄目だ…お前達が良くても他の者達は納得せんだろう…無論、この俺もな…」

 

勇者であるダイが自分と行動を共にする。

魔王軍であった自分と。

それは周囲からの疑惑へと繋がる事になりかねない。

ヒュンケルは身体を起こした。

まだ完治していないからだろう。

その動きはギコチナイものだった。

 

「お、おい!まだ全快してない…」

 

「いいんだ」

 

「良くねーよ!」

 

マジで良くないです。

漫画じゃ分からなかったけど実際に見ると…。

ダイに斬られて焼かれた傷が痛々しいです。

しかも何故か治りにくいし。

竜闘気、使ってないよね?

しかも傷口が焦げ臭いし下手すりゃ腐るんじゃ…。

あ、焦げ臭いのは雷鳴の剣(オレの所為)か…。

 

「とにかく!」

 

「ぐっ!」

 

オレはヒュンケルの襟首を掴むと強引に座らせた。

まだファイト一発の効果は切れていなかったので楽だ。

お前は暫く絶対安静だ!

オレは再びベホイミを掛ける。

そろそろベホマの呪文、覚えたいな…。

チマチマ回復するのは面倒だし…。

 

「おーいっ!」

 

「…ん?」

 

「ありゃ、バダックさんじゃねえか?」

 

俺達が休息をとっている所にバダックさんが合流してきた。

そういえば一緒に来ていたんだったな。

 

「よ、良かった!お前さん達、無事じゃったのか!」

 

バダックさんは、はあはあと息を切らせながら嬉しそうに言った。

 

「マグマに地底魔城が飲み込まれた時は、もうダメかと思ったぞぃ…」

 

「へえ、よく俺達の無事が分かったな」

 

「それは、コヤツらのお陰じゃ!」

 

「久しぶりだな、ダイ ポップ マァム…それにヒュンケルよ」

 

「き、貴様は…」

 

ガサガサと草むらから姿を現したのは嘗ての軍団長。

獣王クロコダインだった。

クロコダインは部下のヘルコンドルを伴ってその姿を現した。

 

「クロコダイン…ッ!?」

 

「いやぁ、コイツと出会った時は腰を抜かすところじゃったわい」

 

バダックさんは頭を掻きながら高笑いした。

順応早いな爺さん…。

それにしても…。

オレはクロコダインはじっと見てみる。

改めて見ると凄い迫力だ。あ、目が合った。

 

「貴様は…」

 

「どうも、タケルです」

 

オレはビビりまくる内心を隠しながら素っ気なく挨拶した。

コッチ見ないで。普通に怖いから。

 

「そうか、見た顔だと思ったら魔の森で会ったな」

 

「知り合いか?」

 

「少しな」

 

ヒュンケルはオレとクロコダインを見比べる。

 

「…おかしな商人だな」

 

オレの人間と怪物関係の事だろうか?

ダイ達、アバンの使徒と魔王軍の軍団長。

唯の商人が関わるには過ぎた者達だろう…。

オレの口から乾いた笑いが漏れた。

 

「クロコダインから聞いたわい。お前さんがヒュンケル、魔王軍の軍団長じゃな…」

 

「ああ、そういう貴様は鎧からしてパプニカの兵士か」

 

滅ぼした側と滅ぼされた側。

互いに剣呑な空気が流れる。

バダックは無言でヒュンケルをじっと見つめる。

そして背を向けると静かに言った。

 

「お前さんに償う気があるなら、ダイ君達に力を貸してやれ……レオナ姫の事、頼んだぞい」

 

 

「……承知した」

 

バダックの言葉にアバンの使徒達の顔が綻ぶ。

安堵の溜息を吐いた。

 

 

閑話休題

 

そういえばフレイザードとの戦いが近かったな。

ダイ達の装備、換え時かもしれない。

ダイの胸当ては完全にオシャカになっているしな…。

オレは道具袋を漁りながらダイ達に声を掛けた。

 

「ダイ」

 

「タケル、どうしたの?」

 

「お前達の装備、もうボロボロだろ?そろそろ新しい装備でもと思ってな…」

 

「え?」

 

オレは今のダイの力量に見合った装備を一つ一つ出す。

ポップ、マァムも興味深そうに寄ってきた。

本日の商品はコレだ!

 

「おお!」

 

「すげー!」

 

ダイとポップが身を乗り出して見を見開いた。

オレが出した武具は次の通りだ。

 

破邪の剣 

銀の胸当て 

魔法の盾 

 

いかずちの杖 

魔法の盾 

 

身かわしの服

魔法の盾

銀の髪飾り

 

上からダイ、ポップ、マァムの装備だ。

 

「早速オレが装備させてやるよ。まずはダイからだ」

 

「え、でも本当に良いのかい?」

 

「確かに、見る限りどれも高価な物ばかりだわ」

 

ダイとマァムは目の前の装備に戸惑いの表情を見せた。

 

「ダイ、これからレオナ姫を助けに行くんだろ?あのフレイザードって奴の強さがどれほどか分からないけど軍団長の一人って事はかなり厳しい戦いになると思う」

 

