二人の女神の憂鬱   作:性別はヒデヨシ

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寄り道

配布物を確認して、帰る準備をしていると前の席に居る佐々木がこちらを振り向いて

 

「キョン、せっかくの高校生活一日目だ、一緒に帰らないかい?」

 

せっかくの佐々木からのお誘いだ、断る理由も無い

 

「あぁ、いいぜ。ただちょっと待ってくれ配布物を確認しないと。」

 

そういいながら急いで確認する

 

「佐々木はもう配布物の確認終わったのか?」

 

高校生活初日と言うことで、教科書やらプリント、生徒手帳などかなりの配布物が配られており、回りの生徒も忙しく配布物の確認をしている。

 

「自己紹介の時に少しずつ確認していたからね。こういうのは速い内にやっておくものだよ。」

 

「さすがだな。俺なんて、自己紹介の時は自分の自己紹介考えるのと、他の人自己紹介聞くので手一杯だったぞ。」

 

まぁ涼宮さんの強烈な自己紹介を聞いたせいでそれどころじゃなかったと言うのもあるが……

 

「まぁ、自己紹介を聞くための時間だからね。それが正解だよ。」

 

そういと、配布物確認のプリントを取りだし俺の配布物の確認を始めた。

 

「お!手伝ってくれるのか?」

 

佐々木「僕から一緒に帰ろうって誘ったからね。なら、相手が帰れるように協力するのは当然さ。」

 

「すまんな。助かる。」

 

「気にするなよ。僕が好きでやってるんだ。」

 

佐々木はそう言いながら微笑み、配布物の確認を始めた。その微笑みが可愛くて少し見とれた事は内緒だ。

 

二人で話しながら確認していくと思いの外速く終った。

 

「終ったね。こっちは足りないものはなかったよ。」

 

「こっちもだ。本当にありがとな。」

 

「いいさ。もう正午だし早く帰ろうか。」

 

今日は、入学式と自己紹介だけで昼には帰れる。まだ、クラスには何人か喋っている奴らも居るが大半は帰ったようだ。

 

「だな。良い時間だしついでに昼飯でも食べて行くか。」

 

「おや?高校生活初日から寄り道なんて君もなかなか悪い奴だね。クックックッ」

 

俺の提案に佐々木は喉を鳴らしながら答える。

 

「なんだ?嫌だったか?」

 

「いや、そんなことは無いよ。寧ろ喜ばしいイベントだ。」

 

「イベントってそんな大それたもんでもないだろ。」

 

確かに男子高校生にとって佐々木みたいな美人と飯に行けるのは一大イベントだ。

しかし、それは男にとってのイベントであって女子からすれば俺みたいな冴えない男とデートするような事になっても対した特は無い

 

「いやいやキョン、僕たちは今日から高校生になったんだ。中学時代じゃ寄り道はもとよりご飯を食べに行くのもなかなか無いからね。それに僕達は塾にも通ってたからねよりそんな時間はなかったよ。」

 

「そういえば、そうだな」

 

「だから、こういうイベントは新鮮で嬉しいのさ。」

 

確かにこいつと出会ってからは塾に試験と忙しくて休日に遊びに行くなんて事は無かったな。やや大人びてる言動が多い佐々木もやはり高校生だ、友達との遊んだりしたいのかもしれん。

 

「そうか、なら早速行くか」

 

こうして、俺たちは長い坂道を下り二人で歩き始めた。

 

「さて、じゃあ何を食うかだな、平日だしどの店でも入れると思うがあまり高いのは金銭的に辛いしな。」

 

「そうだね、この道を少し外れれば街中の通りだから基本的に何でも有るしね。」

 

そう言いながら街中へ足を進める

 

「まぁ、無難にファミレスで良いんじゃないか?財布にも優しいしメニューも多いからな。」

 

「うん、僕もそれで良いよ。じゃあ、あのファミレスにしようか。」

 

佐々木も俺の提案に賛成してくれたようだ。ちょうど近くにファミレスが合ったため二人でその店に入る

 

