Muv-Luv Unlimited Base Shielders 作:しゅーがく
2月にあけましてとかちょっとどうかしてますね(笑)
年末年始は少し忙しくて中々こっちまで手を付けられませんでした。とかいいつつ新作出すとかちょっとアレですね(笑)
『11中隊全機消失!』
光線が消えたと思ったら、耳に飛び込んだのは、11Cの全滅だった。跡形も残ってはいない。
『戦車隊は全速後退っ!基地の10km手前で再び防衛線を敷く!』
指示を彼方此方に声を張り上げて出していたのは皐だった。その指示を迅速にこなし、圭吾たちが元の防衛線から離れた事で、更にBETAが基地に接近した。
「支援砲撃を要請しましょう!陣地構築には時間が掛かります!!」
圭吾はある程度BETAの集団から離れれた頃、皐に提案した。それを良い意見だと思ったのか、皐はすぐに支援砲撃の要請を始める。
圭吾が見渡すと、すぐに後退させた戦車隊も1割程居なくなっている。撃破されてしまったのだろう。
そうこうしていると、防衛線構築予定地に到着し、データリンクを確認した。最前衛戦術機部隊はほぼ壊滅。戦闘ヘリは残存する約2個小隊が第2大隊の支援中。戦車隊は損耗軽微だった。実質敗北だった。ほとんどの部隊が残っていない。
唯一基地を守れるのは、機械化歩兵だという事になってしまった。
『CPより各戦域に展開中の部隊に発令。現時刻を以って残存する全戦闘部隊は基地手前2kmの盆地に最終防衛線を展開。繰り返す。現時刻を以って残存する全戦闘部隊は基地手前2kmの盆地に防衛線を展開。』
緊迫した空気が通信からも伝わってくる。オペレーターの背後からは他の基地へ救援要請を呼びかけるコールもあった。
『基地手前2kmまで後退する!』
皐は普段見せないような表情だった。焦燥、恐怖、正義、そういった感情が入り乱れている様に圭吾には見えたのだ。
皐率いる部隊は2個機械化歩兵大隊と戦車師団、戦闘ヘリ2個小隊、のみだ。周辺の部隊は散り散りになってしまっていて統率の取れてない状態だ。挙げ句の果てに戦術機部隊が無い。四面楚歌だった。
『基地から予備部隊も全て出した反抗作戦が出されるだろう!覚悟しろっ!!!』
『『『了解!』』』
皐は部隊の先頭で誘導しながら言った言葉、反抗作戦という言葉を圭吾は恐怖に怯えた。
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『機械化歩兵部隊、戦車師団、戦闘ヘリ部隊、私は敦煌基地司令、上伊台である。着任早々、前線補給基地防衛戦に相次ぎ、BETAの信仰に抗って来たが、遂に私たちの家であり、帰る場所であった敦煌基地にまでBETAの手が伸びようとしている。前衛は孤軍奮闘し、華々しく散ってった。後衛は取りこぼしのBETA群に旧式の装備で良くも持ち堪えてくれた。警備中隊は生身でありながら小銃と携帯誘導弾を片手に戦った。だが、我々には残す戦力、御宮 皐大尉率いる機械化歩兵5個中隊、戦闘ヘリ2個小隊、戦車約2個師団だ。BETAに抗うならば足りぬ戦力。だがっ!持ち堪えてくれ!ここを突破されればいずれ、我が祖国日本帝国にまでBETAの脅威に晒されてしまう!私は、君たちを信じている。前衛で散った仲間の名を後世に!........全軍、弾薬を惜しむなっ!!!砲身が焼けても撃ち続けろぉぉぉ!!!』
『『『『『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』』』』』
硫黄と推進剤の油の臭い、血の臭いが充満した戦場に、死を覚悟した兵士の雄叫びが轟いた。
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『此れだけの戦力、敵の集団の規模にもよりますが、勝てるのでしょうか。』