「…確かにな。奴の残忍さは六団長随一だ。戦って負けるとは言えんが、どんな卑劣な手を使ってくるか」

 

オレの言葉にヒュンケルが続ける。

クロコダインも同意するように頷いている。

 

「オレはお前らに賭けてんだよ。ダイ、お前らアバンの使徒なら絶対に魔王軍に勝つってな」

 

「タケル…」

 

「こんな武具くらい幾らでも用立ててやるよ」

 

「ありがとう…」

 

「ははっ!そんなに感動するなって!照れるじゃないか」

 

本当はもっと強力な装備がある。

その事を知れば怒るかな…。

まぁ、装備に力量が追いついてないしな。

あとで説明すれば分かってくれるだろ。

 

「じゃあお前ら、コッチに来い!装備してやるからさ」

 

オレはダイから順々に装備してやる。

ダイに銀の胸当てを装備させてやる。

新しいベルトと鞘当てを取り付けて破邪の剣を腰に差す。

そして魔法の盾をバックラーの様に腕に装着させて完了。

 

「どうだ?動きづらくないか?」

 

「うわぁ…凄く軽いし動きやすいよ!ありがとう、タケル!」

 

次にポップにも同じ様に魔法の盾を装備させる。

そしていかずちの杖を手渡した。

 

「サンキュー!」

 

次にマァムに身かわしの服を手渡す。

 

「マァムは取り敢えず向こうで着替えてきてくれ」

 

「ええ、本当にありがとう」

 

「サイズが合わなかったら言ってくれ。たぶん大丈夫だと思うけど」

 

それからとオレはマァムに銀の髪飾りを差し出す。

 

「タケル、これは…」

 

「銀は魔除けの力があるらしいぞ。それに鉄の兜に匹敵する防御力があるし…その、マァムに似合うと思って…」

 

「あ、ありがとう…」

 

マァムは身かわしの服を岩の上に置くと髪飾りを髪に止めた。

マァムの頭上で銀の髪飾りが輝いた。

 

「どうかな?」

 

「うん、よく似合っている」

 

「けっ!」

 

ポップが面白くなさそうに唾を吐いてる。

そんなに睨まないで欲しい。

最後に装備の特殊な力の引き出し方を説明してやる。

破邪の剣は『閃光』の号令でギラの力を。

いかずちの杖は『雷光』の号令でいかずちを落とす。

クロコダインの真空の斧の様なものだと教えてやる。

ダイは目を丸くしてポップは魔法力を温存できると喜んでいた。

こうしてアバンの使徒の装備が完了した。

 

「さあ、これで準備万端だ!さっそくレオナ姫を助けに行こう!」

 

「じゃが問題は姫さまが何処に居るのか…」

 

ホルキア大陸は広大だ。

何処から手をつけて良いのか。

セオリー通り一番近いところから虱潰ししか無いだろう。

だが時間をかけ過ぎると魔王軍に先手を取られかねない。

ヒュンケルとクロコダインにもレオナ姫の場所は分からないらしい。

もしも分かっていれば不死騎団によって止めを刺されているだろう。

完全に手詰まりだ。

俺達は頭を捻って考え込んだ。

 

「そ、そうじゃあああっ!!思い出したっ!」

 

バダックさんが何かを思い出したように叫んだ。

 

「なんだよ、じいさん」

 

「神殿じゃ!神殿に急ぐのじゃ!早く!」

 

「神殿?」

 

 

俺達はバダックさんの案内で神殿に辿り着いた。

神殿には地下への入り口があるらしく、俺達で手分けして探している。

神殿は既に不死騎団によって廃墟となっており、探すのも手間だ。

入り口を探しながらマァムが問う。

 

「倉庫に何があるんですか?

 

「火薬玉じゃっ!」

 

「火薬玉?」

 

パプニカでは戦場の合図は信号弾を用いるのだ。

火薬玉を見つけて信号弾を上げればホルキア大陸の何処かにいるレオナ姫の目に届くかもしれない。

バダックさんは汗を拭いながら溜息を付いた。

勝利の合図を示す赤い信号弾を上げれば姫も安心して姿を見せてくれるとの事だ。

 

「……あった!あったぞ!」

 

向こうでポップの声が上がる。

俺達はその場に集合した。

だが崩れた柱に塞がれてとてもじゃないが中に入れない。

原作ではダイが魔法剣でふっ飛ばすのだが今回は心強い仲間がいる。

オレは「おれにまかせてよ」と意気込むダイを止める。

 

「なんだよ~」

 

ダイは不満そうにする。

 

「もしかして魔法剣で吹っ飛ばすつもりか?」

 

「え、よく分かったね!」

 

「アホか!中には火薬が大量にあるんだぞ!?」

 

「…あ」

 

「自分の力が試したいのは分かるけど自重してくれ」

 

「じゃあどうすれば…」

 

「今のオレらには心強い味方がいるだろ?」

 