-ファミレス中-

カランカラーン

佐々木がドアを開けるとドアの上にぶら下がっている木の板が音を立てた

 

「いらっしゃいませー。お二人様ですか?」

 

「はい、禁煙席をお願いします。」

 

「かしこまりました。では此方へどうぞ。」

 

店員に案内され窓際の席に向かい合わせで座る。

 

「ご注文がお決まりましたら、そちらのスイッチを押してください。」

 

そう言うと店員はスタスタと歩いて行った

 

「初めて入る店だけどなかなか雰囲気が良いね。」 

 

「だな、結構レトロな感じだけど其が落ち着けるな。」

 

店内は映画に出てきそうなレトロな内装だ。ファミレスというよりは喫茶店に近い気がする。

 

「さてと、じゃあ何を食べるかねえ。メニューが多いのが一つのメリットでも有るが逆に何れにすれば良いかわからなくなるな。」

 

ご飯ものから麺、パン等色々有るこんだけ良く揃えたものだ。客としては嬉しいが何れにすれば良いか迷いもんだ。

 

「クックック。こういうものは一番最初にコレって思ったのにした方が良いよ。じゃないと決まらないからね。僕は、この春の香り漂う桜のパスタにしようかな。」

 

そう言うと佐々木は直ぐに食べたいものを決めた。確かにグダグタ迷っていても腹はふくれないな。

 

「なら、この桜ソバって奴にするかな。他に頼むのはないか?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。」

 

「なら、店員を呼ぶか。」

 

ピンポーン

 

「はーーい」

 

俺がスイッチを押すと元気の良い声と共に店員がやってきた。

 

「ご注文お決まりになりましたか?」

 

「はい、私が春の香り漂う桜パスタ、彼が桜ソバでお願いします。」

 

「かしこまりました。それと…」

 

店員がおもむろにポケットから一枚のチラシを差し出す。

 

「「?」」

 

「今当店で春の男女限定イベントを行っておりまして、男女二人組で来店されている方に限り春のフルーツパフェが半額になっております。」

 

なるほど、要するにカップル向けのイベントって事か、まぁ俺には無縁なイベントかな

 

「なら、それもお願いします。」

 

「!!佐々木?」

 

「かしこまりました。では少々お待ちください。」

 

俺が驚いているうちに店員は行ってしまった。

 

「おぃ、佐々木どういうつもりだ?」

 

「クックック。良いじゃないか、面白そうだし。」

 

「しかしだなぁ」

 

俺が納得していないが佐々木は楽しそうだ。

 

「キョン、せっかくの高校生活1日目だ。こういうのも悪くないだろ?」

 

そう言いながら笑顔を向ける佐々木の顔は何時も見てる顔よりも数倍綺麗に見えた

 

「まぁ…そうだな。」

 

その笑顔を見せられては俺も折れるしかあるまい。

 

「クックッ、キョン顔が少し赤くなっているよ。」

 

「な?そんなことは無い。」

 

確かに佐々木の笑顔に見とれたのは事実だ、しかし赤くまでなっていたのか。

 

「クックック。君のそう言う反応が見れるなんてね。僕も存外捨てたもんじゃ無いね。」

 

佐々木はこう言っているが佐々木は十人が十人とも綺麗と言うであろう容姿をしている。中学の時も佐々木の事が好きだという男子が多く居たとも聞く。何人か告白した奴も居たが成功したって奴の話は聞かなかったな。

 

「お前は中学時代から結構モテてたと国木田から聞いたが?」

 

「クックック。確かに何人かから告白されたこともあったね。でもキョン、君も知っているだろ僕が恋愛についてどう考えているか。」

 

「確か、一種の精神病だとかに言ってたな。」

 

そぅ、佐々木いわく恋愛感情とは精神病の一種らしい。

 

「そぅ、見た目が好みだからという理由で良くも知らない人を好きになる。優しくされたから好きになる。助けられから好きになる。全部一時の感情で動かされているだけの精神病だよ。」

 

「なるほどな。しかし、その話だと長い付き合いのもと生まれる感情は精神病による恋愛感情ではないというかとか?」

 