巽は弱々しい発言をした。だが、それは誰しも思っている事だった。戦術機でさえ突破されてしまったのだか仕方ないで片付けられるが、それでも大型種には対応出来ない装備をした部隊しかいなかった。戦術機はもう残ってないのだ。
『勝てるんじゃない、勝つんだ。それに基地司令も惜しみなく物資を使えと言って下さった。我々の手前800mには高性能爆弾と地雷が埋めてある。処理のし辛い突撃級はそれで潰す。それ以降はただ撃ち続けるだけだ。』
皐は何かを見据えた様な眼差しでそう言うと通信を終えた。
圭吾はそんな中、防衛線構築中に見た、戦車兵の行動が気になっていた。
砲弾以外に何かを積み込んでいたのだ。見るからにして爆弾だというのは分かっていたが、用途が分からなかった。
「ジーク3より243号車。」
『243号車、どうした?秘匿回線なんか。』
「さっき積んでいた爆弾、あれどうするんだ?」
圭吾は近くに並んでいた戦車に通信を入れた。秘匿回線を使ったのは、圭吾自身も分からなかったが。
『自決用だよ。戦車級に喰われそうになったらな。』
圭吾は顔が青ざめた。自決用という単語に異常に反応してしまったのは自分でも分かっていた。
「そっ......そうなのか?」
『あぁ、国の座学で習わなかったのか?戦車は突撃級に踏み潰されるか、要撃級に前腕のヤツで砲塔を潰されるか、戦車級に喰われるんだよ。潰されても戦車級に喰われるけどな。だから喰われる前にてめぇ諸共吹き飛ぶんだ。』
そう言った戦車兵はいい笑顔を見せて通信を切った。
圭吾には遠い記憶なのかもしれないが、それは道理に適っていた。戦場で決まった仕来りなのかもしれない。
「自決か......。」
『自決なんか考えるなよ?鉄無。』
圭吾が戦車兵の事を考えていると、突然通信が入り、同じ中隊の渡邊 和隆少尉が声を掛けてきた。
「考えてませんよ。戦車兵が爆弾を積んでいたのを見てしまって。」
『そうか。だが正直、使いたくはなると思う。』
そう言って和隆は通信を切った。
圭吾の中には違和感だけが残っていた。自決用の爆弾。自決を考えてしまう理由。
砂塵を目下に微動だにせずに考えているとアラートが鳴った。『CODE:991』
BETAの接近を知らせるものだ。
その瞬間、圭吾は基地司令の言った言葉を思い出していた。
戦術機のいない部隊でBETAに抗う。戦術機でない兵士は士官学校では『エサ』だと言われてきた。その通りだと感じた。人間で例えるならば、BETAは人間で、鶏が圭吾たち。食う食われるの関係だ。
客観視したならば、少しの武器を持った鶏が人間様に抗うものだ。唯一鶏と違う点は、大脳新皮質から来る戦術的思考や理性だ。
それだけでBETAに抗うのは分かりきった結果が見えている。
「(壊滅するんだろ......基地諸共。)」
圭吾はネガティヴになってしまっていた。
『アトラス1より各部隊。弾は惜しむな!』
皐の命で展開していた部隊が其々正面の砂塵目掛けて砲弾や機関砲、対地ロケットを撃ち、砂塵に飲み込まれていく。爆発音が轟き、砂塵に紅い色が混じる。
だが、砂塵はそれには目もくれずと進み続けるのだ。
『砲撃中止っ!砲撃中止ー!!各部隊対ショック姿勢......3、2、1、......。』
そして砂塵の奥に閃光が走ると砲撃の時とは比べ物にならない程の大きな音と揺れが伝わってきた。
データリンクには敵前衛が一気に消え去っていた。残るは中衛後衛のみになった。
『アトラス1よりCP!支援砲撃、基地手前3〜2.5kmだ!!』
『CP了解。』
背中に砲撃音を感じると、砲弾が飛翔する音が徐々に近づき、砂塵に飲み込まれた。
赤いアイコンが消えてゆく。
『アトラス1より全部隊へ。迎撃開始だ!!』
皐の掛け声と共に、戦場に雄叫びが響いた。
