《完結》『Hereafter Apollyon Online』~超高クオリティクソゲーの生産職で巨大ロボット造って遊ぼうとしてるのですが何故か勘違いされます~   作:西沢東

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待ちに待った『HAO』コミカライズの連載が遂に本日より始まります!
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コミカライズ開始記念のちょっとした短編です。大体こいつが悪いという話。



こぼれ話:Ver4.00

 これはVer4.00の2051年。遂に最終決戦の準備が整い、オレンジたちが世界の破滅を覆す9年前の物語。

 

「脚コプターで最終決戦挑もうぜ!」

 

 突飛なことを未島勘次はハイテンションで叫ぶ。またいつものやな、とため息を吐いた紅葉は肘を付きながら先を促した。

 

「……参考に仕組みを聞いてええかな?」

「融合型Apollyonの脚を高速回転させてヘリみたいにするんだよ! 秒速何回転もさせて!」

「最終決戦がシュールな光景になるやん!」

「何言うんだよ、飛行型と二足歩行型の変形機構も搭載することで、一斉に変形するカッコいいシーンが見られるんだ! 素晴らしいじゃん!」

「最終決戦でそんな変態機構ばかりなのは変やん!」

 

 人工衛星オーサカの一室。企画部と書かれたその部屋には4人の人物が集まっていた。

 

 改造人間にして鋼光社現社長、鋼光紅葉。

 第2世代獣人、白犬レイナ。

 最強のApollyon使い、仲本豪。

 そして予言者オレンジという名のアホ、未島勘次。

 

 既に30代であるにもかかわらず、彼らのノリは昔のそれと何一つ変わらない。それは引用情報化が決まったこの世界では異常なことであった。勿論演じている、という面はある。現在の対『UYK』戦を率いる旗頭である彼らがシリアスな空気を出していると自然と全体が淀んでしまう。

 

 だがそれ以上に空気感を決定づけているのがこの馬鹿の存在だった。

 

「いいか、最終決戦は地上に降下し『UYK』の体を抉るだろ?」

「せやなぁ」

「そのためにはある程度高度を保っての爆撃、及び『UYK』体内に特攻できる近接戦闘力が必要なわけだ」

「まあその通りやなぁ。やから人間を半機械、『Subordi(眷属たち)nates』としてログイン可能にして、融合型への搭乗を試みているわけやからな」

 

 このタイミングでは、半機械へのログインの目的はあくまで融合型Apollyonへの搭乗を目的として開発されていた。融合型Apollyonへの搭乗は、通常の人間では難しい。そのための措置ではあったが、一方で解決されていない問題もあった。

 

「だけど通常のジェット噴射式だと姿勢制御が直感的じゃないから、いきなりログインしたプレイヤーは使えないだろ?」

「まあせやねえ」

「そこで脚コプター! ヘリの要領で操作するなら難易度が一段階下がる!」

「その結論がおかしいねん! それするなら飛翔ユニットの改良やろ!」

「ロマンがないじゃん!」

「人類の命運をかけた決戦やで! おかしいと思うやんな、レイナと仲本さん!」

 

 二人の議論を他所に、戦闘訓練を終えた仲本豪はゆったりと水分補給をし、レイナに至っては頭をオレンジの膝に乗せてリラックスしている始末である。オレンジも紅葉もレイナを引きはがそうとはしていたのだが、第二世代獣人の身体能力に敗北し仕方なく受け入れていた。

 

「私は別にいいと思うけれどね、倒せるなら」

 

 レイナは薄く目を開けてそう呟いた後、狸寝入りを再開し膝枕を満喫し始める。こいつはだめや、と判断した紅葉は仲本豪に目を向けた。仲本豪は紅葉の懇願するような視線に応え、深く頷いた。

 

「脚コプターでも戦果を約束しよう」

「そうやないねん!!! 脚コプターそのものを辞めようって話やないか!!!」

「ロマンあるぞ。脚が毎秒何回転もしながら飛ぶ姿、正に新世代のロボット!」

「勘次君、普通のロボットばっかで飽きてきたのは分かるけど、そういうのはゲームで我慢しようや!」

 

 紅葉は本気で焦る。今進めている火力増強策のリソースをそちらに注ぎこまれてはたまったものではない。仮に今回の決戦が失敗したとなれば、『革新派』との関係も崩れ、再びダラダラ人類が追い詰められる状況に逆戻りする。

 

 何があっても負けるわけにいかない状況で、脚コプターなんて使っている暇はないのである。

 

 紅葉は思考を回す。が、どう考えてもロマン機体大好きマンを止めるすべなどない。代わりに苦し紛れに言葉を放つ。

 

「……戦力的に余裕ができたならええで。とはいってもそんな都合のいい案ないやろうけどな」

 

 紅葉は話を打ち切ろうとする。ただでさえ『革新派』との交渉、宇宙空間に住む人々のとりまとめ、最終決戦に向けた戦力増強と紅葉が抱える仕事は数多ある。常に睡眠不足なこの状態で馬鹿のアホな話に付き合うわけにはいかないのだ。

 

 こうやって暴走さえしなければ、でもそういう所が、なんて思っている紅葉に爆弾が投げつけられる。

 

「あ、それじゃあ-Ver2.00の俺が考えた案なんだけどさ」

「なんや?」

「人間核爆弾と仲本先輩増殖計画ってどう?」

「???????????」

 

 

 思わぬ所からでてきた、余りにも突飛な戦力増強策に紅葉は目を回す。だが何時間にも渡る議論の末、これらの良く分からない単語の羅列は実用的で大幅に戦力増強が可能であることが判明する。

 

 

「種族確立によるログイン可能化は人工『SOD』ど同じ機構でいけるし増殖も融合型Apollyon用培養器の流用品と『革新派』の人造人間作成技術がそのまま持ってこれる……やと……」

「これなら脚コプターいいよな!」

「どっからこんな発想でてくんのや…………ええよ、安全には気を付けるんやで……」

 

 こうして2060年の決戦時、隅っこでひっそりと脚コプターする融合型Apollyonが数台生まれたのであった。

 

 

 

 

 






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