「どうかな?所詮まだ16才だ。言うほど長い時間を共有した異性なんて居ないよ。」

 

「確かにな。」

 

「お待たせしました。春の香り漂う桜パスタと桜ソバです。フルーツパフェは食後にお持ちしますので此方が食べ終わりましたらまた及び下さい。」

 

「ありがとうございます。さぁキョンこの話はもうやめて食べようか。」

 

「だな。」

 

「「いただきます」」

 

言い終わると共に食べ始める。

桜ソバのピンク色の麺はほんのりと桜の香りするなかなかに旨い

 

「なかなかに美味しいね。」

 

「あぁ、ピンク色のソバってのが斬新だが旨いな。」

 

旨いと話も弾むものだ、中学時代の話が一旦落ち着けば高校の話題となる

 

「そう言えば、君の後ろの席の涼宮さんだっけ?なかなか面白い自己紹介だったね。」

 

「あぁ、宇宙人、未来人、超能力者だったか?」

 

「それと異世界人だね。インパクトは凄かったよ。」

 

「確かにな。しかし本気なのかね、居てもノコノコと出て来るわけないと思うが。」

 

「おや?君は宇宙人やその他もろもろの存在を信じているのかい?」

 

佐々木が興味深そうに聞いてくる

 

「いや、信じている訳じゃない。ただ居ないという証拠もないだろ?」

 

「なるほど、確かに居ないなんて証拠はない。宇宙人に関しては数々の目撃情報なんてのもあるんだし、居ないと断言するのも難しいのかも知れないね。」

 

「そう言うことだ。まぁいた方が面白いかもしれないな。」

 

「そうだね。」

 

そうこう話しているウチに二人とも食べ終わった。

 

「食べ終わったし、フルーツパフェを食べようか。」

 

ピンポーン

 

「はーい」

 

「フルーツパフェお持ちしてもよろしいですか?」

 

「お願いします。」

 

「かしこまりましたー」

 

店員がパフェを作りに向かった。

 

「そういえば、ソバとパフェってのも斬新だな。」

 

「和と洋だからね。まぁ気にするほどでもないよ」

 

「お待たせしました。フルーツパフェです。」 

 

さすがにパフェなだけあって早いな。

 

「こちらになります。」

 

キョン「?1人分にしては大きいな。」

 

「いえ、こちらはお二人分になります。」

 

佐々木「え?二人分?」 

 

「はい、スプーンはこちらになりますのでお願いします。」

 

「お、お願い?」

 

どうやら、佐々木はただ男女ペアでパフェが安くなるだけだと思っていたようだ。まぁ俺もそうだが。

そして一つのパフェ、2つのスプーン、店員のもつカメラこれから導き出せる答えは

 

「はい。二人であーんをして食べさせあっているところを写真に撮らせていただきます。」

 

「「えぇぇ!?」」

 

「ではお願いします。」

 

「「………」」

 

どうする?いくら何でも恥ずかし過ぎる。かといって出来ませんとも言えない空気だ。

 

「キ、キョン」

 

俺が頭の中でどうするか考えていると佐々木の声で現実に戻された。

 

「どうし…た?」

 

そこにはスプーンにパフェの生クリームをのっけてこちらに差し出す佐々木がいた

 

「ほ、ほらキョン、き、君も早くやってくれ。僕も、そ、その恥ずかしいから。」

 

どうよらさっさと済ませようと言う考えに至ったらしい。店員を見上げると物凄い笑顔で俺を見ている。

 

「そ、そうだな。」

 

二人に見られ俺も決心をつけた

スプーンを手に取り、一口位の大きさにパフェをすくあげると佐々木の方に差し出した。

 

「では撮りますねー。」

 

店員楽しそうだなぁ

 

「「あ、あーん」」

 

恥ずかしい気持ちを押さえながら二人で食べさせ合う。

 

カシャッ

 

店員「はい、有り難うございました。写真は後程レジにて渡しますのでごゆっくりお食べ下さい。」

 

そういうと現像するためかスタスタと言ってしまった。しかし、凄い笑顔だったな

 

