ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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本日の目玉商品『鉄の胸当て』

「明日、村を出る?」

 

「そりゃまた急な事だな」

 

日も暮れ魔法の修行が終わり、俺達は明日に備えて休む事にした。

ミーナの家を宿として使わせてもらう。

食事も終わり床に付いたところでダイが村を出ると言い出した。

 

「うん、あまり長いできないから」

 

「ロモスに行くんだよな?

 何をしにいくのか聞いても良いか?」

 

「王様を助けに行くんだ!怪物(モンスター)に苦しめられてるらしいから」

 

「……そう」

 

急な事にマァムは目を丸くしている。

そして寂しそうな顔をすると目を伏せて部屋を出ていった。

 

「さてと」

 

「あれ?どこ行くの?」

 

「ちょっと夜風に当たりにな」

 

オレは外に出ると先程までダイが特訓をしていた場所に来た。

寝る前にオレ自身の魔法の特訓をしようと思ったからだ。

これからの戦い、介入する気はないが巻き込まれる可能性が有る。

その時、自分の身を守る力は絶対に必要だ。

しかし強力な攻撃魔法を習得してしまえば、ポップの役目を奪いかねない。

なら小手先の技術を高めれば…。

オレは両掌にそれぞれ異なる呪文の構成を試みてみた。

しかし…。

 

「……ちっ!失敗か…やっぱりそう簡単な技術じゃないんだな」

 

思うように集中できずに魔力は霧散してしまう。

二つ同時の呪文行使、どうやらかなりの高等技術の様だ。

 

「だからといって諦める気はないけど…」

 

オレは気を取り直して両掌に魔法力を集中させた。

もしも成功すれば戦術の幅が広がる。

そしてあの魔法も出来るかもしれない。

マジで夢が広がる!

 

「…おっと、雑念は捨てないとな」

 

オレは気を取り直して両手に魔力を集中した。

 

 

 

 

「……無理」

 

約1時間後。

オレは両手の魔力を霧散させて呟いた。

はっきり言って難しすぎる。

なんだよこれ!

ポップとマトリフの師弟コンビ、マジでチートだよ。

左右で異なる絵を描くよりも難しいわ!

こんなの一朝一夕では無理だ。

最終決戦でぶっつけ本番で成功させたポップに尊敬。

 

「今日は無理だな。要練習だなこりゃ…気を取り直して錬金でもするか」

 

オレはステ画面を開くと錬金釜を選択した。

目の前に錬金釜が出現する。

このゲーム仕様のお陰でオレは道具を盗まれた事が無い。

全くチートなスキルだよ。

オレは持っている全ての薬草と毒消し草を素材として使い、一段階上の回復アイテムを作り出していく。

やっぱり何でもコツコツやるのが一番だ。

そして作業が終わり、心地よい眠気を感じる。

オレは明日に備えて床に就いた。

 

 

 

 

「もう朝か…」

 

窓の外を見た。

東の山からは日が顔を覗かせていた。

視線を下げると村の入口が見え、そこには人集りが出来ていた。

ダイとポップの見送りか。

俺も一緒に行こうかな。

魔の森を一人で抜けるよりもダイ達と一緒のほうが安全だ。

 

「…いや」

 

俺は直ぐに考えなおした。

明日の朝にはクロコダインが百獣魔団を率いてロモスを襲う筈だ。

そうなれば魔の森の怪物もかなり少なくなるだろう。

村を出るならその時の方が良いかもしれない。

でも…。

 

「流石にナイフと布の服は…」

 

明後日にはダイはクロコダインと戦わなければならない。

しかも防具は無しナイフ一本…。

どんな罰ゲームだよ!

難易度HurdどころかVery Hardだよ!

 

「少しくらいなら、手助けしても良いよな…」

 

オレは直ぐに起きると、ダイ達の所に急いだ。

 

 

 

 

「ダイ兄ちゃん…怪物をやっけたら、絶対にまた来てね!」

 

「頑張るんじゃぞ」

 

「気をつけてな」

 

「マァムもありがとう!」

 

「ごめんね、本当はついて行ってあげたいけど」

 

「大丈夫さ!ちゃんと地図をもらったしね!」

 

「ダイ、ポップ!」

 

「タケルも見送りに来てくれたの?」

 

ダイ達に駆け寄ると、ダイは嬉しそうにオレの顔を見上げた。

だからそんな顔で見ないで欲しい。

伝説級の武具を上げてくなる。

オレは尤もらしく咳を一つ、道具袋からあるものを取り出した。

 

「それもあるが、ダイに受け取ってほしい物がある」

 

「え、何を…」

 

オレは道具袋から鉄の剣と鉄の胸当てを取り出した。

 

「え、ええぇっ!?」

 

剣と胸当てを見て、ダイは目を白黒させて驚いた。

 

「ダイ、装備してやるからコッチに来い」

 

よろず屋がサービスでお客さんに装備させてあげるのはデフォだ。

オレのコーディネートに驚くが良い!

 

「も、貰えないよ!オレ、お金なんて無いし!