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迎撃が始まって30分後、圭吾は戦域マップを見ていた。味方のアイコンは、迎撃命令の時から半分にまで減っていた。戦闘ヘリは弾薬補給の為に撤退し、戦車は圭吾の小隊と行動を共にしていた4個小隊の他に、機械化歩兵部隊と混成になっている部隊のみ残っており、警備中隊もアイコンは見えないが、基地侵入口の警備とかで撤退していた。
圭吾の小隊には243号車もいた。転輪が1度破損し、修理している。そして、爆風で砲塔を少し損傷しているという報告があった。
『ジーク1より各機、2時の方向に戦車級集団確認!一斉射!!』
赤い身体から紅い体液を撒き散らしながら絶命して行く。
『あっ、新たに4時に6体の戦車級っ!!』
停車して偵察していた戦車からの通信だ。だが、間に合いそうに無かった。何故なら、偵察に頭を出していた戦車長目の前に現れたからだ。
『ひぃぃぃ!助けてくれぇぇぇ!!喰われちまう......,ぐわぁぁぁぁぁ!!!痛てぇ!!痛てぇよ!!!!』
圭吾が一斉射を終えて直ぐにそっちの方向を見ると、戦車長が戦車級に掴まれ、腕や足を噛みちぎられている。
「ごめん......!」
圭吾は苦しむ戦車長に重機関銃の銃口を向けて撃った。
撃ち出された鉄の弾を受け、戦車長の体に穴が開き、息絶えた。その戦車長をまだ、戦車級は喰っている。
『ジーク3!戦車級を撃って!!』
圭吾は言われるがままに戦車級に向けて撃った。もう危ない状態だった。2時方向にはまだ集団がいる、4時方向には戦車級がまだ4体はいた。
『244号車よりジーク3!残りは任せろ!!』
そう言って戦車が3両少し前に進み、広がると、戦車級目掛けて砲撃した。4体はその砲撃を食らうが、2体は生きている。そしてその2体は戦車に飛びついた。
『248号車、撃ってくれ!!』
『255号車だ!こっちも!!』
「分かった!!」
圭吾は震える手を必死に押さえつけて重機関銃を撃っても機関砲を撃っても致命傷にまでには出来ず、戦車級は取り憑いた戦車の砲塔を引き剥がした。
『248号車、自決する!!日本帝国にっ!!!!!』
一帯は爆風に舞い上がった砂塵で視界が悪くなったが、戦域マップは生きている。そのマップから248号車のアイコンは消えた。そして、255号車のアイコンも消えた。248号車の爆発に合わせて、爆発させたのだろう。木っ端微塵に、跡残らず消え去っている。
『243号車よりジーク3。戦車も俺含めて6両だが、どうする。』
「ジーク1に指示を仰ぐまでだ。」
そう言って圭吾は一代の方に向き直った。まだ集団に撃っている。相当片付いたみたいだが、死骸の合間を縫って現れてくる戦車級や闘士級を撃っている様だった。
「佐鳶少尉!戦車が6両になりました!」
『くっ......全機残弾確認っ!擲弾発射後に御宮大尉の部隊に合流します!』
紅で染まる荒野には点々として突発的に戦闘が起きている。
地雷を爆発し、敵が散りじりになったのを確認すると残っていた機械化歩兵中隊は其々戦車を引き連れて、BETA出現地で殲滅戦をしていた。13Cはというと、小隊別に更に細分化し、戦闘をしていた。戦域マップ外には他の中隊も居るだろうが、生きているかは分からない。中隊内でも既に戦死が出てるかもしれない状態だ。
圭吾は一代を先頭に機械化歩兵が戦車を囲うような陣形で皐の元に戻って行っている。
皐の小隊はというと、圭吾たちが相手をしていた集団と同じ規模の集団と対峙していた。皐の小隊には姉の遥音もいる。
『ジーク1よりアトラス1。集団は片付きました。』
『アトラス1了解。全小隊報告!』
『クロム1よりアトラス1、コッチも片付きました。』
『デルタ1よりアトラス1、コッチもです。』