「いやはや、まさかこんな事になるとは思わなかったよ。」

 

「全くだ。凄く恥ずかしかったな。人前では二度とやりたくたくないな」

 

「おや?人前ではって事は,人前じゃない二人きりの空間ならまたやっても良いと思って居るのかい?」

 

俺の言葉に佐々木は過敏に反応したようだ

 

キョン「い、いや。言葉のアヤだ。」

 

口では、こう言っているが佐々木のような美人に「あーん」なんて出来る事はまず無いからな。もしもう一度出来る機会があったら恥ずかしがりながらもやるかももしれんな。

 

「そうか…。まぁこれも高校生活の良い思い出になりそうだ。さぁ、せっかくのフルーツパフェが溶ける前に食べよう。美味しいよ。」

 

「そうだな。さっきは緊張と恥ずかしさで味を気にしてる暇がなかったが旨いな。」

 

こうして、俺と佐々木の長いようで短い昼飯が終わった。

 

「パフェ代は俺が出すよ。飯に誘ったのは俺だしな。」

 

「それは悪いよ。ここはパフェ代だけは折半にしようじゃないか。」

 

「いや、しかしだな」

 

佐々木「そんな、後ろめたく思う事はないよ。3年間君とは同じ学舎で過ごすんだ。はじめから奢って貰っては悪いと思ってるだけだよ。また、次の機会に奢ってくれよ」

 

「……ちゃっかりしてるな。まぁ高いものは止めてくれよ。」

 

「分かっているさ。」

 

「あ!お客さまー。」

 

レジにてお金を払い終わると先ほどの店員が現れた。

 

「こちら、先ほどのお写真になります。どうぞ。」

 

「あ、ありがとございます。」

 

「ど、どうも。」

 

「また、来てくださいね。」

 

「ふふ。えぇまた来ます。」

 

佐々木の言葉共に二人で店を出た

 

「ありがとーございました。」

 

残り少ない帰り道二人並んで帰っている。

 

「あの店、気に入ったのか?」

 

「うん、雰囲気も良いし。料理も美味しかったからね。」

 

「確かにうまかったな。」

 

「また、行こうか。」

 

「だな、何せ3年間も有るんだ、幾らでもいく機会はあるからな。」

 

そうこう話している間に分かれ道になる。

 

「キョン、今日は楽しかったよ。ありがとう。」

 

「なーに。俺も楽しかったし、お礼を言われるほどでも無いよ。」

 

「クックック。君と凄す高校生活はとても面白いものになりそうだ。改めてよろしくキョン。」

 

「あぁ。こちらこそよろしくな佐々木。」

 

「じゃあ、僕はこっちだから。また、月曜日にねキョン。」

 

「おぅ。またな。」

 

こうして、別れそれぞれの家に向かっていった。

 

佐々木宅 夜

 

佐々木はベッドの上で今日の出来事を思い返していた。

 

「キョン、君に話した事には一つの嘘がある。」

 

佐々木は、心の中でキョンの顔を浮かべながら呟く。

 

「長い時間を共有した異性、間違いなくそれはキョン…君だよ。中学3年からの一年間だけどそれでも他の男子何かとは比べ物にならないほどの時間を君とは共有してきた。」

 

塾で、クラスで、修学旅行で、多くの記憶を思いだす。

 

佐々木「キョン、君は長い付き合いのもと生まれる恋愛感情は精神病じゃないのかと聞いたね。答えはまだ分からない。この感情が恋なのかどうかも分からない。でもこう考えてしまうこと事態が既に恋愛感情と言う精神病なのかも知れないね。」

 

今日撮ったフルーツパフェを食べさせ合う写真。写真立てに入れ机の上に飾っている。

 

「この気持ちが本物かどうなのか。直ぐに答えが出るか分からないけど、時間はたくさんあるんだしじっくりと見極めていこう。」

 

そう言いながらベッドから立ち上がり、写真立てを手に持つ

 

「とりあえず、おやすみキョン。」

 

 

 

 




なんとか間に合った

個人的な考察では佐々木は、中学の時からキョンを意識してるよね

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