オレはクロコダインの方を見る。

皆もそれに釣られてクロコダインを見た。

そしてナルホドと納得したように頷いた。

 

「ふっ、この程度の柱など造作も無い」

 

クロコダインは得意そうに柱に近づくと真空の斧を地面に突き立てた。

そして柱に両掌を添えた。

 

「おおおおおりゃあああああっ!!!」

 

気合と共に柱は浮き上がり弧を描いて俺達の後方へ落ちる。

本当に凄い。ていうか迫力が…。

クロコダインさん、目が血走ってましたよ。

しかも腕の筋肉の盛り上がりも半端じゃない。

ヒュンケルもニヒルに笑って「流石だな」とか言ってるし。

皆の反応にクロコダインさんドヤ顔だし…。

確かに物凄く心強いけど顔が怖い。

直視できない…。

バダックさんはノリノリでクロコダインの腕をバンバン叩いてるし。

 

「大したもんじゃ!」

 

なんかオレだけが蚊帳の外かい。

早く慣れないと、てか何としても慣れないと…。

 

 

クロコダインが地下への入り口を開いてくれたお陰でオレ達は安全に火薬玉を入手する事が出来た。バダックさんが信号弾をセットする。

ここらが潮時だな。

オレはダイ達とここで別れる事にした。

バダックさんが信号弾を上げるのを確認するとオレは話を切り出した。

 

「なあ、みんな」

 

「どうしたの、タケル」

 

「実はオレ、ここで皆と別れようと思うんだ」

 

「ええっ!?」

 

「どういう事だよ」

 

「ああ、なんか成り行きで一緒に戦ったけどさ正直言ってお前らの戦闘には着いていけそうにない。そう思ったのさ…」

 

「そんな事…」

 

「そうだよタケル!タケルが居なければオレたち助からなかったし!」

 

「いや、確かにそいつの言う事も一理ある」

 

「ヒュンケル?」

 

「てめえ、助けて貰っておいてその言い草は何だ!」

 

「やなさいよ ポップ!」

 

「いやヒュンケルの言うとおりだよ。凄いのはオレの持つ道具であってオレじゃない。オレの実際の戦闘力はお前等の足下にも及ばないのさ」

 

「ふむ、だがタケル。お前はその道具を使いこなしダイ達を救ったのだろう?」

 

クロコダインは腕を組んで言った。

 

「ああ、でもこれからも上手くいくとは限らない。この先、付いて行っても足手まといになるだけだ弱点も容易にバレる」

 

「弱点」

 

「もしも道具を失えば、封じられれば…」

 

「確かに、非力な商人になるか…」

 

ヒュンケルが冷静に言う。

結構傷つくのですが…。

 

「それに何度も強力な道具を使っていけば間違いなく魔王軍の目にも止まると思う…オレには道具とチョットした魔法しか自衛手段がない。その時になるとダイ達に迷惑がかかる」

 

実際に魔王軍に人質に取られでもすればマジで原作どころじゃなくなる。

ダイ達は絶対にオレを見捨てないだろうし…。

オレとヒュンケルの言葉にダイ達の表情が沈む。

 

「そんな顔をするなよ。オレにはオレの戦い方がある」

 

「タケルの戦い方?」

 

「ああ、オレは商人だ。だから強力な武具や道具を仕入れてお前等の支援をする!」

 

「今までと変わらねえじゃねえか」

 

「違うぞ ポップ。ここからは別行動だ…そうすれば色んな道具を仕入れることも出来るだろ?」

 

「確かにな…オレたち軍団長との戦いの時もそうだったが、戦う度に装備が壊れていては…」

 

「ああ、より強力な武具は必要になるだろう」

 

流石ヒュンケルとクロコダイン、分かってる!

原作だと布の服とナイフでクロコダインに挑んでるからな。

よく勝てたもんだよ。

 

「…タケル、また会える?」

 

「当然だろ」

 

オレの答えにダイは嬉しそうに手を差し出した。

差し出された手を取って握手する。

 

「頑張れよ勇者」

 

「タケル、本当にありがとう!」

 

「マァム、元気でな!」

 

「今度はもっと良い装備を用意してくれよな」

 

「期待しててくれ、ポップ」

 

オレは道具袋から月のめぐみと魔法の聖水を幾つか取り出す。

 

「これを持っていけ。回復アイテムが有ればかなり楽になる筈だ。ヒュンケル、クロコダイン、ダイ達を頼みます」

 

「分かった、貴様も気をつけて行け」

 

オレは皆に頭を下げると背を向けて歩き出した。

振り返るとダイ達が手を振っているのが見える。

なんか嬉しい…。

オレはダイ達に手を上げると再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

本日の道具データ

 

破邪の剣 攻撃力42 使うとギラの効果。

『閃光』の言葉でちからを発揮。

 

いかずちの杖 攻撃力24 使うとライデイン(単体ver)

『雷光』の言葉でちからを発揮。

 

魔法の盾 防御力20 攻撃魔法の威力を軽減する。

ちゃんと防げば下級の魔法なら無効化出来る。

 


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