 

そう言いながらもダイはチラチラと鉄の剣を見ている。

本当は欲しいくせに無理しやがって。

オレはダイの肩に手をおいた。

 

「ダイ、良く聞いてくれ」

 

「う、うん…」

 

「きのう現れたあの怪物…恐らく近い内にダイのところに現れるはずだ」

 

オレの言葉にダイは真剣な表情で頷く。

 

「敵は独りじゃない。百獣魔団とかいうのも居る…。いくらお前が強くてもナイフ一本で勝てる程、連中は甘くない」

 

「そ、それは…」

 

オレは更に畳み掛ける。

 

「昨日の戦い…」

 

「え?」

 

「正直言って凄かった…オレ、メチャ怖くて死ぬかと思ったんだ。でもさ…ダイが戦ってるところを見て、こう何ていうのかな…」

 

ダイ達は黙ってオレの話を聞いている。

 

「子供だけど、とてもそうは見えないっていうか…。うん、本当にダイが勇者に見えたんだよ…」

 

「オレが勇者?」

 

ダイは目を丸くして驚く。

オレはダイの言葉に「ああ」と答えて剣を差し出した。

 

「オレは商人だ…魔法はそれなりに使える。けど実際に戦いの術を学んだわけじゃない…。オレにはダイの様に魔王軍と戦う事は出来無い。だから…オレはお前に賭けてみようと思う」

 

「タケル…」

 

「俺の代わりにその装備を連れていってくれないか?さっきも言ったけど、クロコダイン相手にナイフ一本は無理だ」

 

唯でさえクロコダインの方が力量(レベル)が上なんだ。

しかも真空の斧とゴツイ鎧まで装備している。

その上ザボエラまで絡んで来るのだ。

Very Hardとか思ったけど、難易度はそれ以上かもしれない。

オレは真剣な表情でダイの顔を見つめた。

ダイは理解し力強く頷いた。

 

「ありがとう、タケル!オレ、絶対にロモスの王様を助けるよ!」

 

「頼んだぞ」

 

オレは早速ダイに鉄の胸当てと鉄の剣を装備させてやった。

布の服の上で光る銀色の防具。

腰に差された鉄の剣。

こうして見ると一端の戦士に見える。

かなり見違えた。

 

「ど、どうかな?」

 

ダイは照れくさそうに言った。

 

「よく似合ってるぞ」

 

どうせクロコダインを倒せば鋼の剣を貰えるんだ。

鉄の剣くらいなら問題ないだろう。

切れ味ならパプニカのナイフの方が上かもしれないし。

 

「な、なぁ!オレには?」

 

「臆病が治ればくれてやるよ」

 

「なんだよ!それ!」

 

「あはは!」

 

すまんポップ!本気でゴメン!

クロコダイン戦が終われば良い装備を上げるから許してくれい!

 

「代わりにコレをやるよ」

 

「なんだよ、コレは?」

 

「俺特性、特やくそうだ!」

 

「特やくそう…?ああーーーっ!思い出した!以前ベンガーナにいた強欲商人!」

 

「失礼な。適正価格って言っただろ?あれ?言ったっけ?」

 

「聞いてねーよ!まぁ、先生も褒めてたから効果は良いみたいだけど…、ていうか金は取らないのかよ!?」

 

「今は非常時だ。皆の為に戦ってくれてる勇者から金は取れないよ。俺が金を取る相手は持っている相手だけだ!」

 

決まった!

本当はそうでも無いんだけどな…。

周りを見ると皆が感心したように俺を見ている。

照れるじゃないか…。

 

「……んんっ!じゃあな!ダイ、ポップ!二人とも絶対に死ぬんじゃないぞ!」

 

「うん!じゃあもう行くよ!」

 

「元気でな!」

 

ダイとポップは別れを惜しみながら手を振り、森の中に消えていった。

 

「本当に大した奴らだな…」

 

「全くじゃ…あんなに小さいのに魔王軍と戦おうとは…」

 

「マァム?」

 

ふとマァムを見ると、彼女は泣いていた。

既に見えなくなった二人の後ろ姿。

彼らが消えた森を見ながら涙を流していた。

母レイラがマァムの肩にそっと手を置いた。

 

「行ってあげなさい」

 

「お母さん…」

 

「私達のことは構わずに」

 

レイラはマァムに武器を渡しながら微笑む。

 

「私もね…むかし傷つきながらも戦い続けたアバン様とお父さん…、二人を見かねて村を飛び出したのよ」

 

「お母さん!」

 

「私の娘だもの、しょうがないわよ」

 

「そうだよ!」

 

「いってきなよ!」

 

村の人たちも口々に声を上げた。

 

「村のことなら心配ないぞ。タケル殿が格安で武具を貸してくれたのでな」

 

「タケルが?」

 

「まぁな…それよりもマァム…,ダイ達にはお前が必要だ…」

 

俺はダイと同じ鉄の胸当てをマアムに手渡した。

 

「ダイ達を頼む…」

 

マァムは力強く頷くと魔の森に向かって走りだした。

 

「マァムにまで…ありがとうタケルさん」

 

マァムが入った後、レイラさんに感謝された。

こうしてみるとマジで美人だな。

 

「いえ、良いんですよ。俺にはコレくらいしか出来ませんから…」

 

ふう、これでダイ達と別行動が出来るな。

心配だけど自分の命と天秤に掛ければ自分の命に傾く。

肩の荷が降りた。

昨日、ダイ達がいたとはいえ、クロコダイン戦で懲りた。

アレは怖すぎる。

もしクロコダインが退いてくれなかったらと思うとゾッとする。

暫くほのぼのが続けば良いな~

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

レベル15

 

さいだいHP:89

さいだいMP:546

 

ちから:42

すばやさ:100

たいりょく:45

かしこさ:275

うんのよさ:256

 

攻撃力:115

防御力:107

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 


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