《完結》『Hereafter Apollyon Online』~超高クオリティクソゲーの生産職で巨大ロボット造って遊ぼうとしてるのですが何故か勘違いされます~   作:西沢東

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閑話2 オレンジ報告書

とある報告書より抜粋

 

企業との関連性

 

・第一次オレンジ恐慌

 RE社が保有する量産型Apollyon技術を公開。現時点での損害6000億円、独占が崩れた事を考慮すると最終的には兆単位の被害になると思われる。

 

・第二次オレンジ恐慌 

 スペースイグニッション社が保有するマイナス質量物質生成技術を公開。会社は被害を受けなかったが株価の乱高下に巻き込まれた投資家たちには損害があった。

 

・第三次オレンジ恐慌

 ホライゾン社とガリゾーン社の保有する量産型Apollyon技術を公開した。両社は上場していないため現時点での直接的な被害は存在しないが周辺企業とRE社の株価が一時的に下落する事となった。(現在回復傾向)2社は大きな方向転換を強いられることになるのは間違いない。

 

・鋼光社によるフリーライセンス宣言

 若返りと不老化、義肢技術、パワードスーツ技術、並びに量産型APの技術をフリーライセンスにした。臨床データは保有し続けているため依然として有利はあるものの独占は完全に崩れた形となる。

 

 

 以上がオレンジが世界に与えた表向きの影響である。世間一般はオレンジをハッカーの類として都市伝説のように扱っている。またオレンジの本名はマスクにより遮断されており知るものは極めて少ない。

 

 注意事項としてこれらの恐慌はあくまで投資家たちや野次馬がつけた名称であり、いわゆる世界恐慌と比べると規模は圧倒的に小さい上失業者が出るような事態に陥ってはいない。経済学的な恐慌の定義とは大きく異なるが、一個人の投稿に対し世界が恐れ慌てる、という意味では恐慌という名称もあながち間違いではないだろう。

 

 それぞれの被害を受けた会社は事実の証明が極めて難しいため訴訟を断念する方針である模様だ。また各社は『Hereafter Apollyon Online』における技術流出への対策として専門のチームを派遣している。

 

 同時に3月半ばより世界各国の会社が自身の支部を大阪に新しく作る計画を立ち上げている。これはVer−1.00の後、Ver1.08における市街の安定度が原因である。他国では街自体が崩壊している所も多い中日本サーバーでは情報の保全、取得までできることがオレンジにより実践されているという点が大きい。

 

 また一部企業は鋼光社との合流を試みているのが確認されている。ただしこの点については水面下にて動いているものが多く詳細を確認するのが困難であった。

 

 

 

勢力としてのオレンジ

 能動的多重未来予知能力者、予言者オレンジこと未島勘次が保有するもので脅威となるものは次の3つが挙げられる。

 

・白犬レイナ

 第二世代獣人。優秀な改造人間を多数送り込まなければ勝てない、非常に強力な戦力である。数多の軍事訓練を受けその全てを習得しているため危険であるが、所詮人間であるため過剰な警戒は毒となると考えられる。

 

・鋼光社

 改造人間である社長令嬢の鋼光紅葉はオレンジと共に行動する姿が確認されている。既に不老化手術を非合法にて開始し始めているようであるが上手く立ち回っているらしく追求を止める命令が警察に出ているのが確認された。恐らく上層部が施術と引き換えに行っているものと思われる。オレンジの資金源として極めて優秀なスポンサーである。

 

・オレンジ

 最も脅威である人物。生身での極めて高い戦闘能力、予知能力、そして人心掌握の技術があると想定される。下手な手出しを行った場合火傷ではすまない可能性が高い。

 

 

 

彼らの目的について

 

 会見で話していたとおり、2050年段階で破滅そのものを回避することであると考えられる。オレンジはたった一週間で人類の戦力底上げと宇宙の危険性を示唆、そして分裂体と月の『UYK』の討伐を行っている。

 

 未来予知ができるからこその行動の最適化であるが、一方で権力にしがみつくような様子はない。むしろ権力に邪魔されないよう動いている様子すらある。そのため英雄になるより人類を導く方向に動いていると考えられる。

 

 またオレンジ周辺は徹底的に守られている。分裂体との戦いの数日前から白犬レイナはオレンジの住むマンションの購入、住民の追い出しと改造を開始している。鋼光紅葉には白犬レイナがいるとき以外は必ず護衛がついており、周辺に潜伏している勢力についても排除が完了している模様。分裂体との戦いが終わる頃にはオレンジのマンションは要塞化されているのが確認された。

 

 

今後の展望、対策

 

 オレンジの目標は我々と被りはしないもののこちらに配慮するつもりもまたないだろう。そのため如何に被害を受けずに彼を利用するかがポイントであると考えられる。

 

 現状凍結された虚重副太陽生成計画、進行中の人類統制計画並びに『モーセの剣』合成計画と『逆潜引用情報化計画』には細心の注意を払う必要があるだろう。またオレンジにより世界が激動することを想定し複数のサブプランも同時進行してゆくものとする。

 

 それとは別の試みとして人類最強のApollyon使いと呼ばれた男と2040年段階での接触を試みる。今回一部だけ成功した引き継ぎであるが、その中にあった戦果一覧にて飛び抜けた結果を出していた人物こそが彼である。

 

 白犬レイナの戦果値がおかしかったため信用性に疑問はあるものの、早い段階で戦力を確保できる強みは大きい。幸いにもオレンジと同じ大学であるため、オレンジへの監視も並行して行える点も良い。

 

 我ら革新派の目的達成の為に今後もさらなる手段を模索し続ける所存である。




というわけで次話から二章です。オレンジ以外の全員の胃が死にながらこの話は進んでいきます。

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