彼方此方から戦車を引き連れて小隊が戻ってきつつあったが、どこの小隊も機械化歩兵は減らずとも戦車は減っていた。13Cに着いてくるといったのは約60両。1個小隊につき約12〜13両割り当てられているが、大体半数は居ない。個々での戦闘中に喰われてしまったのだろう。
『我々は善戦している。一気に押し込む!』
13Cの周辺にはあちこちに散っていた他の中隊が集まりつつあった。約4個機械化歩兵中隊。戦車も3個大隊程度は残っている。
だが、最初に陣形を取っていた基地2km地点から数百メートルは後退している。
光線属種は最初の地雷で全部吹き飛び、要塞級の存在も確認されていない。ヘマしなければ勝てる状況だ。
だが、事態は急変してしまった。
『此方7C!近くで要撃級がっ......』
7Cのアイコンが次々と消えていく。
『アトラス1!21Cのアイコンが消えています!!』
気付けば、21Cまでもが無くなっていた。
『アトラス1より残存部隊へ!現地点へ集結し、BETAを迎え撃つ。』
戦場にはずっと皐の声が響いている。
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たったこれだけか、と言わんばかりの戦力しか残っていなかった。
機械化歩兵2個中隊半、戦車30両。何処かの1つの防衛線、一部の区画の1つの部隊にも満たない戦力だ。
しかも機械化歩兵は半数が傷物。近接戦で肩部の機関銃が無かったり、擲弾射出装置が無かったり、跳躍ユニットが1つ無かったりしている。どの機体も返り血を浴び、赤黒くなり、関節部はギシギシと言う。
ボロボロだ。まともに高機動出来るのは13Cの機械化歩兵だけだ。戦車も損傷は酷い。1番酷いのは、砲身が変形して主砲が撃てないものだ。帰還して修理しても仕方ない状態だ。
『アトラス1より残存部隊へ。これより輸送ヘリ部隊が、基地の非戦闘員を退避を始める前に、我々に残っている地雷、砲弾、爆雷などを輸送してくれる。機械化歩兵は推進剤の注入と弾薬の補給を行い、戦車は給油、砲弾の積み込みをしろ。機械化歩兵は2分し、補給中の部隊の護衛だ。』
そう皐が言うと空の彼方から風を切る音が轟き、3機の輸送ヘリが来た。ワイヤーで裸の爆雷をぶら下げている。それをゆっくりと接地させると、自身も接地し、次々にコンテナを下ろして飛び去ってしまった。
『機械化歩兵は戦車の燃料を運んでやれ。』
補給が始まった。13Cは周辺警戒をしている。1番時間のかかる部隊からやらせていた。13Cは弾薬と推進剤の補給だけだ。機械化歩兵は両腕の使える機械化歩兵は燃料のドラム缶を転がし、動かなくものは補給を始めていた。
屋外にマスクを着けて作業している戦車兵の顔には明らかな疲れがあった。目の下にはクマも出来ていて、ゲッソリしていた。
『今の内に息抜いとけ。我々の補給は機械化歩兵の補給が終わり次第行う。』
虚しく戦場響いた。
すぐに圭吾たちも補給にありつけ、補給が完了した時、皐が不意に指示を出した。
『アトラス1より各機械化歩兵中隊へ。これより機械化歩兵中隊は基地2.2km地点一帯に地雷を埋設する。爆雷等はあちこちにに設置し、使いたい時に銃撃して使用するように設置する。持てるだけ持って移動だ!戦車は周辺警戒。』
『『『了解。』』』
地雷の埋設に時間はかからない。なにせ人間に対する兵器として使用していないからだ。ただ地面に少し埋め、金属部分が見える様に埋めている。
爆雷も弾頭から地面に突き刺すだけだった。
余った弾薬や砲弾、推進剤は爆雷の近くに置き、誘爆を誘う。
やれることはやった。
後はどれだけBETAを吹き飛ばし、殲滅出来るかにかかっている。
『地雷設置中の15Cよりアトラス1!コード991だ!!』
設置の遅れている15CからのBETA発見を知らせるコードだ。
『アトラス1より15C、全機未設置の地雷は放棄。戻って来い!』
その瞬間、辺りに連続して爆発音が轟いた。